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 テレビを椅子に座って幼女が見ている。言葉にすれば、それはそんなありきたりな光景だった。
 冷房の利いた部屋でコーラ片手につまらなそうにテレビを眺めているという、まるで面白味のない。こんなものを好き好んで見る人間はいない。そう見たものに思わせるような、なんの変哲もない日常のワンシーンだ。

『よーしというわけで作戦会議を行う。ランサー、説明を。』

 まあ、もし彼女ーー彼と言うべきかもしれないが、ともかくーー高遠いおりの心の声を聞けるような人間ならば、興味は引かれただろうが。


『えーと、これは?』
『さっきの猫耳に盗聴されるとまずいから念話で話そうと思って。』
『傍受されない?』
『……念話って傍受できるの?』
『無線みたいなものだから、できなくはないと思う。でも有線でもできなくはないし、ん~……。』
『ま、まあとにかく。』

 いおりは咳払いをした。もし端から見ているものがいればなにかばつの悪さからしたように見えたことだろう。

『やらないよりはマシだろ?それで、まずは状況を整理したいんだけど……なあ、ランサーてさあ。』
『なに?』
『どんな英雄なの?英霊ていうのか、その、どんな時代のどんな場所でどんな風に活躍したのかとかさ、全然わからないから。』
『……私はーー』
『あ、本名はなしな。聞いてる奴がいたら特定されたらまずいし。国名とかもやめといた方がいい。』

 いおりが真っ先に聞いたのは、ランサーのことだった。
 いおりはランサーのことを殆ど知らなかった。精々がライフルと槍と盾を使うことと、アリシアという名前であることぐらいだ。彼女がいつの時代のどこの国の何をした偉人であるか、そういった聖杯戦争で重要な情報は、何一つ知らなかった。

 そもそもいおりには聖杯戦争の知識がほとんどなかった。最低限の情報だけランサーからかいつまんで説明されると、そのまま冬木大橋に向かったため、その知識はほんとうに限られたものしかない。その上、ランサーと出会ってからまだ半日程度しか経っていない。更に重ねていおりはその大部分を気絶していたためこうしてランサーと話す時間は実に一時間もなかったのだ。

 視線はテレビに向けたまま、いおりはランサーの返答を待つ。数秒か数十秒ランサーは無言で考え込むと、『ざっくり言うと』と前置きして話始めた。


『私の国は、資源国ていうのかな、貴重なものがとれる国だったんだ。』
(資源国……ベトナムみたいなポジションか。)
『小さいけどけっこう豊かな国でね。まあ、周りの国に比べたら工場も土地もないし、いろんな社会の問題もあったけど、それでも悪い国じゃないと思う。』
(ベネルクス諸国みたいな感じか。)
『それで、大きな戦争があったの。私たちの国は中立だったけれど、東の大きな国が資源を求めて攻めてきた。』
(……なるほど、もしかして。)
『侵攻は早かった。国境を一気に突破すると、私が暮らしてた地域まですぐに部隊が迫った。』
『だから、ランサーは銃をとったのか?』

 ちらりと、いおりは後ろを見た。霊体化したランサーの姿は見えないが目があった気がした。

『そう。せめて自分の村くらいは守りたかったし……いろんなことがあってね。必死に戦ってたら、どんどん銃の腕も上がっていって。それで、私たちの国は一応戦争に勝ったの。ほんとうに一応だけどね。終戦後も大変だったし……』
『……ランサーは、何回死にかけた?何人殺した?』
『……何十回も、何百回もかな。そしてその度に、私の代わりに誰かが死んだ。大体は敵だったけどね。』
『だから、サーヴァントになったのか。』

 いおりはまた後ろを見た。今度はランサーと目があった気はしなかった。


 ピーンポーン。

 間の抜けた音が響いたのは、二人の間から会話がなくなり、テレビの番組の音声が何分も流れていた時だ。CMが終わりコメンテーターが冬木市の映像を見ながら話すのをぼんやりと見ていたいおりは、インターホンに出ると「来たぞ、さっきのだ」と言った。

 ヒトラー・ユーゲントは時間に正確なのだろう。30分後にくると言った言葉通りに来た。表にはタクシーも停めてあるらしい。

「ランサー。」

 いおりは少ない荷物を詰め込んだランドセルを背負うと呼び掛けた。

「二人きりで話せるときに話せて良かった。」

 テレビとエアコンを消し、そう言う。もしかしたら、さっきの時間が落ち着いて二人が話せた最後の時間かもしれない。そのなかで話せたことは少ないが、それでも得るものはあった、そういおりは思いたかった。

「もっと、話さなきゃいけないことを話せてない。」

 ランサーは否定した。
 そもそもランサーが語ったのは、自分が生きた時代のほんの概略程度のものだ。それに、自分のフルネームすらいおりに話せていないのだ。

「俺だって大事なことは話せてないけど、まあさ。」

 いおりはしっかりと後ろを見た。実体化したランサーと目が合う。

「もしまたゆっくりと話せる時間があったら、今度は俺の話を聞いてくれるか?たぶんスゴい驚くと思うから。」

 それだけ言って笑うと、いおりは部屋から出ていった。玄関の辺りからは、こちらを急かす先程のサーヴァントの声と、それに答える声がしている。二人だけの時間は終わっていた。

 ランサーは一度部屋を見渡し、照明を落とすと、「今度」と一言呟いてマスターの元へ向かった。



【新都・高遠いおりの自宅/2014年8月1日(金)1400】

【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、満腹、当分寝なくていい。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.謎の猫耳サーヴァント(シュレディンガー准尉)と共にタクシーで移動する。
2.いつか、ランサーに自分の『こと』を話す。
3.バーサーカーのマスター(イリヤ)が心配。
4.あの娘たち(茜と幸村)は逃げ切れたよな?
5.明日の正午、冬木ホテルに言ってアサシンと話す?
[備考]
●所持金はほぼなし。あっても幼稚園児レベル。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。再度同盟について話します。
●ランサーから英霊・アリシアの情報の一部を聞きました。

【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(10)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
全身の至るところを骨折・打撲、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、魔力供給がほぼストップ。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1.ライダー達を警戒。
2.『今度』はイオリのことを知りたい。
3.できればランサー(幸村)とそのマスター(茜)にもう一度会って同盟を組みたい。
4.アサシン(千手扉間)とも話をしたい。
5.バーサーカー(ヘラクレス)とそのマスター(イリヤ)の安否が気にならなくもない。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。
●いおりに英霊・アリシア・ギュンターについて一部の情報を話しました。