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 神秘の秘匿というのは様々な方法があるが、その中でもオーソドックスなものといえば人目を避けることだろう。たとえば深い森の中や薄暗い下水道、それに魔術師の工房などといった場所である。
 もっとも、目につかないという一点だけなら市街地のど真ん中にも条件に合う場所が無いわけではない。げんに今、ある雑居ビルの屋上ではサーヴァントとマスターが戦っていた。

 ブン、と風を切って赤い大鎌を童女に迫らせる少女はバーサーカーのクラスで召喚されしサーヴァント、ヒロ。
 その大鎌を危なげなくかわすと素早く少女の後ろに回り込んだ童女は、マスターである竜堂ルナ。

 縦横10mもない戦場でマスターとそのサーヴァントによる戦闘。
 本選開始から約一時間、二人の最初の相手は背中を預けるはずのパートナーだった。

 一瞬でバーサーカーの後ろに回り込んだルナが狙うのは、バーサーカーのヒザ。スライディング気味に足払いをかけようとして、しかしその足の力を大きく横にそらす。
 キラリ、とルナの銀髪が一束、金色の光を放って宙を舞った。その髪が屋上の床にたどり着くより早く赤い光によって微塵にされる。バーサーカーの持つ大鎌は、あと数センチのところで自らのマスターをとらえそこなったのだ。

 バーサーカーは満足げに笑うとルナに斬りかかる。もとより狭い屋上、一歩どころか半歩で詰めると正確に首を刈りにいく。長物に類する大鎌の攻撃は左右に避けようと容赦なくその細首を跳ばすだろう。ゆえに上に飛んでかわすしかなく、逃げ場の無い空中でルナを倒そうと残心の調整を計算する。

「ッ!?」

 大鎌を振り抜こうとしたバーサーカーを襲ったのは衝撃。それも前方からのもの。
 一瞬何が起こったのかバーサーカーはわからなかったが、自分がルナにマウントされているのを見て再び満足げに笑う。なんのことはない、ただ『サーヴァントより早く動いて体当たりをした』だけだ。

「降参だ。動けるようになってきたな。」

 そうバーサーカーが言うとルナは大きくため息を吐いた。



 聖杯戦争に参加し記憶を取り戻してからの約一ヶ月間、深夜のこの時間帯はバーサーカーとの戦闘訓練に当てられていた。もともとルナの修行が人目を避けるために深夜に行われていたというのもあるが、夏休みという季節がら昼はどこに人の目があるかわからない。そのためこのような時間に偵察がてらに一戦交えていたのだ。

「ほっ‥‥バーサーカーさん、これで訓練は合格?」
「回避は、な。足の動きは良いがそれだけだ。一撃でも喰らえばあの動きはできなくなる。次は受け身だ。その次は逃走経路の確保のしかたに地形の把握のしかただな。‥‥まあ、どこまで訓練する時間があるかはわからないが。」
「あっ‥‥」

 時間があるかはわからない。その言葉にルナの心臓に締め付けられるような感覚が走った。
 ここは誰も彼もが殺しあう聖杯戦争。無事に明日を向かえられる保証などどこにもない。その当然の事実に、ルナの息は自然と荒くなる。

「バーサーカーさん‥‥」
「覚悟を決めろ、ルナ。」

 ルナのすがるような視線を受けて、だがバーサーカーは突き放すように言った。
 既にここは戦場であり、しかも半分準備期間である予選ではなく殺しあいが本格化する本選だ。

(力量は問題ないんだがな‥‥この脆さはいつか弱点になる。)

 バーサーカーが抱く二つの懸案事項。その一つルナの精神性だ。
 お互い口にはしていないが、ルナは人を殺したことがない。そのことは予選期間でほぼ確信を得ていたが、本選に来るまでに対処しようとは思わなかった。下手に火種を作るよりはマスターとの信頼関係を深める道を選んだのだ。それにバーサーカーは当初、聖杯戦争の中でなし崩し的に人を殺す覚悟を身に付けさせる気でいた。サーヴァントを倒すことで間接的に人を殺させることで覚悟をさせようとしていたのだ。
 その予定を狂わせたのは、ルナの能力の高さ。当初は魔力が高いだけと思っていたバーサーカーだが、訓練を初めてすぐにその身体能力の高さに驚かされることになった。高位の魔族をもしのぐ圧倒的な力はマスターだけでなくサーヴァントととも戦えるだろう。
 バーサーカーにとってルナは使える戦力として数えられていた。それゆえ余計に早く覚悟を決めさせたいと思う。だが、生半可な覚悟で出撃させて土壇場で命令を拒否されてはたまらない。なまじ戦えるがゆえにバーサーカーはルナを扱いかねていた。



 ふと、下から車が止まる音が聞こえた。何かを下ろす音や運ぶ音が続く。その音に反応してルナはバーサーカーに再び視線を送る。今度の視線もすがるような、それでいて全く方向性の違うものだった。

「ハァ‥‥まずは私掠の訓練といくか。」


 ところで、再現された冬木市にも当然コンビニエンスストアといったものはあり、多くの商品が物流という波によって運び込まれ、また運び出されていく。
 この時運び出されるのは主に賞味期限の迫った食料品でありその量は日本全国のコンビニエンスストアにおいて一日で数万食は下らないと言われている。

 これはおかしい。

 まだ食べられるものを、農家の人や工場の人が端正込めて作った食べ物をそんなに簡単に捨ててよいのだろうかいやよくない。


「バーサーカーさん、焼きそばあったよ焼きそば!それとお好み焼きとたこ焼とオムライスと麻婆豆腐!」
「‥‥いや、わかったから。」

 よってせっかく廃棄されるぐらいならと運送業者の隙を見て食料調達を行っても果たして道徳的に問題があると言えるだろうか?
 そもそもバーサーカーの生きていた時代には隣国から家畜やら金やら宝玉やら劣鬼やらを私掠するのは祖国の国力を高め敵国の国力を減らす立派な戦略だった。いわばセオリーどおりの行動である。縛りプレーをする必要はない。

「あ、飲み物ない。もらってくるね。」
(‥‥たしかこういうのは欠食児童というらしいな‥‥やはり食料は国家の基本だな。人心を安定させるにはま「バーサーカーさん、いろはすと伊右衛門と桃の天然水とファンタのどれにする?」桃の天然水を貰おうか。」


 桃の天然水を飲みながらバーサーカーは考える。
 バーサーカーが抱くもう一つの懸案事項、それはマスターの持ち物が何一つないということだ。
 まずどういうわけか親役のNPCが設定されていない。最初は戦争孤児かと思って聞かないでおいたが、児童養護施設なるものが存在する以上違うのだろう。そもそも戦争をこの会場のもとになった国は何十年もしていないらしい。
 次に、当然だが金がない。正真正銘の無一文である。もちろん家もなく着の身着のままとはよく言ったものだ。
 最後に、社会的な身分がない。宿代わりに児童養護施設や警察に泊まったこともあったが、身元がわからないことをNPC達はいぶかしんでいた。追求されそうだったので慌てて逃げてきたが、どうやらこの会場ではかなり問題になりそうだ。

(まずは今日の宿をどうにかするか。野宿するとまた警察やNPO団体に捕まる。そういえば学校には保健室というベットがある部屋があるらしいな。)

 バーサーカーは美味しそうに焼きそばを頬張るルナを見ながら今宵の宿について思考を巡らせ始める。

 ここは聖杯戦争。拠点の確保までの道のりは、遠い。



【新都、某コンビニエンスストアの入った雑居ビル屋上/2014年8月1日(金)0050】
【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
空腹。妖力消費(小)。いずれも回復中。第三の目は封印済。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。
1.焼きそばおいしい♪
2.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
3.バーサーカーさんを失いたくない。
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存?)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目を封印したため令呪の反応はおきません。封印解除した場合、通常どおり反応がおきます。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。


【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
魔力消費(微)
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.学校というのはどこにあるんだ?地図が必要だな。
2.どこかに拠点を構えたいが‥‥
3.マスターがいろいろ心配。
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。