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「こっちは終わった。キャスター?」
「問題ない。陣地作成は終わったよ。」

 暗号屋・天沢勇子とそのサーヴァント・キャスターのクラスで現界した兵部京介。本選に出場をはたした二人は新たにあてがわれた家の安全を確認した後拠点化を行っていた。
 陣地作成のスキルを持つキャスターはもとよりイサコも暗号屋としてトラップやセンサー類の暗号を得意とする。二人の能力の系統は全く別のためそれぞれの力を発揮するためには二重に用意をする必要はあったが、最低限の隠蔽ができるレベルまでするのにそう時間はかからなかった。

「じゃあ、そろそろ状況を確認する。」

 その家のリビング、テーブルとともにあるイスの一つに座るとイサコは手に持っていた荷物をキャスターに見せてきりだした。どれも予選の時から引き継いだ、キャスターにとって見覚えのあるものばかりだ。

「マスターの持ち物は全部あるようだね。」
「部屋にあった家具や服も同じものばかりだった。マスターの物は全て予選の時から引き継ぐのかもな。」

 そう言うとイサコは懐から白いチョークのようなものを取り出した。本来それは暗号を手書きするための仮想空間上にあるチョークのはずだったが、この聖杯戦争では本物のチョークと同じ質量を持っていた。そのチョークを手で弄びつつイサコは話を進めていく。

「キャスター、予選が終わる直前に渡しておいたチョークの欠片は?」
「それなら‥‥」

 その言葉に答えてキャスターは着ている学生服のポケットを裏返していく。そこには何一つ、それこそ塵一つ物が入っていなかった。

「ご覧のとうり、何一つないよ。どうやらサーヴァントの持ち物は没収されるみたいだ。チョークも僕のアイテムと見なされたようだね。」
「やっぱりそこまで上手くはいかなかったか‥‥」

 計画を見直す必要があるな、と心中で呟くと顎に手をやってイサコはしばし考えはじめる。


 もともとキャスターというクラスは劣った身体能力を様々な魔術で補って戦う、そうイサコは認識していた。ようするにゲームのマジシャンのごとく後衛から魔法を飛ばすのだと思ったのだ。
 このことはイサコにとっていささか都合が悪かった。まさしく仮想空間上で魔女のように振る舞える彼女に必要なのは自らの盾となる存在であり、前衛となる三騎士のほうが役割を分担できて効率がよい。いちおうキャスターは接近戦もできるというが、実力を発揮できるかは怪しい。

 よって三騎士のクラスのサーヴァントを持つ主従と同盟を組むというのが基本方針だったが、その時に見返りを要求された場合に備えてキャスターにはいくつか用意をさせていた。
 例えば高性能な(もっとも、イサコからすれば骨董品にも思えるモノだったが)パソコンやスマートフォン、あるいはもっと露骨に現金などを調達させていたが、そういったものはほとんど没収されていた。それどころかキャスターが予選時にそれらを調達するために作った偽の身分証明書も、イサコがキャスターに渡しておいたチョークも無くなっている。サーヴァントに関するものは社会的なものであろうとマスターの物であろうと無かったことにされるようだった。

(サーヴァントの情報はほとんどフォーマットされているのか‥‥?いや、それなら予選の意味はないはず‥‥それに全く用意が無駄になったわけでもない。)

「私が持っていた現金と機器は没収されていない。これだけあれば動き出せる。」
「予選の時みたいに?」

 突如として後ろから聞こえた声にイサコは思わず振り向いた。見ればキャスターがにこやかにウインクをしている。キャスターの持つスキル、テレポーテーションだ。

「おい。」
「まあまあ、そんな怖い顔しないで。ようは━━」
 そういいつつキャスターの姿が変わっていく。銀髪は黒い髪に、学生服はフォーマルなスーツに、顔には眼鏡をつけてお堅いサラリーマンか公務員、といった容姿になった。
 キャスターの持つスキル、ヒュプノ。道具作成にも派生しているこのスキルで相手に及ぼす情報を操作しているのだ。
 そしてその手にはいつの間にかいくつもの名刺が束になっている。

「━━警察に自衛隊に海保に内閣府、おまけに東証一部、二部、マザーズ、ジャスダック、ヘラクレス各種上場企業、どこにでも入れるよ。なんならベンチャー企業でも立ち上げる?それとも政治家や宗教家にでもなろうか?」

 そういたずらっぽく言うとキャスターはイサコに名刺を広げて見せた。


 キャスターの大きな利点。それは他のサーヴァントにはない深い現代知識への理解とそれを利用できる能力だ。
 現界にあたってサーヴァントには一般的な知識が与えられる。また他にも現代に活躍したサーヴァントもいる。ある意味現代知識というのは最も価値のないアドバンテージとも言えるだろう。

 だが、それを差し置いてもキャスターの優位は崩れない。

 生前のキャスターはあるときは軍人として、あるときは世界的大企業の総帥として、またあるときは外交官として半世紀以上に渡って暗躍してきた。そしてそれらの地位は、実力で得たこともあればヒュプノによる幻惑のように超能力を用いて得たこともある。

 社会に溶け込み、時には組織犯罪のような手段をも用いて目的を達成する。
 これが世界を敵に回して戦い続けた、キャスターこと兵部京介の能力だった。


「予選の時は出版社だったけど今度は電力会社なんていかがかな?町中停電にするのもメーターの確認と言って家に忍び込むのも思いのままですよ、マイマスター。」
「ふん‥‥」

 しれっとぶっそうな事を口にするキャスターに、イサコは名刺を見ながら考えを進めていく。

 予選の時はキャスターを会社で働かせて情報収集をさせながら彼女も偵察などをしていたが、他の組に気づかれないことを最優先にしていたためか、なんの成果も得られていなかった。キャスターの給料で買ったものも殆ど没収されてしまったため、今のイサコ達は拠点以外の優位を持っていない。

 顎に手をやって考えること約一分。「決めた」という呟きと共にイサコは顔をあげた。

「まずは秘密基地を作る。キャスター、この家の陣地作成が完全に終わるのはいつ?」
「‥‥バレてもいいならあと一時間もあればできるけど、バレないようにやっても二、三時間かな。僕の陣地作成がAランクなのはヒュプノとサイコキノの規模の大きさと早さが評価されたみたいなんでね。あまり手の込んだものは作れないよ。専用の機械までは道具作成でも作れないし、たぶんそっちはマスターのほうが得意なんじゃないかな?」
「朝までにはできるか‥‥それなら、いくつか基地を作っておく。地図。」
「どうぞ。」

 イサコが決めたひとまずの方針は、キャスターらしく陣地作成に努めることだった。自らのスタイルとキャスターの能力を考えると、いくつもの拠点を作って広く網を広げたほうがよい。幸いキャスターのテレポーテーションはマスターも問題なく運べるのは予選で確認済みだ。
 そう考えるとキャスターが空中に出してみせた地図を眺めながら拠点の候補地を検討する。東西に長い冬木市と自宅の位置を考えると、西の学校近くに一つと東の新都に二つは最低でも欲しいが、とりあえず新都に一つ作っておくのがよいだろうか。

 ふとある一点でイサコの視線が止まった。数秒そこを凝視したのち「よし」という声と共に顔を上げる。


「テレポートする用意はできてるか?」
「もちろんいつでも。それで、行き先は?」



 キャスターがそう言って手を差し出してくる。その手を掴んで「冬木ハイアットホテル」とイサコが言うと、次の瞬間には二人の姿は家から消えていた。



【新都、冬木ハイアットホテル付近の空中/2014年8月1日(金)0249】


【天沢勇子@電脳コイル】
[状態]
健康。キャスターのサイコキノで飛行中。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝してお兄ちゃんを生き返らせる。
1.冬木ハイアットホテルを調査して拠点に相応しいか確認する。
2.調査後家で陣地作成の続きを行う。
3.家の陣地作成が終わったあとはホテルや他の場所で陣地作成。
4.キャスターをどこかに潜入させるか‥‥
5.同盟相手を探す(三騎士、バーサーカー、ライダー、アサシンの順で妥協するかも)。
[備考]
●所持金一万円。
●キャスターの給料で購入したもののうちスマホは引き継げましたが、それ以外はキャスターが持っていたためか全て持ち込めませんでした。
●自宅は深山町にあり、そこにセンサーを張り巡らせました。家への出入りを察知できます。
●予選の時に新聞やテレビや掲示板を見てそれなりに調査したようですがなんの成果も得られなかったようです。

【キャスター(兵部京介)@The Unlimited 兵部京介】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C、
敏捷(50)/A++、
魔力(50)/A、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B
イサコといるのでテレポーテーションに支障あり。
[思考・状況]
基本行動方針
マスターの安全第一。まずは安全な拠点作り。
1.冬木ハイアットホテルを調査して拠点に相応しいか確認する。
2.調査後家で陣地作成の続きを行う。
3.家の陣地作成が終わったあとはホテルや他の場所で陣地作成。
4.変装には自信があるんでね。どんなところでも入れない場所はないよ。
5.同盟相手を探す(バーサーカー、ライダー、アサシン、ランサー、アーチャー、セイバーの順で妥協するかも)。
[備考]
●自宅は深山町にあり、そこに陣地を作成しました。内部での行動は外部から察知できず、また一部の場所が迷路のようになったとか。
●予選では出版社でサラリーマンとして働いていたようです。少なくともその会社に他の組はいなかったようです。