空は青から赤を経て紫へと変わり、太陽は大地に落ちていく。
 冬木ハイアットホテルの最上階、フロアに四つあるスイートの内の一つからその光景を見ているのは、アサシン・千手扉間。おぶっていた己のマスター・九重りんをベッドへと寝かせると、目に飛び込んでくる陽光を一瞥してドアを閉める。

「どうでしたりんちゃん?」

 ベッドルームから出てきた扉間へそう声をかけてきた日野茜に、「疲れたのか、良く寝ておるわ」と返すと、対面のソファーへと腰かけた。


 ホテルのサーヴァントの多くが美遊・エーデルフェルトからの魔力供給を受けるようになってから、あるいはそれ以前の情報交換もままならず睨み合っていた時から、八組の主従は自然、団体行動をとっていた。それには様々な理由があった。それは動けぬ他の主従の身柄を確保しているからであったり、捕捉した他の主従を監視し続ける為であったり、あるいは単に行動を別にするタイミングを逸したからであったりしたが、一つ言えることはある。それは、団体行動の必要性は時が経つにつれて高まってきていて、現在もそれは増し続けているということだ。
 一堂に会しての情報交換は、各主従それぞれの同盟毎の関係性はもちろん、各主従間での関係性も変化させた。更なる情報交換を望むもの、信頼を強めるものに不信を強めるもの。起こった変化は様々であるが、他者との更なる形と深度での接触を求めるようになることは共通していた。
 それ故に今、茜達病院の同盟はホテルの最上階の一室へと集まっていた。多くのサーヴァントへの魔力供給は、美遊の影響力を増している。彼女が何かしようとすれば他の主従は無下にはなかなかできない。アーチャー・安藤達と行動を共にしていた彼女に引きづられるように、茜達も最上階へと移動したのだ。


 ただ、美遊に連れて移動したとはといえ、同じ『空間』に居るという訳では、ないのだが。


 ガシャン、と僅かな間物思いに耽っていた扉間の耳に軽い音が入ってきて気を取り戻す。目の前のテーブルでは、小さなレンガめいたブロックが散乱していた。

「あれ、うまくしまえない……新品だからかな。」

 せっかくならもう一回どうです、ジェンガ?と振られて、扉間は身を乗り出す。この将棋崩しのようなものをこれまで四人でやってきた。パーティーゲームというものだろうか、下の店で買い出しをしているときに見た覚えがある。
 茜は慣れた手つきでブロックを積み上げていった。「先輩とよくやってて」、そう言った表情はやわらかいものだったが同時にどこか淋しさも感じさせるものだ。

(人数が足りん、か。)

 ちらりと包装の箱を見る。本来はもう少し大人数でやるものなのだろう。それをこの場でわざわざ買ったということは……

「色々と買い込んだようだな。」

 わざわざ今、その事を話題にする必要性はないだろう。そう思い話を買ってきた他の商品へと向ける。何があるかは知っているが、それ故に話題を確実に誘導できる。
 扉間はそう目論むと積まれたジェンガを引き抜きながら茜に聞いた。なおジェンガのルールは麻雀などと違い初心者でも把握は難しくないので省く。

「いや~折角なんでと思って。りんちゃんとお揃いでTシャツとかストラップとか、あとアロマとか買っちゃいました!」
「アロマ……香か。どうりで変わった匂いがすると思った。」
「!実は……さっきサンプルをこぼしちゃって。て言っても殆ど零れてなかったのに、よく気づきましたね。」
「サーヴァントだからな。しかし、その匂いはタマネギのようだが。」
「冬木市の特産品らしいですよ。寝る前に少し嗅ぐとグッスリ寝られるみたいです。全力リラックスですっ!」

 お前には絶対に必要のないものだろう、そう思ったが口には出さない。袋を見れば、そのアロマとやらが二つ入っているのが見えた。おおかた、りんを気づかってのものだろう。
 何気ない心配りができる人間。ジェンガをまた一つ積み上げながらそんなことを考えていると、部屋のドアが開いた。その姿を見ずとも、気配を感じずとも、誰かはわかる。りんを寝かせに行く間にマイケル達を見に行っていたはずだが、少々時間がかかったように思える。

「遅かったな、幸村。」
「ランサー――ああっ!?」

 動揺したのか手先が震えて茜がジェンガを崩す。それに幸村がいつもの様に大袈裟なリアクションを――しない。

(……?)

 扉間と茜が一瞬視線を交わし、怪訝に幸村を見たのは同時であった。

 そこに立っていたのは、やはり幸村であった。それは間違いない。ただ様子がおかしいところがあるとすれば、それは彼もまた怪訝な表情を浮かべていたことだった。
 幸村は目を二人の間で何往復かさせると、確認するかのように扉間に向かって問うた。

「あさしん、ここに我らがいることを知るのは難しい、そうだったな?」

 幸村の要領を得ない問いに扉間が一層怪訝な顔になる。

 今、扉間達がいるホテルの最上階は、元の持ち主によって築かれた二重の陣地に、更に扉間と色丞狂介のキャスター・パピヨンと自らを『代行』と名乗った男のサーヴァント・ドクによる三重の陣地が加わり、五つのそれぞれ異なる技術体系による仕掛けが施された異形の陣地である。この内、元の陣地は秘匿性に優れながらも簡素なものであったため、扉間ら三騎による工作で乗っ取ることに成功していた。その際に不手際や互いの不審な行動は、扉間の見た限りではなかったと思われる。また陣地の構築は元の秘匿性の高さを殺さぬように最低限の結界を除いて隠蔽工作に注力されている。それこそ扉間のような高い感知能力がなければ見つけることは不可能に近いであろう。

 よって扉間の答えは「そうだが」と簡単なもの。

 幸村は一つ頷く。そして茜に向くと言った。

「どうやら警察が来ているようで――」



「冬木警察署生活安全課、尾留川(おるみ)です。あの……日野茜さん、ですよね?」
「はいっ!346プロダクションの日野茜です!!」
「ですよねぇ!やっぱり!」

 ホテル一階のカフェ。
 日野茜はそこで一人の婦警と話していた。
 尾留川と名乗ったその巨乳の婦警の言うことには、なんでもホテルに爆弾がないか捜査に来たという。既に一度ホテルの地下駐車場で爆発が起きていたため警察はそちらの捜査を優先していたが、一段落ついたことで爆破予告があった場所の警戒を強めることにした、とのことだ。

 この情報はそれなりに信憑性があると幸村は念話越しに聞こえてきた情報を口頭で扉間に伝えながら感じていた。彼がその婦警の、より正確に言えば今もホテルマン達を捕まえてなにやら話している警官達の接近に気づけたのは、美遊・エーデルフェルトのバーサーカーに見張られているマイケル達を見舞いに行ったときに、窓からこちらに向かって走ってくる数台のパトカーを目に止めたからだ。方角は先ほどカルナと戦ったスーパー、つまりは警察署の方からである。

『ますたぁ、あさしんが皆に話をし終わるまで時間を稼いでくだされ。』
『わかりましたっ!超スピードで話を引き伸ばします!』

 短くもしっかりと念話を交わす。茜がわざわざ陣地から単独行動で出ていってこうして話しているのは、少しでも扉間がこの事態を他の主従に説明する時間を確保するためだ。実際のところはそれは方便で、この件を機に主導権を握ろうとしていたり警官から情報を引き出そうとしていたり茜について聞き込みでもされる前に姿を表した方がマシだと判断したりもしていたが、建前とは言え目的には変わらない。

 茜は努めてゆっくりと紅茶の入ったティーカップに口をつける。さっきツイッターを見たら自分の名前がトレンド入りしていた。なんでも爆発事件で行方不明になっているらしい。うっかりスマホをフライトモードにしていたこともあって凄まじい量の不在着信が来ていたことも確認した。こんだけ凄い状況なのだ、嫌でも目立つ。現に警官達は皆自分の近くに集まってきていた。足止めの囮には最適であろう。

(アイドルは目立つのが仕事ですからね、全力で時間を稼ぎますっ!!)
「あの、早速で失礼だとは思うんですけど、冬木大橋での爆発事件の被害にあい病院へ搬送、その後病室のベッドの下から爆弾が発見され避難、避難先のスーパーで昼食中に爆発事件に巻き込まれ、更に避難先のこのホテルで駐車場の爆発に巻き込まれた、ということでよろしいでしょうか?」
「はいっ!!そうですっ!!いや~1日でこんなに爆発したのは初めてです!!世の中わからないものですね、ハハハハハ――ハッ!?」

 あれ、これ、私疑われてる?その発想に茜は婦警の顔を見て思い至った。明らかに怪しい人物を見る目で彼女はこちらを見ている。というか自分の周りの警官も全員刑事ドラマの刑事のような眼光だ。ていうか警官達は茜の退路を塞ぐように取り囲んでいる。かなりヤバイ。

 ティーカップを持つ手は今やところてんよりもぷるっぷるである。これはもう囮とかそんなことを言っている場合ではない。このままでは爆弾魔扱いだ。ボンバーっていうのはそういう意味のボンバーじゃないんだ信じてください――


「――うっ!?すみません頭が……」

 日野茜、謎の頭痛を覚え死亡寸前。



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1837】


【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(5)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
実体化、変化、気配感知、美遊(サファイア)から魔力供給、疲労(微)、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1.警察が来ていることを他の主従に説明する。
2:ワイルド・ドッグからスーパーでの出来事について聞き出したりして情報の整理に勤める。
3.あのサーヴァント(ルナ)、万華鏡写輪眼に九尾の人柱力、まさか……
4.ランサー(カルナ)のマスターはーー。
5.穢土転生の準備を進める。
6.魂喰いの罪を擦り付ける相手は慎重に選定するがそれはそれとして早く魂喰いしないと。
7.三つの問題は一先ず後回しでよいだろう。
8.バーサーカー(ヘラクレス)は現在は泳がせる。逃げたサーヴァント(サイト)も気になるが後回し。
9.聖杯を入手できなかった場合のことを考え、聖杯を託すに足る者を探す。まずはランサーのマスター(日野茜)。
10.マスター(九重りん)の願いにうちはの影を感じて……?
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●ランサー・真田幸村達とアーチャー・ワイルド・ドッグ達とフワッとした同盟を結びました。期限は8月8日です。またランサーのマスターがヒノアカネだと認識しました。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●三谷亘の令呪二画付の肉塊が封印された巻物を九重りんの私物に紛れ込ませました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●ホテルの上から三階までを陣地化しました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して魔力供給を受けています。美遊から15メートル以内で実体化することでサファイアの匙加減で魔力を供給されます。

【九重りん@こどものじかん】
[状態]
精神的ショック(大)、手足に火傷(ほぼ完治)、覚悟?
[装備]
着替え、名前のストラップ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争で優勝を目指す。
0.???
1.強くなりたい。
2 アサシンへ(千手扉間)の魔力供給がつらい。
[備考]
●予選で入院期間が長かったためか引き続き入院しています。


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
疲労(大)、魔力消費(大)、骨にひびと内蔵にダメージ、ダメージ(大)、美遊(サファイア)から魔力供給、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:アーチャー(ワイルド・ドッグ)の汚名を灌ぎたい。
2:ドクに恩義。
3:ますたぁ(茜)への申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
4:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)との再戦を考えていたが……?
[備考]
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●冬木市にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。
●ランサー・カルナの真名を把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●アーチャー(まほろ)、狂介&キャスターに不信を抱きました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
体調不良、頭にタンコブ(応急処置済)、ところてんよりもぷるっぷる、謎の頭痛、死亡寸前、???
[装備]
着替え、名前のストラップ 、ジェンガ、タマネギのアロマ×2
[残存令呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .うっ!?頭が……
2.アーチャー(ワイルド・ドッグ)さんの誤解を解く。でもその前に私が爆弾魔という誤解を解く。
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。 所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●日本全国にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』、『ボンバー』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●病室のベッドの下にアーチャー(ワイルド・ドッグ)が仕掛けた爆弾を発見しました。数名の病院関係者と警察関係者、並びに若干の公務員がこの事を知っています。
●ホテルにいる主従達と情報交換をしました。
●ツイッターでトレンド入りしました。
●警察にマークされました。
最終更新:2016年11月04日 00:55