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Boo Bee MAGIC




「はぁっ...はぁっ...」

肥満体系の男が、無我夢中に走っている。
彼の名はチャネラー桜庭。かつて、幻想魔術団に所属していたマジシャンの一人である。

彼はただひたすらに逃げていた。気分的には5kgぐらい痩せたんじゃないかと思うくらい必死だった。
逃げている。即ち、彼は追われているのだ。
彼は一応霊媒師の肩書きを持ってはいるが、そんなものはクソの役にも立たない。
彼の霊媒師という称号は、あくまでもサイコマジックの売り文句であり、本職ではないからだ。
そんな偽りの称号では歯が立たない相手とはなにか。
そう。それは本物の霊である。
彼は、今現在確かにそれに追われているのだ。

どれほど走っただろうか。
彼の行く先は、運が悪いことに昇り階段しかなく、迫りくるそれに歯向かう勇気もない彼は、それに従い階段を昇ってしまう。
これでは逃げ場がない。それは彼もわかっている。
だが、気が付けばこの逃走経路を選んでいた。
まるで、彼女に誘導されるように、この階段まで辿りついていたのだ。

やがて、桜庭は天井裏―――かつて、偉大なるマジシャンの命を奪った死骨ヶ原ホテルの劇場の―――に追い詰められる。

「お...オレじゃない!おれじゃないんです!」

桜庭は、詰め寄ってくる彼女に弁明するかのように涙目になりながら弁解する。
しかし、それでも彼女はじりじりと桜庭に詰め寄る。

「お、オレはあの時、左近寺さんが天井裏に行ったのを見ただけで...あんなことになると思わなかったんだ!」

桜庭は、詰め寄られるままに後ずさりしていき、ついに渡し板にまで足をつける。

「お、オレは関係ないんです...そ、そうだ!あの板に細工したのは全部左近寺さんで、他の人は誰もそれをしらな」

ガコン

板が外れ、桜庭は足を踏み外し落下する。

「うわああああああああ!!!」

かつての偉大なるマジシャンと全く同じ展開で桜庭は落下し―――その意識は途絶えた。



「なるほどね」

泡を吹いて気絶する桜庭を見下ろす稀代のマジシャン―――近宮玲子は理解した。
あの時踏み外してしまった板が、なぜあんなにもあっさりと外れたのか。その理由を。

(どうりであそこだけ踏んだ感触が変だと思ったわ。左近寺...まさか、私のみならず山神たちまで利用してあのトリックノートを手に入れようだなんてね)

この殺し合いに連れてこられる前に落下したあの時。
玲子は、あの板に対しては確かに違和感を抱いていたのだ。
だが、それでも反応は間に合わず落下。
本来ならば彼女はそれで転落死しているはずなのだが、なんの妙かこうして無事に生存している。
命を救ってくれた災厄の皇帝とやらには感謝すべきだろう。

お蔭で、真犯人がわかった上に、この手で復讐する機会を得たのだから。

「左近寺...私を殺した挙句にトリックノートを奪った罪、その命をもって償わせてあげるわ」

桜庭の話によれば、自分は既に死に、左近寺もあのトリックノートに仕掛けられた制裁を受けていた途中らしい。
なぜそのような齟齬が起きているか―――そんなことは後回しだ。
いま最優先すべきなのは、全ての元凶である左近寺は殺すこと。それも、マジシャンらしく芸術的にだ。
山神たちは、殺すつもりはなかったらしいので、私にした仕打ちを泣いてお詫びすれば考えてやらないこともない。
精神的にも肉体的にも二度とマジックに関われないほど痛めつけてやるのは確実だが。
チャネラー桜庭は、まあ、別にどうでもいい。
左近寺を止められなかった件に関してはまあ仕方ない。
実際、彼は左近寺たちとは違い、トリックノートのネタを使っていなかったようなので微罪としておく。
わざわざ、自分が落ちた時の再現までしたにも関わらず、落下しても助かるようマットを敷いておいたのもそのためだ。
真相を白状し、気絶させたこの一件で水に流しておいてやろう。

「さて、彼らに見せつけてやりますか―――この近宮玲子の、真のマジックをね」

こうして、希代のマジシャン近宮玲子は、復讐のマジシャンとして生まれ変わり、未だ気絶しているチャネラー桜庭を置いて劇場から姿を消した。



...さて。

魔術列車殺人事件をおぼろげながらでも覚えている方はこう思うかもしれない。
『近宮玲子ってもっと穏やかな人じゃなかったっけ?』と。
確かにそうだ。

明智警視の回想では常に笑顔で、会話の節々には息子を気遣う場面もあった。
また、高遠の回想でも、未熟ながらマジックの練習をしていた彼に簡単なマジックの手ほどきをしてやったこともある。
高遠の18歳の誕生日にトリックノートをプレゼントするという粋な計らいもしてやっていた。
そのような描写から、おそらく読者の彼女への第一印象は「息子想いの心優しいマジシャン」といった感じのものだろう。
確かにそれも嘘偽りない真実であり彼女という人間だろう。

だが、考えてみてほしい。

左近寺の命を奪うことになった、彼女がトリックノートに仕掛けた欠陥マジック。
これは、実行すれば死ぬように意図的に作ったものである。決して彼女の書き損じや没ネタなどではない。
彼女がそれをトリックノートに書き込んだ理由は、ただひとつ。
このノートを奪った者への制裁。ただそれだけだ。

そう。恐ろしいことに、彼女はトリックノートが狙われていることを悟りながらも、如何に犯人に芸術的に復讐するかを考えていたのだ。

己の財産ともいえるものが狙われていると気が付いた時。
咄嗟に考え付く策としては、絶対にバレない場所へ隠す、一部を心当たりの人物に渡すといった感じで穏便にすませるだろう。
もしかしたら、衝動的に殺してしまう時もあるかもしれない。

だが、彼女は違う。
彼女は綿密に計画を練った。
敢えてトリックノートを奪わせることによって、犯人を殺すことを目論んだのだ。

この手品は、彼女が殺されたことによって『近宮玲子の呪い』『奪った者への死の制裁』といった烙印をおされている。
だが、もしも彼女が生きていたら。
これはひとつの『完全犯罪』に成り得るだろう。


このトリックは、決して近宮玲子が罪を被ることのない造りになっている。
何故なら、近宮玲子はトリックノートを奪われた『被害者』にすぎず、『加害者』はトリックノートを奪った左近寺であるからだ。
例え近宮玲子が追求されようとも、彼女はいくらでも言い逃れができる。


なぜこんな欠陥マジックをノートに書いたのか→書いている途中はイケると思っていた。
なぜこんなものを消さなかったのか→消そうと思ったら左近寺に奪われた。
そのせいで左近寺は死んだのですよ→あのマジックは、心得があればすぐに欠陥だとわかります。彼は奪っただけで深く考えようとしなかったのでしょう。マジシャンとしても半端者ですね。
高遠に贈ったノートにはあの欠陥マジックは書いてありませんでしたが→彼にノートを贈った後に思いついたから当然です。
もう言い逃れはできないぜ、近宮さん!→状況だけで被害者を加害者に変えるのは立派な捜査かく乱よ、金田一くん。



こんな具合で、自分に罪は及ばずそもそも犯罪だとすら気づかれない上に、左近寺の尊厳をも傷付けることができるのだ。
もしも彼女が生きており、左近寺の有り様を見ていれば必ずやほくそ笑んでいたことだろう。

タネがばれたら潔く身を引くのがマジシャンらしいが、息子である彼はわりと往生際が悪いのでそこら辺は結構アバウトなのかもしれない。わからない。

長々と語ってしまったが、要約するとこうだ。



世の中には、決して怒らせてはいけない人間がいる。

そして。

彼女は、その内の一人である、と。



【死骨ヶ原ホテルの劇場/一日目/深夜】


【チャネラー桜庭@魔術列車殺人事件】
[状態]精神的疲労、気絶
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・行動]
基本:死にたくない
0:......
1:もうやだあのおばさん。

※参戦時期はピエロ左近寺が燃えている時です。
※近宮玲子を幽霊かなにかだと思っています。


【近宮玲子@魔術列車殺人事件】
[状態]健康、ピエロ左近寺への激しい憎しみ
[装備]
[所持品]基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・行動]
基本:左近寺ブッ殺す。
0:左近寺は見つけ次第芸術的なトリックで殺す。
1:ジェントル山神、ノーブル由良間、マーメイド夕海は、あたしにした仕打ちを泣いてお詫びすれば重傷程度で勘弁してやってもいいかもしれない。
2:チャネラー桜庭は別にいいや。

※参戦時期は落下して死ぬ直前です。
※山神たちも近宮の気分次第では左近寺同様殺します。




023:ピエロ左近寺のマジックショー 時系列 011:月と星が瞬く夜に咲く花
023:ピエロ左近寺のマジックショー 投下順 025:おねショタ
GAME START チャネラー桜庭 035:顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う
GAME START 近宮玲子 035:顔を出さなくなったあたりからずっと上映しているのはすごいと思う
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