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「それでね、やっぱりこれかなって。」
「でもお昼にも食べたでしょ。」
「ほら、家で作るのと違うし。」
「焼きそば家で作ったことないからわかんないわ。」


 しれっとNPCに暗示をかけしれっと鍵を受け取りしれっと衛宮切嗣達が拠点にしたのは、家主が勝手知ったる衛宮邸。そこで竜堂ルナはやけに馴れた手つきで切嗣に監視されたバーサーカーに監視されたアーチャーに監視されながら夕飯の焼きそばを炒めていた。



 話は四時間ほど前にさかのぼる。バッティングセンターで衛宮切嗣は、この聖杯戦争で始めてと言えるまともな魔術師と出会った。出会ったといってもNPCなので結局切嗣はルナ達以外の他の参加者とは出会っていないも同然なのだがそれはともかく、彼はそこで魔術師としてNPCから聖杯戦争の情報を聞き出すことに成功していた。

 曰く、冬木の聖杯は遠坂家当主の遠坂凛らにより数年前に破壊されたはずなのにどういうわけかまた聖杯戦争が行われている。
 曰く、その遠坂凛は今はロンドンにいるはずだが行方不明になっていて聖杯戦争の監督役を務められる人間が誰も冬木にいない。
 曰く、そのために神秘の秘匿が行われていないとして魔術教会や聖堂教会が明日にでも介入してくる。
 曰く、それに先立って警察や自衛隊が冬木に入り表向きの事態の収拾を図る。

 自衛隊が出張る時点でもはや事態の収拾どころの話ではないと日本の事情に通じた魔術師ならばわかるだろうが、それでも動かさなくてはならないレベルで深刻な影響があるのだろうと切嗣は察した。この時切嗣は始めてカルナの姿がインターネットを通じて全世界に目撃されたことを知ったのだ。彼としては確かにカルナの姿はそれこそ千人単位で見られたと想定していたが、それは第四次聖杯戦争の海魔等も同じである。あの時も相当事後処理に手間取ったというがそれはあくまで日本の一部で話題になる程度のものでありまさか世界規模で注目されることになるなどとはさすがに考えていなかった。聞けば、既に十カ国以上のマスメディアと、十や二十では済まない数の外交官が冬木に入っているという。いわんや日本のテレビ局などドラマの再放送を潰してまで冬木市を生中継し続け、テレビ東京さえもヘリを飛ばしている。二十年の間に進んだ情報化は聖杯戦争のあり方を大きく変えていたことに、切嗣はようやく気づいたのだ。
 さて、ここで切嗣が抱いた感情は、まずは安堵である。幸か不幸か自分達は開戦からずっとあの色んな意味でバーサーカーな主従に振り回されたせいで全く聖杯戦争らしきことはしていない。どこの世界にサーヴァントを実体化させて連れ歩いたり一緒に食事したりバッティングセンターでバットを振るうマスターがいようか。だがそのおかげと言ってはなんだが、四人中二人がサーヴァントであるにも関わらず魔術師のNPC相手にすら聖杯戦争の参加者とは思われていなかった。あのバッティングセンターでのことも、神秘の秘匿に無頓着な子供が遊びに魔術を使ったからNPCが隠ぺいしていたというだけで、ようは子供の火遊びぐらいにしか認証されていなかったのだ。実際、アーチャーもバーサーカーも表に出ている魔力だけならば魔術師といっても通じるレベルではあるので誤認されるのもそう不思議ではないのだが嬉しい誤算ではあった。
 そして次に、切嗣はあるプランを思いついた。この聖杯戦争に参戦以来何度か考えはしたが非現実的だとして頭の中で却下し、本選が始まってからはバーサーカー主従のせいで諦めていたそれだが、現実の方が大きく変わってくれたおかげで目処が立ったのだ。即ち。


「おい、もっと離れ……いや、近づけ。少しでも銃に触れればお前の首を飛ばすぞ。」
「安心して、それより早く私がアンタの首をはねる。」
「……こっちも、食事の前に血生臭いことはしたくないさ。」
「ご飯の時ぐらいなかよくしませんか……あ、切嗣さんそこのソース取ってください。」

 衛宮切嗣がコートの下に提げるのは自動小銃。彼は自衛隊から装備を奪取することに成功していた。



「ほんとだ、けっこう簡単。」

 話は三時間ほど前にさかのぼる。アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)は自衛隊の集結地である穂群原学園のに赴いていた。バッティングセンターを後にして、切嗣がルナ達を情報収集の名目で丸め込んで避難所も兼ねたそこに向かうと、彼女は転移を繰り返して自衛隊装備の万引き、もとい奪取に勤めていたのだ――ようやく念話以外で魔術を使ったと思ったらただの泥棒だったりそのせいで知らぬ間に翠屋の同盟とも間桐邸の同盟ともホテルの同盟とも彼女の妹であるイリヤとも出会う機会をまたも逸してしまったのだが、銃とか手に入れるためだし仕方ないね――。
 レンタルしたekスペースの後部座席を倒して荷台を広げると、アーチャーの不在についてバーサーカーから問い詰められる切嗣に足止めを任せて軍事物資を詰め込んでいく。そして素早く切嗣の元に戻り、バーサーカー(ヒロ)をなだめてから再び転移で泥棒し、詰め込み、なだめに戻る。この三拍子をぐるぐる繰り返しながら彼女は荷台に武器を詰め込めるだけ詰め込んでいた。はっきり言ってやっていることは相当地味である。ただ監視の目を掻い潜って実体化して手に持てるだけ物を持って車までワープしているだけだ。だが車に戻って他の場所で情報収集をしようという段になってバーサーカー主従が武器庫と化したそれに驚いたり席が二つしかなくなったのでサーヴァント二人は霊体化して屋根の上に乗るはめになったり自衛隊員が青い顔をしながら血眼になってたりともろもろあったが、こうしてアーチャー主従は大量の武器をついに入手することに成功したのであった。

 ところで転移というのはそれなりに魔力を消費する魔術である。彼女はマスターである切嗣がイメージする、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンのイメージに引きずられている為に小聖杯としてのイリヤが強く出ているので燃費の軽いサーヴァントとなっていて、更にマスターの切嗣も魔力を持っている上に主従の相性も良いので、普通ならば魔力切れなどという事態は起こりにくいのだが、やはり何事にも例外はあるのだ。さしものアーチャーも何度も何度も転移を繰り返せばガス欠になるのは避けられなかった。
 アーチャー主従がバーサーカーと縁を切らずに衛宮邸を陣地に選んだのはそこにある。幸運にも、バーサーカー主従はアーチャーの消耗には気づいていなかった。ならば拮抗状態を維持しながら有事の際の盾にできると踏んだのだ。彼等が魔力供給をするまでの。要するに衛宮邸はヤリ部屋である。

 アーチャーとしては、魔力供給は必要とあらば吝かではなかった。魔力補給のスキルでルナとバーサーカーからは魔力を効率良く収奪できる。できるし吝かではないのだが、だからといってやりたくはないのだ。彼女にだって誰とキスするか選ぶ権利がある。
 ルナとキスすればイリヤ程とは言わずとも相当の魔力を獲られるだろうが、申し訳無いがルナへの好感度の点でノーサンキューである。吸い殺して良いのなら苦渋の決断もしなくはないが、さすがにキスで人を殺すのはアーチャー本人としても如何なものかと思っていた。
 バーサーカーなど論外だ。というかそんなことをしようとすれば確実に殺しに向かってくるだろう。このアーチャーの考えは正しく、もしそんなことを提案すればバーサーカーは己とマスターの貞操のために割りと真剣に同盟の破棄も考え出すので縁を切りたいアーチャーとしてはある意味正解ではあるのだが、それはバーサーカーの狂化スキルを作動させかねない諸刃の剣でもあるので自重しておくのがベターである。
 というわけでこうなると残っているのは一人だ。つまり切嗣だ。同性ではないため本来は魔力供給の効率はそこまで高くはないのだが、父娘であるために相性はバツグンであるのが大きなメリットである。と同時に大きなデメリットでもあった。さすがに彼女としても実の父親とキスするのには若干の抵抗がある。一等親はまずいだろ一等親は。

 どうするにしてもとりあえずシャワーを浴びてから考えたい。略奪した武器を自衛隊に見つからぬように素早く学校から離脱すると、クロエ主従は早急に拠点を探していったん落ち着くことを選んだ。いつまでも根無し草というわけにはいかないからだ。そうして切嗣が拠点と決めたのが、ここの冬木でも変わらずにあった衛宮邸であった。



「焼きそば!」

 ずるずる。

「うん、おいしいっ!」


「改めて考えるとサーヴァントは食べる必要は無いのではないか……あ、美味しい。」
「なんだろう……無駄に美味しくてイラッとくる。」
(悪くない。)

 そうこうあって衛宮邸、順に入浴を終えた一同は互いに間合いの一歩外に座りテーブルを囲んでいた。
 元の家主が丁寧だったのか屋敷を管理していた人間が気配りのできる人間だったのかは不明だが、衛宮邸には拠点として生活を送る上で欲しい物は一通り揃っている。さすがに細々とした日用品は買いたさざるをえなかったが、彼が生前誂えた鳴子もそのままあり、懐が寂しい切嗣にとってはこれ以上ないものと言えよう。もっともあまりに自分の知るその家とそっくりなそれになにか居心地の悪いものを感じるのも確かだが。
 何はともあれ念願の拠点が手に入ったことは全員にとってプラスであるのは間違いなかった。食事と休息でそれぞれの魔力もある程度は回復している。この時時刻は八時過ぎであった。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



 そして現在、時刻は零時五分前。

「さてさて……」

 クロはいつもの赤いアレではなく、いくらか落ち着いた感じのパジャマに身を包み布団の上で正座していた。

 バーサーカー達ははなれで既に就寝に入りつつある。丸一日近く続いた冷戦は、多少の距離をとって睨み合う程度には落ち着いていた。そしてバーサーカー達は知らないことだが、彼女達が仮にクロ達を襲おうとすればその時点で鳴子が鳴り危機を知らせる。あのわかりやすい二人ならば確実に引っ掛かるであろう。誰にも邪魔させない――

「――スキン付けないほうが良いかな。」

 切嗣は襖一枚隔てた隣室で盗んできた銃の手入れを行っている。かすかに油の匂いが漏れ出るそれをクロは小悪魔の眼光で見つめた。


 父娘共にいくらか休んで魔力を回復しているが、やはり未だ本調子とは言えない。今夜中に戦闘が無いのなら急ぐ必要もないが、今日一日を振り返るとそれに期待するのは些か虫が良すぎるだろう。そしてなにより、あのバーサーカー達というイレギュラーが存在することをこれまでで散々に痛感している。彼女達がいなければ本日のクロ達の動きは全く違ったものであっただろう。ならば不測の事態の備えとして手っ取り早くパスを拡げて魔力供給するのも戦略の一つである。別にクロがエッチしたいが為にこんなことを考えているわけではないということだけはハッキリとさせておこう。

 さて、ここでクロには三つの選択肢がある。つまり、Aか、Bか、あるいはCかだ。

 Aの場合は、普段彼女がやっている通りの魔力供給であるため非常に安定して行えるのがメリットだ。同性でないためいくらか勝手は違うが、親子ならば効率良いはずである。もしやるのであればこれが望ましいであろう。なにより健全だ。
 Bの場合は、手続き的にはぺろぺろからのちゅーちゅーからのごっくんである。厳密に言えばぺろぺろは省けるしなんならちゅーちゅーもオミットできるが、しかし間違って顔に掛けられる可能性を考えればここは安定を取るべきであろう。ゴムに出したものを啜って飲むという手もあるが、さすがにそんな痴女みたいな変態っぽいことはしたくない。粘膜の接触により精神の同調を図れることもあり、基本に忠実に行くのが望ましいと言える。ただ一つ問題があるとすれば、クロ個人としてはキスしたこともない相手とそういうことをするのは存外憚られるということだ。
 Cの場合は、まず物理的な問題が立ちはだかる。クロは確認したことがないのでわからないが、果たして挿入るのか不透明だ。これは大きなリスクである。聖杯としての力を使えば多少の困難も無理でこじ開けられるが、そもそも魔力目的でやるのに魔力消費をしてしまえば本末転倒甚だしい。そこでマリモクの観点からすると妥協案として浮かび上がってくるのが、彼女の鶴翼三連が如く後ろを使うという方法である。こちらならある程度の冗長性があるので諸々のリスクを軽減できる。しかし、どうだろう。前より先に後ろというのはアブノーマルが過ぎるのではないだろうか。だいたい近くのコンビニにイチジク浣腸を買いに行くなど恥ずかしすぎる。また根本的な問題としてどの程度魔力供給できるのかがブラックボックスだ。どうせ使わないところに生命力を貯めるくらいなら少しでもクロに還元するのは悪いアイデアではないのだが、体内の深部での接触が効率的とはいえどあいにく彼女の知識を持ってしても前と後ろのどちらの方が効率が良いかはわからないのである。なんだかエロゲみたいな話だが実際そうなんだからしかたない。人体はそれそのものが神秘なのだ。


 むふー、と息を吐くと枕元のティッシュの位置を微調整する。やるんなら早い方が良い。しかし、そうやすやす決断を下して良いものでもないのだ。今後に大きく関わってくる。ちらっとクロは時計を見た。まもなく零時。残り数十秒で決断できないのなら、やめておくのが良いだろう。確かに聖杯戦争が激化すると予想される夜を今のコンディションで迎えるのは怖いものがあるが、だが同時に魔力供給後のコンディションに不安があるのも間違いない。万が一痔などで遅れを取りでもすれば目も当てられない。初めては血が出るという伝承を考えればやらないのもあるのだ。だいたいローションもないしそれに――

『――マイ――スト――なさ――すか――』

『――!?念話っ!』

 突如頭の中に響いた声でクロは意識を己の内から外へと向けた。目の端に見えた時計の短針と長針は重なり、秒針のみが機械的に動いている。いつの間にか日付は変わっていた。
 するりと襖も開く。切嗣は口に指を当てて耳を済ませているようで、クロもそれにならった。

『―なさん―一目は――しょうか―こんばんは、私―ルーラ――達を開始―します。』

 なおも念話は続く。その内容から、これがルーラーの通達だと理解した。聖杯戦争の進捗、それによる被害、そして唐突な期間の短縮。話し手のあどけない口調に対してあまりにも重要な情報が次々に伝えられていく。そして念話からイリヤの名前が出てきてクロと切嗣が目を合わせた次の瞬間、念話がイリヤのサーヴァントの真名を告げた途中でいきなり終わり、一泊置いて轟音と地鳴りが響いた。

(残り十六組――七騎じゃなくて十六騎、ううん、それ以上、クラスのダブりもある――)

(NPC――そう言うからには管理してるはず。じゃあバグ?それともわざと――)

(討伐令――生死問わずで、五組、五画の令呪、一組一画?――)

(通達の中断――ルーラーが殺された、ないし襲われた……ルーラーも恐れない、違う、恐れてるからこそ邪魔な存在を消しに動いた――)

(イリヤ――ランサー・カルナのマスター……ハメられたの、それとも、どうして――)

「アーチャーさん!切嗣さん!大丈――」

「――!いつの間にっ!」

 混乱するクロのすぐ後ろから聞こえたのはルナの声。転移かと見まごうようなステップで背後に現れた彼女に、クロは反射的に投影を行うと両手に持ったそれを振り抜いた。それをルナは「うわっ!」と一つ叫び声を上げると共に裏拳で弾き飛ばす。左右に飛んでいった双剣が襖の前で一瞬止まり、逆回しのように戻ってくる。鳴子が鳴る。挟み撃ちする形でルナに迫る白と黒のそれを髑髏の左于が掴むとその双眸から睨むように炎が上がった。

「説明してもらおうか……色々と、な。」

 ヒロの目が怪しく憎悪に揺らめく。その手から立ち上る熱気にクロの頬を汗が伝った。



 ■  ■   ■    ■     ■      ■       ■        



「転移に暗示とは、弓兵とは思えない器用さだな。」
「ありがと。鎌仕舞ってくれる?」

 検問を暗示でやり過ごすと切嗣は車の南下を再開する。目標は、深山町の端、南部の森。そこに人知れず存在するアインツベルン城である。


「ランサー・カルナの居場所に心当たりがある。」

 衛宮切嗣がそう切りだしたのは、アーチャー・クロエの喉にバーサーカー・ヒロの大鎌が突きつけられている時のことであった。急に後ろから声をかけて驚かせた、とルナが謝罪するもサーヴァント同士が睨み合う一触即発の状況で、その口から発せられたのは、この状況とは何ら関係のないことである。
 舐めているのか?そうヒロは疑心と反感を強めるも、鎌を努めて抑えクロの頸を撥ねぬようにする。先のアーチャーの振る舞いは非礼の極みでありこちらにも一里の非はあれど今ここでその魂を冥界に送ってもなんら問題はないが、彼らにはまだ利用価値がある。もっとも、魔力を消耗しているこの二人を切り捨てたところで痛手ではないが、だがだからこそ殺す価値がない。その気になれば何時でも殺せるのだ、ボロ雑巾のようになるまで利用するのが賢い選択であろう。

「話せ。」

 故にここは切嗣の誘いに乗る、そうヒロは選んだ。

「さっきルーラーに呼ばれたカルナのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは僕の娘だ。」
「……なんだと?」

 クロが思わず切嗣を振り向く。その動きに思わず撥ねそうになるも、ヒロは堪えて切嗣に問い掛けた。

「正しくは、僕の娘と同姓同名に聞こえた。確かめるためにも行きたい場所がある。」
「娘か……父娘で揃って聖杯戦争のマスターになる、か。偶然にしては出来過ぎだと思うが?」
「そうだな。だから偶然じゃないと思う。僕が聖杯戦争に参戦したから巻き込まれたのかもしれない。それを確かめたいんだ。」

 切嗣は、イリヤとの関係について嘘をつかず正直に答えた。それがもっともこの状況を切り抜け次に繋がると考えたからだ。
 普通に考えれば、こんな話は誰も信じない。どう言い繕うと無理がある。故にバーサーカーは乗ってくると、切嗣は信じていた。こんな見え透いた嘘であるが故に、バーサーカーは切嗣に言い訳を続けさせる猶予を与える、と。

「で、場所は?」
「南部の森だ。そこには城がある。魔術で隠蔽されているがね。」
「――フフフ、バカバカしくていっそ笑えてくる。随分とこの街について詳しいな。」
「ああ、元となった街に五年間住んでたことがあるからな。」
「たいがいにしろ。随分とお前は聖杯戦争に縁があるな?」

 ここだ。切嗣は見つけた。

「僕はリピーターなんだ。1994年。今から二十年前に行われた、第四次聖杯戦争の参加者だ。」
「どんどん話が大きくなるな。続けろ。」
「そして1999年に死んだ、はずだ。気づいたら15年後になっててこの聖杯戦争、第六次聖杯戦争のマスターになっていた。」
「……待て、聖杯戦争は十年置きに行われるのか?」
「そもそも聖杯というのは元を正せば魔力の塊だ。サーヴァントを生贄に魔力を増幅させるが、そのサーヴァントを喚ぶ為に元手となる魔力が必要となる。普通は時間経過で魔力を少しずつ蓄積するが、前回の聖杯戦争の魔力がプールされるなりして残っていれば、時期を早めるのは可能だろう。」
「その……聖杯ってどんな形してるんですか?」
「僕も詳しいことは知らないが、赤と黒の泥状の魔力をしている。色の通り、触れればろくでもないことになる。」
「……2004年……赤と黒の泥……」

 この時、切嗣も想定外であるが、ルナとヒロは切嗣の与太話を一気に信じることとなった。全くの偶然であるが、彼のその言葉はルナの経験と重なる部分があったのだ。彼女は2004年も暮れの冬、魔力の塊である聖杯同様に妖力の塊と言える『悠久の玉』と呼ばれる一種の願望器を自分の弟と争っている。玉と杯という違いはあれど、その力の見た目は色といい形といい類似している。そしてなにより、ルナも切嗣と同様に死んでここに来たのだ。実はルナはあの時死んでいなかったのだが、ルナ本人としてはその違いに気づく手はない。そしてそんなことはルナにとってどうでも良かった。『死んだ人間が聖杯戦争に招かれ』て、『家族で聖杯戦争に巻き込まれる』のならば、自分の弟であり目の前で死んでいったタイを救えるかもしれない、会えるかもしれない。そう思うと、もうなにもかも耳に入らなかった。

「案内してください、切嗣さん。」
「ルナ!」
「その森って、さっきの学校の近くにあった森ですよね。そこにお城があるんですね?」
「ああ、前回僕が拠点とした場所なんでね。仮に彼女がいるなら、まずそこを拠点とするはずだ。」
「くだらん!城一つ隠蔽するだと?それを行うためにどれほどの手間暇が掛かるかわからず言っているのか!」
「そのアドバンテージがあるから僕は聖杯戦争に乗ったのさ。信用できない気持ちもわかるが、なんなら令呪を切ろう。」
「バーサーカーさん。」
「『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』」
「!!お前……」
「バーサーカーさんっ!」
「さあ、どうする?」
「世迷い事を!ここで死「バーサーカーさんごめんなさい!『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』」――なんだとっ!?」
「……君のマスターは、乗り気のようだが?」

 クロの頸からぶるぶると震えながら、ヒロはゲート・オブ・ヘブンを離す。忌々しい、と顔に書いてあるかのような表情で切嗣を睨むと、座布団の一つにどっかと腰を下ろして、「いつ出発する」と言う。賭けに勝った。切嗣は心中で安堵しながらも「一時間後だ、さっきから事態が動いている。最低限の情報収集をしたい」と告げる。縁側に出ると新都の方で煙が上がっていた。
 ルナが反応してきた辺りでバーサーカーから標的を移したが、その切嗣の狙いは思いの外うまくいった。先に虎の子の令呪を切ってみせれば落ちるとまでは読んでいたが、あちらも令呪を切ってくるとは嬉しい誤算である。期せずしてこれで後顧の憂いがなくなった。縁を切ることは難しくなったが、肉壁としては使えるだろう。

『念話で聞いてたのと違うんだけど?』
『すまない。それに令呪も……』
『ま、いいけど。後ろからバッサリやられることはなくなったわけだし。それにさっきの令呪で少しは魔力の足しになったしね。』

 付け加えるならば、ヒロに拘束された時点で、切嗣はクロへ転移により拘束から逃れてバーサーカー主従を殺すように指示していたのだが、そんなリスキーな方法を取らずに場を収められたのもラッキーだ。彼としても娘に同年代の子供を殺させたくない。
 情報収集とアインツベルン城へ出発するために動き始めた一同を見て、切嗣は懐からガムを取り出すと奥歯で噛み締めた。


「見えた。あの森だ。」

 そして現在、検問を抜けた切嗣達は森の中へと車を走らせようとしていた。近づき難い雰囲気のそこは魔術師ならばある種の結界が張られていると察することができるだろう。鬱蒼とした下草が生える一見道なき道を往くと、少しして小道が出てきてひたすら一本道を進む。

「明らかに人の手の入った道か。」
「嘘じゃないとわかったかい。」
「ふん。」
「……まあ、気になることがないわけじゃない。そろそろ出てきてもいいはずなんだが。」
「城か?迎撃か?」
「迎撃だ。森に入った段階でこっちの動きは筒抜けのはずなのに、全く動きがない。アサシンのクラスか?」

 拍子抜けするほどなにもなく車は進む。少しして全員の前にいかにもな城が現れた。

「……小さいが、確かに、城だな。」
「すっごい大っきい……」
「轍が残っている。ということは……」

 小雨がパラつくなかそこに鎮座するアインツベルン城は、その威容と相まってホラー映画にでも出てきそうな存在感がある。周囲を捜索していたクロが戻ってくると、切嗣は玄関に車を横付けにした。

「どうする。」
「正面から行く。あの城はどこから攻め込もうと同じだ。」
「小細工の一つでもするのかと思ったがな。」
「無駄だよ。それに中の人間を刺激したくない。」

 切嗣はクロに目配せすると銃のセーフティを確かめた。誘い込まれているのか違うのかはわからないが、城の内部からはハッキリとサーヴァントの気配がする。この距離だと隠蔽の魔術でも抑えられぬプレッシャーがある。

「行こうか。」

 一呼吸置いて言うと、まずヒロとクロがその扉の前に現れる。その大きさを感じさせぬ軽さで扉が開くのを見ながら、切嗣とルナは車から降りた。こちらにいるということは、つまりは切嗣の方のイリヤなのであろう。そう考え、サーヴァント達に続いて城へと足を踏み入れると――

「……色々と聞きたいことあるんだけど、あ~、何から聞けばいいかな…そのムキムキのサーヴァントってカルナ?」
「……私のバーサーカーがあの金ピカと同じに見える?こっちも聞きたいんだけど……あなた、サーヴァント?」
「どういうわけかね。で……そのボロボロの銀髪のオッサンは?」
「アサシンよ。ハサンじゃないみたいだけどね。」

 ――そこにはアサシン・千手扉間がバーサーカー・ヘラクレスにのしかかられ五体投地していた。


 さて、千手扉間には飛雷針の術という自らが開発した術がある。これは事前にどこかにマーキングしておくことでそこにワープできるという類の忍術だ。そしてこれは彼しか知らないことだし知ってたとしても忘れていたと思うが、彼はヘラクレスの石斧、アレにこれまた彼の開発した術である影分身でマーキングしてたのだ。
 さて、千手扉間にはホテルの同盟のサーヴァントとしてカルナと戦う役目があった。だが常識的に考えてほしい、マスターの九重りんはパンピーのJSだし穢土転生に起爆札に水の無い所で水遁など扉間はチャクラを使いまくっていたのだ。このコンディションでは、悔しいが足手まといにしかならないと扉間は明晰な頭脳で客観視していた。

「飛雷針の術!」
「■■■■■■■■■■!!!」
「グハアッ!!?」
「バーサーカー?どうし――え?」

 というわけで他のサーヴァントを囮に残し、カルナの宝具で死んだと見せかけられるタイミングでバーサーカーの元へ逃げたのであった。ちょっとバーサーカーは狂化してるはずなのに心眼スキルで素早い反応してきたりマスターのりんが自殺したりというアクシデントはあったが、彼はなんとか生き残っていたのだ。

「アーチャーさんが、二人!?」
「どういうことだ切嗣!説明しろ!」
「ここに来るってことはもしかしたらって思ったけど、やっぱりそうなんだ……」
「あとお前は誰だよ。」

 一方のイリヤとしては突然銀髪のオッサンが現れてヘラクレスにのされたりそもそも自分の名前が何故かカルナのマスターとして呼ばれたりと困惑を深めていた。その上雑魚サーヴァントが接近してきたと思って招き入れてみれば何故か自分の父親が自分と良く似た少女をサーヴァントにして現れた。もう一人の方のマスターらしき少女も銀髪で赤目とホムンクルスらしき特徴がある。何よりその魔力は自分程ではないが相当のものだろう。バーサーカーはよく分かんないからいいや。
 そんな混乱する一同の声を、ヘラクレスによって床にめり込まされながら扉間は聞く。扉間自身もよく状況がわからないが、まだ運の目がありそうだ。このままでは確実に消滅するが、また足掻ける。全員の気配に気を配りながら、口を挟めるタイミングを伺うのであった。



【アインツベルン城/2014年8月2日(土)0201】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
[スタンス]
対聖杯
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。
[装備]
89式自動小銃(弾丸20×6)@現実、防弾チョッキ2型(改)@現実、個人用暗視装置JGVS-V8@現実
[道具]
89式自動小銃数丁@現実、弾丸数千発@現実、00式個人用防護装備数個@現実
[残存霊呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1:イリヤと話す。
2:アーチャーに色々と申し訳ない。
3:アサシンを警戒。
4:ルーラーの動きに疑問。
5:バーサーカー主従と縁を切りたい。
[備考]
●所持金は3万円ほど。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知り、同盟(?)を組みました。可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●コンビニで雑貨を買いました。またカバンにアーチャー(クロエ)の私服等があります。
●セイバー(アルトリア)への好感度が上がりました。
●eKスペース(三菱)のレンタカーを借りました。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪を使用しました。

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[スタンス]
奉仕(切嗣)
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
魔力消費(小)、精神的疲労(中・消耗中)。
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1:イリヤと話す。
2:アサシンを警戒。
3:魔力供給をしたい。
4:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。
●バーサーカーと同盟(?)を組みました。 可能ならば同盟を解消したいと考えています。
●『令呪を持って命ず、アーチャー、バーサーカーとそのマスターの竜堂ルナに攻撃するな。』の令呪の影響下にあります。


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
封印解除、妖力消費(中)、靴がボロボロ、服に傷み、精神的疲労(小)。
[残存令呪]
二画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。バーサーカーさんを失いたくない。
1:アサシンを見張る。
2:アーチャーさんが二人!?
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●第三の目の封印を解除したため、令呪の反応がおきやすくなります。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態で休息をとっている間妖力は回復しにくいです。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。
●バーサーカーの【カリスマ:D-】の影響下に入りました。本来の彼女は直接的な攻撃を通常しませんが、バーサーカーの指示があった場合それに従う可能性があります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪を使用しました。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
実体化、最低限の変装、精神的疲労(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1:アサシンを見張る。
2:衛宮達を利用しながら好機を待つ。
3:ルナがいろいろ心配。他の奴等に利用されないようにしないと。
4:ルーラーの動きに疑問。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。
●衛宮切嗣&アーチャーと同盟を組みました。切嗣への好感度が下がりました。
●衛宮切嗣が更に苦手になりつつあります。
●神を相手にした場合は神性が高いほど凶化しずらくなります。
●『切嗣さんとアーチャーさんに攻撃しないで!!』の令呪の影響下にあります。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[スタンス]
聖杯狙い
[状態]
程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、黒のワンピースとソックス、私服(陰干し中)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1:切嗣と話す。
2:アサシンを警戒。
3:明日の朝九時に間桐邸に向かう。
4:別行動しているキョウスケが気にならない訳ではない。
5:ルーラーの放送に疑問。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されています。
●アサシン(千手扉間)がハサンではないことに気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)、ルーラー(イチゴ)、セイバー(アルトリア)、セイバー(テレサ)、ライダー(五代)のステータスを確認しました。
●間桐慎二と色丞狂介に疑念を抱きました。
●セイバー(アルトリア)の真名を看破しました。
●ランサー(カルナ)の情報を入手しました。
●柳洞寺で会談した結果、色丞狂介&キャスター(パピヨン)、ルーラー以外の情報並びにそれぞれの連絡先を共有しました。主に当事者以外のサーヴァントの情報でありこれには一部の聖杯戦争に関する情報も含まれます。またルーラーに大して言及を避ける暗黙の空気も共有されました。
●ルナをホムンクルスではないかと 思っています。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[スタンス]
奉仕(イリヤ)
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
実体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●石斧に飛雷針の術のマーキングがあります。


【アサシン(千手扉間)@NARUTO】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C、
敏捷(25)/A+、
魔力(10)/B、
幸運(5)/E、
宝具(0)/EX
気配感知、魔力不足(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足によりスキルに支障、魔力不足により全パラメーター半減、飛雷針の術の発動不可のため敏捷が+分アップしない。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を用いて木の葉に恒久的な発展と平和を。
1:りんの死に疑問。
2:消滅するまでの間に日野茜らの聖杯を悪用しなさそうな人間の情報とイリヤスフィール&バーサーカー主従が聖杯戦争に乗っていることを他の二組に伝える。
3:茜らを任せられないと判断した場合はアーチャーかバーサーカー(ヒロ)を殺しそのマスターに再契約を持ちかける。
4:上記のサーヴァント暗殺に失敗した場合、自爆して聖杯を悪用しようとする人間を一人でも多く殺す。
[備考]
●予選期間中に他の組の情報を入手していたかもしれません。
ただし情報を持っていてもサーヴァントの真名は含まれません。
●影分身が魂喰いを行ないましたが、戦闘でほぼ使いきりました。その罪はバーサーカー(サイト)に擦り付けられるものと判断しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●バーサーカーの石斧に飛雷針の術のマーキングをしました。
●聖杯戦争への認識を改めました。普段より方針が変更しやすくなっています。
●九重りん、ワイルド・ドッグ、アーチャー(安藤まほろ)、色丞狂介&キャスター(パピヨン)への印象が悪化しました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●イリヤ(kl)の髪の毛を入手しました。日野茜の病室に保管されています。
●ルナをサーヴァントと、うず目を万華鏡写輪眼と、妖力を九尾のチャクラと誤認しました。
●ホテルの上から三階までを陣地化しました。
●ホテルマンの一部を幻術の影響下に置きました。
●美遊・エーデルフェルトからサファイアを介して得られた魔力はスキルと宝具の使用で全て使い果たしました。魔力供給がなされない場合数分以内に消滅します。