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「一度切るぞ……誰だ?」

 首にスマホを挟み通話していた色丞狂介から素早く取り上げると、キャスター・パピヨンはそれだけ言って電話を切り扉へと視線を向けた。
 つられて視線を向ける麻雀をしていた一堂の前で、扉がノックの音ともに微かに揺れる。続けて聞こえた声色はアサシン・千手扉間のものであった。
 ちらとスマホ。目の前で38分になる。

 話しを聞くに、警察が来たらしい。マスターかどうかは不明で、日野茜が一階で二十人ほど足止めをしているとのことであった。

 それを聞いてパピヨンは小さく鼻を鳴らした。気にくわないのか仮面から覗く目が一層濁る。スマホを狂介に放ると麻雀のルールブックを瞬く間にレオタードのどこかへ収納しながら言った。

「一度全員最上階に集めよう。パン屋、アサシン達と幸村のマスターを回収しろ。俺と狂介は代行達を呼んでくる。」



『雑用は終わった、行くぞ。二三階下に良く似たサーヴァントの気配が二つある。大方、三十階のレストランにいるだろうな。』
『なるほど……あれ?サーヴァントの気配が二つって……』
『もちろん、あの『ドク』と呼ばれた医者のサーヴァントと、『代行』と呼ばれたマスター風のサーヴァントだ……気を抜くなよ、恐らく本体は『代行』の方だ。』
『ちょっと待ってくれよ!』

 立ち止まることもせず鬱陶しそうに一瞥して前を行くキャスターに、狂介は小走りで追い付き回り込んだ。と同時にエレベーターのボタンを押す。

『あの、えっと、太っ腹のマスターがサーヴァント?でも本体って、それじゃマスターは?』
『さあ?生きてるのか死んでるのか。それ以前に、その質問に意味があるのか。考えようとしても材料が足らない。』

 答えになっていない答えに頭上に?を浮かべる狂介はもう一度キャスターに質問しようとして、やめた。彼が見たキャスターの顔は、普段狂介に向ける侮蔑や嘲笑といったものとは程遠い、ほんの時々にしか見せない哲学者を思わせるような――といっても、狂介が知っている哲学者の顔など教科書の中に出てくるギリシャ彫刻ぐらいのものだが、キャスターの白い肌はますますそれを思わせた――どこか遠くを見た眼をしていた。そんなことを考えている間に螺旋階段にぐるりと囲まれたエレベーターは終点へとたどり着いた。

「『ドク』と、ライダーか。緊急の要件だ、拠点に全員集まってもらう。」

 スイートルーム用のエレベーターを降りてすぐに『教授』と『代行』は見つかった。ここ三十階は一般のエレベーターと専用エレベーターの唯一の中継地点であることを考えると、もしかしたら『代行』の方はこの階にあるレストランに潜んでいたのかもしれない、なんて三人と共に元来た道を戻りながら考える。

 いや、それより、もっと重要な……

『パピヨン、なんでライダーがライダーだってわかったんだ?消去法って訳じゃないんだろ?』

 浮遊感、からの重圧を感じると、エレベーターのドアは開いた。キャスターは、またさっきの遠い眼をしていた。違いがあるとすれば、その視線はどこかではなく狂介を見ていることだろうか。
 最上階の一室、四つある内の北西側、瀬戸内を望むそこへと電子ロックを解除して入る。廊下の先のドアを開ければ、まだ病院組もランサー・アリシアも戻ってきてはいないようだ。

(数分で話せるものでもないが……)
『狂介、『ルールブック』の内容についてどう思う。』

 ライダーの登場に様々な反応を返す一堂を見ながら、キャスターは問いかけた。



(『ルールブック』って……ようするにスーパーでのことだよな。)

 キャスターからの問いかけに狂介は今日で何度目かの真剣な考察をする。

(ライダーと関係があるかってことか?)
(病院の方のアーチャーがライダーとグルって可能性……)
(て、それがライダーと関係あるのか?)
(ない、よな。)
(……やっぱり、消去法?)
(ダメだわからない。ようし、一度ライダーから離れよう。他のサーヴァントはどうだろう。)
(……ていっても、何が普通のサーヴァントかなんてわからないし……同じクラスのもいたけど比較対象にするのも……!)
『アーチャーとランサーに関係あるのか?』
『ふん……』

 しばらくの沈黙の後に出された狂介の質問ともとれる回答。
 それをキャスターは聞くと、一つ頷いた。その答えは、キャスターの求めていたものと同じ方向性だったから。

『ま、正解か。良いだろう、懇切丁寧に教えてやる。狂介、今までに会った三騎のランサーは覚えてるな。ならステータスは?』
『えっと、カルナは防御が3で素早さと幸運が5だったっけ。あと攻撃と魔力は4。幸村は攻撃と防御が4であとは全部3。赤いバンダナのランサーが攻撃と防御が1で素早さが2、魔力が3で幸運が5だな。』
『お前こういうのはしっかり覚えてるんだな。』
『バカにするな。』
『誉めてるのさ、ありがたく受けとれ。じゃあ本題だ。あのスーパーの戦いのカルナは弱すぎる、もしくは強すぎる。』

 どっちだよ、と言いたげな視線を狂介は向けた。

『整理するぞ。まずカルナだがこいつの状態は多少の魔力消費以外は不明。幸村は連戦、消耗し、その後いくらか回復したと思われる。アーチャーはいずれも片腕を吹き飛ばされている。これが俺達に知ることができた範囲の情報だ。』

 こちらに確認するように首を傾げて見せるキャスターに狂介は頷く。それは先程の筆談で共有した情報だった。

『このサーヴァント達が戦うわけだがここで第一の不自然な点がある。『なぜカルナを前にして共闘できたか』だ。もちろん共闘する理由はいくらでも推察できる。だがそれを上回る共闘を困難にする理由もある。言うまでもないが、共闘の隙をついて他のマスターを殺そうとするサーヴァントがいないなんて保証はないからな。』
『だがこれは一度考えることを保留しておく。当事者達にしかわからないこともあれば本来は敵である他の人間に伝える訳にはいかないこともあるだろう。聞き出したところでその真偽を確かめる時間も手間もない。』

 そんなものか、というのが狂介のいつわざる感想だ。だが同時にそうかもしれないとも思った。普通の取り調べでもそうそう自白は取れないのだ、殺し合いをしている今なら確かにそうだろう。

『故に第二の不自然な点を先に考えるが、これがさっき言ったことだ。言い換えれば、『なぜカルナとの戦いは痛み分けに終わったか』だ。』
『ステータスを見ればわかるがカルナは耐久以外は幸村の上位互換と言える。単純なスペックと幸村の状態を考えれば圧倒できたはずだ。そのカルナに対して幸村と安藤、もう一人のアーチャーが共同戦線をとったが所詮は付け焼き刃、いくら奴らが英霊でもカルナも英霊なのだ、さしたるプラスにはならないだろう。つまりあの戦いはカルナが勝って当然だったはずだ。』
『ではなぜ勝てなかった。実はカルナは大きく消耗していた?ステータスは飾り?スキルや宝具は幸村達の方が有効だった?三人の連携がとれていた?令呪での能力上昇が大きかった?それらしい理由はいくらか挙げられるがならば今度はなぜカルナを殺せなかったかが妙だ。一発でも銃弾が当たればそこでゲームセットだったろうからな。』

 『そうかな?』と疑問に思うと同時に念話する。キャスターの言いたいこともわからないわけではないが、とはいえそれは考えすぎなのではと思えた。それこそゲームのようにたまたまお互いに防御力が高過ぎて攻撃しても1ぐらいしかダメージが入らなかったのかもしれない。
 狂介がそう言うと『お前もなかなかエキセントリックだな』と笑って、キャスターは話しを続けた。

『まず考えたのはカルナとあの三人の内の何人か……なんなら全員が通じていてあの戦い事態が八百長だった可能性だ。奴らの話しを纏めると数珠繋ぎで何かしらの面識があったのは間違いないからな、これが一番妥当な答えだろう。適当に戦っていたが部外者であるお前が介入してきて目眩ましをして逃げ出した、という筋書きだ。もっともこれは奴らが共闘できた理由もわからない以上、やはり熟考するのは後だ。』
『次に考えたのはさっきお前が言ったように攻撃力に比べて防御力が俺達が思っている以上に高い可能性。互いに臨戦体制の相手を殺しきるだけの火力を持たないというな。まあこれだとアーチャーが豆鉄砲を持ってることになる上にさっきの駐車場での戦いの説明がつかなくなる。どちらも銃撃戦はしていたからな。』
『そこで考えられるのはランサーとアーチャーに相性がある可能性だ。ランサーがグーでアーチャーがチョキ、あいこの場合は拮抗、といった具合で。これならさっきの駐車場でお前が決定打を与えたことにも一応理由はつく。なんなら三騎士で三竦みの関係にあるのかもしれない。』
『もう一つ考えられるのはランサーが防御または回避に特化したクラスである可能性だ。それこそゲームのように、あるいはスポーツのポジションのように守備に重点を置いたクラスという風に。いっそもっとゲーム的に『不利な状況ほどボーナスを得る』と考えてよいかもしれんな。そうすればあのパン屋がイリヤのバーサーカーに殺されなかったのにも理由がつく。』

 他の人間は皆突然現れたライダーとの話しに集中しているのを良いことにキャスターはつらつらと話し続ける。その念話の内容はとっぴなものだったが、狂介にそれを反論する言葉はすぐには思いつかなかった。それもそのはずでキャスターの言っていることにはなんら確証のない机上の空論なのだ、否定しようとすれば同じように仮説で否定するほかない。もっともそれ以上に狂介にとって頭を占めることが出来たからではあるのだが。それは……

『それってイリヤちゃんのバーサーカーがバンダナのランサーと戦ったってことか?』
『気づいてなかったのか?二人の話しを纏めれば明らかにそうだろう。だいたい考えてみろ、ランサー達が言うような筋肉ムキムキマッチョマンの鈍色バーサーカーがそう何人もいるわけない。』
『そっかぁ……でも驚いたなあ……』
『勝手に驚いてろ。これから一番重要なところだ。今までに話したことは仮説の為の仮説、頭の片隅に入れておけばいいがここからは集中しろ。』
『まだあるのか……』

 そういえばこんなに長くパピヨンと話したのは初めてだな、とぼんやり思いながら狂介はキャスターの念話を待った。相変わらずライダー達は他の人間と話している。電子音が鳴った。美遊と名乗った黒いバーサーカーのマスターがスマホを出している。時計を見たらちょうど七時だった。幸村達が遅いことが気になったが、今は一端忘れよう。

『狂介、予選の時に一度俺のスキルを見せたはずだが、陣地作成と道具作成、他四つのスキルが見えたと言ったな。』
『そう。数字とか絵文字とかと一緒に見えたと思うけど。』
『その時見えたスキルだが、四つのスキルは恐らく俺固有のスキルだ。言い方が悪いか?俺というサーヴァントを評価したスキルだ。』
『スキルってそういうものじゃないか?』
『ああ。だが陣地作成と道具作成、この二つのスキルは俺以外でも持っていておかしくないだろう。げんにアサシンとそこのメガネはさっき陣地作成をしたことになっている。本当にしたかはどうかとしても、少なくとも俺以外にも充分可能だろう。キャスターにのみ該当するスキルという線もある。』
『いやそれは言ってること矛盾してるだろ。それじゃアサシンが陣地作成しようとしたのはおかしくないか。』
『スキルとしての陣地作成ができなくても単なる技術としての陣地作成は可能だろう。キャスターというクラスのみスキルとして行える、そうとでも考えなければキャスターというクラスになんのメリットもない。それに俺も流石に、アサシンが実はキャスターだがその設定を忘れてボロを出した、とは思わん。』

 そんなに色々疑ってるのか、と溢す狂介に『用心深いと言え』と念話が届いたところで部屋のドアが開いた。幸村達はようやく戻ってきたようで、茜などメイクがあるとはいえ青い顔をしている。あちらも色々と苦労があったようだ。「随分遅かったな」とのキャスターの言葉に「あまりに時間がかかったので儂が連れ出した。下の奴らはマスターではないと思うがな」とアサシンが言う辺り、何か魔術的なことをしたのかもしれない。
 いずれにせよホテルにいる全員が集まったのだ、場の話の流れは本題である警察の対応へと移ろい始めていた。今まで画面越しにしか会話に加わってこなかったライダーの登場と合わせて話すべきことは多い。そう思いキャスターの話しを狂介は急かした。

『では結論から言おう。サーヴァントはクラスに応じてそれぞれ得意な戦術等が設定されている可能性がある。キャスターなら籠城戦と後方支援、ランサーなら防衛戦、アーチャーなら砲撃、アサシンなら特殊戦、ライダーなら戦略レベルでの用兵――もっと言えばサーヴァントの召喚――という具合に。それぞれのクラスがなぜそのような戦術を得手とするかについては割愛するが、一応ライダーについては話しておく。』
『スーパーで死んだ茶色のスーツのサーヴァントとそこのメガネ、そして地下駐車場の猫耳は『クラスが表示されないサーヴァント』だった。もちろんこれはなんらかのサーヴァントの能力による隠蔽工作の可能性がある。例えばキャスターがクラススキルを見えないようにしたのかもしれない。それにスーツの方はのび太達の見間違いか虚偽の可能性もある。だが無関係とする判断材料もない以上三者にはなんらかの関係があると想定しておく。』
『この三人の共通点はなにか。情報が少なくて判断が難しいが、『情報が少ない』という共通点がある。この三人はそれぞれマスターの情報がなかった。あるタイミングまでは。』
『このホテルにサーヴァントが八人集まりスーツのサーヴァントの情報が共有された。この時になってライダーはメガネのマスターとして出てきた。俺はこの時まであの三人をルーラーないしそれに準ずるものとも考えていたが、驚かされたよ。このタイミングで画面越しとはいえ名乗り出るデメリットは大きいはずだからな。』
『考えられるのはスーツのサーヴァントのマスターにでも脅迫されているぐらいだがそれすら極端なケースだ、考えにくい。ではあのことでのメリットはなんだ?奴はセイバーを探していたがまさかその為に?しかしその程度のメリットでも奴には特別な意味があるとすれば。』
『青いセイバーとの接触が、どのような形であれ奴にとってはプラスとなる。こうとでも考えなければ不自然極まる。爆破予告までしてあぶり出そうとしたんだ、自殺志願者でもなければあんなことはしない。青いセイバーはライダーにとっては大きなメリットを生じさせる存在のはずだ。それこそ聖杯戦争を決定づけるようなな。』
『だがこれも疑問点がある。マスターがそんな影響力をなぜ行使できるかだ。そんなマスターがいるならサーヴァントの必要性はなくなる。そんなことができるマスターならサーヴァントとして呼ばれるだろう。そう考えたら奴がサーヴァントであるとすればつじつまがあった。マスターの役割を兼ねる指揮者のサーヴァント、そんな英霊がいても不思議ではない。』
『まあ……俺も実物を見るまでは半信半疑だったが。』

 サーヴァントを従えるサーヴァント。本人が目の前にいるとはいえ狂介はすぐには飲み込めそうになかった。
 それ以前の問題としてとっくに狂介の頭はパンク寸前である。とりあえずライダーがクラスのないサーヴァントのマスターでそれぞれサーヴァントは得意な戦法があるというぐらいはわかった。それ以外にも色々と覚えておくべきこともあった気がするが。

(まあ……ライダー達の話始まったしいっか……)

 どうやら冬木市とは関係ないところで色々なことがあったらしい。テレビでは七時のニュースで偉い警官や政治家が冬木について語っていてどうやら相当大事になっているようだ。まずは現状を把握するほうが大事だろう、そう考えると狂介は話の輪に加わっていった。



【新都・冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)1903】


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
疲労(中)、精神的疲労(大)、ライダーを警戒。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.ライダーが色々と気になる。
2.もうホテルで陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ、ワイルド・ドッグの服と携帯電話所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)、ルーラー(ミュウイチゴ)、アーチャー(まほろ)、アーチャー(ワイルド・ドック)、ランサー(真田幸村)、ランサー(カルナ)、シュレディンガー准尉、ランサー(アリシア)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)、ドクのステータスを把握しました。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●マイケル&アーチャー、茜&ランサー、アサシン、ドク&少佐に不信を抱きました。特に少佐を警戒しています。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化したり霊体化したり。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.面白くなってきたな。
2.ホテル最上階で陣地作成。なんなら特殊核金も。
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●アーチャー(まほろ)に興味があります。
●ホテルにいる主従達と情報交換しました。
●ホテル最上階のイサコと兵部京介の魔術工房を乗っ取りました。どのようなことが起こるかは不明です。
●野比のび太、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、美遊・エーデルフェルト、高遠いおり&ランサー(アリシア・メルキオット)間で情報交換を行いました。