「クソッ...ふざけんなクソッ!」

佐山流美は舌打ちと共に地団太を踏んだ。
この殺し合いに巻き込まれたことへの怒り。当然それもある。
しかし、それ以上に彼女を焦らせていたのは野崎春花と野崎祥子の存在だった。

野崎春花は佐山流美を殺したいほど憎んでいる。
なぜか。

流美は、クラスメイトと共に春花の家に火を放った。
本当は少し脅すだけのつもりだったが、久我の些細なミスにより母親は焼殺してしまい、見られた以上殺すしかないと父親と妹にも火を点けた。
父親は死んだが、かろうじて妹は一命をとりとめていた。全身の皮膚が焼けただれた見るも無残な姿でだが。

そして春花は復讐鬼になった。

その手始めとして、橘が引き入る三人を殺した。
次いで久我、間宮、池川も殺られた。
となれば、だ。
首謀者である流美を許す道理はどこにもない。

今までは誰にも知られないようにやっていたかもしれないが、このような事態に陥ればどんな手段を使うかわかったものではない。
例えば、春花が周囲の者に身の上を話せばそれだけで流美は警戒対象になり追い立てられることは間違いない。
それでも、春花一人ならばまだ言いくるめることは可能だったかもしれない。あいつはイカれた女だと訴え続ければこちらが優勢になれるかもしれない。
だが、放火の犯人を知る者はもうひとりいる。
そう。生き残った妹―――野崎祥子だ。彼女もまたこの殺し合いに連れてこられている。
あの有り様では言葉を話すことすら怪しいが、彼女の有り様を見せればどちらに味方するかは言うまでもないだろう。
これで状況証拠として有利なのは春花。証言者2対1で有利なのはどちらか。言うまでもない。

(あいつは絶対にあたしを潰しに来る。でも、どうすれば...!)

殺られる前に殺ればいい。
確かにそうだが、それを終えても他の参加者も殺さなければ生き残れない。
春花が素性を話した者がいれば尚更だ。
それに、流美は決して運動神経が優れているわけではない。
大の大人相手では歯が立たないだろう。

つまりこのままでは流美は詰みだ。殺されるのを怯えながら待つしかない。


(あたしは...ごめんだね)

ふざけるな。あんなイカレに殺されてたまるか。
自分をイジメてた連中はたえちゃん―――小黒妙子以外はみんな死んだ。
自分をイジメていいのはたえちゃんだけだ。
正直に言えば、死んだ奴らに対してザマアミロ、因果応報だという気持ちがないとは言い切れない。

―――そう。このまま終わるわけにはいかない。

人間は他人を犠牲にすることで生きている。そうしなければ自分が犠牲になってしまうから。
私は今まで自信がないから虐げられてきた。だが、これはチャンスだ。
今までクラスの連中に犠牲にされてきたぶん、今度は私がみんなを犠牲にして生き残ってやる。
そうすれば自分はもっと自信を持って生きていけるだろう。
今まで通りビクビク怯えながら過ごすのはもうゴメンだ。
私はこの試練を乗り越えてみせる。

(そのためには、やっぱあんたらは邪魔なんだよ野崎春花)

まずすべきことは彼女たちをいち早く見つけることだ。できることなら誰にも会っていない状態でだ。
そして、奴らが悪評を振り撒く前に―――殺す。

流美はデイパックを握りしめ決意する。
己の犯した罪から目を背けるように―――負け犬人生とはおさらばだと。


【B-8/一日目/深夜】

【佐山流美@ミスミソウ】
[状態]:健康、野崎春花と祥子への不安と敵意。
[装備]:
[道具]:不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
0:自分の悪評が出回る前に野崎春花と野崎祥子を殺す。
1:赤首輪を殺してさっさと脱出したい。
2:たえちゃんはできれば助けてあげたいが、最優先は自分の命。

※参戦時期は橘たちの遺体を発見してから小黒妙子に電話をかけるまでの間。



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GAME START 佐山流美 口は災いのもと
最終更新:2017年11月07日 00:31