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日付が変わると同時、ある程度見慣れつつあった街並みは一変していた。
夜にあってもネオンの光が絶えず、眠らない街という形容が似合う東京はもうそこにはなかった。
代わりにあったのは、それまで私が見知っていた街だった。

「冬木……?ここが本選の舞台になるの?」

まさか、という驚きとやはりか、と納得する、相反する感情が混在していた。
聖杯戦争とはその名の通り聖杯を巡る殺し合いであり、私はその光景を嫌というほど知っている。
何故なら元いた世界においての聖杯とは私自身のことなのだから。
その舞台をこの月に再現するというのは実際理に適っているのかもしれない。

一応家の中で何か変わったことがないか調べてみるといくつか変化があった。
まず私の両親とされている人(NPCだろう)は海外出張をしているという設定になっていて、週に何度か家政婦の人が来るようだ。
生活費用は毎月振り込まれていて、次はあと二日後に振り込まれるらしい。
金額を見た限り、無駄遣いをしすぎれば生活に支障をきたす程度には一般的な家庭をイメージされて用意されているようだ。

もう一つ、本選でも私には月海原学園初等部の生徒という小学生としての立場が与えられている。
人が多いという安全性と、マスターであることがばれないように普通の生活をするというメリットを考えれば学校には行くべきなのだろうけど―――

「サファイア、私は学校には行かない」
「よろしいのですか?もし学園にマスターがいれば……」
「わかってる、でも行けば無条件で安全が買えるわけじゃない。
…それに、どんな顔をして学校生活をすれば良いかわからない。
一応学校には病欠で休むと連絡はする。怪しまれはすると思うけど無断欠席よりはずっと良い」

人を殺すことを決意した身で平常心を保ったまま学生生活を送れると思えるほど私は自分の演技力に自信を持っていない。
それに、学園は確かに人の多さから戦闘は起こりにくいけれどそれも絶対というわけじゃない。

アサシンのサーヴァントなら人目を縫って暗殺を行うのはそう難しくない。
力ある魔術師なら時間帯や状況次第で人避けの結界で戦える場所を作り出すことも出来る。
学校に行くこと自体が大きなデメリットにもなるのなら無暗に動かない方がまだ良い。

「今のうちにバーサーカーに実戦経験を積ませておきたい。
やっと視界共有と制御にも慣れてきたから、もう次の段階に進まないと」
「わかりました、では転身を」

一月近い予選期間の中、幸か不幸か私とバーサーカーが戦闘を行うことはなかった。
他のマスターから仕掛けられることがなかったというのもあるけれど、それ以上に頭を悩ませる問題があった。
バーサーカーの感覚器官は極めて鋭敏であり数キロ以上先の微かな音すら拾うことができる。
けれど鋭敏すぎる感覚を十分に制御できていないせいかバーサーカーの挙動はどこかぎこちない。
人間の姿をとっていればそうでもないけど変身するとどうしても不自然というか、慣れていない動きになってしまうようだった。

加えて、私が彼の視界を借りる視界共有を行うと決まって鋭敏すぎる視覚に私自身がついて行けないという思わぬデメリットがあった。
魔力供給の関係で私が全く戦えない以上、この問題を放置することはできなかった。
そのためこの一か月近くのほとんど全てを視界共有の訓練とバーサーカーの制御に充てていた。
訓練の甲斐あって最近ようやくバーサーカーの視覚にも慣れてきた。
令呪を受け入れて現界するのがサーヴァントシステムであるからか、バーサーカーも私の命令に反するようなことはなかった。
本選が始まってついに私達の戦う準備は整ったと言える。

「行って」

指令とともにバーサーカーが実体化し、黒の四本角の戦士へと変貌した。
予め開けておいたベランダの窓から勢いよく跳躍し夜の闇へと消えていく。
同時に私も集中し、彼と視界を共有する。
私達の聖杯戦争の、始まりだ。




 ◆   ◆   ◆



深山町北部の住宅街、ある民家の屋根の上に一人の女がいた。
セイバーのサーヴァントとして招聘された妖魔を狩る戦士、微笑のテレサである。
セイバーは予選会場とは一変した世界を眺めながらいつものように哨戒を行っていた。
幼いマスター、黒鳥千代子は今は眠っている。元よりそういう時間帯だ。
妖気探知による索敵を行いながら、セイバーは何とはなしにある予感を抱いていた。

「さて、どれだけの連中が動くかな……」

各会場から本選会場に生き残ったマスターとサーヴァントが集まったこの時間。
何らかの動きを見せる者が必ず相当数いるはずだとセイバーは踏んでいた。
とはいえセイバーはこの時点で派手な動きを見せるつもりなどない。
当初の予定通り、情報収集に専念し戦闘は降りかかる火の粉を払う時だけと決めている。

千代子からの供給は細いが決して途切れることはない。
逆に言えば短時間での魔力の浪費は厳禁ということ。
本選が始まったとはいえ、この序盤から無理をするという選択肢はセイバーにはない。
しかし、そんなセイバーの計画には早くも綻びが生まれようとしていた。

「……どうしてばれた?」

感知範囲に入った一つの巨大な反応がまっすぐこちらに向けて進んできている。
偶然と捉えるには敵の動きに迷いがなさすぎるし進行方向がひどく的確だ。
気配遮断能力を持つセイバーだがこうなれば自身の存在は既に察知されていると判断すべきだ。

「川を越えさせるわけにもいかないか」

現在敵は新都を進み深山町を目指している。
ここで迎撃するのも一つの手ではあるがそうなれば千代子を起こすことになる。
万一パニックを起こされてはたまらないし、敵に自分のマスターの姿を見られることも避けたい。
とすれば敵マスターの奇襲を警戒しつつどこか適当な場所でサーヴァントを迎え撃つのが吉か。

「ならあそこだな」

迷わず屋根から跳躍し、見遠川をも一跳びで越えて新都エリアへ入る。
向かう先は視界に移った新都北部、倉庫エリアだ。



 ◆   ◆   ◆



「よう、サーヴァント。中々個性的な面構えじゃないか」

倉庫街の開けた場所でセイバーは誘い込んだ敵サーヴァントの姿を視認した。
全身を黒い甲冑に包み身体の各所には血管のように金色の縁が走っている、四本の角に暗く濁ったような複眼が印象的なサーヴァント。
白を基調とするセイバーとはちょうど正反対の色合いだ。
隠そうともしない獣の如き唸り声が敵がバーサーカーであることを明瞭に示している。

当然バーサーカーはセイバーの言葉に応えるはずもなく、一直線に突進を仕掛けてきた。
百メートルを一秒で駆け抜ける埒外の俊足は並のサーヴァントなら逃げることさえ許されないだろう。
そのまま繰り出された八十トンもの威力を誇る拳は並の敵手なら一撃で砕いてみせるだろう。
しかし。

「おっと、いきなりか」

どんなに強大な威力を秘めた拳も当たらなければ何も意味を為さない。
剣は抜かず、微笑を浮かべたまま紙一重でバーサーカーの拳打を躱し続け、触れることさえ許さない。
遮二無二拳を振るうバーサーカーは完全に翻弄されていた。
ふと、セイバーが背中に背負った大剣(クレイモア)に手を掛けた。
それとほぼ同時、バーサーカーを四十以上もの斬撃が襲った。
セイバーが一瞬のうちに放った幾重もの斬撃、一部の戦士が扱う高速剣と呼ばれる技だ。
そこらの妖魔なら気づいた瞬間に細切れと化すほどの超高速の絶技である。

「………!!」
「へえ、効かないか。随分と分厚い甲冑だな、それ」

凄まじき戦士と化したクウガ・アルティメットフォームが纏う生体甲冑の強固さは並のサーヴァントの比ではない。
高速剣の全てが直撃しているとしても、バーサーカーにとっては無に等しい攻撃でしかない。
そればかりか高速剣が命中したという事実そのものが存在していなかったかのように平然と拳を振るい続けていた。
だが、変わらずバーサーカーの攻撃を回避し続けるセイバーの微笑みは崩れる気配を見せない。
何故ならバーサーカーの弱点は既に看破しているからだ。

「そらっ」

バーサーカーの隙を突いて放った突きが大腿部を捉え、鮮血が噴き出る。
僅かに怯んだバーサーカーに容赦なく追い打ちを仕掛け、二の腕や脇腹に突きや斬撃を見舞った。
生体甲冑に覆われていない部分であれば格に劣るセイバーの大剣でも傷をつけることは十分に可能だ。
バーサーカーも狙いを察し防ごうとはするがセイバーの剣舞にはついてこれていない。
やがてバーサーカーの単調な挙動を見咎めたセイバーの痛烈な一撃がバーサーカーの左腕を斬り飛ばした。

「どうした、立派なのは見た目だけなのか?」

何故ステータスで劣るはずのセイバーがここまでバーサーカーを圧倒できるのか。
その理由の一つはセイバーの宝具「妖気探知」にある。
妖気を探知する能力そのものはクレイモアの戦士なら程度の差はあれ誰でも有している。
しかし微笑のテレサのそれは他の戦士とは次元の違う精度を誇り相手の一挙手一投足さえも容易に見切る。
そこにナンバー1の戦士としての技量が加わることによりセイバーのサーヴァントの中にあってトップクラスの白兵戦能力が備わっているのである。
クレイモア最強の戦士としての伝承こそがテレサがアサシンでなくセイバーとして現界した所以だ。

(しかしこいつの動き、どうも妙だな。
私の動きを目で追うことはできてるようだが身体が反応しきれていない。
かといって反応速度やスピードが鈍いってわけでもない……まさかとは思うが)

口では挑発するような言動を繰り返しながらも冷静にバーサーカーの戦力を分析する。
セイバーの見立てではバーサーカーは自分と同等の感知能力を持っている。
そうでなければ気配を絶っていた自分の存在を新都から察知できるはずもない。
そしてセイバーと同等の力であれば当然相手の挙動を見切ることも可能なはずだ。
だが実際にはバーサーカーはセイバーに触れることもできず、翻弄されるばかり。

(私とこいつに違いがあるとすれば恐らく錬度だろうな。こいつは明らかに自分の力を制御できていない。
こいつ自身が未熟なのかバーサーカーになっているから制約がついているのかはわからないが…。
まあいい、どのみち厄介な敵は落とせる時に落とした方が良い)

時間にして僅か数秒の思考を打ち切り、バーサーカーにとどめを刺す決断を下す。
実際には敵マスターの令呪に阻まれる可能性も低くないがそれはそれで構わない。
悪くとも相手の切り札を一つ削ぎ落とせるのだから不本意な遭遇戦の報酬としてはちょうど良い。

(バーサーカーの装甲は確かに脅威だが人体の構造上全てをカバーすることなんて不可能。
だとすれば狙うなら首か、全身に魔力を行き渡らせているあの妙なベルトだな)

大剣を抜き、バーサーカーを葬り去る算段をつけたまさにその瞬間。
猛烈な勢いでこちらに迫るサーヴァントの反応を検知した。
時間を掛けてしまったために他のサーヴァントをも呼び寄せてしまったようだ。

「ぬぅおおおおおおおおおおお!!!!」

暑苦しさしか感じられない雄叫びを上げながらセイバーとバーサーカー目掛けて爆走する影が一つ。
両手に朱槍を一本ずつ携え赤い鉢巻に赤いライダージャケットを纏った青年。
燃え滾る炎をそのまま人の形に収めたようなサーヴァントはちょうどセイバーとバーサーカーと正三角形になる位置で立ち止まった。
そして、勢いよく右手に持った槍を掲げ大音声でこう告げた。

「我こそは、真田源次郎幸村!此度の聖杯戦争ではらんさぁのくらすを得て現界した!!
某が望むはこの戦に集う猛者たちとの熱く燃え滾る死闘!!
両名ともさぞ名のある使い手とお見受けした!いざ尋常に勝負ぅ!!!」
「…………………は?」

あのサーヴァントが何を言ったのか、理解するのに三秒の時を要した。
サーヴァントが秘すべき真名を晒した?これほど堂々と?
しかもサーヴァントとしての願いまで口にしていなかったか?
あまりの事にバーサーカーでさえ呆けたように動きが止まっている。

「うおおおおおお!!英霊の座より、見ていて下されお館様ぁああああああああああ!!!!」
「……はっ!?」

あまりにも大きな衝撃にセイバーが硬直している間にランサー、真田幸村は眼前まで迫っていた。
繰り出された槍撃を咄嗟に躱しバックステップで距離を取る。
それを隙と見たかランサーは距離を詰め猛攻を仕掛けた。

「烈火!!!」

魔力放出による炎を纏った槍のラッシュだが、決して乱雑に繰り出しているわけではない。
数多の戦を経た、真田幸村という一人の武士(もののふ)が生涯をかけて磨き上げた技が詰まっている。
だがそれとて必ずしも全ての敵に通用するわけではない。

「あ、当たらぬ!?」

先ほどのバーサーカーの拳打の比ではない正確さと武錬から繰り出される槍撃もやはりセイバーには掠りもしない。
その神懸かり的な身のこなしはランサーにとって埒外のものであった。
全てを剣によって防がれる、というのならまだ理解できる。
しかし音速の槍衾を純粋な体術のみで躱し続けるなどどれほどの力量を以ってすれば可能なのか。

「お前、私にかかりっきりで良いのか?あっちはもう待ちきれないみたいだが」
「何だと!?―――し、しまった!」

セイバー相手に躍起になっている間にバーサーカーはアマダムの恩恵による再生能力で左腕を含めた傷を治癒していた。
そして今にもランサーをセイバー諸共撲殺せんとばかりに突進し拳を振り上げていた。
咄嗟の反応で二槍を交差させて防いだものの凄まじい威力と重みによって身体が数歩分後退してしまう。
一方セイバーはランサーとバーサーカーを尻目にコンテナへ飛び移り、戦場を離脱しようとしていた。

「じゃあな、後は二人でよろしくやっててくれ」
「に、逃げるのか!?」

追おうとするランサーだがそんなことはお構いなしとばかりにバーサーカーは標的をランサーに絞り襲い掛かる。
殴る、蹴るという原始的かつ単純な攻撃方法だがただそれだけの攻撃がランサーを追い詰めていく。
相手を圧倒する膂力と体格、距離を開かせない瞬発力は容易に対抗することを許さない。
気配探知による先読みを可能とするセイバーには通用しなかったがランサーには極めて有効だった。

「何という剛力…!このままでは……!!」

災害にも等しいバーサーカーの猛攻に耐えながらランサーは己の失策と視野の狭さを呪った。
この異形のサーヴァントを前にして一度でも尋常な打ち合いを、力比べをしてはならなかった。
一度捕まれば最後破滅的な威力を誇る拳打の前に崩壊の時を迎えるまで封殺される他ない。
いや、この敵と対等の身体能力を持っていれば別だろうが今のランサーにそこまでの力はない。
個体性能の違いもあるが、何よりマスターの性能に天と地ほどもの開きがある。
加えて、クロスレンジではランサーの二槍のリーチを活かしきれない。
逆にバーサーカーは素手故のタイムラグのなさで一方的に攻め立てる。
セイバーが打ち合いを避けて回避を重点に置いていたのは自らの力量を誇示するためではない。
力比べをすれば相手のペースに嵌ることを読み切っていたからこそ決して触れさせなかったのだった。
とはいえそれが可能であること自体セイバーが規格外の実力を持つことを意味している。

(だが、初戦からこれほどの強敵に出会えるとは僥倖……!)

一見して、絶望的としか思えない状況と戦力差。
それにも関わらずランサーは笑っていた。
現実逃避をしているのではない。状況を認識できないほど愚かなわけでもない。
むしろ目の前の壁の高さを思い知るからこそより闘志を燃やすのだ。
この壁を乗り越えた時に味わえる達成感は、どれほどのものか。

召喚されたこの世界は、戦乱に明け暮れた幸村の時代と違い平和だった。
文明も食事も人々の営みも随分と様変わりしていたが、かつて武田信玄が目指した泰平の世が確かにあった。
マスターもまた、そんな時代に生を受けて育った暖かみのある女性だった。
予選で敵サーヴァントを探す傍ら、幸村は茜と共に現代の暮らしを享受していた。
仮初だが戦の影など微塵も感じさせぬ平穏に浸っていた。
それを良い世になったと思える反面、心の奥底で「これは違う」と叫ぶ自分がいたことは否定できない。

(お館様と泰平の世を目指しておきながら、俺という男は)

この本選で、初めてサーヴァントと矛を交えて改めて実感した。
戦場が、命を懸けるに足る猛者たちとの果し合いの場こそが己の生きる場所なのだと。
生と死の狭間においてこそ血液が、細胞の一つ一つが、魂が滾るのだ。
幸村に限らず、戦国の世を駆け抜けた漢たちが等しく持つどうしようもない性だった。

今相対しているサーヴァント、バーサーカーは強敵だ。
技巧はないが純粋な暴力で全てを捩じ伏せるというある種の真理を体現している。
両腕の感覚は既になくなりかけており、槍も軋みをあげている。
生半なことではこの窮地を脱することなどできまい。
だから覚悟する。己の失策で招いた窮地であるならその代償は自身で払うのみ。

バーサーカーが左腕で繰り出したアッパーカット。
右手に持った槍で防いだ瞬間、槍はランサーの手を離れて宙を舞う。
攻勢に耐えきれず、ついに愛槍を手放した―――風を装う。

(来い!)

生前、多くの戦と修行によって培われた心眼を研ぎ澄ませ好機を生み出す。
理性のないバーサーカーなら見え見えの隙を何の躊躇もなく突いてくるはずだ。
ランサーの予見に違わずバーサーカーは無防備になった右脇腹へ回し蹴りを見舞う。
すかさず衝撃を殺すために上体を逸らし、直後にバーサーカーの蹴りが命中した。

「ぐぅっ……!?」

全てにおいてランサーの計算通りに働いた完璧なタイミングだった。
絶妙な体捌きでダメージを抑えたことに加え、宝具「楯無の鎧」の加護も十分に働いていた。
だがそこまでして尚バーサーカーの蹴りはランサーの肋骨に皹を入れた。
勢いをつけたわけでもない、何の変哲もないただの蹴りがこの威力だ。
しかしランサーにとっては全て織り込み済みであり覚悟していたこと。

「…ぐ、ぉぉおおおおおっ!!!」

ランサーが炎を纏った右腕を振りかぶり、バーサーカーの顔面目掛け強かに叩きつけた。
予想外のカウンターによってバーサーカーは脳震盪を起こしたか仰け反りながら数歩後退する。
宙を舞っていた十文字槍を再びその手に掴み、反撃の好機を逃すことなく今度はランサーが仕掛ける。

「ぉぉおおおお……灼熱ううう!!!」

このサーヴァントを打ち倒すのならば自らの必殺を以ってでなければならない。
ランサーはこの局面まで温存していた宝具の一つ「熱血大噴火」を発動した。
全身に炎を纏ったランサーはこれまで以上の踏み込みでバーサーカーに肉薄すると再び「烈火」を見舞う。
未だ立ち直りきれていないバーサーカーでは十分に迎撃できず、次々と二槍が突き刺さる。
宝具の解放による強化と灼熱の炎の併せ技が堅牢なクウガの生体甲冑に傷をつけていく。
しかし浅い。今のランサーを以ってしても単なる力押しだけでバーサーカーを攻め落とすのは容易ではない。

が、活路はある。攻略法は先ほどセイバーが見せてくれた。
遠目にではあるがセイバーがバーサーカーの腕を斬り飛ばす瞬間は目にしていた。
どれほど分厚い装甲にも必ず隙間は存在しているもの。

「貫けええええい!!!」

ランサーの槍がバーサーカーの右肘を貫き、次の瞬間最大出力で炎を噴射し腕を焼き切った。
甲冑に覆われていない部分を内部から破壊する、ランサーの策が見事に決まった形となった。
ランサーは快心の一撃にも気を抜かずここが勝負所とさらに攻勢を強めようとする。
バーサーカーの身体能力は脅威だが今なら圧倒されはしない。

しかし直後にランサーは驚愕することになった。
バーサーカーが反撃のために振るった左腕、そこから巻きつくように炎が発生していた。
攻撃そのものは二槍を交差させ難なく受けきったもののバーサーカーに後退する隙を与えてしまった。

「その炎…そなたも某と同じ力を持っているというのか?」

当然ランサーの誰何にバーサーカーが答えるはずもない。
しばらく油断なく炎を腕や足に纏い構えていたバーサーカーだが不意に背を向け、猛スピードで逃げ出してしまった。
ランサーが訝しんでいる隙を突いた絶妙のタイミングだった。

「くっ、また逃げられてしまったか……!」

宝具を解除しバーサーカーが去った方向を睨みつける。
追撃しようにもダメージの残った身ではそれも難しい。

「ランサーさん!」

それまで隠れていたマスターである日野茜が走ってきた。
手にはミネラルウォーターの入ったペットボトルがある。

「大丈夫ですか!?全然目で追えないぐらいすごい戦いでしたけど……怪我とかありませんか!?」
「何の、心配ご無用でござる」

実際にはかなりの激痛が走っているが心配はかけさせまいと態度には出さず水を受け取り飲み干す。
それにしばらく休息に専念すれば宝具の効果によって完治する程度の傷なのだから、満更嘘というわけでもない。
それよりも意気揚々と乱入しながら何の戦果も挙げられなかった自分自身への怒りが先に立つ。

「すまぬ、ますたぁ殿。せっかくの初陣だというのにこの体たらく。
この幸村、まだまだ未熟……!」
「そんな、ランサーさんだって凄かったですよ!
大丈夫です、きっと次がありますよ!」

励ますその声がどこか震えているのをランサーは見逃さなかった。
薄々わかってはいたことだが、平和な時代に生まれ育った彼女にサーヴァント同士の戦闘は刺激が強すぎたのだ。

「ますたぁ殿、我々は夜通し敵を探し求めて疲弊しておりまする。
一度拠点に戻り、次の戦に備えて休息に専念するべきでは?」
「え、でも学校が……でも一日ぐらい、サボっても大丈夫かな?」

少し悩んだ後、茜は学校を休むことを選択したようだった。
恐らく彼女自身、考えたいこともあるのだろう。
ランサーもまた、先ほど戦った強敵たちの姿を瞼に焼き付けながら「次は必ず勝つ」と心に誓った。


【新都北部、港の倉庫街/2014年8月1日(金)0120】
【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
やや寝不足
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
対戦相手を全力で探し回る。そして全力バトル!!!
でもサーヴァント同士の戦いを見てちょっとだけ怖くなった…。
1:学校を休んで休息する
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅の正確な場所は後の書き手さんにお任せします。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。

【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(40)/B、
耐久(40)/B、
敏捷(30)/C、
魔力(30)/C、
幸運(30)/C、
宝具(40)/B、
疲労(小)、魔力消費(小)、肋骨に皹(回復中)
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!
1:一度回復に専念せねば…
2:せいばぁ、ばあさあかぁと再戦し、勝利する
3:名乗りも上げずに挑みかかるなど武士の名折れ!
[備考]
●傷の回復には数時間程度かかります。



 ◆   ◆   ◆



「どうやら終わったみたいだな」

セイバーは海を挟んだ深山町側の港からランサーとバーサーカーの戦闘の様子を伺っていた。
それぞれ宝具あるいはスキルを視認できたのは小さくない成果だ。
惜しむらくは千代子がいないために具体的なステータスなどが確認できなかったことか。
しかし時間帯を考えればあまり贅沢も言えないだろう。

(あのバーサーカー、やっぱり妙なんだよな。
ランサーとの戦いの最後の方は動きが良くなってたように見えた。
それにあいつが身体に纏わせてた炎。あれはランサーが使ってたのとは種類が違う。
ランサーは自分の魔力を放出して炎に変換してたがバーサーカーは大気自体を炎に組み換えていた。
その能力にしてもまるで今思い出しましたと言わんばかりのタイミングで使っていた)

妖気探知を持つセイバーだからこそわかる二騎の能力の違いを考察する。
そして現状ではランサー、バーサーカー共に格別大きな障害とはならないと結論づけた。
何しろセイバーは先の戦闘で妖力解放を一パーセントたりとて解放していない。

(あいつらやランサーのマスターを仕留めなかったのは失策だったか…?)

一瞬欲が出かけたがすぐに頭を振って否定した。
そもそもセイバーは当面諜報に専念する予定だったのだ。
だというのに二騎ものサーヴァントと戦闘を継続するなどという真似をすれば目立つどころの話ではない。
ランサーのマスターを暗殺すれば結局残ったバーサーカーに追われ面倒なことになっていただろう。
第一ランサーやバーサーカーに更なる隠し玉がある可能性も有り得たのだ。
リターンは逃したかもしれないがリスクを負うこともなかったと考えるべきだ。

「まあいいさ、またちょっかいかけてくるなら今度こそ斬り捨てればいい」

身を翻しマスターの元へと戻っていく。
本選はまだ始まったばかりなのだ。焦る必要はどこにもない。


【深山町北部/2014年8月1日(金)0130】
【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
健康
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:千代子の元へ戻る
2:ランサーやバーサーカーがまた来るなら今度こそ仕留める
3:バーサーカーの索敵能力は警戒しておく
4:ランサーは何でわざわざ真名を名乗ったんだ?
[備考]
●ランサー(真田幸村)の真名とある程度の戦法、バーサーカー(小野寺ユウスケ)のある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。



 ◆   ◆   ◆



開け放していたベランダに再びバーサーカーが戻ってきた。
それを確認して今まで継続していた視界共有を解除した。

「うっ……」
「美遊様!大丈夫ですか?」
「……平気、とはいえない」

バーサーカーの視覚はやはり鋭敏であり、その視界を借りる私では視覚情報を十分に処理しきれず頭痛を起こしてしまうようだった。
やはり戦闘となれば入ってくる情報量は桁違いのものがある。
どうやら仮病ではなく、本当に体調不良で休むことになりそうだ。

「バーサーカー……」

バーサーカーの初戦は、苦い結果となってしまった。
ステータスで優越しているはずのセイバー、ランサー双方に遅れを取った。
黒化していない、技量の伴った正規の英雄があれほど強大だとは思わなかった。
バーサーカーの受けた傷は既に概ね治癒しているけれど撤退指示が遅れていれば取り返しのつかないダメージを負っていたかもしれない。

「バーサーカーも戦力の全てを見せたわけじゃない、けど…」

今の戦闘でバーサーカーの狂化スキルは必要最低限しか機能させなかった。
例えるなら理性を奪っただけで狂化はさせていない、という言い方が適切かもしれない。
しかし、それでも私の魔力ほぼ全てを常に供給し続ける必要があるほど彼の魔力消費は莫大だった。
これで狂化を完全に解き放てば、恐らく私とサファイアによる供給さえも追いつかなくなるだろう。
狂化に関しては、扱いや使うタイミングを慎重に考える必要がありそうだ。

それに、最後に使っていたあの謎の炎も何なのか詳しくわかっていない。
そもそも私はバーサーカーの詳しい素性や能力も十分に知らない。
せいぜい以前に見た夢で名前や第四号という名称など断片的な事を知っている程度だ。
これがコミュニケーションの取れないバーサーカークラスの弊害なのだろう。
本選が始まったのだから、一度図書館で彼について詳しく調べるべきだろうか。
手探り状態での運用にはすぐに限界が来てしまうだろう。
けれど、今は。

「サファイア、少し休もう。でも転身はそのままで良い」
「ですが、横になって休まれた方が……」
「まだ夜が明けてない。いつでも敵襲に備えておかないと。
バーサーカー、そのまま周囲を警戒していて」

壁に背を預けて膝を抱えて座ったまま仮眠を取ることにした。
少なくとも夜明けまでは最低限の警戒態勢を維持しておいた方が良いはず。
疲れが溜まっていたのか私はすぐに微睡みの中に沈んでいった。

ふと、大切な人のことを思い出した。
聖杯を巡る争いの中で戦い続けて、私に平穏な世界で生きてほしいと願った兄のことを。
今私がしていることは、間違いなくあの人の願いに反している。

「……それでも私には、もうこうするしかない」

結局運命から逃げ切ることなんてできはしなかった。
それならもう、この月の聖杯に頼る以外の方法なんて、きっとない。


【新都、蝉菜マンション/2014年8月1日(金)0130】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
仮眠中、魔法少女カレイドサファイアに転身中、激しい頭痛
[装備]
カレイドサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
月の聖杯の力で自分の世界を救う
1:転身したまま明け方まで眠る
2:学校には行きたくない
3:バーサーカーについて調べておきたい
[備考]
●予選期間中に視界共有を修得しました。
しかしバーサーカーの千里眼が強力すぎるため長時間継続して視界共有を行うと激しい頭痛に見舞われます。
また美遊が視界共有によって取得できる情報は視覚の一部のみです。バーサーカーには見えているものが美遊には見えないということが起こり得ます。
●セイバー(テレサ)の基本ステータス、ランサー(真田幸村)の基本ステータス、一部スキルを確認しました。
●月海原学園初等部の生徒という立場が与えられています。
●自宅は蝉菜マンション、両親は海外出張中という設定になっています。
また、定期的に生活費が振り込まれ、家政婦のNPCが来るようです。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の能力についてあまり詳しくは把握できていません。

【バーサーカー(小野寺ユウスケ)@仮面ライダーディケイド】
[状態]
筋力(100)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(30)/C、
宝具(??)/EX、
ダメージ(微・回復中)、仮面ライダークウガ・アルティメットフォームに変身中
[思考・状況]
基本行動方針
美遊を守り、命令に従う
1:変身したまま周囲を警戒する
[備考]
●戦闘経験を積んだことで少しだけ超越感覚の制御能力が上がりました。
●超自然発火能力の一部を修得しましたが、まだ相手を直接燃やす段階には至っていないようです。
●各種ライジング系武装を作り出せることに気づいていない可能性があります。
もし気づいていない場合、何らかのきっかけがあれば生成できるようになると思われます。
●少なくとも魔力放出スキルによるダメージは無効化できません。