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霧と雲が混ざりあって……




(金田一くんに関わった相手、か……)

なつかしい名前が全く知らない人から出されるというのはちょっと気味が悪いとあたしは思った。
あれから彼はどんなことをしてどんな恋愛を経験してどんな人生を歩んでいるのか、全然知らない。
でもニュアンスからするとその金田一くんと他の明智とか高遠って人に恨みを持っている者の仕業なのかな、なんてあたしは考えてしまった。
そう思うと恨みを買う様な人生を歩んでいる金田一くんを考えると悲しいし、かと言ってあんな意味不明な話を信じて親友の金田一くんを疑っているあたしというのも悲しい。
疑うという行為そのものを覚えてしまった自分が嫌いになる。

(恨みか……)

あたしに恨みを持っている人、1人思い浮かべる。
あたしと義理の姉の月江茉莉香と乾光太郎で子供ながらの無知さで犯してしまったシャレにならないイタズラをしてしまった相手神小路陸。
あれからあたしも茉莉香も陸には会っていないし(光太郎はどうなんだろう?)、彼が開けた水筒の中身がどうなったのかわからない。
ただ蜂が水筒の中で死んでいたなら、と6年前のことについていまでも祈る時がある。
もし生きていたとしても驚いたぐらいで済めばいいのだけど……、と都合の良い保身を考える。
でも、それはそれだ。

(きちんと謝らないといけないよねっ!)

もう年賀状での付き合いしか彼とは残っていないし、返事もあるということは陸が蜂に刺されて大事になったという可能性は低いだろう。
でもきちんと謝るというのはカブスカウトの話題が挙がると絶対に茉莉香と行き着くゴールになっていた。
こんな機会で、なんてのも奇妙な話だがこの際陸と会ったらきちんと謝ろうとデイパックを握って歩きだす。
親友だからなのか、茉莉香と最初に考えていたことは霧谷凛も同じであった。
それくらい2人の姉妹には深く根付いた問題であり、後悔のしていることであった。
いつか、その後悔も果たせればいいのだが、我々の知る2人の運命は――(もう1人いるが)。



雲沢夏樹は溺れそうになっていた。
どういうわけかコテージが沈み、助けを求めても誰も現れない。
冷たい水に体が浸食されながらこのまま死んでしまうんだと諦めたくなかったが諦めざるを得なくなっていた。

(――ッ!!)

これは自分が椿原先輩の命令でやらされた(やっていた)クラスメイトへのイジメの天罰だったのか。
そんな懺悔の時間も許されたのか許されなかったのか。

だが、それが悪い夢であったとでもいう様に一瞬にして周りは体育館に。
塗れていた服も体も乾いた状態であった。
だがこちらで始まったのはバトルロワイアル。
悪い夢のベクトルが変わっただけであった……。




(な、なにがどうなってんの……?)

雲沢が目を覚ますと死への恐怖が全身に広がっていく。
どうあがいても自分はもうここで終わりなのではないか、死ぬしかないのではないのか。
ゲーム自体を半信半疑な状態で把握している参加者が多い中、彼女にはその余裕すらなかったのだ。
誰が自分を殺そうとしたのかもわからない悪意、事故とするにはありえない程コテージの床への浸食(というか真下が何故か池だった)。
みんなあたしを殺そうとする悪意なのではないかと押しつぶされそうだ。

ゴソゴソ。

誰かが近付く足音に過剰に驚く雲沢。
いつもならイケメンが来るかなステキ、なんて考えているかもしれないがそこまで頭が空っぽではなかった。
腰が抜けてうまく立てない、逃げることすら出来なくて襲撃者への接近を許してしまう。
もうダメだ、思いっきり目を瞑る。

「だ、大丈夫ですか……?」

優しそうな女性の声で話を掛けられる。
『諦めていた生』を『諦める』ように生への執着を大きくさせながら目を開いていく。

手を指しのばしていたのは少しばかり虚ろな瞳で黒髪を肩にまでは届かない長さをしていて年齢も近そうな女性が1人立っていた。

「怪我でもしましたか?」

彼女はまるで友達や小さい子供に声を掛ける様な優しい慌てた声で雲沢に語り掛ける。
雲沢はとりあえず大丈夫だと首を振ってそれを伝える。

「そうですか、良かったです」

自分のことを喜ぶみたいに彼女は微笑んだ。



お互い自己紹介をした。
どちらとも同じくらいの髪の長さをしていて黒い髪の方が霧谷凛、茶髪の方が雲沢夏樹と名乗った。
年は1つだけ雲沢の方が上だった(年齢が知りたい?女の子なのにデリケートな話はやめましょう。本編を読みましょう。凛の年齢は明かされていませんが個人でジッチャンの名にかけて推理しましょう)。

「あたしも何も把握できてないんですけどね……」

目覚めてからどうしたのか、凛も途方もない広さの島を歩いて人を探していたら雲沢を見つけたというだけであった。
陸を探していたのだが探し人じゃなかったというだけでスルーするのは彼女には出来なかった。
この島に来ているかはわからないが姉の茉莉香なんかはむしろどんどん首を突っ込んでいきそうだなとちょっと心配になる。

(すぐに毒舌吐いて殺されないといいけど……)

空気を読まないでガンガンに陸を責めた過去を思い出して苦笑した。
だが、再会したいなと親友の顔を思い浮かべる。

「よくこんな殺されるかもしれない場所で見知らぬ人に声を掛けて手も伸ばせるんですね」

雲沢が自分には出来なかったことを彼女に問う。
「霧谷さんが怯えていたのを発見しても自分なら見捨てちゃったかもしれないよ?」とちょっと神妙そうな声であった。
凛がそれを聞かれて思い浮かべたのはスズメバチに囲まれて動けなくなった自分を心配する仲間と手を伸ばす桃瀬心平の右手。
そんな体験をしただけに自分も放って置くことが出来なかった。

(なんでその恐怖したスズメバチを水筒に入れたんだろうな……、馬鹿だ本当……)

心が苦しくなり愚痴を零す感じで雲沢に自分の体験を話した。
スズメバチを入れてしまったことは口には出せなかったのだが、言えるわけがない。
ドン引きされるだろう。

「なんかチョーステキな話ですね。その手伸ばした人イケメンでした?」
「さあ、あたしと雲沢さんのイケメンの基準が違うと思うのでそこまではちょっと……」

いまどきな子の反応だった。
因みに雲沢の方が年上です。



「雲沢さん、どうしましょうねこの後?」
「どうしようねー?」

落ち着いた雲沢と一緒にただぼんやりと暗い空を見上げていた。
こんな空だけ眺めていると殺し合いの場に巻き込まれたなんて説明が嘘で、目が覚めたあの瞬間から現実に目覚めた気がする。
雲沢が死にそうになったあの水中よりよっぽど凛と会話をしてぐだっているいまが平和であって――。

だが、平和は既に崩されていて――。
既に1人の女性を殺した殺人鬼ジェイソンが傍に居て――。




「あー、眠いよね……」

深夜から黎明に変わる頃。
普通の真人間ならとっくに寝ている時間帯だ。
あくびが1つ出て当然である。
このまま眠気に誘われていきそうになる。

「雲沢さんっ!!」

凛の大声に眠気が一気に消し飛び意識が覚醒する。
なにがあったか!?
状況を把握しようとした瞬間凛が雲沢に飛びつく。

「え?」

やっぱり霧谷さんもあたしを殺そうとするのか、そんな言葉が口から洩れそうになる。
が、口にする前に雲沢の体に凛の体が覆い重なり凛の大きな胸が雲沢の手に収まっていた。

(チョーデカッ!チョー柔らかい!!)

殺されそうになる瞬間にこころで口にしたのは凛の胸の感想だった。
いや、ちょっと女としてこれは後悔のある死に方じゃないか?
イケメン何人も釣れそうじゃね?

(でもなんか……クセになるような……)

ちょっと指を動かそうかな、なんて新しい道が――。

「起きてくださいっ、雲沢さん!!」

胸元から凛のくぐもった声がした。
一大事の気配がする。
いままで座っていた場所に視線を移すと見覚えのないバットが地面を叩いていた。

(な、なにこれっ!?チョーキケン!?)

驚いて声も出ない雲沢のセリフを遮る様に『ちっ……』と舌打ちをする男の声があった。
イケメン、かは知らないがジェイソンの仮面を被った怪しい男であった。

「くぅ……」

雲沢から立ち上がり庇う様に立つ凛。
彼女は雲沢を庇い背中に軽傷だがダメージを受けてしまった。

「何故、螢子が殺されてお前たちみたいな女が生きているんだ?」

その問いはあまりにも理不尽な問いであった。
自分の妹で恋人だった女は海で流されて息絶えたのに、他の女が生きているのはおかしい。
思考が遠野英治のものでなく殺人鬼ジェイソンの思考に毒されつつあった。
香取から真相を聞いた途端彼は混乱した。
SKのイニシャルだけに絞った生還者リスト、いやあいつらが悪いんだ。
俺がいままで向けてきた復讐心が実は違いましたと言われてそうですか、とは首を振れない。
そう決意した瞬間、遠野英治の理性は消えた。

怪しい奴ら全員殺してしまえと囁く鬼。
1人も2人も3人も4人も5人も6人も7人も8人も9人も10人も変わらない。
変わらない、変わらない、変わらない。

じゃあもう全員敵だ、そこには温和で優しい不動高校の元生徒会長の姿は無かった。

(俺は絶対に死なない――!!死ねない――!死という概念がないッ!!)

もし俺は爆発したとしても死なない自信がある。
記憶はどうなるかわからないが、大火傷で済む自信がある。
どんな奴らでさえ殺せるビジョンがありありと思い浮かべられる。
だが、自分の死というビジョンが彼には思い浮かばなかった。

――ジェイソンは何度でも蘇る。
1度でも2度でも3度でも4度でも5度でも6度でも7度でも8度でも9度でも10度でも……。




「ちょ、チョーやばくない……」
「チョーやばいですねこれは」

雲沢の現代風な言葉に凛も思わず釣られてしまう。
それくらいやばい、どれくらいやばいかと言うと比喩でもなんでもなくジェイソンがバットで襲ってくるくらい、くらいというか襲ってきている。
これぐらいちぐはぐなくらい2人の思考回路は壊れつつあった。

「逃げましょう」

一瞬で壊れた思考回路を繋ぎ合わせ凛が強引に雲沢を引っ張る。
足がもたついて雲沢が転びそうになるがもう1度凛が引っ張り直し体勢を元に戻す。

「ご、ごめんねぇ……」

雲沢は頭を下げながら謝るが既に凛には返事する余裕もなくただ冷たく足だけ動かす。
当然だ、あのバットで殴られない様にする為必至に逃げているのだから。
もう鬼ごっこは開始の宣告すらなくスタートしている。
その鬼は本物の殺人鬼、遊びでは済まされない命がけの鬼ごっこが……。



「はぁはぁはぁ……」

もう何分走り回ったのか、まだ5分かもしれないしもう1時間走り回ったのかもしれないが時間がわからない。
ジェイソンの方はまだまだ息が上がっていなく、相当タフだ。
性別の差があれどあまりにも体力が劣っているのを凛は痛感する。

「ど、どうすんの霧谷さん?」
「…………」

走りながらどうやって撒くのかシュミレーションしていく。
この雑木林で隠れながら隠れながらで動いても向こうは読めていると言わんばかりに先回りしているのを3回は繰り返しただろうか……。

「ちょ、ちょっとは返事をしてよ」

それこそ何分かわからないくらい雲沢の言葉に凛は反応すら示さない。
示さないのではなく示せない。
ようやく走り始めて凛は息が途切れ途切れになりながら口を開いた。

「し、支給品を、……確認しましょう」

木の影に隠れながらデイパックを開く凛。
中からは黒光りした非現実的な物が飛び出る。

「ぴ、ぴすとる?」
「いや、持ってみるとずっしりしていますね。引き金も固いし……」
「え、本物?ウッソー……、チョーありえない……」

姉妹ともども貴重な銃を手にするとはとてもついている2人である。
それを扱えるかどうかは別として……。

(こんな固い引き金を引く力なんか残っているかしら……?)

撃ったことないし、撃てる人生を送ったことのない普通の女子高生だ。
それに威嚇で怯む相手ではないし……。

「雲沢さんのは!?」

ちょっと冷たく聞こえてしまっただろうか?
でも気にしている程周りは見えていない凛。

「え、えっと……向日葵柄のマグカップにサッカーボールがありますよ」
「……」

どう見てもはずれです。
ありがとうございました。
困惑する凛。
彼女がどれだけ頭を振り絞っても、マグカップにサッカーボールの使いどころはわからない。
あまり考えたくない。
そこで凛は考えたのさ。だったら、考えなきゃいいってね。
って、いまはそんなことしたらあたしたちの人生終わってしまうんだと現実逃避から戻る。

(サッカーボールって見た目は子供、頭脳は大人の武器よね?時間帯30分早いよ……)

突っ込み待ちなのかもしれない。
でも知恵がなければどうにもならない。
3人寄れば文殊の知恵とは言うが1人足りない。
ジェイソンにどうしたらいいですかね?なんて聞けないし……。
グルグルグルグル……。
ミキサーに掛けられた様にさっき何を思ったのかすら原型がなくなっていった凛。

(ちょっと茉莉香……、こんな使い道のない支給品を配ったエンペラーって人になんか言ってやってよ……)

3人寄れば文殊の知恵の3人目をこの場にいない茉莉香に縋る様に呼びかける。
どうせ返事がないものだとわかっているので本当にどうしようか迷う。
もう命乞いでもなんでもしてしまおうかと悩んでいると奇跡が起きた。
本来ありえるはずのない奇跡であった。

(あ?凛?)

茉莉香の声が聞こえた気がした。
本当に聞こえているわけではなく当然雲沢には全く聞こえていない。
しかし、本当に凛には幻聴でもなんでもいいが茉莉香の声が聞こえたのだ。
こういうのをテレパシーというのかもしれない。
姉妹で親友だからこそ起こり得る奇跡、先ほど冬部を喚起させた火事場のバカ力とも言えるかもしれない。

(メンドーイ。ちょっといま上から下に降りるところで集中しないといけないから)

だが、無意味に奇跡は終わり、テレパシーは消えてしまった。
奇跡が起きたからといってなにかが劇的に変わるものではない。
世の中甘くないのを凛は知った。

(役に立たなかったけど茉莉香もこの島にいるんだね)

知り合いがいるのを知って安心する様な、ちょっと不安の様な……。

と、ちょっとポンコツになり始めたことを知らない雲沢から見たらあまりにも真剣に悩んでいる凛の顔がずっと映っていた。
もうチェックメイトだと諦め寸前なのかもしれない。
自分の運の悪さのせいで、雲沢は自分を責めることになる。



(あたしはもう終わりなんだ……)

これは沈んでいく自分の身体が見せている夢なのではないだろうか……?
そうこのままジェイソンに殺され目を覚ますとそこは水の中。
息が出来なく助けを呼べないまま冷たくなっていく地獄。
ずっと否定して否定して、否定してきたけど……。
やっぱりあたしの人生終わっているんだよね……。

「霧谷さん……」

もう終わりなんだ、そう伝えよう。
現実逃避の時間はとっくに終わっていたのだ。
ちょっと長いロスタイムでもがいていただけなんだよ……。

ああ、死にたくないよ……。
目が濡れてきてきちゃった……。
このまま全部が濡れていくんだよね……。

「ずっと足手まといにしかなっていないしあたしを捨てていいよ……、多分それが正解だから……」

足手まとい。
本当だ、口でぎゃあぎゃあ騒いでばっかり。
殺されそうになった時は庇われるし。
足はもつれるし。
支給品も外れだったし。
なにもかも劣ってるじゃん……。

「わかった」
「え?」

即答!?
即答したよこの人!?

「わかりました、投げ捨てましょう」

曇りなくすっきりした声ではっきりと。
とてもまぶしい笑顔で。
待ってましたと言わんばかりで。

「え?」

自分で言っちゃった手前もう取り消しなんて無理だけどさ……。
でも、でもさ……。
やっぱり生きたいよ……。
霧谷さんから見たらやっぱりあたしは赤の他人なんだよね……。
これが普通の反応だよね……。
そうか、死ぬんだあたし。


――そして、霧谷さんは投げ捨てたのだ。



「ん?」

追いかけていた2つの姿に動きがあった。
俺は先回りしていたのでようやくかと足を動かしていく。
だが、これまでとは違った動きがあった。
1つがこちらを囮にする様に接近してくる音。
もう1つがどこか遠くへ逃げる音。
分断したのだ。
どちらから生きて、どちらかが命を捨てて。

「ならそれに乗ってやろうか」

俺は囮となっている方の音目掛けて走り込む。
やがてぴたりと音が止まる。

「やはりそうだったが」

一方逃げている方はぐんぐん距離を離しているのがわかる。
どちらが囮であるのか考えてみる。

(あの黒髪の方が茶髪女を庇っていたな。つまり黒髪の方が囮か?)

予測を立て音が止まった位置に辿り着く。

「何だと!?」

ジェイソンが驚きの声を上げる。
それは何故か。
予想とは違う結末が待っていたからであった。



「ふー」

どうやらあの殺人鬼はあちらの方向へ向かっていったようだ。
ようやく一息付けると凛は溜息を1つ上げた。
生きた心地がしないなと生ぬるい夜風に吹かれながらそう思う。

「ど、どうして切り捨てなかったの?」

雲沢も遅れて凛の横に並ぶ。
結果的に言おう。
2人はジェイソンを撒いた。
ジェイソンはどちらも捕まえることが出来なかった。

凛が雲沢に支給されたサッカーボールを右手で持ち上げそのまま思いっきりジェイソンをおびき出せそうな位置へ投げ捨てた。
そのままバウンドして転がっていくボール。
それをジェイソンは追っていき、隙を付いて別の方向へ走り出す。
単純な作戦であった。
ジェイソンがどこに隠れているのかわからないので賭けではあったのだがいままで先回りされたデータを元に隠れ場所の目安を付けた。
ただ追いかけられたデータが役に立った。
この作戦を思いついたのは雲沢が『捨てて』と言っただけの偶然だったのだ。
じゃあボールを捨ててしまおうってね。

「酷いことをしたくなかったからかな……」

これが贖罪になるとは全然思っていない。
でも被害者の気持ちが考えられるだけの年は重ねたのだ。
泣いている人を見捨てることが出来なかった。

(どっかの姉に似ちゃったのかな……)

上から下に降りるとか何言ってるかわからなかったけどよくよく考えると茉莉香は思考するより感情で動く人だ。
また知らない人と友達になって説教なり助けている姿が思い浮かんだ。

「雲沢さん、あそこでちょっと休憩しましょう……」
「チョー疲れましたもんね……」

ラベンダーの香りに釣られたのか。
2人はラベンダー荘で休憩する為そこ目掛けて歩いていく。

(チョーイケメン……)

複雑な心境が1つ残り……。

【一日目/黎明/ラベンダー荘周辺(怪盗紳士の殺人)】


【霧谷凛@狐火流し殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]道化人形が安岡に発砲した銃@速水玲香誘拐殺人事件
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いから脱出する。
0:雲沢さんと行動。
1:茉莉香に合流する。
2:陸に会ったら素直に謝る。
3:ラベンダー荘で休む。
[備考]
※参戦時期は、茉莉香死亡より前。
※姉妹だからなのか親友だからなのかはわかりませんが何故か茉莉香のテレパシー的な何かを受信・発信できます(向こうからくるかは知りません)。
※凛の胸の感想:(チョーデカッ!チョー柔らかい!!)by雲沢夏樹


【雲沢夏樹@雪鬼伝説殺人事件】
[状態]疲労(中)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、向日葵柄のマグカップ@雪霊伝説殺人事件
[思考・行動]
基本:チョー死にたくない。
0:霧谷さんと行動。
1:ラベンダー荘で休む。
2:霧谷さんって(性格が)イケメン?
[備考]
※参戦時期は、死亡直前。
※チョー死にたくないです。
※チョーイケメンが好きです。



雑木林に残るボールとジェイソン。

(ちっ、下手な小細工しやがって!!)

だが、似た様なことをすれば作戦の幅が広がるのではないか?と失敗から作戦を学ぶ。
それこそ同じ様に逃走する時の囮にも使えるし、ボールを転がして俺の場所を誤認させて襲うという攻撃にも使える。
ボールを感情のままに潰さずにデイパックに仕舞う。
ちょっと走って疲労を感じるがまだ少々といったところだ。
まだ数日もあるんだ。
体力ばかり使っていられないよな。
ジェイソンの仮面を剥がし、ジェイソンモードを解除して遠野英治に戻る。

「やっぱり仮面が無い方が呼吸はしやすいな」

だが、仮面を被った瞬間闘士も上がるし、体力も上がるし、残虐性も増す。
復讐を果たす際には必ず必要となるペルソナだ。
遠野は辺りの探索を始めることとする。




「ん?」

探索を始めて数分。
かぎ慣れた様な、慣れない様ななにかのにおいに遠野が気付く。

「血、なのか……」

それに導かれる様に、吸い込まれる様に遠野はその先へと進んでいく。

「うっ……、なんて酷い!?」

ボウガンに刺されて息絶えた死体を発見する。
しかも自分の学校と同じ制服を着ている。

「お、尾上くん!?七瀬さんと同じクラスだったかな……。あれ?こないだ亡くなったんだっけか?」

元生徒会長の遠野だ。
ごく少数である真実を知らされた生徒であるのは当然だ。
だが尾上は七不思議の事件で亡くなったと先生に聞かされていた。
だが、ボウガンの矢が刺さっている、この場で亡くなったのだろう。

因みに本当の苗字は尾ノ上なのだが全然付き合いが無かったのでなんとなくでしか覚えていない遠野。
学年も違うので仕方ないのかもしれない。

「くっ、誰がこんな酷いことを……」

尾上の死に遠野が悲しみを覚えていると不思議な記憶がフラッシュバックされる。



「…………」

俺が眠っている。
いや、寝たふりをしているんだ。
あれ?何故俺はこの光景を知っているんだ?
だが、夢は続いていく。

「ふふふ、エーくんぐっすり寝てる」

膝枕された顔の鼻に温かい手で触られる感触が蘇る。
これは過去だ。
俺と螢子との2人の過去なんだ。

「可愛いなー」
「全部聞こえているぞ螢子……」
「あ、起きてたのエーくん?」

目を瞑りながら俺は会話をしていた。
もう2度と取り戻せない陽だまりだ。

「だからエーくんは辞めろって……」
「いいじゃん、2人っきりなんだしさ……」

邪魔する家族もいない俺と螢子だけの空間。

「それに螢子のが可愛いしさ」

目を開くと螢子が真っ赤な顔に染まっていた。



「あ?」

瞬間、俺は現実に戻っていた。
尾上の死体が横に転がった現実だ。

「どうしてあんな過去なんか……」

また夢が始まる。




「ごめんな螢子……、オリエンタル号に乗れなくなって……」
「まあ、仕方ないよねエーくんの家族は私を邪魔者に見ているみたいだし」

そんなことないよ、と口には出せなかった。
どうしようもない現実だったのだから。

「俺さ、将来自分で独立してさ会社作ってさ……お前と一緒に暮らしたいんだ」

プロポーズになるのかはわからない。
ただ、一世一代の告白であった。

「嬉しいよ、エーくん」

このまま俺はキスをしてしまえば良かったんだ。

「なんで私たち兄妹なんだろうね……」

泣き出した螢子を泣き止ませることができなくて……。




「螢子!!」

事故のニュースが通り過ぎていく。
だってあれには螢子が乗っていて……。
そうだ、生還したんだよなッ!!

でも、俺が見つけた姿は螢子の姿をしていた物になっていて……。
警察にも冷たくあしらわれて……。

最初で最後の口づけは――冷たい『死』の味がした。
俺はこの時――悪魔に魂を売り渡したんだ。
法律で裁けないのなら、……俺が裁いてやる。
俺から螢子を奪った奴を、必ずこの手で――!!


俺の決意で突如フラッシュバックが終わる。



「け、螢子なのか!?」

ようやく遠野は気付いた。
死体が物語っていたのだ、これをやったのは螢子だと。

「た、確かに微かだが螢子の気があるッ!!」

冷たい『死』がない。
温かい『生』がある。

「おおお!!兼春様が蘇ったんじゃ……」

と、謎の信仰の言葉が背中から聞こえた。
振り返るとばあさん『冬木ウメ』が1人、遠野の後ろで頭を下げていた。

「首狩り武者じゃよ……」
「?」
「武者様が甦って……恨みを晴らされようとしているのじゃ……」

なんか会話が噛み合っていなかったが年齢のせいもあるのだろう。
そういうことにしておいた。

「そこの若造は目が覚めた瞬間七瀬美雪の様な顔をした者に殺害されたのじゃ、わしが全て目撃しているぞ」
「な、何!?」
「若造も声を発することなく即死してのぅ……」

もうばあさんの声は聞こえない。
七瀬くんの様な……。
確かに七瀬くんの顔は……。
問い詰めねばならない。

「そ、その女の他の特徴は!?なんでもいいんだ!!」
「特徴……、手に傷を隠すような物が貼られておったのじゃ……」
「螢子!?そ、そんな!?まさかっ!!」

バンドエイドを撒いていた痛々しい手が記憶を抉る。
冷静さを欠いて愛しい名前を叫ぶ。
でも返事はない。

「この『災厄の皇帝(エンペラー)』様の正体は兼春様なんじゃああああああ」

もう既に遠野の姿は無かった。


【一日目/黎明/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


【冬木ウメ@飛騨からくり屋敷殺人事件】
[状態]錯乱気味
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式×2、ランダム支給品1~2
[思考・行動]
基本:柊兼春様の怒りを鎮める。
1:兼春様が甦ったんじゃああああ。
2:わ、わしの出番ない……。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも巽征丸死亡後。
※特に語られていませんが隠れていたので螢子に見つけられませんでした。
※尾ノ上殺害シーンを一部始終目撃しておりました。
※尾ノ上殺害は声を発する間もなくゲーム開始直後に起きたらしいです。



「螢子、どこに行ったんだ!!」

本当に別人だったのかもしれない。
でも俺はまだ立ち止まるわけにはいかないんだ。

「何度も何度もごめんな……」

愛用のホッケーマスクに謝罪をする。
俺にはまだまだこれが必要なんだと実感する。

「俺は確かめなくちゃいけないんだ」

手に収めたそれを顔に装着する。
瞬間世界の流れが遅くなり、自分の動きだけが早くなる。
この情熱。
この衝動は自分を壊して火が付きそうであった。

「う、うおおおおッ!!」

螢子の気を探ってみる。
だが、ゲーム開始より既に4時間弱過ぎている。
もう気が遠くなりすぎてわからなくなってしまった。
自分がもう自分じゃない。
でもそれでもいい。
自分は既にジェイソン(自分)になっているのだから。





――さあ、新しい物語を語ろう。
さて、どこから語っていこうか……。




【一日目/黎明/不動山市郊外の雑木林@異人館村殺人事件】


【遠野英治@悲恋湖伝説殺人事件】
[状態]健康、返り血、ジェイソンに変身(これをつけると罪悪感が消失する)、ジェイソンモード
[装備]ジェイソンマスク@悲恋湖伝説、果物ナイフ@狐火流し殺人事件、ド根性バット(ミラクルミステリーパワーステッキ最終形態)@美少女探偵金田一フミ3、光太郎が拾った(貰った?)サッカーボール@狐火流し殺人事件
[所持品]基本支給品一式×2、<乱歩>の洗剤+ブラシ@電脳山荘殺人事件、
[思考・行動]
基本:螢子は生きているかもしれない、だが三日待って九条をころす。
0:螢子を探す。優先して探す。
1:螢子は生きているかもしれない、だがSKはころす。オリエンタル号に関連する人間も螢子以外はころしたい。
2:螢子は生きているかもしれない、だが脱出する奴はころす(脱出→escape→エスケープ→SKプである為)。
3:螢子は生きているかもしれない、だが鷹守と若王子はころす。オリエンタル号と竜王丸の関係者全員ころす。
[備考]
※参戦時期は、小林を殺害した後。
※SKが嫌いです。オリエンタル号に載っていたSKは勿論、載ってないSKも嫌いです。
 とりあえず色々殺します。何かと難癖をつけて螢子以外はどんどん殺します。
※ジェイソンマスクを被っている間は、ジェイソンに変身。
 そうなると、何百人殺しても心を痛めないようです(TVアニメのファンブックより)。
※ジェイソンモードになると身体能力や回復能力、危険察知能力、その他もろもろがほんの少し上がります。




019:生きる術は理屈じゃなく身体で覚えたい 時系列 022:鏡よ鏡
020:すべてが終わる前に、明かりが帰る前に 投下順 022:鏡よ鏡
GAME START 霧谷凛 032:快楽という海に溺れて
GAME START 雲沢夏樹 032:快楽という海に溺れて
GAME START 冬木ウメ 031:斧寺空美の溜息
007:ココロ やせてとがってく 遠野英治 026:次は頭のおかしくない人を書く
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