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━━冬木市の評判では、事件や事故が頻発する呪われた土地という話がある━━


丸や四角、直線に曲線。
様々な幾何学模様が冬木ハイアットホテルの最上階、その一室の壁・天井・床を這いまわり、妖しく明滅する。

「‥‥こんなところか。」

ふぅ、というため息と共にイサコはソファに身を預けた。

暗号屋としての技術で簡易工房の作製を始めて小一時間、そこは前線基地とまがりなりにも呼べるものになっていた。
センサー、迎撃用の動的静的問わないトラップ、ファイアウォールの構築。本人としてもお粗末とは思うが、仮の拠点としては及第点といえるだろう。

「キャスター。」

一人しかいない部屋で呼びかけるように呟く。数秒の後、彼女の目の前に上等なスーツに身を包んだ男が現れた。

「終わったみたいだね。こっちも、チェックインは済ませてきたよ。」
そう言うと男、キャスターはホテルのキーを投げた。彼のヒュプノは彼自身をがたいのよい髭の男に見せかけ、今の彼はワンマン社長か大手企業の役員といった感じの中年男性然とした姿になっている。もしここに第三者がいれば援助交際を疑うような組み合わせだ。

「そっちは何分くらいかかる?」
「下に行く前にあらかたやっておいたから、十分とかからないよ。それより。」

答えながらキャスターは向かいのソファに座りどこらかタバコを取り出して吸い始める。煙を出さないそれを見ながらイサコは自身の回りにプレッシャーを感じた。陣地作製が始まったのだろう。

「それより?」
「それより良い知らせと悪い知らせがある。どっちから聞く?」
「‥‥いや、良い知らせから聞くわ。」

ふっと、タバコから煙が流れ始めた。ゆっくりと宙を漂うそれは、しかし形を作り色づきはじめる。

「良い知らせは、恐らく相手に気づかれず他の組を見つけた。高校生ぐらいのマスターにたぶん霊体化してるサーヴァントだ。」

イサコの目の前で煙が形を変えていく。やがて目の前には均整のとれた体格の青年の像ができた。

「じゃあ次は悪い話。見つけたあと、威圧感が飛んできた。ヒュプノで誤魔化してたけど、逆にそれで気づかれたみたいだね。僕がサーヴァントだとは思わないだろうけど、少なくとも近くに他の組がいるとはバレただろうね。」
「おい。」
「うん、これは僕のミスだ。申し訳ない。とりあえず一旦ここを離れたほうが良いと思うよ。もちろん迎え撃つなら負ける気はないけど。」
「‥‥ふん。」

苦い顔にイサコはなった。まさかいきなり戦闘になるとは思いもしなかったのだ。もちろん逃げられる今なら、戦闘を回避することは難しくない。問題は、自分自身が戦闘になることを考えていなかったことだ。
予選の間の三週間近い期間に、イサコは戦闘はおろか他の組と遭遇くすることもなかった。それは潜伏を第一としていたことの結果ではあるが、裏を返せば戦うことの放棄とも言えた。

自分は戦うことを考えていない、もっといえば戦うという発想がない。

そう思ったとき、おもわず自分の不甲斐なさに苛立った。自分はここに、この聖杯戦争に何をしに来たのか忘れていたのではないか。もしこんな甘ったれた状態で戦いになれば、何もできずに死んでいただろう。

「少し、五分でいい。考えさせて。」

そう言うと、イサコは目を閉じた。
半端な覚悟では、この戦いも、この先、戦いも勝ち抜けないだろう。

必要なのは、覚悟。愛を燃料に希望をエンジンにして前に、聖杯に、お兄ちゃんに進む。


五分より早いか遅いか、何も言わずにキャスターは待っているなか。

「待ってて、すぐに会いに行くから。」

そう小さく、でもハッキリと言なうとイサコは目を開いた。



「なるほどねぇ‥‥よくできてるよ、全く。」
そう言うと、間桐慎二は自宅のソファに身を沈めた。その感覚があまりにも現実のそれに近く、おお、とまた感嘆する。
「いや、本当によくできるよ。殆ど現実と変わらない。聖杯ってのは凄いもんだ。」


予選を与えられた住宅で突破後、慎二は気づいたときには間桐家にいた。
殆ど現実のそれと変わらないそれに驚いて一通り見てまわり、やや古びた以外は寸分違わないことを知ると、一室のソファに身を沈めしばし考え込む。

「‥‥」

その姿を、彼のキャスター、フドウは感情のこもらない目で見ていた。
自身のマスターの性格と資質。それらを見定める時間は予選期間にいくらでもあった。そして、彼が聖杯を手にしたときのことも、手にできるかどうかも。


結論から言えば、キャスターは慎二が聖杯へと至れるとは思っていない。

もちろん、皆無というわけではない。ただし、聖杯へ手が届くためには慎二には幾つもの壁がある、そう見ていた。
それは、例えば驕りであったり、例えば卑屈であったり、例えばけちであったり。その様に呼べるものが彼にある限り、この戦いを勝ち残ることは不可能だという判断を下していた。そして万が一聖杯を勝ち取ったとしても、その使用者たる資格はないと。

「キャスター、新都に行くぞ。」

やや考え込んでいたキャスターはその声で慎二を見る。既に彼のマスターは手早く荷物を整理すると早くも電話をどこかにかけていた。

(‥‥はい、マスター)そう小さく言うと霊体化も解かずに慎二の後を追った。



(ふん、地方都市にしてはまともなホテルだな。)
(で、キャスターの言うとうり冬木ハイアットホテルに来たわけだけど、本当にここに他のマスターがいるのか?)
そう言うと青年・色丞狂介はホテルのロビーを見渡す。
(少なくとも一組はいるだろうな。)
そんなマスターにキャスター・パピヨンは当たり前のように答えた。

狂介は予選突破後、自宅のあった新都を中心に土地勘を養うためのランニングをしていたのだがキャスターはその一先ずの目的地をこのホテルにしていた。
幸いにして、狂介は既にパンティと二つの核金を有しており、とりあえずの戦闘能力はある。魔力も予選の時から持ち越しているため当分は気にすることもない。その余裕のある状況から、二人は積極策に打って出ていた。
しかし、なぜホテルなのか?狂介は言葉を待つとめんどうくさそうにキャスターは答えた。

(簡単なことだ、昨日の下北沢のサーヴァントが本選に出ていれば、そしてまだ強引に魂食いをしようとするならば、まとまった数のいるホテルを狙うだろう。)

下北沢のサーヴァント。
それは狂介とキャスターが今一番危険視している陣営だった。
予選期間の最終日に、突如通勤電車を襲って何百人もの人々を殺したであろうサーヴァント。
ニュースでしか事件の概要はわからなかったが、おびただしい返り血を浴びて刀を振り回す男の映像は、今もありありと思い出せる。
白昼堂々あまりにも大雑把に魂食いをするその凶暴さは嫌でも危機感を覚えさせられた。

(ヤツがあれで腹を満たしていればいいが、本選が始まってすぐに喰いにくるならここは絶好の狩場だ。ああいう獣は鼻が利く。)
「なるほど‥‥ていうことは、ここは。」
(まだ来ていないようだな。予選落ちしたのか魂食いの必要がないか‥‥それとも━━ン?)
「おい、キャスター!あれ!」

そう言うと、狂介はロビーにある大型テレビを指差した。その声に数人のホテルマンやロビーの人が振り向き「アハハ‥‥」と笑ってごまかす。

(チッ‥‥わざわざ霊体化してやってるのにお前が目立ってどうする。)
(ご、ごめん。でもアレ!)
(冬木大橋か、あてがハズレたか。)

大型テレビには望遠で撮られたと思わしき映像が流れている。そのピントは巨大な橋に合わさっていた。
赤や黒や黄。カラフルに彩られたそれは立ち上る煙と共にただ事ではないことを示している。ワイプから早口で原稿を読み上げるアナウンサーもそれが異常事態だという証だった。

(事故の可能性もあるが、それは出来すぎだな。まず戦闘だろう。)
(それってあの下北沢の?)
(断定はできんがな。それより、自分のことを気にしたほうがいいぞ、見られている。)
(見られてるって、まさか他の!?あのサーヴァントは橋にいるんじゃ。)
(ここにいるのはアレだけではない、他のマスターの中には、当然ホテルに泊まっているものもいるだろう。さて、どうす━━)
(‥‥キャスター?)

ふいにキャスターからの念波が途絶え狂介は振り向いた。今までの感覚ではすぐ横に、そして今もそこにいる感覚はある。なのになぜキャスターは黙ったのか?それは直ぐにキャスターの念波で伝えられた。

(迂闊だったか‥‥入り口に回り込まれた。いや、これは別のサーヴァントか?まさか予選の時から同盟を組んでいた‥‥?)
(なっ!?どこにいるんだ!)
(落ち着け、あっちも霊体化しているようだ。さすがに人目のあるここでは戦いたくないだろう。『巣』の近くならなおさらな。だったら堂々と『交渉』してやれ。)

ポン、と背中を押される感覚が狂介に伝わる。キャスターの言葉に頷くと、狂介は「よし」と一つ気合いを入れて━━そのポケットに核金とパンティだけ入れて━━入り口へと向かった。



(マスター、あのホテルからサーヴァントの気配が。)
(ほぅ‥‥やっぱりいたか。バカと煙は高いところが好きってね。)
にやり、と慎二はタクシーの中で笑った。

慎二が呼んだタクシーの行き先、それも他の二組のキャスターと同じく冬木ハイアットホテルだった。
彼としては近未来的に(彼の視点で)なった新都を見てまわると共に一番他陣営がいる可能性の高い宿泊施設としてハイアットホテルを選んだのだが、その勘は正しかった。もっとも、キャスターが気づいたのは同じような考えでホテルに来たパピヨンだったのだが、そんなことは慎二にとってさして重要なことではない。重要なのは、ようやくキャスターを戦わせる機会がきたということだ。

キャスターを召喚して約三週間、めぼしい敵もなく陣地作製だけやっていて聖杯戦争らしきことは殆どしていない。たまたま予選会場に他の陣営がいなかったせいかそれとも外に理由があるかはわからないが、ともかく慎二には退屈な時間であった。しかし、本選となれば確実に他の陣営もいるだろう。それがキャスターなら陣地作製される前に倒せば良いし三騎士のクラスなら同盟してもよい。そう慢心できるほどにはキャスターのステータスを信用している慎二は思いきって陣地作製を後回しにしてまで新都に来たのだ。

「それじゃあ行こうか、キャスター。」
エントランス前でタクシーを降りると慎二は呟く。ロビーには人がいるが、神秘の秘匿を考えればいきなり攻撃してくるようなことはないだろう。聖杯戦争にとっては邪魔だが、今は都合がよかった。

「来るぞ、マスター。」
そしてロビーの中では、慎二たちと相対するように狂介が歩く。その目には自分と同じ年頃の青年、ほぼ確実にマスターだろう。


午前三時、こうして冬木ハイアットホテルに三人のマスターと三騎のサーヴァントが集まった。向く向きの違う三組の行方は。



【新都、冬木ハイアットホテル/2014年8月1日(金)0300】


【天沢勇子@電脳コイル】
[状態]
健康。覚悟完了?
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝してお兄ちゃんを生き返らせる。
1.ロビーの敵陣営を見定め、必要なら迎撃。
2.調査後家で陣地作成の続きを行う。
3.家の陣地作成が終わったあとはホテルや他の場所で陣地作成。
4.キャスターをどこかに潜入させるか‥‥
5.同盟相手を探す(三騎士、バーサーカー、ライダー、アサシンの順で妥協するかも)。
[備考]
●所持金一万円。
●キャスターの給料で購入したもののうちスマホは引き継げましたが、それ以外はキャスターが持っていたためか全て持ち込めませんでした。
●自宅は深山町にあり、そこにセンサーを張り巡らせました。家への出入りを察知できます。
●予選の時に新聞やテレビや掲示板を見てそれなりに調査したようですがなんの成果も得られなかったようです。
●冬木ハイアットホテル最上階をキャスターに借りさせ、一室を簡素な拠点化しました。

【キャスター(兵部京介)@The Unlimited 兵部京介】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(30)/C、
敏捷(150)/A++、
魔力(50)/A、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B
[思考・状況]
基本行動方針
マスターの安全第一。まずは安全な拠点作り。
1.マスターの安全第一。危険なら即撤退。
2.調査後家で陣地作成の続きを行う。
3.家の陣地作成が終わったあとはホテルや他の場所で陣地作成。
4.変装には自信があるんでね。どんなところでも入れない場所はないよ。
5.同盟相手を探す(バーサーカー、ライダー、アサシン、ランサー、アーチャー、セイバーの順で妥協するかも)。
[備考]
●自宅は深山町にあり、そこに陣地を作成しました。内部での行動は外部から察知できず、また一部の場所が迷路のようになったとか。
●予選では出版社でサラリーマンとして働いていたようです。少なくともその会社に他の組はいなかったようです。
●冬木ハイアットホテル最上階を借りて、一室を簡素な拠点化しました。


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
高揚。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.目の前の男(色丞狂介)と会話。同盟か不可侵か戦争か。
2.間桐家で陣地作成を行う。
3.会場と冬木市の差異に興味。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
霊体化
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1.今は慎二に従い、見定める。
2.求めるなら仏の道を説くというのも。
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりました。ただ、見捨てたわけではありません。


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
健康。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.目の前の男(間桐慎二)と会話。協力できるか。お仕置きか。
2.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
3.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になる。
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.こちらから仕掛けはしないが━━
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●今は空気を読んで霊体化していますが気分で実体化したりします。