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冬木市の深山町には大きな屋敷が二軒存在する。
一つは手入れが行き届かずお化け屋敷さながらの様相を呈している間桐邸。
もう一つは丘の上に建つ、冬木の管理者たる遠坂の本拠遠坂邸だ。
その遠坂邸が遠坂本家の血縁者である一人のマスターの自宅として宛がわれていた。

「凛、ただ今戻りました」
「おかえり、こっちも粗方家探しが終わったところよ」

そのマスターこそ電子の世界における現代の魔術師(ウィザード)、遠坂凛である。
ムーンセルは遠坂本家六代目当主と同じ名前を持つ彼女の拠点をこの屋敷に定めたのだった。
予選時代、狭いアパートメントに住んでいた凛は突然住居の様相が変わったことに当然困惑した。
よって一晩かけて家探しを行う一方、本選の地理を把握するためセイバーに偵察をさせていた。
おかげで既に早朝と呼べる時間になってしまっていたが、二人はそのまま客間にてお互いの成果を確認し合うことにした。

「思った通りここは遠坂の本家の屋敷で間違いないわ。
子供の頃に何回か遊びに来たここが、まさかわたしの自宅扱いになるなんて予想外もいいところよ。
見慣れない家具や服も多いけど予選で使ってた生活用具や機材はちゃんと引き継がれてる。
色々ごっちゃになってて、時間があったら整理したいけどね。
それで、街の様子はどうだった?」
「はい、やはり本選会場は貴方の言う通り冬木市のようです。
細かい部分に差異は見られますが、基本的な地形は変わっていません」
「やっぱりそうだったんだ。じゃあわたし達は他のマスターより少しは有利ってことなのかしらね」
「油断は禁物です。どこに陥穽が潜んでいるとも限らないのですから」

偵察がてらコンビニで購入させた冬木市の地図をテーブルに広げる。
そこに重要と思われる施設、セイバーの聖剣を問題なく解放できる地点などに色分けしてマーキングを行っていく。
予選の頃から凛とセイバーはこのような打ち合わせ、戦術や目的の摺り合わせを積極的に行ってきた。
全ては衛宮切嗣の下で戦い抜いた第四次聖杯戦争を戦訓にしてのものだ。



 ◆   ◆   ◆



凛から見て衛宮切嗣の失策は強固な自我と矜持を持つ英霊を道具として扱うことに固執しすぎたところにある。
意思を示さないただの武器ならそれで良いだろうがサーヴァントは人格を持った一人の人間なのだ。
生きた時代も価値観も異なる人間に自分の流儀を一方的に押し付けるだけでは反発を招いて当然。
だからこそ予選中、凛は同じ轍を踏まぬよう方針について何度も話し合いを行ってきた。

何を以って勝利と考えるのか?
非人道的な戦略をどのレベルまで許容できるのか?
NPCである一般市民から犠牲が出ることについてどう思うのか?
特にこの三つは真っ先に聞き出したことである。

『戦争である以上策略を全否定するつもりはありません。
ですが私はサーヴァントである前に一人の騎士であり王。
可能な限り命令には従いますが、決して捨て去ることのできない最後の人倫というものがある。
その領域に踏み入るのなら、令呪の一画を使っていただくことになります』

結果わかったことは、セイバーはやはり秩序を重んじ民を想う騎士の王だったということだ。
例えNPCであっても聖杯戦争について何も知らされていない一般民衆を無暗に殺傷することには否定的だった。
とはいえ、元々凛も過激派のレジスタンスのような真似をするつもりはなかったので、価値観が一致しているのは喜ばしいことだった。

『あなたの言いたいことはわかったわ。
でもこれは現代の戦争で、あなたの時代の倫理だけを受け入れるわけにもいかないのはわかるわよね?
あなたの力はあてにしてるけど、何人いるかもわからないマスター相手に全部真っ向勝負じゃ息切れするのが目に見えてる。
だから色々な方法で対処していくことになるし、場合によっては卑怯な戦い方をしなきゃいけないこともあるわ』
『受け入れろ、と?』
『時と場合によってはね。でもわたしも自分のスタンスだけを押しつけるようなことはしない。
あくまでわたし達は運命共同体のパートナー。わたしが間違ってると思ったら遠慮なく言ってほしいの。
わたしってどうも、大事な時に限ってうっかりしちゃうところがあるから。頼りにしてるわ』

如何にセイバーと言えど正攻法だけで全ての敵を打ち倒せるほど聖杯戦争は甘くない。
あの西欧財閥でさえ暗殺部隊を抱えてレジスタンスに備えているのだから。
だからこそ、セイバーが不得手な搦め手や計略を凛が担うのだ。
セイバーはマスターが誠意と合理性を見せれば応える性格であるためか、凛が伝えた方針にも納得を示した。



 ◆   ◆   ◆



(結局、セイバーがこういう性格だったのはわたしにとっても幸運だったのよね)

自分のサーヴァントの属性が「秩序・善」であったことに深く感謝する。
なるほど確かに取り得る戦術・戦略の幅広さという意味では手段を選ばないタイプのサーヴァントには劣るだろう。
しかしそういう手合いは得てして周囲の人間を利用価値の有無だけで判断している場合が多い。
必然的にマスターに対しても平然と嘘や隠し事に身勝手な独断、果ては裏切りなども行う可能性が跳ね上がる。
それはつまり、追い込まれた土壇場でチームが内から崩れるリスクの高さを示している。
一時の同盟やビジネスとしての短い付き合いならまだしも聖杯戦争でその手のサーヴァントと組んで優勝を目指すのは御免だ。

少々融通がきかなくとも信頼の置けるモラリストの方が凛にとってはよほど組みやすい。

「凛?どうかしましたか?」
「ううん、何でもない。それよりどうだった?進歩したバイクの乗り心地は」
「ええ、以前に乗った物と比べて安定性が段違いです。
まさか二十年でこれほど現代の騎馬が進化を遂げるとは思ってもみませんでした」

セイバーは何も徒歩で偵察を行っていたわけではなかった。
予選時代に凛が購入した最新鋭のバイク、スズキGSX1300Rハヤブサ、2014年仕様の試運転を兼ねた偵察でもあった。
セイバーから聞いた第四次聖杯戦争の顛末の一つにライダーとの乗り物を用いた対決があったことから着想を得て用意したものだ。
同時に本職のライダーが誇る騎乗宝具に追従できたという事実からかつてセイバーが用いたバイクはサーヴァントの操縦を前提とした改造機だと当たりをつけた。
そこで凛は購入したハヤブサにも超常存在たるサーヴァントの搭乗を前提とした改造を施した。

もとより1340ccもの排気量を誇るエンジンに更なるボアアップを施し、吸気系やターボチャージャーなど駆動系全般に手を入れた。
当然国内販売用に着けられたスピードリミッターはすぐに排除した。
その結果出力400馬力にも達する、最早人間の手に負えない怪物機へと変貌したのだった。
懸念といえばマスター適性の違いかセイバーの騎乗スキルが第四次と比べ1ランク低下していることだった。
これを補うためセイバーにはバイクの仕様書を熟読させるなどの方法を用いた。
セイバーも以前の経験もあってか新たな騎馬に早くも順応したようだ。
ちなみにこのハヤブサ、スピードリミッターを排除した以外には無改造の機体をもう一機用意している。
こちらは凛が使う以外にセイバーの予備機としての意味合いも持っている。
何をするにも速さ、機動力というのは生死を分けるほど重要なステータスだ。
人間の凛でも乗り物があればサーヴァントから逃げ切れる確率が僅かでも増す。
アサシンやアーチャーの闇討ちに数の暴力が予想される戦場にはバイクは必須のアイテムだ。

そして当然だがバイクの購入・改造には多額の資金が必要不可欠となる。
凛は現実世界から持ち込んだ資金を元手にして株取引でトントン拍子に金を増やした。
言葉にすればそれだけだが、その過程には霊子ハッカーとしてのハッキング技能が用いられている。
2030年代において世界トップクラスの霊子ハッカーである凛が2014年のセキュリティやファイアウォールを突破するのはあまりにも容易いことだ。
各企業のシステムに痕跡も残さず侵入し情報を掠め取ることで容易に株価の推移を予想できた。
そうなれば株の売買で資金を増やすのは造作もないことである。無論犯罪だが暴ける人間など存在しない。
凛にとって幸運だったのは資金、機材の確保に一切セイバーを関わらせなかったために本選開始にあたって何一つ没収されなかったことだ。
マスターが独力で確保した物資にはムーンセルによるリセットは及ばない。

「じゃあわたしは少し仮眠するわ。見張りよろしくね」
「はい、まだ戦いは始まったばかりです。休息は取れる時に取る方が良い」

本来ならやりたいことはまだいくらでもある。
セイバーの感知能力の低さを補うために用意した礼装の改良もまだ終わっていない。
しかし、さすがに徹夜によって無視できない眠気と疲労感に襲われている。
こんな状態では能率の良い作業はできないと自分に言い聞かせて一人用にしては大きいベッドに倒れこんだ。

(この家と部屋って、元々誰が使ってたんだろ)

ふと家探しをしている時から拭えなかった疑問に思いを馳せる。
この屋敷に元からあった家具や服、調度品の数々は明らかに遠坂凛のパーソナリティからかけ離れている。
凛の世界ではとうに没落した遠坂本家のこの屋敷だがここでは最近まで他の誰かが暮らしていたような生活感に満ちている。
そこに凛が予選中に使っていた私物が混じり混沌とした様相を呈している。
特に違和感を感じたのが趣味も胸のサイズも微妙に合わない女物の服だ。あれは自分と同年代の少女が好んで着そうな服だ。
しかし凛が住んでいるという状況を想定しているなら服のサイズが合っていないのはムーンセルの手落ちにも程がある。
だから凛は仮説として他の誰かが使っていたこの家が何かのエラーで自分に割り当てられたと考えた。

(まあいいや。高級ホテルに泊まってると思おう)

睡魔に敗北し、投げやりに思考を打ち切って眠りについた。
地上では中々味わえない高級感溢れるベッドはとても寝心地が良かった。


【深山町、遠坂邸/2014年8月1日(金)0745】
【遠坂凛@Fate /Extra】
[状態]
疲労(中)、寝不足、睡眠中
[道具]
ナイフ@Fate /Extra、ドール(未完成)@Fate /Extra、その他多数の礼装@Fate /Extra
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う
1:とにかく今は寝る
2:礼装、ドールを改良する(索敵・感知系を優先)
3:闇討ちや物量戦法を強く警戒
4:この家って……
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
健康
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:周囲を警戒する
2:凛と良好な関係を築けてホッとしている
3:ハヤブサの性能に満足
4:何故冬木が会場に……?
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。