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. 「私は赤沼三郎だ」  赤沼三郎、参加者X。  彼の正体が津雲先生と水沢利緒にも気になってくる頃合いだった。  それは頑なに覆面を被り、「私は赤沼三郎だ」と言い張る赤沼の事が、いい加減に無礼に感じたのである。 「私は赤沼三郎だ」 「そろそろ覆面を取ったらどうなんです? 失礼じゃないですか」 「私は赤沼三郎だ」 「いい加減にしてください! いつもいつもそればっかりで……!」 「私は赤沼三郎だ」 「ずっとそんな事を言い続けるのなら、こちらにも考えがありますよ!」  津雲は、怒りに震えて赤沼の覆面に手をかけた。  強引にその覆面を剥いで、赤沼の姿を見つけようとしたのである。  そんな手段を使ってまで、赤沼の正体を気にかけた津雲の気持ちはわからなくはない。  殺し合いの最中、ひたすら無口に隣にいた赤沼が、その態度に加えて覆面を被り続けたのである。  その瞳が一体何を映しているのか、津雲には気になって仕方がなかったのだろう。 「私は赤沼三郎だ」  しかし、そうして津雲が覆面を剥いでも、その下にあるのは赤沼の黒い覆面があった。  覆面の下に覆面を被っていたのだ。  目の前の相手が狂人だと認識して、津雲は恐怖した。  だが、それで津雲は諦めなかった。 「こんなもの……!」  更にその覆面を剥ごうとする。 ***「私は赤沼三郎だ」  その下には覆面があった。 「こんなもの……!!」  更にその覆面を剥ごうとする。 **「私は赤沼三郎だ」  その下には覆面があった。 「こんなもの……!!!!」  更にその覆面を剥ごうとする。  そんな事をずっと繰り返してきた。  そして、ある覆面を剥がした時、赤沼三郎はそこにはいなかった。  覆面が覆面を多重に被って人のふりをして動いていたかのように、赤沼三郎に正体はなかった。  覆面の下の覆面、それをひたすらに剥ぎ続けると、そこにはもう、何もなかった。  何もない。  しいて言うのなら、それが赤沼の正体だったのだ。 「ハハハハハッ、赤沼三郎なんていうものはなかったんだ! 赤沼三郎なんていうものはなかったんだ!」  津雲は高笑いをしながら、自らを囲う鏡を見た。  すると、そこには赤沼三郎があった。  思わず、津雲はその鏡に触れたが、その鏡の中の赤沼は津雲と同じように津雲に触れていた。  はっとして、津雲は己の顔に触れた。  そこには、柔らかい布の感触があった。 「私が赤沼三郎だったのか……?」  気づいた。  そう、津雲こそが赤沼だったのだ。  赤沼の正体が何もなかったのではなく、津雲が赤沼だった。  だから、何もないように見えたのだった。 「私は、赤沼三郎だ」  赤沼三郎……。  思わずそんな声が出た。 「違う、違うんだ……私は津雲成人だ……」  津雲は、思わず、自らの被っている覆面を剥いでいた。  ひたすら、ひたすらに剥いでいた。  覆面の下には覆面があった。  その覆面も剥ぎ続けた。  そして、最後の一枚に手をかけた。 「これで……津雲成人に戻れる……」  そう思って、津雲は自分の手で最後の覆面を剥いだ。  そこには、もう、何もなかった。  そんな一人芝居を、彼らはただただ見守っていた。 &color(red){【赤沼三郎@飛騨からくり屋敷殺人事件 死亡】} &color(red){【津雲成人@不動高校学園祭殺人事件 死亡】} &color(red){【残り36人】} 【一日目/午前/鏡迷宮@鏡迷宮の殺人】 【水沢利緒@魔犬の森の殺人】 [状態]健康 [装備]なし [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:殺し合いから脱出する。 [備考] ※参戦時期は、死亡後。 【狩谷純@金田一少年の決死行】 [状態]全身の成長痛、大声が出ない。思考は比較的冷静 [装備]ランダム支給品0~2 [所持品]基本支給品一式 [思考・行動] 基本:生き残り脱出したい。 [備考] ※参戦時期は事件後 |041:[[Sick or Victory]]|時系列|044:[[怪物、吠える(前編)>総集編(午前)#1]]| |041:[[Sick or Victory]]|投下順|043:[[裁き、戒と]]| |030:[[参加者X]]|赤沼三郎|&color(red){GAME OVER}| |030:[[参加者X]]|津雲成人|&color(red){GAME OVER}| |027:[[理由など無くても死ぬときには死ぬ]]|水沢RIO|| |022:[[鏡よ鏡]]|狩谷JUN||

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