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「残念なお知らせがあります。」

 重い空気の中、アーチャー・安藤まほろは声を発した。リビングのテーブルで手を組んでいるナノカの向かいに座ると、再び声を発する。

「家中を見て回りましたが、日付が変わるときに乗っていた車を除いて全て……」

 アーチャーは思わず声を途絶えさせた。カチ、コチ、と部屋の片隅に掛けられた時計の秒針の時を刻む音だけがリビングを、家中を支配する。その静けさに急かされたようにナノカ・フランカは「資材は」と言葉少なく先を促した。
 アーチャーはマスターの顔を伺った。しかし、顔の前に組まれた手がその表情を伺わせることを拒絶する。ややあって、アーチャーは意を決するとマスターへの報告を再開した。


「車を除いて全て……発明した機械も備蓄してた弾薬も保管してた設計図もなくなっていました。」


 この聖杯戦争は予選期間をもうけてある。それは聖杯戦争へ参加するにあたって記憶障害が発生することへの対処のためというのが大きい。予めある程度環境に順応するためのモラトリアムとして、そして想定外のマスターの発生を防ぐため。もし予選がなければ聖杯戦争の終盤になって新たなマスターが出てくるという展開もあり得るのだ。
 そして、予選はあくまで予選。多少の小競り合いはまだしも各陣営に磐石な態勢を整えさせることをよしとはしなかった。そのために本選は予選と別会場になり、事前の情報収集や陣地・道具の作製を制限したのだ。
 そしてここで通常では考えられない事態が発生した。本来これらは時間をかければかけるほど有利になるキャスター等への措置なのだが、悲しいかなこの聖杯戦争においてキャスター以上にキャスターらしいナノカが一番割りを食う形になったのだ。


「はあぁぁぁっっっっっ……」

 長く、そして大きいため息がナノカから漏れた。

「……わかってましたよ、悲しいけど、これって戦争ですよね、こういうことが起こることも想定してなかったわけじゃないですけど、その……」

「ちょっとテンション下がりました……」
「ナノカさん……」

 アーチャーの目に光るものが現れた。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 



「では、正午に駅前で合流後、正式に同盟を結ぶ。」
『了解した、会えるのを楽しみにしているよ。』

 ところ変わってライダー・少佐とトバルカインとアーチャー・ワイルド・ドッグの交渉場となっていたファミレス。
 同盟の詳細な条件には折り合わなかったものの、両者が一度直接会って再度交渉するという手はずになっていた。アーミーとしては会って数十分の他陣営など信用できるはずもなく、それはライダーも折り込み済みであった。むしろ顔を付き合わせることを承諾させただけ上等だろう。両陣営の交渉は一先ずの決着をつけようとしていた。

「ーーおっと、ここで別れる前に一つ一つ宜しいだろうか。」

 しかし、それに水を指すものがいた。ライダーとアーチャーの交渉を見ていたトバルカインである。
 これには、両者以外という顔をした。このタイミングで突然口を挟むというのは明らかに不自然だ。特にライダーはトバルカインを交渉役として利用していたこともある。故に、ライダーはトバルカインのその行動が、重大な思慮によるものとの判断を下した。

「お二方もお気づきかと思うがーー」

「どぶ臭い匂いがしないだろうか……まるでネズミでもっているような。」

 ピクリ、とアーチャーの眉が動いた。それを言葉どおりの意味として受けとる人間はいないだろう。この交渉の場でのその言葉。この場合のネズミが何を指すか、それは。

「私ではない。」

 アーチャーはそれだけ言うとトバルカインに凶悪な視線を飛ばした。それは自らの潔白の主張であったし、仮に自分達を嗅ぎ回るネズミがいてもこちらの手の者ではない、という意味でもあった。

『彼はこう言っている。『君』はどうする?』

 ライダーは楽しげに問い掛けた。トバルカインがここまで言うのなら、その直感は当たっているのだろう、という、それは信頼の現れだった。
 もっとも、ライダー本人の直感が当たるから、という理由もあったが。

「では、こうします。」

 そう言うとトバルカインはやおら立ち上がった。窓のロックを外し、開けると、懐から一つ取り出す。

(!今何かした……)

 疑念を深めるアーチャーを余所に、トバルカインが悠然と取り出したのはない煙草の箱。それをマジシャンを様にアーチャーの前でひらつかせると、ポイ、と窓から投げ捨てた。

「ああっ!何てことだ、これは!!」

 そして、店に響き渡るような大声。今度は困惑の感情を覚えたアーチャーを気にせず、トバルカインは大声でウエイトレスを呼びつける。
 今だおどおどとした様子のウエイトレスを前に、トバルカインは一礼した。

「申し訳ないが、煙草の箱を窓から落としてしまった。取ってきて頂けるかな?」

 その声は紳士的だった。しかし、有無を言わせぬ凄味をまざまざと見せつけながらのものだ。
 『はいぃっ!』と怯えきった叫び声をウエイトレスは上げると一目さんに店から出ていった。


「のび太くん、隠れて!」
 慌ててドラえもんはささやいた。
 突然見張っていた内の一人が立ち上がったと思うと窓を開けたのだ。一瞬、気づかれたのかと二人に緊張が走る。男は窓から何かを投げ落とすと、叫び声をあげた。

「気づかれたかな?もしかして襲いにくるかも。」
「うーん、さいなんほうちきは何も反応しないし、大丈夫だとは思うけど……よし。」

 ドラえもんは小さく呟くと、たずね人ステッキを使った。その内容は、「これから危ない目に会う人は?」というものだ。このひみつ道具の的中率は7割だが、もし自分達が襲われればどちらかに倒れるだろう。もし倒れなかったら安全かよほど運に恵まれてないかだ。

 はたしてステッキはドラえもんにものび太にも倒れなかった。何かものが落ちた方につられるようにパタンと倒れた。

「大丈夫、みたい……?」
「誰もいないほうに倒れた……ハズレだったかもしれない。のび太くん、一度離れよう。何かすごく嫌な予感がするんだ。」
「でも……ううん、わかった。一回家に帰ろーー」

 その時だ。

「うえぇん、あのお客さん怖すぎ~」

 ステッキの指す方向に一人の人物が現れたのは。

「ドラえもん!」
「何であの人に反応してーーまさか!」

 ドラえもんは反射的に上を見ていた。そこには、先程何か落とした男。石ころ帽子の効果で目があっていないとはいえ、十二分に殺気が込められているとわかる視線。そして、その先には、先程落とした物ーー煙草の箱があった。

(なんだかよくわからないけど、このままじゃあのお姉さんがあぶない!)

 ドラえもんは顔色を変えた。しかし、その人工知能は事態を好転させるアイデアなど思い付いてくれない。これから何が起こるかわからない以上、迂闊に動くことは出来なかった。
 だが、気がついたらドラえもんはのび太が飛び出していくのを追いかけていた。

 のび太の頭は目の前の人を助けることで一杯になっていた。それは視野の狭さであったし、判断の失敗でもあった。冷静でなれば、トバルカインがウエイトレスを餌に罠をはったと判断できたかもしれない。しかし、彼にはそういった誰かの犠牲を出すやり方は受け入れられないだろう。のび太はそういう人間だった。

 ドラえもんはのび太に体当たりする。のび太の進行方向にいたウエイトレスも共に倒れた。トバルカインはそれを不審に思った。しかし、トバルカインは指をならした。煙草の箱に仕込まれたトランプが手榴弾のように炸裂した。

「なるほど、やっぱりだ。」

 トバルカインは笑みを浮かべる。


「ネズミが取れた。」


「ネズミの駆除の許可を。」
『許可する。但し先は長い。あまり遊ぶなよ。』
「Yaaa!」

 トバルカインは窓から飛び降りるとネズミ達をねめつけた。続いて降りてきたアーチャーに「手を煩わせはしない」と言うと、ドラえもん達へと距離を詰める。

 一方のドラえもんは身体中に刺さったトランプの痛みに堪えながら必死に四次元ポケットをまさぐっていた。何でもいい、何かこの場を好転させるものはないか。自分達を体当たりとトランプの衝撃でいまだ二人の意識は朦朧としている。ここは自分が何とかするしかない、そう覚悟を決めて、決めて。

「なんかないーーあった!どこああああああああっっっっっっっっ!!!!!!!」
「お前は馬鹿か?」


 ヒュパッ。


 風切り音と共にドラえもんの腕に激痛が走った。痛みを堪えて腕を見ようとするが、見れなかった。腕はポトリと地面に落ちていた。

「みすみす武器をとらせるわけながなぁい!」
「ああああああああうおおおああっっっっっ……」

 続いて五枚のトランプが背中に突き刺さる。ほぼ体を貫通したそれは、かろうじて四次元ポケットの前で止まった。

「さて……そろそろ、」
「ーー殺すか。」
(そんな……!)

 驚くべきことに、ドラえもんは既に驚愕から立ち直りつつあった。濃厚な死のイメージが正常な演算能力を取り戻させたのだ。そしてそれは、避けようのない自分とのび太の死を突きつけてきた。

(ゴメン、のび太くん……)
(……僕は、君を……)

 トバルカインの手刀が迫る。それをせめてまだ壊れていない正面で受け止めようとした。

『止まれ中尉それはドラえもんだ!』
「港へ!」
「なにィ!??」

 それが結果的にこの時の生死を分けた。

 トバルカインの頭に疑問が渦を巻く。なぜ止まれと言われたのか。ドラえもんとはなんなのか。しかし、トバルカインにとってライダーの命令は絶対。急停止を試みる。

(勢いが殺しきれん……!)

 が、不可能。亜音速まで加速したトバルカインは急ブレーキにより態勢を大きく前のめりにする。その結果。

「どっかいけぇ!」
「餓鬼がぁ!」

 ドラえもんの四次元ポケットから半分出ていたどこでもドア。今やそれはいつの間にか立ち上がったのび太によってワープ装置としての機能を果たしている。

「なあああああめーー」

 捨て台詞を残せず、トバルカインはどこかへと消えていった。



【不明/2014年8月1日(金)0609】


【トバルカイン・アルハンブラ(-)@ヘルシング】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(20)/ D、
敏捷(30)/C+、
魔力(60)/C、
幸運(10)/E、
宝具(0)/-、
決意、召喚酔いは醒めた、召喚の際の魔力と令呪使用で魔力倍増。
[思考・状況]
基本行動方針
この聖杯戦争で軍功を挙げ、意地を見せる。
1.???
2 今度こそ軍功をあげてみせる。
3.‥‥どうせなら葉巻を吸いたいな。
[備考]
●一応本編からの召喚ですが若干テンションがおかしいです。
マスターである少佐と視界共有を行えますが念話はできないようです。
●冬木大橋でのイリヤ&バーサーカーvsいおり&ランサー戦を観戦しました。どの程度把握したかは不明です。
●タブレット(リップバーンが調達)、ライター(現地調達)を持っています。体をトランプにしたさいどうなるかは不明です。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。



「ドラえもん!大丈ぶぅっ?!」
「iiiiiiiiiiiiiyaaaa!!!」

 ドラえもんに抱き抱えようとしたのび太がドラえもんごと飛んでいく。直接蹴りを食らったドラえもんはミシミシと、嫌な音を立てた。
 そして、蹴った張本人である、今まで蚊帳の外だったアーチャーは。

(……どいつもこいつも役立たずめっ!)

 アーチャーは怒っていた。マスターは充分に魔力を寄越せず、格好をつけた同盟相手は子供のマスターに出し抜かれて消えた。なぜこうまで廻り合わせが悪いのか。

(纏めて、ぶっ殺してやる!)

 アーチャーは抑えていたマスターからの魔力供給を強めた。こうなったら一騎でも落とす。落とさなければなんのための聖杯戦争かわからなくなる。

「死ぃねぇぇっ!」

 そしてルガーを乱射。アーチャーらしくない、拳銃による攻撃。それがどこでもドアを貫通してドラえもんに突き刺さる。


「ドラえもん!」
(ナニッ?!)


 唐突にのび太の体が浮き上がった。そのままのび太は飛んでいく。

「フザケルナッ!ムチャクチャスルノモイイカゲンニグゥ!!」
「ダメだ……!のび太くんは……のび太くんは……」
「死ネ、死ネ!死ネェッ!!!」

 ドラえもんのタックルを受けてマウントポジションを取られながらもアーチャーは続けて銃を乱射する。

「アアッ?!」

 アーチャーの顔に、何かが落ちてきた。サングラスの上に落ちたそれを見れば、トランプ。

(マタトランプカッ!)

 アーチャーは力任せに蹴りあげた。
蹴りあげて、苦しむ顔面にルガーを叩き込もうとした。そして。


「勝手ニ死ンデンジャネェ!!!」


 アーチャーは眉間にシワを寄せながらも微笑むドラえもんの顔を踏み潰した。


【新都、某ファミレス店付近/2014年8月1日(金)0611】

【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C+、
敏捷(10)/D、
魔力(5)/E、
幸運(10)/D+、
宝具(10)/E
魔力の不足により全パラメータ半減。宝具使用不可、イライラ。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.聖杯戦争というものにイライラ。
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつき。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。



【キャスター(ドラえもん)@ドラえもん       脱落】



(のび太くん、ゴメン、もっと注意していればこんなことには。)

 それは、ドラえもんがアーチャーに蹴り飛ばされ、ルガーを受けていたときだ。もはや、ドラえもんの思考には一つの希望も残されていなかった。頼みの四次元ポケットからは物を取り出せず、そもそもこの弾幕に受け続ければ一分も持たないだろう。いや、弾幕がなくとも損傷は大きすぎる。いつドラえもんという存在がなくなっても可笑しくはない。
 頭にまた一発銃弾が突き刺さる。左目が見えなくなった。センサーをやられたのだろう。

(せめて、せめて君の顔を見ながら……)

 ドラえもんは必死に目を開けた。既に右目も色を失いつつある。自分の命は残り十秒ほどだろうが、なんとかそれまでは見えてくれないかと願う。

(ああ、のび太くんにもトランプが……痛い思いをさせて。)

 瞬間、ドラえもんはのび太の上に落ちていたトランプを口でくわえていた。なぜ自分がそうしたのか。それは破壊され尽くした頭でゆっくりと思い出す。

 くわえたスペードのスートのトランプが消える。ドラえもんの四次元ポケットがのび太の手の中に移動した。
(これはしあわせトランプ)
 くわえたダイアのスートのトランプが消える。のび太の体が浮き上がり飛んでいく。
(願いが叶うトランプ)
 くわえたクラブのスートのトランプが消える。のび太に向かっていたアーチャーの弾丸が全てそれる。
(のび太くん、どうか)
 くわえたハートのスートのトランプが消える。
「どうか、生きて、生きてほしいんだ。」
「ドラえもん!こんなの、こんなの……!」

 ほんの僅か一言、一言だけ言うと、ドラえもんはのび太の前から消えた。



 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 



「ナノカさんその、何て言えばいいのかわからないお知らせがあります。」
「もうダイジョブだから、今度は車が無くなったとか?」
「いえ、ガレージにいました。人が。」
「……え?」

 ドラえもんがトランプにした願いはのび太が生きること。
 では生きるの判断基準とは?もとの方針が近い方が良いのだろうか?それとも距離の問題か?

 ドラえもんにはわからない。のび太にもわからない。ましてやナノカはアーチャーは部外者だ。
 気絶したのび太の胸ポケットから一枚のトランプが落ちる。
 鬼札は笑っていた。



【新都、某町工場兼一軒家/2014年8月1日(金)0625】

【アーチャー(安藤まほろ)@まほろまてぃっく】
[状態]
筋力(40)/B
耐久(28)/D
敏捷(50)/A
魔力(40)/B
幸運(150)/A++
宝具(40)/B
微細な改造?
[思考・状況]
基本行動方針
マスター第一。
1.誰でしょう?
2.今後についてマスターと話し合う

【ナノカ・フランカ@蒼い海のトリスティア】
[状態]
健康。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
家に帰るのが第一、聖杯の調査が第二。
1.誰……?
2.今後についてアーチャーと話したりいろいろ「用意」したい。
[備考]
予選より装備が充実しました。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]
気絶、軽傷、ひみつ道具破損
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止めて家に帰る。
1.???
[備考]
ドラえもんの四次元ポケットを持っています。