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 冬木大橋。

 西日本の人間の間で名前は知らていてもどこか地味だった冬木市を交通の要所とした構造物である。
 高度経済成長期に建てられて以来、市を横断する国道として、また高速道路のバイパス代わりとして、あるいは観光スポットや映画の撮影場所としても使われている。
 名前もあいまって冬木市を代表するその橋は、今や無惨に破壊されていた。アーチの東側は完全に海中に没し既に確認することはできず、支えを失った西側は引きずられるように折れ曲がり巨大な滑り台のような状況になっている。
 橋の左右には警察によって規制線が敷かれ、その回りを野次馬が囲み、事情を知らない車やトラックが車列をつくる。一方上からの振動と音で存在を誇示するのはヘリコプターだ。テレビ局のものだろうか、数機が橋の上空をゆったりと飛んでいる。そして下に目を向ければダイバー達が捜索していた。

 現場から少し離れた河川敷には、数本の袋があった。いや、それを数本と言うべきではないのだろう。次々と海中から、あるいは橋の残骸から供給されるそれは次々に車両へと運び込まれていく。二桁はまず上回るだろう。その光景は人々の口々に「テロ」や「爆発」や「通り魔」という言葉を登らせた。



「うっわぁ~、ほんとに落ちてるよ。なんか、あの、がくん!て感じで。」

 チョコは素直な感想をのべた。ふと左を見ればのどかな河原から一変してドラマに出てきそうな巨大な橋が落ちているというのは小学生にはない経験だろう。見れば数百メートルほどの距離だろうか、目の前で住人がラジオ体操しているのに視線をずらせば崩落した橋が煙とランプを引き連れてどうだこれが異常事態だと言わんばかりに鎮座している。この光景は今までそれなりに不思議なことや危ないことにも巻き込まれてきたチョコとしても驚きだった。

 戦争という言葉がチョコの頭をよぎる。しかし頭の中の映像はテレビで見た震災の映像が流れていた。傾いた高速道路が、長々と大きな蛇が道路に寝っころがるようにしている、何度か見た映像。教科書にだってその時の写真は乗っている。教科書の中にだけあるような世界の話が、今のチョコの目の前にあった。

「今のうちに、あれを調べたい。」

 圧巻足る光景に呆けるチョコに、セイバー・テレサは声をかける。セイバーとて驚いてはいる。それはチョコ以上だろう。しかし、それでセイバーに何か影響があるかといえばNOだ。そういうことでは、そんなことではセイバーの心は動かない。

「今なら近くにサーヴァントはいない。だが時間をかければ集まり出すだろう。橋を落としたやつが戻ってくることもあるかもな。」
「でもセイバーさん、あんなに人がいたらサーヴァントは来ないんじゃない?それに、調べたくても人が多いし……」
「人がいても、向かってくるサーヴァントはいる。さっき言った真田幸村みたいなな。それにマスターの黒魔法なら、人がいようと関係ないだろう?」

 セイバーは丁寧にチョコに説明した。それを聞くものが聞けば、チョコを説得しているようにも見えただろう。
 実際、セイバーは己のマスターであるチョコを説得していた。そしてそれはチョコにも、どこかいつものセイバーとは違う印象を与えていた。

「……じゃあ、あんまり自信ないけど。」

 しかし、チョコはそれを口に出すことはしなかった。それはセイバーの様子からなのかそれ以外に原因があるのかは本人にもわからなかった。
 しかし足は北へと向かっていた。



 セイバーは依然霊体化したまま、チョコの直ぐ後ろを歩いていた。周囲には当然妖気探知の網を張る。実体化していないため幾分その範囲も精度も劣るところとはなっていたが、それでもなおその索敵能力はこの聖杯戦争ではトップクラスだ。半円状に張り巡らされたそれはよほどのアサシンでなければ見抜かれてしまうだろう。当然その分魔力は消費してしまうが霊体化したセイバーの魔力程度はゴスロリを着ていないチョコでも賄えていた。

(橋には向かわせられたか……)

 目の前をトテトテと歩くマスターを見ながら、セイバーは考える。これからどうマスターを誘導するかを。


 セイバーが第一に恐れたのは、ルーラーの訪問によって住み処が特定されたことだ。
 セイバーには妖気探知も、気配遮断もある。一撃離脱の戦法をとるのに向いたこの能力は、セイバーの撤退時にも効果を発揮していた。この能力を使えば、自分を補足されるより早く相手を補足し、場合によっては気配を消して逃れることもできる。ある意味情報戦に非常に適性があるのだ。
 しかし、ルーラーは違う。彼女の気配は数キロ先からでもわかった。そしてそれは非常に大きな意味を持つ。
 彼女の大きな気配はセイバーより劣る感知能力の持ち主でも充分に察知できるだろう。いや、ひょっとしたら察知できないサーヴァントはいないかもしれない。少なくとも『自分達』なら確実にわかるとは断言できる。
 そんな彼女が三十分以上同じ場所で足を止めたのだ。自分ならば、というより普通ならばそこに何かあると判断するだろう。
 何せ彼女はルーラーだ。その存在はサーヴァントなら誰もが知識として知っているに違いない。裁定者、サーヴァントの殺生与奪の権限を持つサーヴァント。この聖杯戦争における唯一無二の存在『イレギュラー』。

 よってセイバー達は直ぐに家から離れる必要に迫られた。ルーラーの存在に気がついても何処にいたかまでは中々わかるものではない。セイバーでさえピンポイントに場所を特定するには実際に足を運ぶだろう。それならば、足を運んだときにルーラーがいなかったら?もっといえば誰もいなかったら?セイバーはそれに賭けた。

 ルーラーが家から離れた時点で妖気探知した限りでは、周囲にサーヴァントはいない。
 この段階ではまず、まだ特定されていないだろう。もしされていたら、それはセイバーより更に高い感知能力を持つということだ。その場合はこちらも家から離れマスターを人混みに紛れさせ攻撃をためらわせる。
 そしてされていないなら、やはり家から離れて同じように行動しほとぼりが覚めるのを待つ。何らかの方法でルーラーが追跡を受けた可能性が高いならば、今はたまたま探知にかからないだけかもしれない。警戒しすぎかもしれないが、どこの世界にもあっと驚くほどの追跡術を持つものはいると、セイバーは心得ている。手抜かりなくいくならば、潔癖と言えるほどに慎重にならなければならない。

 ここまでの六時間で、セイバーは最適解を選んできた。それはマスターであるチョコも同じだ。ルーラーを招き入れたときも、その判断は間違ってなかったと思える。
 しかし、それでも状況は悪化しているとセイバーは感じていた。気がつけば思わぬ想定外『イレギュラー』に足元を掬われかけている。今までは幸運にも切り抜けてこられたが、いつかこれでは破綻する、そういう危機感がセイバーにはあった。

(家に他のサーヴァントが向かってくる)
(この前提なら)
(見つからないためにマスターの魔力を小さくして人混みに紛れさせて気配を消す)
(悪くない手の筈だ)
(これならたとえ見つかっていても巻き添えを出す可能性を考えるはず……)
(よしんば無視して仕掛けてこようと)
(NPCを盾にして迎え撃てる。)

 セイバーはいつでも実体化できるように身構えながら足を進める。
 ようやく、二人は人波へとたどり着いた。

「あ、チョコちゃ~ん!」
『下がれチョコ!』
「え、セイバーさん?」

 突如、人波の中から声が上がった。チョコと同じぐらいの女児だろうか。何故かチョコの名を知るその女児は人波をかき分けて姿を現した。

(なるほど。)

 セイバーは得心する。相手はこのわずかな時間にチョコを特定し、なおかつあだ名まで言ってきた。そして何より、セイバーの行動を見切り、先回りするという。堂々と出てきたことからもわかる。そうだ。

(また「イレギュラー」か。)

 そうだ!どうやら自分達は相当についていないらしい。最適解を選んだと思ったらこれだ。既に先手を打たれ、のうのうと相手は姿を見せた。それは余裕の表れだ。そして、それは正しい。この場でセイバーが実体化して剣を抜けば、先程のセイバーの狙い通りの展開になる。

『マスター、令呪の準備を。』

 ならば、ここは切り札を切ってでも切り抜けるしかない。令呪の一つですめばむしろ安いものだろう。何せ、これから先こちらは一瞬たりとも気を抜けなくなる。どうやって特定されたか全くわからないからだ。
 セイバーは目の前の女児を見る。少しでも不審な動きをすれば即座に実体化して叩ききる構えだ。人だろうとあどけない美少女だろうと、マスターの命がかかっているとなれば関係ない。

「あれ、ちょっと待ってセイバーさん……」

 しかし、チョコの態度は鈍い。何かを思い出すように頭を抱えてうめき出す。

(ーーやられた。)

 なるほど。どうやら相手は二枚も三枚も上手のようだ。こうしてきょとんとした顔をつくりながらもセイバーが気づかぬうちにチョコに魔法か何かをかけるとはーー

(ーー妖気探知にかからずに、か。そんなことは)
『あり得ないな。』

 しかし、ここでセイバーは現状を疑った。なるほど、特定されたのはわかる、行動を読まれたのもわかる、だが。だが自分が最大限の警戒をしていたチョコに誰が手を出せようか。

(何か、大きな勘違いをしていたかもしれないな。)

 セイバーはすとん、と認める。客観的に見てチョコに何かすることは不可能。ならばこれはチョコが何かを思っての行動だろう。
 「育~」という声と共にまた一人美少女が姿を現す。育と呼ばれた少女より一回り小さい少女は「あ、チョコ」と同じように声をあげた。

 『あ!』とセイバーに念話でチョコの大声が響く。「桃ちゃんセンパイと、育ちゃん?」と声に出して続けた。

(チョコが名前を知っている……ああ、)
『マスター、NPCか?』
『うん、確か同じクラスの子と六年生の……』

 セイバーは静かに構えをといた。



【深山町北部・冬木大橋西岸部南側/2014年8月1日(金)0639】

【黒鳥千代子@黒魔女さんが通る!!】
[状態]
健康、ルーラーが色々気になる、ちょっと記憶に混乱。
[装備]
普段着のいけてないオーバーオール、リュックサック(チョコのゴスロリ、杖(輪島塗の箸))。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
ムーンセルでなんとか頑張る。
1:友達役のNPC……だっけ?
2:戦争みたい……
3:橋が落ちたらどうやって向こう岸に行くんだろう。
4:ミュウイチゴが気になる。
5:今日の夜12時までに黒魔法のリストを書いて冬木教会の喫茶店にいるルーラーに持っていく。
6: 真田幸村を調べたいけど━━
7:あんまりさっき言われたサーヴァントのことはわかってない。
8:これからどうしよう‥‥
[備考]
●ルーラーの真名をほとんど看破しています。
●ゴスロリを脱いだため魔力の供給が減り、魔力感知にかかりにくくなります。セイバーを実体化させて妖気探知や妖力解放をせずに戦う、もしくはセイバーを霊体化させて妖気探知を全力で行わせる場合、本人の魔力は消耗しません。
●彼女の友達役のNPCが存在します。どれだけの情報を持っているかは不明です。


【セイバー(テレサ)@クレイモア】
[状態]
筋力(40)/B+、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B+、
魔力(50)/A+、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B、
霊体化、気配遮断、妖気探知。
[思考・状況]
基本行動方針
当面、諜報活動に専念し戦闘は最低限に抑える
1:気を張りすぎたか……?
2:チョコの軽さを注意、ルーラーを色んな意味で警戒、目の前の女児は……
3:赤いランサーの真名を調べたいけど━━
4:バーサーカーの索敵能力は警戒しておく
5:ランサーは何でわざわざ真名を名乗ったんだ?
[備考]
●赤いランサー(真田幸村)の真名とある程度の戦法、黒いバーサーカー(小野寺ユウスケ)のある程度の戦法を確認しましたがマスターではないのでステータス等は確認できていません。
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)のベルト(霊石アマダム)が弱点部位だと何となく理解しました。
●冬木大橋付近で妖気探知していた結果、リップバーン・ライダー(五代雄介)・クロノ・バーサーカー(サイト)・ランサー(アリシア)・バーサーカー(ヘラクレス)・ルーラー(ミュウイチゴ)の魔力を把握しました。またおぼろげながら周囲にいた人間の気配も感じました。
●妖気探知の範囲で現時点までに上記以外のサーヴァント・マスターの情報はありません。また霊体化中は妖気探知の能力が低下します。
●予選時にどの程度他のチームの情報を得ていたかは後の書き手さんにお任せします。