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 どくんどくんと聞こえてくるのは、己の胸の心音だ。
 霊体であるはずのサーヴァントが、鼓動を打つというのもおかしな話だが、そんなことを考える余裕は、今の彼には持ち得なかった。
 伝承に語られた弓を構え、必殺の矢を番えんとする。
 全身に痛ましい傷を負い、震える体に鞭を打って、せめて一矢を報いんとする。
「――なんだ」
 歩み寄る人影に、尋ねた。
 深夜の暗闇の只中を、煉獄に染める炎の中、悠然と歩を進める標的に問うた。
「何なんだ、お前は」
 こんなことはあり得ないはずだ。
 弓兵のサーヴァント――アーチャーたる自分には、「対魔力」のスキルが備わっている。
 この身はサーヴァントの中でも、それほどステータスが高い方ではない。
 それでも魔術が相手であるなら、その威力を軽減できる分、有利に戦うこともできたはずだ。
 だのに、この結果は何だ。
 自分は何故、倒れている。
 魔術師――キャスターのサーヴァント相手に、これほどに追い詰められている。
 猛然と燃え盛る業火を受け、その身を炭に変えられながら、無様に地に転がっているのは何故なのだ。
「お前は一体、何者なんだ――」
 有り得ない。
 こんなことがあるはずがない。
 最弱のサーヴァントたるキャスターが、相性で勝るアーチャーを、ここまで痛めつけられるわけがない。
 一体こいつは何者だ。
 この常軌を逸した力の正体は何だ。
 泥のような褐色の肌に、日輪の後光を纏う者。
 黄金の鎧をその身に着込み、うねる炎を従えて、眼前の敵を焼き尽くす者。
 三鈷の剣をその手に携え、地に伏す己を見下している、このサーヴァントは一体何者なのだ。
「――なればせめてもの慈悲として、我が真名を答えましょう」
 鈴の音のような声だった。
 穏やかながらよく響き、胸の奥へと染みこむような、奇妙な安らぎを伴う声だった。
「我はフドウ。不動明王の化身。
 断罪と救済を司る、乙女座(バルゴ)の黄金聖闘士(ゴールドセイント)として、この戦の地に招かれた者」
 緑の髪が熱気に揺れる。
 金と紫の光が煌めく。
 己が名を名乗った魔術師が、緑髪の下で伏せていた、オッドアイの双眸を開く。
「歴史に名高き英霊よ。その戦歴の映し身よ」
 さながら説法の言葉のように。
 あるいは弔いの言葉のように。
 高らかと掲げた刀身を、荒々しくも神々しい、青き炎に輝かせ。
「二度目の生の苦しみを捨て――今は安らかに眠りなさい」
 神を名乗りしその男は、一息に剣を振り下ろした。
 それが名も無き英霊が、最期に目の当たりにした光景だった。


「……はは、はっ」
 自然公園の木陰から、引きつった笑いが聞こえてくる。
 乙女座の黄金聖闘士・フドウは、背後に立った笑いの主を、振り返ることなく認識する。
「ははははは! 凄いじゃないかキャスター! 想像以上だ!」
 これが彼のマスターだ。
 青い癖毛のその下で、下品な笑顔を浮かべている、この少年が彼の主だ。
 間桐慎二――たしかそういった名前だったか。
 魔術の才能はまるでなく、性格も高潔と言うには程遠い、言うなれば「ハズレ」のマスターだった。
(なんと醜い)
 フドウの胸に込み上げたのは、怒りよりも哀れみだった。
 そもそも予選のルール上、他のサーヴァントを攻撃するなどという行為には、全く必要性というものがない。
 それでもフドウがこのようにして、あのアーチャーを襲撃したのは、慎二がそう命じたからだった。
 自らに割り当てられたサーヴァントの力を、試してみたいと言ったのだ。
 与えられた玩具で遊ぶ――たったそれだけのことのために、無益な殺生を強いられたのだ。
「いやぁ、凄い! さすが名のある仏様だ! ライダー以上の逸材だよ! それでこそ僕のサーヴァントに相応しい!」
 そんな想いなど露知らず、慎二はへらへらと笑っている。
 極上の玩具を得た喜びに、卑しい笑みを浮かべてはしゃいでいる。
 自分がどれほどの失望を、その玩具に寄せられているかも知らずに。
「……ですがマスター。サーヴァントの器に収まった以上、私はあくまでその化身……
 人の器に収めきれる、その程度の存在でしかないことを、お忘れなきよう」
 せめてもの忠告を口にしながら、フドウは己が宝具を解いた。
 『乙女座の黄金聖衣(バルゴクロス)』――かつて現在と同じように、下界に降りていた頃に、その身に纏っていた装束。
 黄金色の鎧を脱ぎ捨て、仏教の法衣姿になったフドウは、はしゃぐマスターを諌めた。
「そうだな。それだけは残念だ。できれば神仏の力の全てを、僕のものとして使ってみたかった」
 よく言う。
 この仮初の器でさえも、まともに使いこなせていないくせに。
 膨大な魔力を要求するフドウには、慎二の力はあまりに不足だ。
 発揮できる力もこの程度――三輪身の奥義などは、現状ではとても使えないだろう。
 そうした意味でも、慎二には、この先用心してもらわなければならない。
 魔力切れで敗退などという結論は、あまりにお粗末というものだ。
「……まぁいいさ。こうしてお前のスペックも確認したんだ。あとはそれを踏まえた上で、本戦に向けた準備を整えよう」
 そう言うと慎二は翻り、ムーン・セルから与えられた、自らの家へと歩いていった。
 それを一歩後から追いながら、乙女座のフドウは思考する。
 この下品な少年が、聖杯戦争を勝ち抜いた先に、何を願うのかを考える。
 かれこれ2日の付き合いになるが、このお喋りなマスターは、しかし未だ己の願いを、口にしてはいなかった。
 聖杯を手に入れることが第一目標であり、それで何を叶えるのかというのは、まだ決まっていないということだろう。
 であれば、見極めなくてはならない。
 少年の願いが何であるかを。
 この少年の浅ましい想いが、世界をひっくり返すような願いを求め、世の調和を乱す可能性を。
(もしそのような結果となれば――)
 間桐慎二が願望の器を、悪用しようと願ったとしたら。
 断罪と救済の黄金聖闘士。
 煩悩を焼き払う教令の神。
 乙女座のフドウの閉じた眼は、今は瞼の裏側に、遠い未来を描いていた。



【仙台/2014年7月7日(日)0100】

【マスター】間桐慎二
【出典】Fate/stay night
【性別】男性

【参加方法】
冬木の戦争に勝ち残るため、間桐家の蔵書を読み返していた時、偶然月の戦争への参加方法を知った。
それを調べていた際に、ゴフェルの木杭が機能してしまい、ムーン・セルへと飛ばされた。

【マスターとしての願い】
今は自分の力を証明するために、聖杯を手に入れることが急務。願い事は後から考えればいい。

【能力・技能】
弓道
 その名の通り弓道の実力。穂群原学園弓道部の副部長を務めており、それなり以上には腕が立つ。

勉学
 穂群原学園においては、常にトップクラスの成績を維持している。

探し物
 そこそこ推理力が高く、特定の物を探し出すのが得意。

【weapon】
なし

【人物背景】
魔術師の家系・間桐家の長男。
魔術の名家に生まれたこと、そして何より魔術以外の分野において、優れた力を発揮していたことから、エリート意識が非常に強い。
しかし中学生の頃に、自分に魔術回路がないこと、
何よりそれを義妹・桜に憐れまれていたことを知ったことから、その人格に歪みが生じてしまう。
根は優しい人物であったらしく、現在でもその片鱗が顔を覗かせることも。

【方針】
当然優勝狙い。使えそうな人間は同盟を結び、手駒にしてやってもいい。
まずはキャスターを運用できるだけの魔力を確保する。

【クラス】キャスター
【真名】フドウ
【出典】聖闘士星矢Ω
【性別】男性
【属性】秩序・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:C+ 魔力:A+ 幸運:A 宝具:A

【クラススキル】
陣地作成:A
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 “工房”を上回る“神殿”を形成することが可能。

道具作成:C
 羂索や三鈷剣など、法力を帯びた器具を作成できる。

【保有スキル】
セブンセンシズ:A+
 人間の六感を超えた第七感。
 聖闘士の持つ力・小宇宙(コスモ)の頂点とも言われており、爆発的な力を発揮することができる。
 その感覚に目覚めることは困難を極めており、聖闘士の中でも、限られた者しか目覚めていない。
 フドウの持つ莫大な魔力の裏付けとなっているスキル。

高速神言:A
 呪文・魔術回路との接続をせずとも魔術を発動させられる。
 大概のものは「オーム」「カーン」、長くとも「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カーン」で発動できる。

神性:B
 神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
 フドウの正体は不動明王そのものだが、人間の身に宿った化身であるため、ランクが1つダウンしている。

【宝具】
『乙女座の黄金聖衣(バルゴクロス)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:1人
 黄金聖闘士(ゴールドセイント)の1人・乙女座(バルゴ)の聖闘士に与えられる黄金聖衣(ゴールドクロス)。
 黄金に光り輝く鎧は、太陽の力を蓄積しており、他の聖衣とは一線を画する強度を誇る。
 この聖衣を然るべき者が装着することにより、装着者の筋力・耐久・敏捷・幸運のパラメーターが1ランクずつアップする。
 本来のランクはA+なのだが、アテナとアプスの小宇宙が衝突した際の影響で、
 聖衣石(クロストーン)と呼ばれる形態に変質してしまっており、若干のランク低下が見られる。

『三輪身(さんりんしん)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1~40 最大補足:500人
 密教における如来・菩薩・明王を、その性質に従って3種類の仏身観に分類したもの。
 不動明王とはその3種類のうち、「教令輪身」という姿に分類される。
 これはその三輪身の概念が宝具化したもので、フドウはそれら3つの姿を、固有結界として表すことができる。
 3つの姿の内訳は以下の通り。
  ・自身に逆らおうとする者を力ずくで止めようとする恐ろしい姿
   「教令輪身」と称される。黄昏の花畑が具現化される。
   五大明王を召喚する技・「明王来臨」を発動可能。
  ・宇宙の真理を静かに教え諭す姿
   「正法輪身」と称される。静謐なる竹林が具現化される。
   対応する技はないが、この世界に足を踏み入れたものは極度にリラックスし、戦闘意欲を削がれてしまう。
  ・悟りそのものを体現する姿
   「自性輪身」と称される。「審判の間」と渾名される、無限の曼荼羅が具現化される。
   フドウが持つ最大奥義・「菩提証悟」を発動可能。

【weapon】
  • 羂索
 投げ縄のようなもの。悪を縛り、吊るし上げてでも救い出さんとする、不動明王の苛烈さの表れ。
 敵を拘束し封じ込める技・「諸行断罪」に用いられる。

  • 三鈷剣
 魔を斬り、人々の煩悩や因縁を断つための剣。
 敵の心身を切り裂く技・「生死即涅槃」に用いられる。

【人物背景】
88の聖闘士の中でも、最高位に位置する黄金聖闘士の1人。
しかしその素性は、火星の神・マルスの盟友であり、聖域(サンクチュアリ)に敵対する存在だった。
自らを不動明王の化身と名乗り、悠久の時の中で人類を見守り、その横暴に失望してきたと語っている。
しかしエデンら若き聖闘士達が、マルスやアプスを打倒して以降は、
人間とそれを導くアテナが、未来を生きるに相応しい存在であるかを見極めるため、敢えて聖域に居残った。

落ち着いた物腰と柔和な笑みからは、一見心優しい人物にも見えるが、その実態はある種冷酷なまでに、恐ろしく巨視的な視点の持ち主。
マルスの改革に対しても、「命を落とす者もまた、極楽へ逝くことで生の苦しみから解放される」と語っており、犠牲を意に介していなかった。
あくまで仏が守らんとするものは、世界全ての安定に他ならず、人類だけの都合を優先することはしない。
しかし、それが世界を守ることに繋がると判断すれば、誰よりも揺るがぬ決意の下に、その絶大なる力を振るって戦う。
ちなみに「自身に逆らおうとする者を力ずくで止めようとする恐ろしい姿」を見せた際には、
その穏やかな様子は一変し、阿修羅のごとき語気と形相で敵を攻め立てている。
また、圧倒的な実力差を見せつけてなお、光牙達が立ち向かってきた時には、
「無駄と分かっていても、己の正義を貫くために立ち上がる精神力」に感動し、当事者ながら涙を流していた。
(これはつまり「どうやっても光牙達では自分に勝てない」という大前提の下に抱いた感想であり、何気にナチュラルに彼らを見下していることになる)

小宇宙の属性は炎。
その力は当代の黄金聖闘士の中でもトップクラスと言われており、仏の化身に恥じぬ実力を誇る。
劇中では炎の属性を操り、地面よりマグマを噴き出して攻撃する場面が見られた。
また、小宇宙の障壁を自らの周囲に展開し、敵の攻撃を防いでもいる。
光牙達が処女宮に攻め入った際には、「揺るぎなき守護者」を意味する梵名に恥じず、一歩も動かずに5人の聖闘士を相手取っていた。

【サーヴァントとしての願い】
特になし。慎二が聖杯をいかに使うかを見守る。悪用しようとした場合は……

【基本戦術、方針、運用法】
『乙女座の黄金聖衣(バルゴクロス)』発動下では圧倒的な戦闘能力を誇るフドウだが、
悲しいかな魔術適性のない慎二では、その能力を十二分に発揮することはできない。
このため何らかの形で、その莫大な消費量に見合った魔力を確保することが急務となる。
それ以外の点においては、オーソドックスなキャスターとして運用できるだろう。