「はぁ...どうしたもんかねぇ」

転送された民家の一室で、この俺、ホル・ホースは誰に言うでもなく呟いた。
突如巻き込まれた殺し合い。こんな状況に追い込まれたのなら誰だって不安に思うかもしれない。
しかし、こう見えても俺は殺し屋だ。
自分が生き延びるためには殺しを躊躇いはしない。
そのため、第一に赤首輪の参加者を殺しての脱出を考え、できれば女性がいないことを願って名簿を確認した。
だが、名簿を見た瞬間、俺の頭から優勝の二文字は消えた。

「空条承太郎にDIOまでいやがるとは...ふざけてるにもほどがあるぜ」

空条承太郎。
こいつはかなりの曲者だ。
圧倒的なパワーは勿論、機会以上の精密な動きを有し、近接戦最強格のスタンドである星の白銀(スタープラチナ)。
おまけに本体もキレる奴と来た。
それに加えてこの俺の銃のスタンド『皇帝(エンペラー)』の能力のタネまでバレてしまっているとくれば一対一では到底勝てそうにない。

そしてDIO。
最悪だ。こいつだけは本当に最悪だ。なにが最悪かって、天地がひっくり返っても俺はこいつには敵わないってことが確定してるからだ。
銃を突きつけたあのとき。こいつ以外なら俺は確実に仕留めれていた。だが、あいつは無理だった。なにが起きたかもわからない内に敗北を刷り込まれた。
俺は傷一つつけられていない。それが逆に恐ろしかった。『お前の命はそこらを蔓延る蟻のようなものだ』と言外に叩き込まれたように思えた。

(奴の言っていた赤い首輪...強い参加者ってのがDIO並みのヤロウばかりだとしたら、ふざけてるにもほどがある。そんな奴らに戦いを挑むのはバカのやることだ)

もしも俺の予想通りに、DIO並の赤い首輪の参加者がゴロゴロいるとしたら、俺の生き残る道はひとつ。
赤い首輪の参加者に赤い首輪の参加者をぶつけ、脱出させることで強敵を減らす。
そうすりゃ、残るのは俺のような普通の首輪の参加者だけだ。
これなら乱戦なり扇動なりでまだ勝ちようはある。
もしも脱出の糸口が見つかればそれに便乗すればいいし。

(尤も、空条承太郎は俺の悪評を流すだろうがな...どうすりゃいいんだ)

溜め息をつきつつ、俺は周囲の探索をすることにした。


(にしても、珍しい村だ。和風?っつーのか、俺のあまり見ない建物だ)

俺は世界中にガールフレンドがいる。
そのため、ちらっと日本でのデートも経験したことがあるが、それでもこうまで古臭い村は見たことがない気がする。
まぁ、デートスポットとして考えるなら悪くはない場所かもしれない。

(しかし、村だっつーのに人の気配がねえな。まあ、殺し合いなんだから当然っちゃ当然なんだが)

「きゃああああああ――――!」

悲鳴。女の子の悲鳴だ。
いましがた気配が無いと思ってた俺は度胆を抜かれつつも慌てて物陰に身を潜め様子を窺う。

「ガハハハハ、待て待て小娘ェ!」
「嫌アアアアア!」

こちらに駆けてくるのは、桃色の髪の小柄な少女に、もう一人は真っ黒な眼孔をした中年の男。
少女の方は、服がほとんど破れていること以外はこれといった特徴はないが、男の方は編み笠にゴム手袋、長靴装備と、明らかに農業をやる気マンマンな姿だ。

息を潜めつつ、俺は少女たちが通り過ぎるのを待つ。
勿論、ただビビって隠れてるわけじゃない。
二人の首輪を確認してそれに合った対応をするためだ。


(女の子の方の首輪は―――普通。男の方も普通)

決まりだ。
あの楽しみながら追いかけてる様子から、あの男はそういう趣味を持った奴で、あの女の子は被害者だ。
当然、あの様からして二人共戦闘においてはド素人なのは一目瞭然だ。

(ったく。わかってねぇなぁ。女ってのは、愛してやって、尊敬するべき生き物なんだ)

正義漢ぶるつもりは毛頭ない。
だが、このホル・ホースには『女は尊敬すべき』という信念がある。
女に嘘をついたことはあるが殴ったことは一度もねえ。
ブスだろうが美人だろうがガキだろうがババアだろうが、そこに差別はない。
殺し屋という職業に就いている俺だが、この信念を蔑ろにだけはするつもりはない。

もしもどちらかが赤い首輪だったらそのまま放っておいたが、両者とも普通の色のため、信念に従い少女を助けることにした。
それに、少女を助ければ、俺は無害であることを周囲にアピールできるし、俺の悪評を流すであろう承太郎も易々と手を出すことはしないはず。
一般人を連れ歩くリスクはあるが、長い目で見ればメリットも多いのだ。

(とはいえ、だ。助けるっつっても、いきなり姿見せてヤロウのドタマをぶち抜くわけにはいかねえ)

映画なんかでは偶然現れた主人公が暴漢の頭を銃でぶち殺し、助けられた女性は恋に落ちる、なんてパターンがよくあるだろう。
だが現実はそううまくいくもんじゃねえ。
銃でドタマをぶち抜けば、恋とは無縁な血や脳漿、その他グロテスクなモノを見せることになる。
こんな状況でそんなプレゼントをされれば、如何にハンサムなカウボーイでも警戒されちまう。

(そういう訳で、今回はこういうやり方でいかせてもらうぜ)

二人が通り過ぎるのを待った俺は、そっと身を乗り出す。

そして。

メギャン 

ひっそりと俺のスタンド『皇帝(エンペラー)』を発動。

ドキャ ドキャ ドキャ ドキャ ドキャンン!!

間髪入れずに5発の弾丸を発射。
弾丸は、男の両肩に両脚、そして最後に腹部に着弾した。

「イテェ!なんだなにがあった!?」
「え...?」
「そこまでだぜ、おっさん」

凛々しい声で、堂々と宣言した俺の登場に、少女と男は足を止めて振り返る。
うむ。我ながら結構イカしてる。


「が...ぐ...」
「その傷であまり動くんじゃねぇぜおっさん。あんたが大人しく引き下がるならこのまま見逃してやっても―――」
「がああああああ!」

両手足に負った傷にお構いなしに突撃してくる男。
俺は舌打ちをしつつ再び弾丸を発射。
狙いは心臓。まあ、血は飛び散るが、彼女に見せちまう分には脳漿よりはマシだろう。

「がぁっ!」

心臓を撃ちぬかれた男は苦悶の声をあげ、迫る勢いのまま俺に向かってくる。
勿論、男を抱きしめる趣味はないため、俺はヒラリと躱し、男が前のめりに倒れ込む様を見届けた。
男はピクピクと痙攣している。奴はもう駄目だ。直に息を引き取るだろう。
本当ならここで頭を撃ってトドメを刺しておきたいが、そこまでやればそこの腰が抜けてる女の子にドン引きされちまう。

「無事だったかい、お嬢さん」
「ぁ...ぁ...」

俺はニヒルな笑みを浮かべながら少女に手を差し伸べる。
が、少女は未だに身体を震わせて、俺の手を中々とってくれない。
こんなわけのわからない殺し合いなんぞに巻き込まれて早速こんな血みどろの現場に来ちまったんだ。仕方ねえか。

とはいえ、このままここに居座られても俺が困る。
俺は、片膝を着き、少女と目線を合わせた。

「恐い思いをさせてすまなかった、お嬢さん」

少女は俺の言葉に、首を横に振る。

「た、助けてくれて、ありがとうございました」

彼女は涙目になりつつも、声を振り絞りそうお礼を言った。
恐怖は覚えつつも、あの場面では奴を殺さなければならなかったことは理解してくれているらしい。
殺しはよくないだの、殺す必要は無かっただのとごねられなくて助かった。
よし、それじゃあ早速奴の支給品を物色して...

ザリッ

―――え。

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

俺の背に冷や汗が走る。
いまの足音はなんだ。
そんなバカな。奴は確かに致命傷を負ったはずだ。
両手両足に腹部、ダメ押しに心臓への着弾だ。
こんなもん、空条承太郎だってまともに動けねえはずだ。

ゆっくりと振り返る俺が見たものは―――



「痛ェじゃねェか、クソ人間」



ハーハーと息を切らしながらも、俺を睨みつける血塗れの怪物だった。




「て、てめえええええ!!」

思わず俺はエンペラーを撃ってしまう。
あんまりにも慌てていたもんだから、ロクに狙いを定められなかったが、弾丸は再び奴の心臓に着弾。
今度こそは間違いない。確実に死ぬはずだ。

「てめェ、この野郎...!」

だが、奴は今度は倒れもせずに俺たちを睨みつけている。

「なんなんだよてめえはよおおおおお!!」

なんとも情けない。そうは思いつつも俺は叫ばずにはいられなかった。
だってそうだろう?こんなにしこたま弾丸をぶち込まれて尚生きてるんだぜ。
こんなバケモン相手に平静でいられる奴、いるわけがねえよ。

(クソッタレ!バケモンは赤首輪なんじゃねえのかよ!?)

あの最初の男の言葉を信じるならば、バケモン染みた奴は赤い首輪が巻かれているはずだ。
加えて、スタンドなんて便利能力持ってる俺は普通の首輪だったことから、『特殊な能力は持っているが、身体は人間である』。それがこの首輪のルールだと思っていた。
だがこのバケモンはなんだ?俺と同じ首輪をしていながらこのしぶとさなんざ、インチキにもほどがあるだろうが!

そんな焦燥に包まれる俺に更なる絶望が降りかかる。


「なんだなんの騒ぎだ」


ぞろぞろぞろ。
そんな擬音が聞こえてきそうなほど、俺が撃ってるバケモンと似た恰好の奴らが大勢寄ってきた。

(な、なにィ――――!?こいつら一体どこに隠れてやがった!?)
「吉川が人間に撃たれてるぞ!」
「テメェ!クソ人間!」
「クソッ、逃げるぞ嬢ちゃん!」

三十六計逃げるに如かず。
このまま囲まれれば殺られる。
俺は急いで嬢ちゃんの手を引き駆けだした。
可憐な少女の手を引き逃避行。
文字だけ見れば華やかなもんだが、追いかけてくる醜悪な中年のバケモン達の存在が容赦なくそれをうち消してくる。


(マズイぜ、非情にマズイ)

こちらは二人。あちらは大勢。
数の不利は勿論、その質にしてもこっちの戦力は俺のスタンドだけ、あっちは何発弾丸を撃ち込まれても死なない奴らが大勢だ。差があるにも程がある。

「チクショウ、この村の出口はどこだ!?」

当然、この村にトばされてきたばかりの俺は知らない。
闇雲に走り回るが、未だにゴールは見えない。

そしてついに俺たちの逃避行は終わりを告げた。

「しまった!こっちは行き止まりだ!」

最悪の形を持ってしてだが。

(袋小路!逃げ道がない!)

「バカが。自ら追い込まれやがって」

ドヤドヤとバケモノ共が俺たちの退路を塞いでいき、瞬く間に絶体絶命のピンチを迎えてしまう。

「オイ、誰か樽を持ってこい。小さいヤツな」
(樽?)
「俺をめった撃ちにしやがって。ただじゃ死なせねェよ。手足を切って樽に入れ、絶命するまで血を啜ってやる」

奴の語る樽に入れられたイメージが脳裏をよぎり、俺の背にまたしても冷や汗が溢れだす。
じょ、冗談じゃねえぜ!そんな目に遭ったら死んじまうじゃねェか!
チクショウ、どうする?どうすれば切り抜けられる!?

前にはそびえ立つ壁、後ろにはバケモノの軍勢。
ここで問題だ!この絶望的な場面をどう切り抜けるか?

3択―――ひとつ選びなさい。

答え①ハンサムのホル・ホースは突如反撃のアイデアが閃く。
答え②仲間が来て助けてくれる。
答え③やられる。現実は非情である。


俺が○をつけたいのは答え②だが名簿の知り合いがDIOと承太郎な時点で期待はできない。
仮にこの場に現れたとしても、DIOはほくそ笑みながら俺を見下ろし自分でなんとかしろと言うだろうし、承太郎はこの子だけ助けてトンズラこくに決まってる。ヘタすりゃそのまま殺されるだろう。
じゃあこの子の仲間は?おそらく期待しても無駄だ。この子の仲間ということは、この子と同じ一般人の女の子だろう。
そんな子達が来たところで犠牲者が増えるだけだ。


「やはり答えは...①しかねえようだ」
「お、おじさ」
「俺の後ろに隠れてな」


冷や汗は止まった。呼吸も落ち着き指も震えてねえ。
俺はもう腹を括ったぜ。

「へっ、あきらめy」

ドゴォン

先頭に立っていた、最初に嬢ちゃんを襲っていたバケモンの喉を撃ちぬく。

「がへっ!?」
「...やはりな。テメェら、俺のスタンドが効いてないわけじゃねえんだろ?撃たれりゃ血は出るし、痛いモンは痛い」
「こ、こにょ」
「俺らしくはねえが、根比べってやつだ!」

俺のエンペラーはスタンドであるがゆえに残弾は無い。
撃とうと思えば何発だって撃ちこめる。

「だ、だが、俺が盾になれば俺の仲間がテメェらを」
「見上げた自己犠牲心だねェ。だが、俺の弾丸はスタンドだ。てめぇらにはなんのことかわかんねーだろうが...」

ボコォン

血塗れのバケモンの背後で、悲鳴と共に血の濁流が流れ出す。
バケモンの身体を貫いた弾丸は、そのまま後ろのバケモンにまで着弾し、尚止まらず動いているのだ。


「なっ、なんだこの弾!?自在に動きやがる!」
「ひいいいい!訳が分からねええええ!!」

後ろにいるバケモノ達の悲鳴は瞬く間に伝染し、混乱を呼び起こす。

「スタンドは己の意思で操作できる。覚えときなおっさん―――そんで、あんたとはおさらばだ」

再びの発射。

弾丸は血濡れのバケモンの額をぶち抜くだけに留まらず、ぐるぐると内部を蠢き脳をかきまぜ破壊していく。
俺が頭蓋にブチ開けた穴から大量の血や脳漿がでろでろと溢れだし、瞬く間におぞましい光景を作り上げていく。

(嬢ちゃんを後ろに隠しておいてよかったぜ。こんなもん見せたら気絶しちまう)

かくいう俺も精神衛生上よろしくないものを見せられてはやはり胸を悪くする。
多くの人間の死を生み出してきた殺し屋である俺だが、人の内臓を見てメシが美味いといえるほど無神経ではないのも確かなのだ。

「い"が が が がが がヘェ」

やがて、壊れた玩具のような呻き声をあげてバケモンは倒れた。
普通の人間相手ならやりすぎもいいところだろう。
こうまでしなければ勝てなかったのだ。
だがそれでも。

(まだ一体目...クソッタレ!)

まだ終わりではない。
あと何十匹もいるバケモンを殺さなければならないのだ。

(チクショウ、頭が割れそうだ...慣れねえことはするもんじゃねえよなぁ...)

それになにより、一番の問題は俺のスタミナだ。
スタンドは己の精神エネルギーの塊だ。
そいつを動かし続けるってことは、体力と精神力をすり減らすのと同じだ。
『弾丸を撃ち続ける』『多くの弾丸を同時に操る』『着弾した弾を蠢かせて身体の内部から破壊する』。
この三つを大勢の相手に行っているのだ。
いまの俺はかつてないほどの頭痛や疲労、吐き気に襲われていた。


(頼むからよぉ...最初の一匹でビビって退散してくれ...)

そんな俺の願いが届いたのか、バケモン共はジリジリと後退していく。

(いけっ、そのまま―――!)

ガクン。
俺の視界が傾く。

「えっ」

なにが起こった?俺はなにをされたんだ?
...なにもされてやしねえ。単に俺の方にガタがきたんだ。

「あの変な弾が消えやがった!チャンスだ!」

待ってましたと云わんばかりにバケモノどもはなだれ込み、俺の身体を取り押さえていく。

「ヤダ、ヤダアアアアア!!」
「ガハハハ、喚け喚け。女の悲鳴はイイ肴だ」
「て、てめえらまちやが」
「うるせえ!」

ガブッ。
最早抵抗する力もなく、俺はバケモノに首筋を噛まれた。
何故だか全身から力が抜け、下半身から暖かいものが流れていく気分になった。

「あ、あがっ...」

...もはや悲鳴をあげる力すらない。

「あ...あぁ...」
「美味ェぜ!このガキの血超美味ェ!」

―――答え③


「ああ堪らねェ。チクショウ勃起が半端ねェ」
「オイ、男の方はさっさと樽に入れてこのガキ輪姦(まわ)そうぜ。初物の女は珍しいんだ」

現実は非情であ





トッ



ゴ ォ ン


「ぁ...ぎゃ...?」
「なんだ!?片岡の奴が潰されちまった!?なにが起こったんだ!?」
「わからねェ!ただ、上から降ってきた奴が、バカデケェのを振り回して片岡を潰しちまったんだ!」



「こんなところにも吸血鬼がいたとはな...」



―――答え④。



「吸血鬼は根絶やしにする。それが兄貴たちとの誓いだ」



救世主が現れる。


「なんだテメェは!クソ人間如きが俺たち吸血鬼に勝てると思ってんのか!」
「たかだか一人だ!やっちまえ!」

ワ ア ア ア ア ア

来訪者の男に、吸血鬼たちが跳びかかる。

「や...ヤベェ...来るぞ...!」
「アンタ達。死にたくなければこれで顔を覆っていろ」

男は、ロクに動けない俺と嬢ちゃんの顔に、ふわりと大きめの葉っぱをのせる。
なんだこりゃ。
そう思う暇も与えず、男は次なる行動に移っていた。

「スゥッ――――」

男は、両手で獲物を腰にまで引き、軽く息を吸う。そして

「ハッ!」

ザ ン ッ

一閃。
何か巨大なモノを振った男は、その一振りでバケモノどもを真っ二つにしちまった。

俺と嬢ちゃん、いや、バケモノ含めたその場にいた奴ら全員が呆気にとられていた。

「がああああああ!」

その勢いのまま、男は回転を加えてもう一振り。

ザ ン ッ

男が獲物を振り回す度に、バケモノは次々と両断されていき、あっという間に、バケモノの屍の山が築かれていく。

(俺が一匹殺すのにあれほど苦労したっつーのに...!)

五回転ほどしたところで男は止まり、手に持った獲物の正体も露わになる。


―――それは、剣と言うにはあまりにも大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。

それは正に鉄塊だった。

「ヒイイイイイ!ヤベエぞコイツ!こんなもんで俺たち吸血鬼を殺せるのかよ!?」
「敵わねェ!この化け物には敵わねェよ!」

今までのあの強気な態度が嘘のようだ。
怖気づいたバケモノ達が、蜘蛛の子を散らすように逃げようとする。

「フンッ!」

だが、男はそれを許さない。
気合一徹、鉄塊を投げとばし、回転の加わったそれは逃げるバケモノの身体を両断し壁に突き刺さる。

「ひええええええ!」

腰を抜かし、涙すら浮かべる最後のバケモノへと男は歩み寄る。
...今しがた殺されかけた俺だが、あんな姿を見せられるとちょいと憐れにすら思えちまうな。
まぁ、同情はしねえがな。ゴシューショー様ってヤツだ。

「答えろ。雅はどこにいる」
「は?雅?知らねェよそんな奴!なあもうあんたには手を出さねェよ助けてくれよ!」
「そうか」

ザンッ

鉄塊を降りおろし一刀両断。
真っ二つになったバケモノの痙攣を最後に辺りは静寂に包まれる。

「...さて」

やがて男は振り返り俺たちのもとへと歩いてくる。
奴が近づく度に俺の鼓動はドキドキと波打ちやがる。
当然だ。
傍からみれば助けてくれたように見えるかもしれねえが、ここは殺し合い。
俺たちの生殺与奪を奴が握っている現状、嫌でも緊張は高まってしまう。

男は、地に膝をつき、俺の唇を摘み上げる。
一通り眺め終ると、今度は嬢ちゃんにも同じように唇を摘み上げ何やら確認。

「...よかった。感染はしていないな」

なにやらホッとしたような表情ではにかむと、俺と嬢ちゃんを軽々と担ぎ上げて何処へと運んでいく。

「あ、あんた...なにものだ...?」
「後で話す。まずはお前達が落ち着いてからだ。...二人の下着も探さなきゃならんしな」

男の言葉と共に漂ってきた仄かなアンモニアの臭いに、嬢ちゃんは顔を真赤に染め上げ、尊厳を失った俺の視界は涙でぼやけた。




数刻後、俺たちは適当な家屋と着替えを拝借し腰を落ち着けることにした。
痺れもだいぶとれたため、俺たち三人は自己紹介を兼ねての食事にとりかかっていた。
食事といっても、そこらの畑で生えてた大根とうまい棒しかないのだが。

「ホント助かったぜ旦那。俺はホル・ホースだ。よろしくな」
「宮本明。明でいいよ」
「わ、わたしは鹿目、まどかです」

まだ微かに震えているまどかちゃんの頭にぽんぽんと軽く手を乗せてなだめつつ、俺たちは大根にかじりつく。
あー...死にかけたせいか、こんなもんでも美味ェや。

「そういや旦那。あんたあのバケモノになんか聞いてたな。なんとかって奴を知らないかって」
「ああ。探している男がいる」

ピタリ。
俺たちは大根を食う手を止め、明へと向き合う。

「奴の名は雅。俺が殺さなければならない男だ」

そう語る明の目は、まるで地獄からやってきた鬼のように殺気を放っていた。



【D-1/吸血鬼の村/深夜】
※この付近の吸血鬼@彼岸島(NPC)は全滅しました。

【宮本明@彼岸島】
[状態]:健康、雅への殺意
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]: 不明支給品0~1、大根@現地調達品
[思考・行動]
基本方針: 雅を殺す。
1:吸血鬼を根絶やしにする。
2:まどかとホル・ホースと情報交換をする。
3:邪魔をする者には容赦はしない。
※参戦時期は最後の47日間13巻付近です。



【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(絶大)、失禁
[装備]: 女吸血鬼の服@現地調達品、破れかけた見滝原中学の制服(選択中)
[道具]: 不明支給品1~2、大根@現地調達品
[思考・行動]
基本方針: みんなと会いたい。
0:ほむら、仁美との合流。マミ、さやか、杏子が生きているのを確かめたい。
1:明とホル・ホースと話をする。

※参戦時期はTVアニメ本編11話でほむらから時間遡航のことを聞いた後です。
※吸血鬼感染はしませんでした。


【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:疲労 (絶大)、精神的疲労(絶大)、失禁
[装備]: 吸血鬼の服@現地調達品、いつもの服(洗濯中)
[道具]: 不明支給品1~2、大根@現地調達品
[思考・行動]
基本方針: 脱出でも優勝でもいいのでどうにかして生き残る
0:できれば女は殺したくない。
1:明と交渉する。可能ならば明を相棒にする。
2:DIOには絶対に会いたくない。
3:まどかを保護することによっていまの自分が無害であることをアピールする(承太郎対策)。
4:そういやこいつら、スタンドが見えているのか

※参戦時期はDIOの暗殺失敗後です。
※赤い首輪以外にも危険な奴はいると認識を改めました。
※吸血鬼感染はしませんでした。


※NPC解説
【吸血鬼@彼岸島】
彼岸島に棲息する、吸血鬼ウイルスに感染した人間のこと。基本的に人間を見下している。
興奮すると髪が白く、白目が赤黒くなり、三白眼になるが、普段は鋭く尖った犬歯(牙)以外は人間と同じ風貌をしている。
通称キモ笠。農家のおじさんの恰好をした者が多く、比率も中年男性が多いが、稀に女性や老婆、子供なども確認される。

吸血鬼になると全てのウィルスに感染しなくなり、身体能力も飛躍的に向上する。耐久性もあがり、首を刎ね飛ばすか頭を潰さない限り中々死なない。
心臓を抜けば死ぬという説もあるが、一部の感染者(ケンちゃん)のようにちゃんと死ぬ者もいれば、マシンガンでめった撃ちにされても生きている者(本土で新田に撃たれた吸血鬼)もいるので心臓が大事な器官かはわからない。
他作品や伝承によくある『日光に弱い』『にんにくや十字架には手を出せない』『川を渡れない』などの弱点は一切当てはまらない。
ただし、食塩水を注入されると激痛が走り正気を失いかけるほどに喉が渇き血を求めるようになるので、追い込まれたら使ってみよう。


吸血鬼の血を体内に取り入れると感染して吸血鬼になる。
人間の血は食料ではなく、邪鬼や亡者に変態しないための薬であるため、飲食は普通の人間と同じである。そのため、家を探せば野菜とかどぶろくとかも普通に手に入る。
牙(唾液)には強い麻酔効果があり、体内に入ると涙や小便等を垂れ流しながら動けなくなる。唾液には吸血鬼ウイルスも混ざっているが、感染力は低い。



このロワにおいては、不死身度は本編よりはさがっており殺しやすくなっている。
雅や明のことはすっかり忘れている。そのため、雅を見ても崇拝せずに生意気な態度をとる可能性が高い。
吸血鬼の吸血も制限されており、本編ほどの時間は痺れが残らない。涙や小便は出ます。
また、住民全員に首輪が巻かれており、最初に配置されたエリアから出ようとすると爆死する。禁止エリアに指定されても爆死する。
彼岸島基準ではザコなので、首輪は普通の首輪である。そのため、倒してもなにも特典は貰えない。相手にするだけ無駄。



【樽】とは。
彼岸島産の吸血鬼の間に伝わる食文化のひとつ。
彼らはこの中に入るように四肢を切断した人間を入れ、歯と鼻、目を抜き完全に抵抗ができない状態にして獲物を保管している。
備え付けられている蛇口をひねることで、獲物から溢れる血を枡に入れて呑むのが一般的な飲み方。
また、血が出やすいように樽の中に刃物が詰めてあるのも特徴のひとつ。
外見的な特徴は、黒ひげ危機一髪を参考にしていただければわかりやすいかと。



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最終更新:2018年01月20日 15:02