「まったく、随分とまあふざけたことを考えつくものですこと」

少女、白井黒子は殺し合いに乗ることは考えなかった。
当然だ。学園都市のレベル4にして風紀委員(ジャッジメント)でもある彼女の正義感がそれを許さなかった。
それ以上の理由がいるだろうか。いやいらない。

(私の首輪は普通の首輪...でいいんですわよね?赤い首輪でなければおそらくそれでいいはずですが)

自分が男の言った『賞金首』の証である赤い首輪でなかった。
どういう基準かはわからないが、ルールからして過半数以上が赤い首輪である可能性は低い。
おそらくあの男は赤い首輪を手に入れるために参加者が協力するのを見たいのではなく、赤い首輪持ちを倒す段階で『誰がこのゲームから脱出するのか』で争うのを見たいのだろう。
そのため、参加者全員が脱出できるような仕掛けは作らないはず。
そう考えれば、赤い首輪の参加者が少ないのは容易に想像がついた。
そして、その赤い首輪が敬愛するお姉様―――御坂美琴ではないかとも。

(お姉様はレベル5の能力者。並大抵の能力者では相手にもならないほど強力なことを考えると、赤い首輪であってもなんら不思議ではありませんわ)

もしも御坂が赤い首輪であった場合、大勢の参加者から狙われることになってしまう。
普段の喧騒なら大した心配もいらないがこの状況だ。とてつもない不安を抱くだろう。
ならばこそ。

「お姉様が最も信頼を置くこの私が側にいなくては!お姉様、あなたの黒子が今すぐに参ります!」

多くの暴漢に囲まれ絶体絶命の御坂。そこに颯爽と現れるは彼女のベストパートナー、白井黒子!
並み居る脅威をちぎっては投げ、あそ~れ、ちぎっては投げ!

『黒子...救けに来てくれたの...?』
『当然です。黒子はお姉様のためなら例え火の中山の中、宇宙の果てまでも駆けつけますわ』
『く、黒子...あんたって子は~!』

感極まりお礼と共に御坂は黒子を抱きしめ、その控えめな胸に顔を埋めさせる。
その温もり、まさに天恵のごとし!


(そしてこの殺し合いを破壊したあとは...)

『はい、黒子、あ~ん』

『黒子...手、握っていいかな』

『黒子、遊園地に行きましょう。勿論...二人で』

『黒子、一緒に寝てもいい...?』

そんなIFの物語を脳内で作り上げ、思わずにんまりと頬を吊り上げぐへへと小さく声とよだれを漏らす。

(そして真夜中のベッドで...)
『黒子...私を食・べ・て』

その妄想は最高潮に達し―――

(おねえさまあああああああああああああ!!)

両手を胸の前で交差させ、己の肩を掴み身体を震わせる。
顔を真赤に染め恍惚の表情を浮かべているその姿は、赤の他人から、いや彼女をよく知る者から見ても変態のそれだろう。

己の破廉恥な妄想に悶えること数十秒。

(―――ま、ありえないですけどね)

先程までの妄想も恍惚の表情もピタリと止み、彼女はジャッジメントとしての顔を取り戻す。

ミサカは黒子のあずかり知らぬ所で強大なモノと戦っている。
そんな彼女にとってはこの催しもその強大なモノのひとつにしかすぎないだろう。
それに、いくら彼女を助けようとも愛人には為りえぬ間柄。
少し辛いが黒子としてはそれでも構わない。

(想うだけなら自由...もしかしたら、その機会すらもう手にすることが出来ないかもしれないですし)

果たして犠牲者無しに済ませられるのか。御坂の力になれるのか。なにより自分自身が生きて帰れるのか。
いかに黒子が修羅場を潜ってきたとはいえ、必ずしも無事でいられる保証はないのだ。

「ですが私の覚悟はこの程度では崩れませんことよ。さて、目にモノ見せてくれますわ」

右腕の腕章に触れ、どこかで聞いているだろう主催の男へ宣戦する。
それが示すのは、誇り高き正義の証。



「いい加減...くたばれよっ!」
「ヘッ、そんな温い攻撃でこのレヴェッカ様が殺れるかよ!」

佐倉杏子は苛立ちと共に槍を振るう。
その相手を勤めるのはガンマン・レヴィ。

争いの発端は至ってシンプルだ。

レヴィが主に活動する街、ロアナプラでは殺人など日常茶飯事でありいまさらワーワー喚くほどのことでもない。
だから、この殺し合いも赤い首輪の参加者を殺しさっさと脱出する腹積もりであった。

そこで出会ったのが赤い首輪を着けた佐倉杏子であった。
赤い首輪の参加者であるならば、それが子供だろうが関係ない。
この時点で杏子はレヴィの狩り対象となっていた。

佐倉杏子もまた、生存するためには殺人も厭わなかった。
魔法少女は魔女を殺すことで生き永らえる存在である。
ここに連れてこられる前から、魔女へと成長する使い魔を見逃しそれによって出る被害には目を背けてきた。
いわば間接的な殺人者である。
そんな彼女が今さらこんな場所で誰かのためにだとか正義の味方染みたことを語るなどちゃんちゃらおかしな話だろう。
大勢から狙われる赤い首輪の参加者として招かれたのなら尚更だ。

だから佐倉杏子は決めた。自分を守るためならなんだってやってやると。

そこで出会ったのが自分を獲物だと狙うレヴィであれば、戦闘になるのは必然であった。

幾度かの攻防の後、銃声と共に呻き声が響いた。

「ガッ...!」
「ザマアねえ。ご自慢のすばしっこさもコイツで終わりだな」

右腿を撃ち抜かれた杏子は激痛に蹲る。
レヴィの言う通りだ。このままではロクに動くことができない。

だが、レヴィは決して容赦はしない。
殺し合いというものはどちらかの息の根が止まるまでが殺し合いである。
例え両手足全て失っても、相手より長く生きていればハッピーエンドだ。
自分が有利になったからといって舌なめずりするのは三流であり、当然ながらレヴィはそのような悪手を踏むつもりはない。

「あたしを殺したきゃあの世でどこぞのヤクザにでも教えを請いな。テメーじゃ力不足だ」

軽口を叩きつつも決して気を緩めはしない。
レヴィはすぐさま引き金に指をかける。

「―――のヤロウ!」

破れかぶれか。杏子はレヴィへ向かって力任せに槍を突き出す。
勿論、それは難なくレヴィに躱される。

ガ キ ン

金属の音が鳴り、杏子の槍が多節根へと変化する。
レヴィが呆気にとられる間もなく、それは地面に叩き付けられ土煙を巻き上げる。

「チッ!」

煙から逃れるため、舌打ちと横に飛び退くと共に引き金を引く。
いくら煙で視界を妨害しようが関係ない。
長年の戦闘経験は、この程度で標的を見失うことはない。
が、手応えはない。確かに居た場所に撃ちこんだはずだが―――

バキッ

レヴィの頬に走る衝撃。
それが蹴られたことによるものであることはすぐに理解した。

佐倉杏子はインキュベーターと契約し人間をやめた魔法少女である。
彼女の魂はその胸で輝くソウルジェムに姿を変えられており、身体はただの入れ物同然だ。
そのため、魔力を消費し身体の修復にあてれば多少の怪我であれば治すことができるのである。

この蹴撃により、レヴィの苛立ちは更に増し、杏子もまた弾丸を撃ちこまれたことで苛立っている。
両者の怒気が混じり、今再びの闘争を繰り広げようとしたその時だ。

「風紀委員(ジャッジメント)ですの。両者共、即刻武器を放棄なさい!」

仲介が木霊し両者の意識はそちらに向けられる。
少女、白井黒子の姿を認識したレヴィは、眉間に皺を寄せつつ詰め寄る。

「オウコラ、ガキが警察(ポリス)ごっこか。大人しくママの家に帰ってミルクでも咥えてな」
「そういう三下の台詞は」

レヴィが胸倉を掴もうと伸ばした腕に黒子が触れたその瞬間

「なっ―――」

レヴィの世界が逆に回転した。

地面に倒れ込むと同時に、レヴィは飛び退き警戒体勢をとる。
決して油断していた訳ではない。ただ、なにをされたのか理解する間もなく逆さに落とされたのだ。

(この反応の速さ...ただのスキルアウトとはわけが違いますわね)
「てめえなにしやがった!?」
「自分の能力を喋るはずがないでしょう」
「こ、の、ガキ...!」

レヴィのこめかみに青筋が走る。

ああ、ウザッたい。
あの主催の男も。銃弾ブチ込んでもピンピンしてるバケモンも。この正義ヅラしたガキも。
なんもかんもが癇に障る。
今すぐここを真赤に染めて血の風呂(ブラッド・バス)としゃれこみたい気分だ。

「取り込み中失礼」

そんなレヴィの苛立ちを知ってか知らずか、またも現れる乱入者。
警官の役を演じている映画俳優。そんな言葉がピッタリな風貌の男だった。

彼の登場により、レヴィの苛立ちはまたも募っていく。



状況。全ての抹殺。
場所。限られた空間。
自機に付けられた首輪。赤。ターゲットになりやすい。
何れもジョン・コナーの抹殺に支障なし。

前方。戦闘音を確認。
体温。三人を検知。
何れもジョン・コナーとは不一致。
排除すべき。否。まだ早い。
これより合理的判断により接触を開始する。

「探している少年がいる。ジョン・コナー。この名簿にも載っているが、知っていることがあれば教えて欲しい」



【C-4/工場地帯/一日目/深夜】

【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
1.二人の闘いを止める。
2.御坂と上条との合流する。
3.タトゥーの拳銃使い、槍使いの少女に要警戒。
4.この男は...?

※参戦時期は結標淡希との戦い以降。

【レヴィ@ブラックラグーン】
[状態]:頬に軽い痣、苛立ち
[装備]:ベレッタ@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1
[思考・行動]
基本方針:赤い首輪の参加者を殺してさっさと脱出する。
1.自分の邪魔をする奴は殺す。
2.ロックは見つけたら保護してやるか。姉御は...まあ、放っておいても大丈夫だろ。
3.ガキ共もポリスもなんもかんもがイラつく。

※参戦時期は原作日本編以降


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:苛立ち
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:生き残る。そのためには殺人も厭わない。
1.どんな手段を使ってでも生き残る。
2.鹿目まどか、美樹さやか、暁美ほむらを探すつもりはない。
3.マミが本当に生きているかは気になる。
4.ここの奴らは全員むかつく。

※TVアニメ7話近辺の参戦。魔法少女の魂がソウルジェムにあることは認識済み。

【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:異常なし。
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~2
[思考・行動]
基本方針:ジョン・コナーを殺害する。
1.眼前の人間たちからジョンについての情報を聞く。始末するかは後で判断する。
2.効率よくジョンを殺害するために、他者の姿を用いての扇動および攪乱も考慮に入れる。

※参戦時期はサラ・コナーの病院潜入付近。


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最終更新:2017年06月06日 17:02