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月と星が瞬く夜に咲く花」(2016/08/26 (金) 20:46:49) の最新版変更点

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**月と星が瞬く夜に咲く花 雪の降る景色に混ざる桜の花びら。 子供の頃から見慣れたその風景はあのあたしが住んでいたあの村だけの現象なんだなとしみじみと噛み締めながら妖しい『夜桜』を見下ろしていた。 理屈ではわかっている。 本や教科書を読んでも桜の花びらが空に舞っている始まりと出会いの季節は『春』に分類され、既に透き通る白い雪が降ることがない。 たまに低気圧の問題の異常気象で何年かに一度は起こるらしいがなんとも夢のない話ではないだろうか。 では毎年の様に訪れる雪と桜の同時に舞うあの村は果たしてどんな秘密があるのか、野暮だよね、これは。 「どうしてあんな下らない嘘なんか付いちゃったのかな……」 あたし、蓮沼綾花と社冬美の嫉妬がまさか幼馴染で親友だった彼女1人を苦しませて自殺するなんて考えてもいなかった。 謝っても償いきれない罪があたしと冬美ちゃんの間に生まれただけの最悪な結果だけが残ってしまった。 そんなことが親友のみんなにばれてしまわないかってビクビクしながら保身のことを考えているとかずるい女だよね。 そんな後悔を胸に沈んだ状態であたしは金田一君の通う不動高校という場に放り込まれておじさんが潰される光景を目に焼き付けられて、意識が遠のいて……。 目が覚めると雪影村のものとは違う桜の木と大きくてオシャレな洋館が聳え立った場所に眠らされていたのだった。 あの出来事は夢ではなく現実の出来事であると忠告するかの様にデイパックも添えられた状態で、だ。 まずは状況把握をしながら周辺の探索をする。 どうやらこの洋館は『夜桜亭』との名前らしいのが中に侵入して把握出来た。 深夜という時間帯にぴったりな名前だな、と空元気を起こしながら思った。 宿泊する様な造り方で客室も何個か見付けられた。 「3日間泊まるぶんには問題ないけど……」 殺し合いという発言をした九条さんという弱弱しい男が脳裏を過ぎる。 そんなことを仕掛けてくる様な人物が0ではない以上安心するのは不可能だし、そもそも1人では不安だな……。 「金田一君か……」 小学生の頃わずか2週間くらいの付き合いでしか無かったのだが、まだ村での幼馴染グループの中で話題になるほど彼の存在は強く印象に残っている。 一緒に名前の出された明智健吾と高遠遙一という名は誰なのかわからないが、どうして金田一君の名前があの人から飛び出したのか、どうでもいいことだと理解しても懐かしい名前が頭から離れない。 また、こんなよくわからない島で再会する時が来るのではないかと期待の様な感情が湧き上がる。 考え事をしながら歩みを進めて1階での探索を終え、2階に上がり最初の部屋を空けようとした時であった。 そのドアの向こうから微かだが男女の声が交互に耳に入ってくる。 「もしかして悪い会話でもしてんじゃねーべか」 たまに出る訛りが口から出てしまう。 周りは雪影村の人ではないとすればちょっと恥ずかしい。 赤くなりながら、悪いと心の中で頭を下げつつドアに近付き盗聴をしてしまう。 『……すみません。俺は、そもそもこの部屋にいちゃいけない人間なんだ……』 若い男の贖罪の言葉。 自分を責めた口調、まるであたしと同じ心境を彼は持っているのではないだろうか? 浮かぶ幼馴染の顔――葉多野春菜に何度も何度も頭を下げる。 果たして彼女があたしたちを赦すなんてありえない日がくるのだろうか……。 ◆ 「俺がこんなこと言える資格も義理もないですが、一言いいですか?」 「な、なによ……?」 あっけからんとした口調でとんでもない爆弾発言をした彼女に星は気まずそうに茉莉香に物申した。 「月江さんも陰険ではないでしょうか?」 『インケーン』ではない、『陰険』である。 つまり、星の言いたかったことはマジである。 「流石にそのイタズラはシャレにならないですよ!?」 「一緒に遊ぶ仲だった友達の母親を間接的に殺している人殺しに言われたくないわよ!」 素直に謝らずに一言、一言余計なことを口に出す茉莉香。 多分神小路陸って人と再会できても彼女すんなり謝ることが出来ない人だな、と失礼ながら心の中で思った。 いや、思う資格すら俺にはないと星は否定するかもしれない。 「本当に和解したいのなら素直になりましょう。俺の部活に天元先輩って人がいるんですけど先輩はきちんと俺の話を聞いてくれる人でしたよ」 「知らないわよそんな人!?」 どんどんどんどん泥沼に走り、火に油を注ぐ2人。 やがて根負けした様に星が出入り口のドアに手を付ける。 「俺はこれから海峰を探しにいきます。それと差し出がましいですが月江さんが神小路さんに謝っていたかったともし本人を見かけたら伝えておきます」 「ちょっと余計なことしないでよ、これはあたしの問題よ」 茉莉香が身を乗り出すのを見計らった様にドアを開ける星。 そのまま茉莉香と別れようとしたが、そのドアに張り付いていた若い女性が潜んでいた。 「ぐす……」 同じくバトルロワイアルのスタート地点が夜桜亭であった蓮沼綾花である。 彼らの謝りたい人、罪、自分と写し鏡である様な境遇であり自分の仕出かしたことに押しつぶされそうになっていた。 『殺されていい人間なんていないのよ!』という茉莉香の言葉。 葉多野春菜だって当然殺されていい人間ではなかった。 全てが遅すぎたのだ……。 ◆ 「全く星君が泣かせたものだとばかり……」 「いまのいままで月江さんとただ喋っていただけなんだけど……。大体俺には人を泣かせる資格なんてないよ」 「てか、星くん色々な資格無さすぎでしょ……」 平手打ちを一発もらってしまった星であったがそれを綾花が違いますと静止したのだ。 せめて平手打ちをくらう前に静止をして欲しかったと思った星であった。 で、当の泣いていた綾花はというと……。 「ご、ごめんね……。勝手に自分の心境と合わせちゃって……、あたしだって馬鹿しちゃったんだもん……」 ポケットのハンカチで涙を拭う綾花。 これは別れるに別れにくくなった星。 茉莉香も茉莉香でこれはあたしの相談室なのかとちょっと的外れなことを考えていたりしていた。 なんかもう乗りかかった船だ。 「えーと、あなたの名前は?」 「は、はい。蓮沼綾花です」 「じゃあ綾花ね!」 女が2名に増えて居心地の悪い星。 「あたしと星くんの過去や過ちを聞いたからってわけでもないけどさ、……話して楽になるなら聞くよ!それで一緒に謝りたいってなら協力はするし、黙ってて欲しいって言うんなら絶対に口を割らないし」 姉御肌で困った人を見捨てることが出来ない茉莉香。 こんな自分の命も危ない地において自ら首を突っ込もうとしているのだ。 「あたしとその親友の社冬美って子がいるんだけどね……」 そして語り始めた。 ――うれしい色だったはずが許されない色に『してしまった』罪を。 ちょっとした嫉妬が巻き起こした親友を殺してしまった話を……、2人に綾花は語ったのだ。 ◆ 「うれしい色だったはずが許されない色だったなんて もうだめ死ぬしかない、か……」 当然そこには殺意なんて全くない。 星に至っても綾花に至っても――本人はまだ知らないが茉莉香に至っても。 ちょっと歯車がズレただけで、噛み合わないでは済まない程の結果が待っている。 それこそ歯車そのものが壊れてしまったみたいに……。 「子供の時はそんなことなかったのになー……、凛、美咲、あかり、光太郎、忍、亮、心平、金田一、陸」 ふとカブスカウトのメンバーの名前が漏れてくる。 凛とは姉妹になったが他の人物とはあれ以降会っていない……。 「金田一君……、やっぱり知っているんだね……」 「え?」 「え?」 綾花にとって金田一とは雪影村に短い期間の滞在ながら幼馴染全員に好かれ未だ仲間だと思われている古い親友。 茉莉香にとって金田一とはカブスカウトのメンバーで協力しあった親友。 星にとって金田一とはオセロをやろうと誘ってきてくれた人懐っこい人だ。 全員に金田一という男はいい奴というのが根付いている。 「綾花、その春菜って子のことなんだけどさ……」 どう説明しようか。 いや、回りくどい言い方は伝わらないだろう。 ストレートにこの感想を伝えよう。 「インケーン」 「え?」 「もう、あんたも星くんもインケンなのよ!好きな人がいたら好きってずばっと言いなさいよ!それだけで絶対変われたはずよ!たとえ断られたとしてもそんな結果になっちゃった現実よりは少し変われて幼馴染同士偽りなく笑いあえた仲になれたかもしれないのに……」 なれたかもだ。 不安定なパラレルだ。 もしもの数だけ違った世界に成り得たかもしれないのだ。 もし、安易な嘘を伝えなかったら? もし、スズメバチを水筒に入れるのを思い留まったら? もし、自分が我慢して親友の志望校を祝福できたら? もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし……。 132 :月と星が瞬く夜に咲く花 ◆rGsyzf.Kp2:2016/07/30(土) 00:54:33 ID:lso5ZoNM0 「でも起こってしまったことは受け入れて罪を償わなくちゃいけないわよ!消せる罪なんてないけど、隠すぐらいなら、ごまかすくらいならあたしはそれでいいかな?ってそう思う」 茉莉香はまた、良い事を言った気分になっていた。 さっきは全然響いていなかった星も、わずかばかり心に響いて虚無が少し埋まった感じがした。 「綾花、あんたはその島津くんって人にも謝りなさい。それがスタート地点じゃないかってあたしはそう思う」 「島津君に謝る……」 綾花は冬美と共に隠そうと保身をしていた。 それを自ら告げろと茉莉香は言うのだ。 でも、なんとなく隠し続けて罪悪感で押しつぶされるずっとずっとマシになる様な気がした。 それがたとえ彼に嫌われ、絶交になったとしても……。 「うん」 綾花は大きく頷いた。 よし、このまま行動しようと茉莉香が仕切ろうとした時だ、星が窓に近付き、開ける。 そしてゴソゴソとなにかよくわからない行動に出た。 もともと掴みにくい人物だなと印象を持っていた茉莉香の中でますますそれに拍車に掛かった。 「星くん?なにしてるの?」 綾花の質問にきょろきょろ仕出して何故か焦りながら言葉を紡ぐ。 「杞憂だったらそれでいいんだ」 「ん?」 そして突然大きな声で星は問いかける口ぶりで叫びだした。 「な、何者だ!?」 彼女らは会話をしていて気付いていなかったが、蚊帳の外に置かれた星は異変がないか辺りを見渡していて異音がしたのだ。 しかも人為的な音だ。 それを察知した星はとにかく保険を売っておいた。 茉莉香や綾花の様に物分りのいい人物ばかりが揃うとはとうてい思えない。 しかもわざと音をたてている様な不自然に荒らしているかの音……。 やがて星のその声に釣られる様に1人の茉莉香たちよりも大きく年をくった女性が姿を現す。 「あら?龍之介はいないのかしら?」 文だけでは異常もなく人を訪ねる言葉である。 だが、雰囲気は目が血走り右手には大きな斧を握りしめている。 ◆ 巽紫乃は育てた息子ではなく、産んだ息子を選んだ女だ。 どんなにその息子に虐げられようと、実の息子が1番可愛いのだ。 リゾートの会員権とかそんなものどうでもいい。 巽龍之介が巽家の跡取りになることだけが夢なのだ。 そして、自分が巻き込まれたのなら息子の龍之介が巻き込まれた可能性も0ではない。 でも、0ではないというだけで危惧してはならないのだ。 どう足掻いても息子だけは生かさないといけない。 このバトルロワイアルにまだ巻き込まれたかすらわからないのに彼女は龍之介以外の皆殺しを目的に島を探索していた。 そしてようやくそのターゲットが一気に3人も発見したのだ。 1人男がいるが、まだ全員年端もいかない者たちだ。 くぐった修羅場は段違いだと自負していた。 だから彼女は3対1でも不利とは全く考えていなかった。 だが慢心もしていない、とてもやっかいな思考回路をしていた。 ◆ 「な、なによあのおばさん!」 茉莉香はすぐに逃走しようとするが出入り口が紫乃に塞がれている。 窓から逃げられなくはないが背中を見せるのはとても危険だ。 というか場所も悪くここは2階、飛び降りて死にはしないだろうが、怪我をするかもしれない。 だがその怪我が致命的に機動性を失うのは確実だ。 何かをなして成功させるには可能性を限りなく100に近づけなければ辞めておいた方がいいだろう。 「こ、この!」 茉莉香は拳銃を向ける。 だが手が震えて標準が定まらない。 当然だ、見おう見まねだしこんなものを使うことになる人生も歩んでいないのだから。 綾花は恐怖で足が竦んでいるし、星の武器はなんかニッチなハンガーでろくに対応が出来ない。 星が全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束なんて言い出した時きちんと使い方を考えておくべきだった、完全に他人事だったとここでも新しい後悔が生まれる。 「チックショー!このインケンを通り越したイジョーシャー!」 もう自分が何言ったのかもわからないまま引き金を弾く。 しかし紫乃は避けるでもなくただ軌道を外しただけであった。 「威勢がいいのは口だけかしら」 斧を見せびらかす様に1歩1歩3人に近寄る。 「う、うおおおお!!!」 唯一の男の星が紫乃に体当たりをする。 ドンと当たり少し怯んだがそんなに体育会系でもない星の攻撃は有効打とは程遠かった。 そのまま紫乃が星の肩を掴み床に叩き付けられ情けなく倒れこむ。 「あら?最初は龍之介よりも若い男の子からかしら」 斧の刃の向きが星に重なる。 振り落とされれば大きなダメージがあるのは想像に難しくない。 (まだ、海峰に謝っていないんだ!こんなところで死ねない!勝負に口を出した者は殺されてその生首を血溜まりに置かれる……、まんまこのババアじゃないか!) 自分は殺されても文句は言えないが、こんな狂ったババアに殺されるものだったら文句を言ってやる、てか文句しかない。 こんなこと、星には言う資格はないかもしれないが資格とか関係なく絶対嫌だ。 「なにしてやがんだ!」 威勢の良い男の声と同時にまたこの部屋に素早く入り込む人物の影が現われた。 (だ、誰だろう?) 助かったのか?、星の体に斧が喰いこまれる展開がまだ訪れないらしい。 「おりゃあああ!」 「きゃあ」 と、その影が星の体当たりよりも勢いのある突進で紫乃を直撃させるかの如く襲った。 「なんなんだこの危ない女は!?」 「し、島津君!?」 「お、お前綾花か?」 銃声が聞こえて隠れて近寄ってみたらとんでもない出来事が起こっていたのを見過ごせずそのまま飛び込んできたのは島津匠であった。 雪影村の綾花の幼馴染であり、真っ先に謝らなければならない相手だ。 「ここは俺に任せろ!みんなを連れて逃げろ!」 だが、島津は知らない。 綾花と冬美が恋人の春菜の死の原因を作ってしまったことに……。 もし、知っていれば綾花の方を見殺しにしていたかもしれないのに。 彼も彼でまた春菜が亡くなったばかりであり自暴自棄気味になっていたのであった。 もし、生への執念があればもっと慎重にかつ冷静に島津という男は動けたはずだったのだ。 謝るとは言ったがこんなすぐに再会するとは思ってもいなかったし、まだ心が割り切れてもいない綾花は返事も返せずただ気まずそうに目を逸らす。 それを素早く察知した茉莉香は島津の言葉にフォローをする。 「で、でもここは2階よ!?」 「ちっ、そうだった。なら食い止めるしかないのか……」 島津が紫乃に向く。 紫乃は一撃を喰らわせた島津が1番のやっかい者だと判断した。 (こういう男は可愛い龍之介の1番の害になるのよッ!!) その優しさはあの征丸の姿と重なる。 豹変したあの顔はダメだ。 そんな顔、あの女を思わせる顔。 見るな見るな見るな……。 斧を握る拳がギリリと強くなる。 そこでまた置いてきぼりをくらった感じで床に転がっていた星はユラユラと立ち上がる。 「星くん!?大丈夫!?」 茉莉香は心配して星に声を掛けるが彼は返事をしなかった。 何故かというとそのまま何事も無かった様に、でも申し訳なさそうに茉莉香たちに背を向けて、紫乃の後ろを走って通り抜け部屋から逃走を始めたのだ。 ぽかんと茉莉香、綾花、助けに入った島津は開いた口が塞がらなかった。 「ほ……」 なんだこれは。 まるでいま心配した自分が馬鹿ではないか!? 確かに綾花と出会わなければ自然消失して別れていたかもしれない仲だったがだからと言ってこんな命の掛かった瞬間に女を見捨てて一目散に逃げる男だったのか。 お前もうその海峰って奴からまたぶん殴られてこいよ(流石に殺されるのは寝覚めが悪い)。 「星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!」 こんなのが自分の断末魔になるのか。 (ちょっと星くんを頼っているみたいで癪に触る……) 女の子らしく悲鳴を挙げた方がいいか? なんだその気持ち悪いあたしに似合わないキャラは? 「ふふふ、命が惜しいわよね。1人くらいなら見逃してあげるわ」 紫乃は、あんなもやしみたいなヘタレ男は龍之介にとって全く害にならないと判断した。 むしろ龍之介ならば簡単に返り討ちにしてみせるだろうと。 「じゃあ、あなたから!」 島津に斧を振り回すが動体視力でどうにか躱す。 スポーツマンの島津だが斧なんていう殺意の塊を振り回されるのは初めてでどこまでそれが持つのか。 どちらが音を上げるのが先か、指摘するまでもない。 そして、音が上がる。 いや、叫び声の方だ。 先ほど星が保険にと開けていたドアから、普段のおどおどしたキャラを捨てて勇気を出して、頼りになるぞとアピールをしている声であった。 「俺はここにいるよ!!!!」 ◆ 星桂馬は紫乃の気配を察知した時保険を掛けていた。 どう役にたつのかよくわからない全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束を窓から乗り出しずっと引っ張り伸ばし続けた。 たかが建物の2階だ、200mもあるはずもなくちょっと伸ばしただけで地面に辿り着く。 余ってまだハンガーの原型が残っている部分を窓枠に引っ掛けた。 星特製ロープ替わりのハンガーだ。 だが金属でツルツルしてロープの様にすんなりと降りられないだろう。 あるだけまだマシ、本当にしょうもない使い道であった。 そしてどさくさに紛れて走った星はすぐ外へ出て、そのハンガーが飛び出している場所へ辿り着く。 「はあはあ……」 もう既に息が上がっていたがこのままでは全員あのおばさんに殺されてしまう。 だがこんなところで休憩なんてしていられない。 自分が海峰に頭を下げる様にみんなで頭を下げる、そんな傷の舐め合いの様な関係だが同じ境遇の人間を肌で感じると意外と情が移るものらしい。 「俺はここにいるよ!!!!」 自分はまだ逃げていないよと存在をアピールした。 さっき茉莉香の散々と罵倒した声は夜桜亭中に響いていたが、わざと聞こえていなかった風だけ装っていよう。 綾花が窓から顔を出す。 中がどんな状況であるかだけ、下からは確認出来ない。 「これをロープ変わりに降りてきて蓮沼さん」 「ってこんなの無理だよ……」 ――至極もっともだった。 「うん、無理ねこんなの……」 後から続いて茉莉香もハンガーを見て呟いた。 なんて無茶を要求するのだこの男は。 「もし無理だったとしても俺がキャッチするから」 お前も無理だろう、と茉莉香と綾花のこころがリンクした。 「まずいきなり自分は階段使って逃げ出した癖にあたしたちにこれをやれってそれっておかしくない?」 折角頑張ったのに女子に総スカンを喰らいちょっと見捨てようかなと思い始めてきた星。 それを叱る声が部屋の男から星の耳に届く。 「ごちゃごちゃ言ってねーで下に行け!」 「は、はい」 2人素直に窓に乗り出し茉莉香が先にハンガーに手を付けた。 「くっ……、星桂馬のアホォォォォォォ」 とりあえず男を見せた茉莉香。 「島津くんも早く」 「無理だ!」 綾花の言葉に諦めた声を挙げた。 紫乃の攻撃を1人で防いでいる状態だ。 背中を見せた途端綾花もハンガーを使っている茉莉香も突き落とされて怪我、最悪死亡が予想される。 「それに、わかるだろ?」 首で右腕を指し、綾花は瞬間悟ってしまった。 そうだ、彼はもう野球をしていないのはもう肩より上に上げられないからだ。 そんな人がハンガーを使って下に降りられるかどうかと言われたら……。 ◆ 「早く喰らいなさいよ」 何回もう避けただろうか。 何回もう斧が振られただろうか。 お互い限界が近い。 生き残れるかどうかは執念の差といっていい。 「島津くん、あたしと冬美はあなたに謝らなくてはいけないの……」 え?と疑問が浮かんだ顔になるがその表情が変わったのを目撃したのは向き合って対峙している紫乃のみであった。 「ごめんなさい……、春菜の自殺はあたしたちの嘘が原因だったの……。お腹に赤ちゃんが出来たんじゃないかってあたしは思っているんだけど」 赤ちゃん……? それは自分の子ってことなのか? でも何故それで自殺なんか……? そこから綾花1人で2人ぶんの自白がなされた。 信じていた幼馴染からの、それこそ世界が逆転するかの様な告白。 目の前の女のことよりも優先して殺してやりたいくらいの殺意が湧き上がる。 「そっか……」 でもそんなことして何になる? 泣きながら謝っているし、それこそ自分に対しても死なないでって涙を流している親友だ。 今更綾花と冬美を殺してどうなる? それこそ普通の奴なら一生墓まで持っていこうとする秘密であるだろう。 それがもし偶然俺がそのことを村で知ってしまったとしたら俺はその殺意に身を任せていたかもしれない。 だが、それがこの目の前のおばさんと同じ顔になる俺って想像すると、すっげー醜いなって客観的に思う。 「俺はお前と冬美を絶対に許さねえ!許せるもんかよそんなこと!」 悔しさで涙が溢れてくる。 それをチャンスだとまた紫乃は襲うがそれもまた寸でカットする。 「こ……こっちは終わったわよ……!」 よほどびびったのか疲れたのか安堵の声と混ざった茉莉香の声でおそらく手を振っているのだろうなとなんとなく目に浮かぶ。 「これさ、もし冬美と会ったら一緒に伝えて欲しいんだけどさ……」 そろそろ体が限界だと訴えてくる島津の体。 でも最後に許せないこの女たちに伝えなくちゃいけないんだ……。 「許す……、努力だけはしてみようと思う。大好きだった野球と同じでずっとずっと努力してみるよ……」 憎い人を殺す、それだけしか問題の解決方法がないわけではないのが人間だから。 許す、許さない、それだけで成り立っているわけじゃないのが人間だから。 事件が解決したわけではないが、それでも区切りを付けられるのが人間だから。 (春菜……、俺もお前のところへ……) 本来の正史のルートからほんの少し歯車の外れたルート。 これもまた1つの事件の終着点であったのだ……。 &color(red){【島津匠@雪影村殺人事件 死亡】} 「ふぅ……、疲れたわ……」 結局1人しか始末出来なかった。 なんか自分には無かった甘酸っぱい青春って感じがしてものすごく胸クソの悪いものであったけど。 もう何回振ったかもわからない斧を床に置いた。 遺言を言った途端いままでの苦労はなんだったの?ってくらいあっけなく頭に攻撃をもらって瀕死になりとどめを刺した。 顔面に振り下ろした時に手でガードすればまだもう少し持ちこたえたかもしれないのにそれをしなかったのを見ると手が上がらなかったか、単に生きるのを諦めたのかそんなのはわからない。 どうでもいい。 二兎追う者は一兎も得ず、いやこの場合四兎追う者は一兎も得ずか。 そうならない様にいちばん強そうな男から確実に消す方向へシフトしていた。 「デイパックの回収したし……」 まずは休憩をしよう……。 死体のある部屋では誰かに見られる場合もある。 この洋館のどこか隠れられる場所を確保して体力と腕を回復させよう。 「龍之介……待っててね……」 海より深く、山より高い母の愛は自分が悪いことをやっているという認識もないまま目を血走らせているのであった……。 【一日目/黎明/夜桜亭(吸血桜殺人事件)】 【巽紫乃@飛騨からくり屋敷殺人事件】 [状態]疲労(大)、腕の疲れ [装備]雪夜叉の斧@雪夜叉伝説殺人事件 [所持品]基本支給品一式、島津のランダム支給品1~2 [思考・行動] 基本:龍之介を生還させる(龍之介が参加しているとは言っていない)。 0:龍之介の害になる人物、というか参加者全員の始末。 1:隠れて疲労を癒せる場所を探す。 [備考] ※参戦時期は、仙田猿彦始末後。 ※本人も龍之介が参加していない可能性も考慮してのスタンスです。 ※基本話は噛み合いません。 ◆ 「島津くん……」 冬美のぶんも含めた島津の想いを受け取った綾花は泣く泣くハンガーに飛びついた。 あとちょっとってなった時、手を放してしまったのだが茉莉香の必至な助けで怪我なく降りられた。 その後星はごめんと2人に謝っていた。 もはや完全に尻に敷かれる星なのであった。 「大丈夫よ、あの島津くんっていの一番に逃げ出した星くんと違ってすっごく強かったしあんなおばさんをやっつけちゃってるよ!」 綾花を元気付けさせる為にそう言って肩をバンバンと叩く。 だがあの少し後ものすごく嫌な音が部屋から聞こえたのだがそんなの違うと全員で否定した。 「いつまでもネチネチって月江さんもやっぱりインケンじゃ……、いえなんでもないです。俺には言う資格ないよ」 卑屈に笑いながらワイヤーを回収する星。 とりあえずあのおばさんが追ってくるのも考慮して夜桜亭の敷地内から脱出をする為足を進める。 「とりあえずさ……、しばらくあたしたちで固まって行動して探し人を探さない?」 「そうだね、やっぱりさっきみたいな問答無用で襲ってくる人もいるみたいだし……」 茉莉香の昔水筒にスズメバチを入れてしまった相手、神小路陸。 親友の開桜学院の入学辞退の書類を勝手に出して母親を自殺までさせてしまった相手、海峰学。 まだ生きていると信じているけれど、――島津から受けとったメッセージを伝える為に一緒に罪を犯してしまった相手、社冬美。 この3人に邂逅する為、走り出す。 ◆ 3人の決意を見守る『夜桜』が花びらを散らす。 それは彼らの先の未来を闇だと告げているのか、逆に光と告げているのか。 まだ、それはわからない。 ――どうしたら最後まで頑張れるの? ――その答えを探して辿り着く為。 ――あなたの心の鍵を探し求める。 ――誰のこころにも秘められた想いがある。 ――真っ白なスタートライン。 そして、ここから始まってく――AMAZING STORY―― 【一日目/黎明/夜桜亭周辺(吸血桜殺人事件)】 【月江茉莉香@狐火流し殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]明智警視が高遠に撃った銃@獄門塾殺人事件 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:星くんと綾花と行動する。 1:カブスカウトのメンバーや両親などがいたら、優先的に合流する。 2:陸に会ったら謝りたい(素直に謝るとは言ってない)。 3:海峰と冬美の探索。 4:あのインケーンを通り越したおばさんとは関わらない。 5:何?このインケーンなパーティーは!? [備考] ※参戦時期は、陸に再会する前。 ※本人に悪気は全くないのにちょっとアレです。 ※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。 ※蓮沼綾花と社冬美の罪を知りました。 ※多分このパーティーのリーダーです。 ※というか本人がリーダーだと自負しています。 【星桂馬@血溜之間殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束@香港九龍財宝 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:月江さんと蓮沼さんと行動しながら海峰を探す。 1:海峰に謝る。 2:俺は殺されても文句言えない(文句を言わないとは言ってない)。 3:もうインケンでいいよ……。 4:あのおばさんとか含めて全く俺の罪に関係ない人に殺されそうになったらさすがに文句は言う。 [備考] ※参戦時期は、海峰に拘束されて母親の死を聞かされてから、殺害されるまでの間。 ※本人に悪気は全くないものの、切羽詰まると保身に走りがちです(後で反省はします)。 ※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。 ※綾花と冬美の罪を知りました。 ※茉莉香から尻に敷かれつつあります。 ※本人は意図していないですが何故か空気になりがちです。 ※茉莉香が叫んだ『星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!』という言葉は聞こえなかったことにしました。 【蓮沼綾花@雪影村殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]なし [所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1~2 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:茉莉香ちゃんと星くんと行動する。 1:冬美に会って島津くんの言葉を伝える。 2:島津くん……。 [備考] ※参戦時期は、春菜自殺後。 ※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。 ※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。 ※たまに素で訛りが入ります。 ※冬美の呼び方が呼び捨てになったり、ちゃん付けになったりします。 |024:[[Boo Bee MAGIC]]|時系列|012:[[安い誤解]]| |010:[[首刈られ女子with壁]]|投下順|012:[[安い誤解]]| |001:[[月と星]]|月江茉莉香|| |001:[[月と星]]|星桂馬|| |&color(cyan){GAME START}|蓮沼綾花|| |&color(cyan){GAME START}|巽紫乃|| |&color(cyan){GAME START}|島津匠|&color(red){GAME OVER}|
**月と星が瞬く夜に咲く花 雪の降る景色に混ざる桜の花びら。 子供の頃から見慣れたその風景はあのあたしが住んでいたあの村だけの現象なんだなとしみじみと噛み締めながら妖しい『夜桜』を見下ろしていた。 理屈ではわかっている。 本や教科書を読んでも桜の花びらが空に舞っている始まりと出会いの季節は『春』に分類され、既に透き通る白い雪が降ることがない。 たまに低気圧の問題の異常気象で何年かに一度は起こるらしいがなんとも夢のない話ではないだろうか。 では毎年の様に訪れる雪と桜の同時に舞うあの村は果たしてどんな秘密があるのか、野暮だよね、これは。 「どうしてあんな下らない嘘なんか付いちゃったのかな……」 あたし、蓮沼綾花と社冬美の嫉妬がまさか幼馴染で親友だった彼女1人を苦しませて自殺するなんて考えてもいなかった。 謝っても償いきれない罪があたしと冬美ちゃんの間に生まれただけの最悪な結果だけが残ってしまった。 そんなことが親友のみんなにばれてしまわないかってビクビクしながら保身のことを考えているとかずるい女だよね。 そんな後悔を胸に沈んだ状態であたしは金田一君の通う不動高校という場に放り込まれておじさんが潰される光景を目に焼き付けられて、意識が遠のいて……。 目が覚めると雪影村のものとは違う桜の木と大きくてオシャレな洋館が聳え立った場所に眠らされていたのだった。 あの出来事は夢ではなく現実の出来事であると忠告するかの様にデイパックも添えられた状態で、だ。 まずは状況把握をしながら周辺の探索をする。 どうやらこの洋館は『夜桜亭』との名前らしいのが中に侵入して把握出来た。 深夜という時間帯にぴったりな名前だな、と空元気を起こしながら思った。 宿泊する様な造り方で客室も何個か見付けられた。 「3日間泊まるぶんには問題ないけど……」 殺し合いという発言をした九条さんという弱弱しい男が脳裏を過ぎる。 そんなことを仕掛けてくる様な人物が0ではない以上安心するのは不可能だし、そもそも1人では不安だな……。 「金田一君か……」 小学生の頃わずか2週間くらいの付き合いでしか無かったのだが、まだ村での幼馴染グループの中で話題になるほど彼の存在は強く印象に残っている。 一緒に名前の出された明智健吾と高遠遙一という名は誰なのかわからないが、どうして金田一君の名前があの人から飛び出したのか、どうでもいいことだと理解しても懐かしい名前が頭から離れない。 また、こんなよくわからない島で再会する時が来るのではないかと期待の様な感情が湧き上がる。 考え事をしながら歩みを進めて1階での探索を終え、2階に上がり最初の部屋を空けようとした時であった。 そのドアの向こうから微かだが男女の声が交互に耳に入ってくる。 「もしかして悪い会話でもしてんじゃねーべか」 たまに出る訛りが口から出てしまう。 周りは雪影村の人ではないとすればちょっと恥ずかしい。 赤くなりながら、悪いと心の中で頭を下げつつドアに近付き盗聴をしてしまう。 『……すみません。俺は、そもそもこの部屋にいちゃいけない人間なんだ……』 若い男の贖罪の言葉。 自分を責めた口調、まるであたしと同じ心境を彼は持っているのではないだろうか? 浮かぶ幼馴染の顔――葉多野春菜に何度も何度も頭を下げる。 果たして彼女があたしたちを赦すなんてありえない日がくるのだろうか……。 ◆ 「俺がこんなこと言える資格も義理もないですが、一言いいですか?」 「な、なによ……?」 あっけからんとした口調でとんでもない爆弾発言をした彼女に星は気まずそうに茉莉香に物申した。 「月江さんも陰険ではないでしょうか?」 『インケーン』ではない、『陰険』である。 つまり、星の言いたかったことはマジである。 「流石にそのイタズラはシャレにならないですよ!?」 「一緒に遊ぶ仲だった友達の母親を間接的に殺している人殺しに言われたくないわよ!」 素直に謝らずに一言、一言余計なことを口に出す茉莉香。 多分神小路陸って人と再会できても彼女すんなり謝ることが出来ない人だな、と失礼ながら心の中で思った。 いや、思う資格すら俺にはないと星は否定するかもしれない。 「本当に和解したいのなら素直になりましょう。俺の部活に天元先輩って人がいるんですけど先輩はきちんと俺の話を聞いてくれる人でしたよ」 「知らないわよそんな人!?」 どんどんどんどん泥沼に走り、火に油を注ぐ2人。 やがて根負けした様に星が出入り口のドアに手を付ける。 「俺はこれから海峰を探しにいきます。それと差し出がましいですが月江さんが神小路さんに謝っていたかったともし本人を見かけたら伝えておきます」 「ちょっと余計なことしないでよ、これはあたしの問題よ」 茉莉香が身を乗り出すのを見計らった様にドアを開ける星。 そのまま茉莉香と別れようとしたが、そのドアに張り付いていた若い女性が潜んでいた。 「ぐす……」 同じくバトルロワイアルのスタート地点が夜桜亭であった蓮沼綾花である。 彼らの謝りたい人、罪、自分と写し鏡である様な境遇であり自分の仕出かしたことに押しつぶされそうになっていた。 『殺されていい人間なんていないのよ!』という茉莉香の言葉。 葉多野春菜だって当然殺されていい人間ではなかった。 全てが遅すぎたのだ……。 ◆ 「全く星君が泣かせたものだとばかり……」 「いまのいままで月江さんとただ喋っていただけなんだけど……。大体俺には人を泣かせる資格なんてないよ」 「てか、星くん色々な資格無さすぎでしょ……」 平手打ちを一発もらってしまった星であったがそれを綾花が違いますと静止したのだ。 せめて平手打ちをくらう前に静止をして欲しかったと思った星であった。 で、当の泣いていた綾花はというと……。 「ご、ごめんね……。勝手に自分の心境と合わせちゃって……、あたしだって馬鹿しちゃったんだもん……」 ポケットのハンカチで涙を拭う綾花。 これは別れるに別れにくくなった星。 茉莉香も茉莉香でこれはあたしの相談室なのかとちょっと的外れなことを考えていたりしていた。 なんかもう乗りかかった船だ。 「えーと、あなたの名前は?」 「は、はい。蓮沼綾花です」 「じゃあ綾花ね!」 女が2名に増えて居心地の悪い星。 「あたしと星くんの過去や過ちを聞いたからってわけでもないけどさ、……話して楽になるなら聞くよ!それで一緒に謝りたいってなら協力はするし、黙ってて欲しいって言うんなら絶対に口を割らないし」 姉御肌で困った人を見捨てることが出来ない茉莉香。 こんな自分の命も危ない地において自ら首を突っ込もうとしているのだ。 「あたしとその親友の社冬美って子がいるんだけどね……」 そして語り始めた。 ――うれしい色だったはずが許されない色に『してしまった』罪を。 ちょっとした嫉妬が巻き起こした親友を殺してしまった話を……、2人に綾花は語ったのだ。 ◆ 「うれしい色だったはずが許されない色だったなんて もうだめ死ぬしかない、か……」 当然そこには殺意なんて全くない。 星に至っても綾花に至っても――本人はまだ知らないが茉莉香に至っても。 ちょっと歯車がズレただけで、噛み合わないでは済まない程の結果が待っている。 それこそ歯車そのものが壊れてしまったみたいに……。 「子供の時はそんなことなかったのになー……、凛、美咲、あかり、光太郎、忍、亮、心平、金田一、陸」 ふとカブスカウトのメンバーの名前が漏れてくる。 凛とは姉妹になったが他の人物とはあれ以降会っていない……。 「金田一君……、やっぱり知っているんだね……」 「え?」 「え?」 綾花にとって金田一とは雪影村に短い期間の滞在ながら幼馴染全員に好かれ未だ仲間だと思われている古い親友。 茉莉香にとって金田一とはカブスカウトのメンバーで協力しあった親友。 星にとって金田一とはオセロをやろうと誘ってきてくれた人懐っこい人だ。 全員に金田一という男はいい奴というのが根付いている。 「綾花、その春菜って子のことなんだけどさ……」 どう説明しようか。 いや、回りくどい言い方は伝わらないだろう。 ストレートにこの感想を伝えよう。 「インケーン」 「え?」 「もう、あんたも星くんもインケンなのよ!好きな人がいたら好きってずばっと言いなさいよ!それだけで絶対変われたはずよ!たとえ断られたとしてもそんな結果になっちゃった現実よりは少し変われて幼馴染同士偽りなく笑いあえた仲になれたかもしれないのに……」 なれたかもだ。 不安定なパラレルだ。 もしもの数だけ違った世界に成り得たかもしれないのだ。 もし、安易な嘘を伝えなかったら? もし、スズメバチを水筒に入れるのを思い留まったら? もし、自分が我慢して親友の志望校を祝福できたら? もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし、もし……。 「でも起こってしまったことは受け入れて罪を償わなくちゃいけないわよ!消せる罪なんてないけど、隠すぐらいなら、ごまかすくらいならあたしはそれでいいかな?ってそう思う」 茉莉香はまた、良い事を言った気分になっていた。 さっきは全然響いていなかった星も、わずかばかり心に響いて虚無が少し埋まった感じがした。 「綾花、あんたはその島津くんって人にも謝りなさい。それがスタート地点じゃないかってあたしはそう思う」 「島津君に謝る……」 綾花は冬美と共に隠そうと保身をしていた。 それを自ら告げろと茉莉香は言うのだ。 でも、なんとなく隠し続けて罪悪感で押しつぶされるずっとずっとマシになる様な気がした。 それがたとえ彼に嫌われ、絶交になったとしても……。 「うん」 綾花は大きく頷いた。 よし、このまま行動しようと茉莉香が仕切ろうとした時だ、星が窓に近付き、開ける。 そしてゴソゴソとなにかよくわからない行動に出た。 もともと掴みにくい人物だなと印象を持っていた茉莉香の中でますますそれに拍車に掛かった。 「星くん?なにしてるの?」 綾花の質問にきょろきょろ仕出して何故か焦りながら言葉を紡ぐ。 「杞憂だったらそれでいいんだ」 「ん?」 そして突然大きな声で星は問いかける口ぶりで叫びだした。 「な、何者だ!?」 彼女らは会話をしていて気付いていなかったが、蚊帳の外に置かれた星は異変がないか辺りを見渡していて異音がしたのだ。 しかも人為的な音だ。 それを察知した星はとにかく保険を売っておいた。 茉莉香や綾花の様に物分りのいい人物ばかりが揃うとはとうてい思えない。 しかもわざと音をたてている様な不自然に荒らしているかの音……。 やがて星のその声に釣られる様に1人の茉莉香たちよりも大きく年をくった女性が姿を現す。 「あら?龍之介はいないのかしら?」 文だけでは異常もなく人を訪ねる言葉である。 だが、雰囲気は目が血走り右手には大きな斧を握りしめている。 ◆ 巽紫乃は育てた息子ではなく、産んだ息子を選んだ女だ。 どんなにその息子に虐げられようと、実の息子が1番可愛いのだ。 リゾートの会員権とかそんなものどうでもいい。 巽龍之介が巽家の跡取りになることだけが夢なのだ。 そして、自分が巻き込まれたのなら息子の龍之介が巻き込まれた可能性も0ではない。 でも、0ではないというだけで危惧してはならないのだ。 どう足掻いても息子だけは生かさないといけない。 このバトルロワイアルにまだ巻き込まれたかすらわからないのに彼女は龍之介以外の皆殺しを目的に島を探索していた。 そしてようやくそのターゲットが一気に3人も発見したのだ。 1人男がいるが、まだ全員年端もいかない者たちだ。 くぐった修羅場は段違いだと自負していた。 だから彼女は3対1でも不利とは全く考えていなかった。 だが慢心もしていない、とてもやっかいな思考回路をしていた。 ◆ 「な、なによあのおばさん!」 茉莉香はすぐに逃走しようとするが出入り口が紫乃に塞がれている。 窓から逃げられなくはないが背中を見せるのはとても危険だ。 というか場所も悪くここは2階、飛び降りて死にはしないだろうが、怪我をするかもしれない。 だがその怪我が致命的に機動性を失うのは確実だ。 何かをなして成功させるには可能性を限りなく100に近づけなければ辞めておいた方がいいだろう。 「こ、この!」 茉莉香は拳銃を向ける。 だが手が震えて標準が定まらない。 当然だ、見おう見まねだしこんなものを使うことになる人生も歩んでいないのだから。 綾花は恐怖で足が竦んでいるし、星の武器はなんかニッチなハンガーでろくに対応が出来ない。 星が全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束なんて言い出した時きちんと使い方を考えておくべきだった、完全に他人事だったとここでも新しい後悔が生まれる。 「チックショー!このインケンを通り越したイジョーシャー!」 もう自分が何言ったのかもわからないまま引き金を弾く。 しかし紫乃は避けるでもなくただ軌道を外しただけであった。 「威勢がいいのは口だけかしら」 斧を見せびらかす様に1歩1歩3人に近寄る。 「う、うおおおお!!!」 唯一の男の星が紫乃に体当たりをする。 ドンと当たり少し怯んだがそんなに体育会系でもない星の攻撃は有効打とは程遠かった。 そのまま紫乃が星の肩を掴み床に叩き付けられ情けなく倒れこむ。 「あら?最初は龍之介よりも若い男の子からかしら」 斧の刃の向きが星に重なる。 振り落とされれば大きなダメージがあるのは想像に難しくない。 (まだ、海峰に謝っていないんだ!こんなところで死ねない!勝負に口を出した者は殺されてその生首を血溜まりに置かれる……、まんまこのババアじゃないか!) 自分は殺されても文句は言えないが、こんな狂ったババアに殺されるものだったら文句を言ってやる、てか文句しかない。 こんなこと、星には言う資格はないかもしれないが資格とか関係なく絶対嫌だ。 「なにしてやがんだ!」 威勢の良い男の声と同時にまたこの部屋に素早く入り込む人物の影が現われた。 (だ、誰だろう?) 助かったのか?、星の体に斧が喰いこまれる展開がまだ訪れないらしい。 「おりゃあああ!」 「きゃあ」 と、その影が星の体当たりよりも勢いのある突進で紫乃を直撃させるかの如く襲った。 「なんなんだこの危ない女は!?」 「し、島津君!?」 「お、お前綾花か?」 銃声が聞こえて隠れて近寄ってみたらとんでもない出来事が起こっていたのを見過ごせずそのまま飛び込んできたのは島津匠であった。 雪影村の綾花の幼馴染であり、真っ先に謝らなければならない相手だ。 「ここは俺に任せろ!みんなを連れて逃げろ!」 だが、島津は知らない。 綾花と冬美が恋人の春菜の死の原因を作ってしまったことに……。 もし、知っていれば綾花の方を見殺しにしていたかもしれないのに。 彼も彼でまた春菜が亡くなったばかりであり自暴自棄気味になっていたのであった。 もし、生への執念があればもっと慎重にかつ冷静に島津という男は動けたはずだったのだ。 謝るとは言ったがこんなすぐに再会するとは思ってもいなかったし、まだ心が割り切れてもいない綾花は返事も返せずただ気まずそうに目を逸らす。 それを素早く察知した茉莉香は島津の言葉にフォローをする。 「で、でもここは2階よ!?」 「ちっ、そうだった。なら食い止めるしかないのか……」 島津が紫乃に向く。 紫乃は一撃を喰らわせた島津が1番のやっかい者だと判断した。 (こういう男は可愛い龍之介の1番の害になるのよッ!!) その優しさはあの征丸の姿と重なる。 豹変したあの顔はダメだ。 そんな顔、あの女を思わせる顔。 見るな見るな見るな……。 斧を握る拳がギリリと強くなる。 そこでまた置いてきぼりをくらった感じで床に転がっていた星はユラユラと立ち上がる。 「星くん!?大丈夫!?」 茉莉香は心配して星に声を掛けるが彼は返事をしなかった。 何故かというとそのまま何事も無かった様に、でも申し訳なさそうに茉莉香たちに背を向けて、紫乃の後ろを走って通り抜け部屋から逃走を始めたのだ。 ぽかんと茉莉香、綾花、助けに入った島津は開いた口が塞がらなかった。 「ほ……」 なんだこれは。 まるでいま心配した自分が馬鹿ではないか!? 確かに綾花と出会わなければ自然消失して別れていたかもしれない仲だったがだからと言ってこんな命の掛かった瞬間に女を見捨てて一目散に逃げる男だったのか。 お前もうその海峰って奴からまたぶん殴られてこいよ(流石に殺されるのは寝覚めが悪い)。 「星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!」 こんなのが自分の断末魔になるのか。 (ちょっと星くんを頼っているみたいで癪に触る……) 女の子らしく悲鳴を挙げた方がいいか? なんだその気持ち悪いあたしに似合わないキャラは? 「ふふふ、命が惜しいわよね。1人くらいなら見逃してあげるわ」 紫乃は、あんなもやしみたいなヘタレ男は龍之介にとって全く害にならないと判断した。 むしろ龍之介ならば簡単に返り討ちにしてみせるだろうと。 「じゃあ、あなたから!」 島津に斧を振り回すが動体視力でどうにか躱す。 スポーツマンの島津だが斧なんていう殺意の塊を振り回されるのは初めてでどこまでそれが持つのか。 どちらが音を上げるのが先か、指摘するまでもない。 そして、音が上がる。 いや、叫び声の方だ。 先ほど星が保険にと開けていたドアから、普段のおどおどしたキャラを捨てて勇気を出して、頼りになるぞとアピールをしている声であった。 「俺はここにいるよ!!!!」 ◆ 星桂馬は紫乃の気配を察知した時保険を掛けていた。 どう役にたつのかよくわからない全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束を窓から乗り出しずっと引っ張り伸ばし続けた。 たかが建物の2階だ、200mもあるはずもなくちょっと伸ばしただけで地面に辿り着く。 余ってまだハンガーの原型が残っている部分を窓枠に引っ掛けた。 星特製ロープ替わりのハンガーだ。 だが金属でツルツルしてロープの様にすんなりと降りられないだろう。 あるだけまだマシ、本当にしょうもない使い道であった。 そしてどさくさに紛れて走った星はすぐ外へ出て、そのハンガーが飛び出している場所へ辿り着く。 「はあはあ……」 もう既に息が上がっていたがこのままでは全員あのおばさんに殺されてしまう。 だがこんなところで休憩なんてしていられない。 自分が海峰に頭を下げる様にみんなで頭を下げる、そんな傷の舐め合いの様な関係だが同じ境遇の人間を肌で感じると意外と情が移るものらしい。 「俺はここにいるよ!!!!」 自分はまだ逃げていないよと存在をアピールした。 さっき茉莉香の散々と罵倒した声は夜桜亭中に響いていたが、わざと聞こえていなかった風だけ装っていよう。 綾花が窓から顔を出す。 中がどんな状況であるかだけ、下からは確認出来ない。 「これをロープ変わりに降りてきて蓮沼さん」 「ってこんなの無理だよ……」 ――至極もっともだった。 「うん、無理ねこんなの……」 後から続いて茉莉香もハンガーを見て呟いた。 なんて無茶を要求するのだこの男は。 「もし無理だったとしても俺がキャッチするから」 お前も無理だろう、と茉莉香と綾花のこころがリンクした。 「まずいきなり自分は階段使って逃げ出した癖にあたしたちにこれをやれってそれっておかしくない?」 折角頑張ったのに女子に総スカンを喰らいちょっと見捨てようかなと思い始めてきた星。 それを叱る声が部屋の男から星の耳に届く。 「ごちゃごちゃ言ってねーで下に行け!」 「は、はい」 2人素直に窓に乗り出し茉莉香が先にハンガーに手を付けた。 「くっ……、星桂馬のアホォォォォォォ」 とりあえず男を見せた茉莉香。 「島津くんも早く」 「無理だ!」 綾花の言葉に諦めた声を挙げた。 紫乃の攻撃を1人で防いでいる状態だ。 背中を見せた途端綾花もハンガーを使っている茉莉香も突き落とされて怪我、最悪死亡が予想される。 「それに、わかるだろ?」 首で右腕を指し、綾花は瞬間悟ってしまった。 そうだ、彼はもう野球をしていないのはもう肩より上に上げられないからだ。 そんな人がハンガーを使って下に降りられるかどうかと言われたら……。 ◆ 「早く喰らいなさいよ」 何回もう避けただろうか。 何回もう斧が振られただろうか。 お互い限界が近い。 生き残れるかどうかは執念の差といっていい。 「島津くん、あたしと冬美はあなたに謝らなくてはいけないの……」 え?と疑問が浮かんだ顔になるがその表情が変わったのを目撃したのは向き合って対峙している紫乃のみであった。 「ごめんなさい……、春菜の自殺はあたしたちの嘘が原因だったの……。お腹に赤ちゃんが出来たんじゃないかってあたしは思っているんだけど」 赤ちゃん……? それは自分の子ってことなのか? でも何故それで自殺なんか……? そこから綾花1人で2人ぶんの自白がなされた。 信じていた幼馴染からの、それこそ世界が逆転するかの様な告白。 目の前の女のことよりも優先して殺してやりたいくらいの殺意が湧き上がる。 「そっか……」 でもそんなことして何になる? 泣きながら謝っているし、それこそ自分に対しても死なないでって涙を流している親友だ。 今更綾花と冬美を殺してどうなる? それこそ普通の奴なら一生墓まで持っていこうとする秘密であるだろう。 それがもし偶然俺がそのことを村で知ってしまったとしたら俺はその殺意に身を任せていたかもしれない。 だが、それがこの目の前のおばさんと同じ顔になる俺って想像すると、すっげー醜いなって客観的に思う。 「俺はお前と冬美を絶対に許さねえ!許せるもんかよそんなこと!」 悔しさで涙が溢れてくる。 それをチャンスだとまた紫乃は襲うがそれもまた寸でカットする。 「こ……こっちは終わったわよ……!」 よほどびびったのか疲れたのか安堵の声と混ざった茉莉香の声でおそらく手を振っているのだろうなとなんとなく目に浮かぶ。 「これさ、もし冬美と会ったら一緒に伝えて欲しいんだけどさ……」 そろそろ体が限界だと訴えてくる島津の体。 でも最後に許せないこの女たちに伝えなくちゃいけないんだ……。 「許す……、努力だけはしてみようと思う。大好きだった野球と同じでずっとずっと努力してみるよ……」 憎い人を殺す、それだけしか問題の解決方法がないわけではないのが人間だから。 許す、許さない、それだけで成り立っているわけじゃないのが人間だから。 事件が解決したわけではないが、それでも区切りを付けられるのが人間だから。 (春菜……、俺もお前のところへ……) 本来の正史のルートからほんの少し歯車の外れたルート。 これもまた1つの事件の終着点であったのだ……。 &color(red){【島津匠@雪影村殺人事件 死亡】} 「ふぅ……、疲れたわ……」 結局1人しか始末出来なかった。 なんか自分には無かった甘酸っぱい青春って感じがしてものすごく胸クソの悪いものであったけど。 もう何回振ったかもわからない斧を床に置いた。 遺言を言った途端いままでの苦労はなんだったの?ってくらいあっけなく頭に攻撃をもらって瀕死になりとどめを刺した。 顔面に振り下ろした時に手でガードすればまだもう少し持ちこたえたかもしれないのにそれをしなかったのを見ると手が上がらなかったか、単に生きるのを諦めたのかそんなのはわからない。 どうでもいい。 二兎追う者は一兎も得ず、いやこの場合四兎追う者は一兎も得ずか。 そうならない様にいちばん強そうな男から確実に消す方向へシフトしていた。 「デイパックの回収したし……」 まずは休憩をしよう……。 死体のある部屋では誰かに見られる場合もある。 この洋館のどこか隠れられる場所を確保して体力と腕を回復させよう。 「龍之介……待っててね……」 海より深く、山より高い母の愛は自分が悪いことをやっているという認識もないまま目を血走らせているのであった……。 【一日目/黎明/夜桜亭(吸血桜殺人事件)】 【巽紫乃@飛騨からくり屋敷殺人事件】 [状態]疲労(大)、腕の疲れ [装備]雪夜叉の斧@雪夜叉伝説殺人事件 [所持品]基本支給品一式、島津のランダム支給品1~2 [思考・行動] 基本:龍之介を生還させる(龍之介が参加しているとは言っていない)。 0:龍之介の害になる人物、というか参加者全員の始末。 1:隠れて疲労を癒せる場所を探す。 [備考] ※参戦時期は、仙田猿彦始末後。 ※本人も龍之介が参加していない可能性も考慮してのスタンスです。 ※基本話は噛み合いません。 ◆ 「島津くん……」 冬美のぶんも含めた島津の想いを受け取った綾花は泣く泣くハンガーに飛びついた。 あとちょっとってなった時、手を放してしまったのだが茉莉香の必至な助けで怪我なく降りられた。 その後星はごめんと2人に謝っていた。 もはや完全に尻に敷かれる星なのであった。 「大丈夫よ、あの島津くんっていの一番に逃げ出した星くんと違ってすっごく強かったしあんなおばさんをやっつけちゃってるよ!」 綾花を元気付けさせる為にそう言って肩をバンバンと叩く。 だがあの少し後ものすごく嫌な音が部屋から聞こえたのだがそんなの違うと全員で否定した。 「いつまでもネチネチって月江さんもやっぱりインケンじゃ……、いえなんでもないです。俺には言う資格ないよ」 卑屈に笑いながらワイヤーを回収する星。 とりあえずあのおばさんが追ってくるのも考慮して夜桜亭の敷地内から脱出をする為足を進める。 「とりあえずさ……、しばらくあたしたちで固まって行動して探し人を探さない?」 「そうだね、やっぱりさっきみたいな問答無用で襲ってくる人もいるみたいだし……」 茉莉香の昔水筒にスズメバチを入れてしまった相手、神小路陸。 親友の開桜学院の入学辞退の書類を勝手に出して母親を自殺までさせてしまった相手、海峰学。 まだ生きていると信じているけれど、――島津から受けとったメッセージを伝える為に一緒に罪を犯してしまった相手、社冬美。 この3人に邂逅する為、走り出す。 ◆ 3人の決意を見守る『夜桜』が花びらを散らす。 それは彼らの先の未来を闇だと告げているのか、逆に光と告げているのか。 まだ、それはわからない。 ――どうしたら最後まで頑張れるの? ――その答えを探して辿り着く為。 ――あなたの心の鍵を探し求める。 ――誰のこころにも秘められた想いがある。 ――真っ白なスタートライン。 そして、ここから始まってく――AMAZING STORY―― 【一日目/黎明/夜桜亭周辺(吸血桜殺人事件)】 【月江茉莉香@狐火流し殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]明智警視が高遠に撃った銃@獄門塾殺人事件 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:星くんと綾花と行動する。 1:カブスカウトのメンバーや両親などがいたら、優先的に合流する。 2:陸に会ったら謝りたい(素直に謝るとは言ってない)。 3:海峰と冬美の探索。 4:あのインケーンを通り越したおばさんとは関わらない。 5:何?このインケーンなパーティーは!? [備考] ※参戦時期は、陸に再会する前。 ※本人に悪気は全くないのにちょっとアレです。 ※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。 ※蓮沼綾花と社冬美の罪を知りました。 ※多分このパーティーのリーダーです。 ※というか本人がリーダーだと自負しています。 【星桂馬@血溜之間殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]全長200mの形状記憶合金製ワイヤーで作られたハンガーの束@香港九龍財宝 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:月江さんと蓮沼さんと行動しながら海峰を探す。 1:海峰に謝る。 2:俺は殺されても文句言えない(文句を言わないとは言ってない)。 3:もうインケンでいいよ……。 4:あのおばさんとか含めて全く俺の罪に関係ない人に殺されそうになったらさすがに文句は言う。 [備考] ※参戦時期は、海峰に拘束されて母親の死を聞かされてから、殺害されるまでの間。 ※本人に悪気は全くないものの、切羽詰まると保身に走りがちです(後で反省はします)。 ※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。 ※綾花と冬美の罪を知りました。 ※茉莉香から尻に敷かれつつあります。 ※本人は意図していないですが何故か空気になりがちです。 ※茉莉香が叫んだ『星桂馬のインケーン!ヘタレ!オタクー!ネクラー!インケーン!インケーン!』という言葉は聞こえなかったことにしました。 【蓮沼綾花@雪影村殺人事件】 [状態]疲労(小) [装備]なし [所持品]基本支給品一式、ランダム支給品1~2 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 0:茉莉香ちゃんと星くんと行動する。 1:冬美に会って島津くんの言葉を伝える。 2:島津くん……。 [備考] ※参戦時期は、春菜自殺後。 ※茉莉香が神小路陸の水筒にスズメバチを入れた事を知りました。 ※海峰学が星くんを殺そうとしていた事を知りました。 ※たまに素で訛りが入ります。 ※冬美の呼び方が呼び捨てになったり、ちゃん付けになったりします。 |024:[[Boo Bee MAGIC]]|時系列|012:[[安い誤解]]| |010:[[首刈られ女子with壁]]|投下順|012:[[安い誤解]]| |001:[[月と星]]|月江茉莉香|| |001:[[月と星]]|星桂馬|| |&color(cyan){GAME START}|蓮沼綾花|| |&color(cyan){GAME START}|巽紫乃|| |&color(cyan){GAME START}|島津匠|&color(red){GAME OVER}|

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