「ははははははッ!!」

暗闇の中を駆け巡る嗤い声。
怪物──『宮藤清』の姿は確かにそこにあった。


◉ ◉ ◉


少なくとも彼女もまた混迷していた。
女の名は南京子。大津馬中学校の教員であった。
しかし何かがおかしい。

(『死んだ』───確かに自分は死んだ)

記憶に誤りが無いのなら自分は除雪車に轢かれて───。

「……そうだ、これはきっと悪い夢なんだ」

南京子は解釈した。根本からしてまずおかしい。
状況があまりに飛躍している。

あの首が吹き飛んだ男の人も何かのトリックだ。そうだ、そうに違いない。
この首輪もきっと何かのオモチャなんだ。

「痛っ!!」

おもむろに頬をつねる京子。
しかし夢は覚めない。覚めるはずが無い。

だが彼女は依然として現実を受け止めようとはしなかった。


◉ ◉ ◉

〝ゴキィ〟

何かを磨り潰すかのような擬音。
その音が自分の背後に迫るまで京子は『それ』の存在に気付けなかった。

『身体が半分溶け、肉のようなものがはみ出ている観音様』。
その『赤い首輪』を装着した異形の塊がすぐそこに佇んでいたのだ。

「ひっ!」

反射的に足元にあったデイパックに手を伸ばす京子。
こうなったら信じてみるしかない。
あの男は確かに『アイテム』を支給した、と言った。何か──何でもいいからッ!

手探りの果てに京子が掴んだのは銃剣だった。
それはかつて学園都市・三沢塾を占拠した錬金術師アウレオルス=イザードが錬成した銃剣。
十分な殺傷性能はある。経緯なぞ知る由もない京子にさえもそれは分かった。

(撃つ!殺られる前に殺る!)

南京子は引き金に指をかける。あとは引く。たったそれだけのモーションで済む。
仮にあの男の言葉が正しかったなら、『赤い首輪』の参加者を皆殺しにすれば帰れる。
たとえ相手が強力だろうがこの至近距離。
銃など扱った事の無い京子であっても外す事は無いだろうし、相手へのダメージもそれ相応には絶大なはず。

(引く!引くんだ!)

沈黙。南京子は躊躇いながらも引き金に手をかけた。

◉ ◉ ◉


「馬鹿だなぁ。勝てる訳がないじゃないか」

果てしない嗤いの末に『千手観音』もとい『宮藤清』は口を開いた。
彼の目の前に転がるは拳銃を握った女の死体。
頭部には燈籠レーザーによって大きな風穴が空いている。

宮藤清もまた当惑していた。
自分は確かに一度死に、あの【黒い玉の部屋】に行き、転送された寺院でまた死んだ。
殺されたのだ。そう『自分自身』に。
目を覚ますと『自分』が『自分』になっていた。

とても気分が良かった。そして自分は黒服の男──確か『加藤くん』と呼ばれていただろうか。
確かに彼を追っていた。そのはずだった。

だがどうだい。目を覚ませばこの有様だ。
しかしながら悪い気はしなかった。
むしろ最高だ。

もっとだ。もっと殺してやる。
───同胞を皆殺しにした『人間』という種を皆殺しにしてやる。

狂気に顔を歪める千手観音。
そして再び響き渡る嗤い声───。


【南京子@ミスミソウ 死亡】


【A-8/草むら/一日目/深夜】

【千手観音(宮藤清)@GANTZ】
[状態]:健康、人間に対する激しい殺意
[装備]:(燈籠レーザー)
[道具]:不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:黒服を含めた全参加者を皆殺しにする。
0:最高に気分がいい。もっと殺したい。
1:同胞を殺した黒服(ガンツメンバー)は優先的に殺害。

※参戦時期は宮藤吸収後で加藤勝の腕を切断する直前です。





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最終更新:2018年01月25日 23:41