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 『聖杯戦争』というもので最も得難きものは信頼できる仲間である、美遊・エーデルフェルトはそう考えていた。
 それは、これまでの短くも長い十年程の自分の人生を省みた結論であり、今まさに自身が参加している聖杯戦争のルールを反芻し考えた結果でもある。
 美遊はどれほど仲間というものが貴重かを誰よりも理解していた。いや、痛感していたと言えるかもしれない。少なくともそのことに頭を悩ませていたのは間違いないだろう。頼れるのはサファイアとサーヴァント、そして自分だけであると考える度に胃が軋むように痛くなる気がする。むかつき吐き気を催す。

 だから、その仲間が、こんなにも簡単に見つかったことに驚いていた。自分が全幅の信頼を寄せて背中を預けられる、そんな、そんなご都合主義な、夢みたいな人物が現れるなんて思いもしなかった。まさしく、白馬の王子。自分が聖杯戦争を戦う上でこの上なく頼もしい存在《ホワイトナイツ》。それが目の前に。



 目の前に、触れられる距離で、殺し合わなければならない相手として、悪夢のように、ご都合主義的に、現れるなんて、そんな展開は、美遊・エーデルフェルトには思いもよらない最悪の展開であった。



 そっと、膝の上に乗せたイリヤの頭を撫でる。艶やかな銀髪は絹のように美遊の手のひらで踊り、さらさらと指の間から零れていく。白銀を溶かしたらこんな風になるのだろうか、銀色の滝は美遊が手を上に昇げる度に生まれ、触れる度に波打つ髪は金色の波として白熱灯の光を黄金の光に思わせる。人に誇れる程の審美眼はないが、世の中のどんな芸術品よりも、尊い。美遊はそう確信できた。

「ーー。」

 自分のマスターをいとおしそうに撫でる少女を、ランサー・カルナはなにも言わずに部屋の外から見守る。一言足りないという彼の数少ない悪癖も、こういう時には美徳であろう。黙して話さぬその男は本来持つ存在感を極限まで消し、二人だけの空間を産ませている。霊体化しているため二人を見る視線の、戦闘時とはまるで違うその眼差しに気づいた者はいなかったが。

 十分か、二十分ほどだろうか。美遊は髪を撫でるのをやめるとそのすべやかな髪に癖がつかぬようにするかのごとく割れ物を扱うように慎重に膝枕からソファへと置いた。

「サファイア。」
「……ここに。」

 名前を呟けば、隙間の開いたリビングのドアからふよふよとファンシーな形のリング状のなにかが現れる。気を使ってだろう、彼女の相棒であるそのサーヴァント以上に不可思議な存在はしばらく廊下に控えていたようだ。彼女の姉であるルビーの羽のようなものがちらちらと扉の端から見えたのを認めると「ルビーも」と続けて美遊は呼びよせた。

 二人を囲むように二振りのステッキは浮遊した。美遊はソファから立ち上がると窓際へと行き、わずかに開いていたカーテンを閉める。

 ーーもちろん、彼女はベランダにカルナがいることは知らなかったが、しかし顔見知りだけで話したいというのは気持ちとしてあり、ランサーも美遊の目を見てなにも言うことはなかったーー

 そして振り向けば、見えるのは、いまだ目覚めぬ、イリヤ。もちろん、手当てはした。その証左に気絶から安らかな睡眠へと寝息は変わっている。
 僅かに指していた陽光は、締め切られたカーテンを貫通することはできず、冷房の利いた部屋は時間が粘性を持っているかのように体表と脳を錯覚させる。その空間で彼女は後ろ手にピッチリとカーテンを締めると、注意を払わなければ聞こえないような、それでいて普段からは信じられないほど静かに押し黙っていた二人の妖精にしっかりと宣言するように、一言呟いた。



「さよなら、イリヤ。」



 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンについて美遊・エーデルフェルトが知っていることは驚くほど少ない。

 美遊がイリヤと過ごした時間は濃密ではあったが、決して長くはない。生きた人生の短い子供であったとしても、もっと互いのことを知るには時間が必要である。
 お互いの好きなものも嫌いなものも、どんな本を読んだり、どんな曲を聞いたり、どんなドラマを見るのかも、いわゆる『親友』という呼称が当てはまるほどの知識も会話もない。漠然とした夢やどんな大人になりたいかという話も、まるで足りない。

 そう、足りないのだ。こんなものでは、きら星のように心で輝く大切な思い出だけでは、美遊・エーデルフェルトは満足できないのだ。

 それは『飢餓』だ。耐えがたい『餓え』だ。『美遊』という人々の希望の糧である絶望の結晶が、人としてのカタチを保つために必要な存在である、『イリヤ』という極上の馳走。それを求めて止まないのだ。
 これを考えると、美遊というニンゲンは強欲なのであろう。その手にイリヤという希望と平穏の象徴を手にしようと、こんな殺し合いにまで参加しているのだ。これではエインズワースと変わらない、いや、希望を独り占めしようとしている分、酷いかもしれない。平穏の為に争うなど、喜劇なのか悲劇なのかわかったものではない。
 だがそれでも、美遊は止まらない。止まることなどできない。知ってしまったから、希望を。胸を暖かくする、人間らしい感情を。あの少年が人の身を超えて示した、『未来』という概念の、権化を、体感してしまったのだから。その祝福を一度受けたからには、荒れ地のような心を芽吹き繁り大樹の森へと変えられたからには、戻る余地などない。成長を求める心は動きだし、未来は止められない。呼び覚まされた本能が求めるままに彼女の森は際限のない成長を図る。友情という言葉だけでは語り尽くせぬ意味を持つものを与えた『イリヤ』を太陽とし、イカロスのごとく大樹は天を目指す。


 まるで、呪いである。


 美遊という一人の人間は、イリヤという一人の少女によって呪われたのだ。
 人間であるという呪いを受け、人間であろうとする呪いを受け、人間ではなかったという呪いを受けたのだ。
 もしかしたら、その呪いはもっと早い段階で彼女にかけられたのかもしれない。あの■■■が、彼女に手を差し伸べた時点でかけられていたのかもしれない。人間である彼女に『器』ということを最も意識させた可能性はある。
 とはいえ、それは今、この場では、最大の問題ではない。


 一番の問題は、そのイリヤこそが美遊の敵であるという点である。



 イカロスは太陽を目指し、羽根を溶かして墜ちた。美遊・エーデルフェルトという人間は、不格好な羽でどこまでイリヤに近づくことができるのだろう。



 手を伸ばせばいつでも届く距離にその存在を認識した今なら、それがどれだけ難しいことかよくわかる。
 希望というものの尊さは、眼前に置かれることで嫌というほど理解させられた。なるほど、これが自分の求めて止まないものか、と、どこか茫然としてかえって冷静に客観的に見ることができた。
 自分の求める希望が自分の手一つで簡単に消し飛びかねないという、こんな経験なかなかできるものではない。

 さて、美遊はいったいどうするべきか。イリヤ達の元へ戻ろうとし、その為には聖杯戦争を勝ち抜かなければならず、その為にはイリヤを殺さなくてはならない。

 これではお話にならない。
 明らかに矛盾している。
 望んだものを手にするために望んだものを破壊するなど、破綻もいいところだ。

 そうだ破綻しているのだ前提からしておかしい。もはやこの聖杯戦争は美遊の希望のためのロードではなく絶望のための自爆スイッチに他ならない。前門の虎後門の狼行くも地獄行かぬも地獄にっちもさっちもどっちもこっちもろくでもないしいきはしない。詰み、チェック、チェックメイト、BADEND、コンティニューしますか、コンティニューしますか、コンティニューしますか、10、9、、8、、、7、、、、6、、、、、5、、、、、、4、、、、、、、3、、、、、、、、2、、、、、、、、、1、、、、、、、、、、



 本当に希望への可能性は0だろうか?



 美遊・エーデルフェルトは、なにを『一番』にしているのか。それを自問自答した。自分の命か、未来か、世界の救済か、イリヤの生存か、日常への回帰か。
 どれもだ、どれも一番だ。甲乙つけがたい。それもそうだ。本質的に全ては一体であり同一である。どれか一つ欠けてもその全てが成り立たなくなる。だから、どれも一番ではない。唯一ということはできない。
 ならば、一番はなにか。なんなのか。それは。



「ルビー、ランサー、私のことは黙っておいて。」
「私が全部やる。」
「だから、ランサー。」
「さいごは、お願い。」



 それは、イリヤという『人間』である。
 イリヤならば、人に希望をもたらせる。自分にしたように、大勢の人を前へと押し出し押し出され引っ張り引っ張られる。ならば、美遊にとって唯一大切にするべきことはイリヤを生かすことである。イリヤならば、聖杯を手にしても必ず希望を生んでくれる。
 だが、その為にはこの聖杯戦争は酷すぎる。黒化英霊など足元にも及ばない策謀と謀略渦巻くこの戦いに、イリヤという希望はあまりにも輝きすぎる。綺麗すぎる。

 ならば、必要なのは露払いだ。砕氷船のごとく他のサーヴァントを蹴散らす力だ。二度と、イリヤに手出しさせない。指一本触れさせない。それだけの戦力が必要なのである。そしてその戦力は、手元にある。自身の生存を度外視するならば、その暴力を十二分にふるえる。たとえ道半ばで死のうとも注意をこちらに引き付けられれば、あれだけのランサーなら必ずイリヤを優勝へと導くだろう。



「……!ランサー、そこを退いて。」

 イリヤへの別れの挨拶を済ませて家を出ようとした美遊の前に、カルナは現界した。玄関ドアの前に立っていることもあり、まさしくとおせんぼだ。

「……オレが行こう。」
「それじゃあ意味がない。」
「君にはマスターを送ってほしい。」
「……あなたを今戦わせるわけにはいかない。」

 文字通りの押し問答。それを見て(わかってますね?)(もちろん)と言わんばかりにルビーとサファイアは日本代表レベルのアイコンタクトをした。

「そうですよ!一刻も早く場所を移さないと!この近くまでジェット噴射で飛んできたんですから目立ちまくってますよ!?」
「こちらの位置がバレている可能性は高いと思われます。」
「でもどのマンションかまではーー」
「甘い甘い甘い!それでイリヤさんが襲われたらどうするんです、責任問題ですよ責任問題!!ヤバイですよ~早く逃げないと。」
「あのキャスターのように遠距離から攻撃されることも考えられます。」
「囮役はオレが行く。」
「……」

 それまで言葉少なかった一騎と二本にまくし立てられ、美遊は押し黙る。
 彼らの目的は明らかだ。自分を引き留めようとしている。それはわかる。わかるが。

「……ランサー、お願い。」

 美遊はため息と共にそう言った。イリヤの名前を出されては仕方がない。それに、彼女達の言うことにも一理ある。確かに、この家に長居するのは危険である。今のうちに場所を移すことも悪くない。

(……少しの間、見逃してあげる。)

 美遊は苦い顔でリビングへと戻る。美遊の頭にあるのはイリヤのことだけだ。そう、確かにイリヤの、それはーー



(もう一人のイリヤ。)



【新都、蝉菜マンション/2014年8月1日(金)1151】

【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:待機。
[備考]
●美遊の令呪により超感覚の制御が可能になりました。以降常にフルスペックを発揮可能です。
●各種ライジング武装、超自然発火が使用可能になりました。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
私服、覚悟完了。
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤに自分の存在を知らせずに優勝させる。
1:誰が相手であろうと、絶対にイリヤは殺させない
2:イリヤなら、聖杯をしっかり使ってくれるはず。
3:イリヤを自宅へと送る。
4:アサシンはどこ?
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力及び来歴について詳細に把握しました。
五代雄介についても記録をメモしていますが五代が参加しているとは思っていません。
●冬木市の地方紙に真田幸村の名前と一二行のインタビュー記事が乗っています。他の新聞にも載っているかもしれません。
●ランサー(カルナ)の真名、ステータス、スキル、宝具を確認しました。
●ランサー&イリヤ組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤの存在を知りました。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
睡眠、ダメージ(微・回復中)、髪がちょっと短くなった、私服
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争に優勝してリンさんを生き返らせる
0:………
1:わたしと同じ顔と名前のバーサーカーのマスター…?
2:ランサーさんから離れすぎないようにする
[備考]
●自宅は深山町にあるアインツベルン家(一軒家)です
●変身は現在は解除されています
●ランサー(カルナ)から「日輪よ、具足となれ」を貸与されています

【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha】
[状態]
筋力B(40)
耐久C(30)
敏捷A(50)
魔力B(40)
幸運A+(30)
宝具EX(?)
ダメージ(中・回復中)、実体化。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤスフィールを聖杯へと導く
1:美遊は自身のことをイリヤに伝えるなと言った。オレはーー
2:美遊に興味
[備考]
●セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)の真名を把握しました
●バーサーカー(サイト)の真名を把握しました。
●キャスター(兵部京介)の真名に迫る情報を入手しました。
●アサシン(千手扉間)の情報を入手しました。
●「日輪よ、具足となれ」をイリヤに貸与しているためダメージの回復が遅れています。
返却されれば瞬時に回復するでしょう。
●美遊&バーサーカー組と情報交換しました。少なくとももう一人のイリヤについて話しました。