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 油断をしたつもりはなかった。

 衛宮切嗣のその感想は偽りではなかった。自らの娘でありサーヴァントーーアーチャー・クロエーーが接触した相手は一筋縄ではいかないとわかっていて、その為に少しでもマイナスを減らすために行動した。いくつかのミスはあったが、それとて責められるほどのものではないだろう。

(でも、これだ。)

 切嗣は店内を見渡す。
 早朝のコンビニには自分一人しか客はいない。
 こちらに武器はなく、相手は実質サーヴァント二騎。逃げ場は入り口と従業員用の通用口だけだろうがどちらも大きな道路に通じているのは間違いない。。
 つまり、切嗣は詰んでいた。既にこちらの位置が割れている以上いつ攻撃を受けてもおかしくはない。よしんば襲われなくとも先程のアーチャーの工作は全て無駄になってしまう。

 では令呪を使うか?いっそ使えばアーチャーは強化でき、今の衰えた自分によって下がっただろう能力もオリジナルに近づく。向かってくる二人とも殺してしまえば後腐れはない。少なくともこの場での危機はしのげる。

(最初に会ったサーヴァントを、令呪を使って落とす、か。)
(真逆だな、予定と。)

 しかし切嗣は当然これを否定する。それはできる限りアーチャーを戦わせないという切嗣の望みとは正反対だ。

 時間は刻々と過ぎる。



 野次馬は五時より早い朝の時間にも居るものなのだろうか。それがNPC特有の挙動なのか本物の冬木市の住人でもそうなのかは不明ではある。しかしそれは新都から冬木大橋の方向に人が向かうこととは関係ない。とにもかくにも、犬の散歩のついでか朝のジョギングのついでか、それともそれだけの為にか別の理由があるのか人は西へ西へと橋を目指してまばらに移動していた。

 その道行く人に逆行してルナとバーサーカーのヒロ、そしてアーチャーはビルを屋上伝いに東進していた。

(どうする!?このままじゃ……)

 アーチャーは前を行く背中を見る。先頭で彼女達を引っ張るのは一番足の遅いバーサーカーだ。アーチャーが発見したときとはうってかわってゆったりとした動きになっていたが、その早さは人外のそれと言える。マスターの切嗣に接触する迄にかかる時間は一分二分程度だろう。

 そう、このままではバーサーカー達は切嗣に出会ってしまう。これはまずい、非常に。

 今のところ、バーサーカーは切嗣がアーチャーのマスターだとは言っていない。この言葉を真に受けるならばバーサーカーは魔力を持つ人間を探知できる程度の能力を持つだろう。
 そしてその場合、このバーサーカーが切嗣を殺す可能性がある。そんなことはまずないと思うが一応同盟を組む予定のアーチャーがいるのだ、それを見ていた怪しいマスターを殺してしまおうとなるかもしれない。
 もっとひどい場合を考えれば、本当はアーチャーのマスターだと気づいているのにとぼけている可能性もある。この行動自体が自分を試しているのだ。
 そして一番の問題はバーサーカーがバーサーカーであることだ。アーチャーが頭の中で考えていることとはまるで違うことをこの喋るバーサーカーは考えているかもしれないのだ。これが恐い。アーチャーは、はかりきれないバーサーカーに戸惑っていた。

(……本当にマスターが近くにいるとは……)

 一方バーサーカーも戸惑っていた。アーチャーのマスターが近くにいるという勘の良い勘違いの結果、アーチャーの反応から何となくこの方向にマスターがいることはわかった。しかしそれだけだ。
 バーサーカーには偵察や調査に関する逸話が乏しい。全くないというわけではないのだが、少なくとも今の彼女にそれを期待するのは酷というものだ。何せ今はそれらの能力を持つのにもっとも不向きなバーサーカー。これでは見つかるものも見つからない。
 つまり当たり前だが、バーサーカーは切嗣の位置など全く知らなかった。とりあえず50メートルほどゆっくりとたらたら走りながら考えてみたが見つけ出す方法は全く思いつかない。そうこうしているうちにもどんどん進んでしまっている。もしかしたらもう通りすぎたのかもしれない。

(しまった……このままではハッタリがバレる……どうする……)

 焦りで無駄に速くなりそうな足を抑えてゆっくりとゆっくりと走る。何とか考える時間を稼がなくてはならない。何かないか。

(……まだアーチャーは焦った顔をしている、どんどん険しくなっている。近いはずだ。だがーー)
(ーーどうやって見つければ良い?)

 ああこんなときにサトウがいれば、とバーサーカーはらしくない愚痴を心の中で呟いた。
 もしこの場に彼女の信頼できる傭兵がいれば忍法の限りを尽くして情報を集めただろう。なんなら分身ができるほどに走り回って情報をかき集めてくる彼ならば、こんな状況もたちどころに解決してしまうに違いない。
 『姫さん、さすがにそれは無理だよ……』という声も聞こえた気がしたが無視した。後ろに気を配りながらする数秒の現実逃避ぐらい都合の良いことを考えても神はバチを与えないだろう。まあ彼女の世界の神はかなり勝手にバチを下してくるのだが。

(ーー走り回る、足で稼ぐというものか。)

 だがここでは神は彼女に天啓を与えたらしい。バーサーカーにあるひらめきが訪れる。

 「ルナ!」と大声でマスターに呼びかける。

「そのまま真っ直ぐしらみつぶしに探せ!建物の一つ一つを調べろ!日が出たら焼きそばで合流する!」

 そう言うとバーサーカーは進行方向を左ーー北に変えた。



 *1と驚いたのはアーチャーとルナだ。

 アーチャーはバーサーカーの行動をはかりかねた。だがその行動は予想外ではあったが予想外が起こることは予想していた。事前にドッキリだとわかっていれば引っ掛かってもそれほど驚かないように、彼女はその発言の意味がわからないので驚いた。

 ルナはもうなんかいろいろ驚いていた。バーサーカーの行動が予想外だったしそんな予想外のことをバーサーカーがすることも予想外だった。ドッキリでいえばドッキリされたこともドッキリの内容もなんなら驚いた自分にも驚いていた。
 そもそもルナは、アーチャーと会って以来心が休まる時がない。自分と同じぐらいの子供が聖杯戦争に参加していることに驚いたし、年が近そうということは彼女の目の前で死んだ弟のことを思い出させたし、バーサーカーがアーチャーとシリアスに話し出した時は居心地の悪いものを感じたし、突然バーサーカーが走り出したときは置いていかれる気がして慌てて追いかけた。

 なので今回のバーサーカーの発言も驚いた。たまげた。だが人間驚いてばかりいると耐性がつくものでもある。まして緩急をつけて驚いているのでいくらかルナは麻痺してきていた。

 予選の時同様のルナなら指示を無視してバーサーカーに着いていっただろう。でもこの時のルナはそういう感覚よりも言われたことに素直に従うという気持ちの方が強かった。それはその程度のバーサーカーへの依存心故だったのかそれほどルナが『良い子』であるからかは不明だが、とにかく彼女は『言われたとうり』に動いた。

「「なあッ!?!」」

 今度は驚きは声となって響いた。その声の主はアーチャーと、ルナに指示を出したバーサーカーだ。ルナの行動で二人は驚いたのだ。指示を出したバーサーカーでさえ。

(……私の運は相当良いようだ。)
(アレが人間だとも、ホムンクルスだとも思いたくない……)

 もし二人が人間並みの動体視力なら、道路の上ビルとビルの間に金色のオーロラのような幕が見えていたことだろう。それは朝靄に太陽光が指すことで生まれるものとそこにいた人は思うかもしれない。それは幻想的な光景だ。

 しかし二人の目にはまるで別の物として写っていた。

 バーサーカーの目には辛うじて形のわかる残像として、アーチャーの目には細部がブレながらもはっきりとした像としてそれは動いていた。


 ルナだ。
 ルナがビルとビルの間を飛び交っているのだ。
 正確にいえば、道路を挟んだビルで三角飛びをし続けていると、いうべきか。一階一階一部屋一部屋をまるで反復横飛びかシャトルランのように行き交い、愚直なまでに調べ、終ると次のビルへと移っていく。
 それはこれ以上ないまでに力業だった。

 バーサーカーとしては足で稼ぐとはいっても普通に窓枠を伝ったり階段を高速で移動したりという意味で言ったのであってまさかこのような方法をとるとは夢にも思わなかった。これを予想できるやつがいるなら連れてきて欲しいとさえ思う。あくまでルナを直進させて自分が方向を変えたのはアーチャーを撹乱させるほうがメインだったのだがまさかこんなことになるとは。

 ふと、金色のオーロラはかき消えた。そして数秒で、思わず足を止めていたバーサーカーとアーチャーのもとに現れると一言。

「見つけた。」

 そう言って一件のコンビニを指差し、ばったりと倒れた。



 油断をしたつもりはなかった。

 衛宮切嗣のその感想は偽りではなかった。
 彼が見た限り、バーサーカーの発言は十中八九ハッタリだと思っていた。だからその場を動かずアーチャーを誘導することを優先しようと、いつでも判断を下せるようにしようとした。何よりそうしておけば、本当に位置が割れていた時もアーチャーをタイムラグなく動かせる。そう思っていた。

 甘かった。相手はそんなことは知るかとばかりに無茶苦茶な方法で切嗣を見つけ出した。念話で指示を出しすより速く動く、そんなマスターがいることを、サーヴァントのようなマスターがいるという情報から推測できなかった。


(全く、嫌になる。それでも。)

 老い先短い身だが、今の数秒でどっと老け込んだ気がする。しかし、それでどうこうするような人間では切嗣はなかった。

 共有した視界に写るのは、先程自分を見つけ出したマスター。その幼女は、いまやぐったりと気絶していた。

「悪運は僕達のほうが強いみたいーーかな。」

 切嗣はゆっくりと歩き出した。



【新都・冬木大橋東岸から徒歩15分地点のコンビニ/2014年8月1日(金)0446】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
[状態]
五年間のブランク(精神面は復調傾向)、精神的疲労(微)。
[残存霊呪]
三画。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止め、なおかつクロエを元の世界に返す。
1.ルナーーバーサーカーのマスターは魔力切れかな。
2.バーサーカーなら前衛を勤められるだろうが……むしろマスターのほうが強いのか?
3.戦闘は避けたいが協力者を募るためには‥‥?
4.装備を調えたいが先立つものが無い。調達しないと。
5.自宅として設定されているらしい屋敷(衛宮邸)に向かう。
6.明日の正午に冬木教会に行くと約束はしたが……
[備考]
●所持金は約4万円。
●五年間のブランクとその間影響を受けていた聖杯の泥によって、体の基本的なスペックが下がったりキレがなくなったり魔術の腕が落ちたりしてます。無理をすれば全盛期の動きも不可能ではありませんが全体的に本調子ではありません。
●バーサーカーとそのマスター・ルナの外見特徴を知りました。


【新都・前回から更に東に数百メートル/2014年8月1日(金)0446】

【アーチャー(クロエ・フォン・アインツベルン)@Fate/kareid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(40)/B、
宝具(0)/-
精神的疲労(小)
[思考・状況]
基本行動方針
衛宮切嗣を守り抜きたい。あと聖杯戦争を止めたい。
1.なんなの、コイツ(ルナ)……
2.ルナはホムンクルス?少なくとも人間ではないと思う。
3.あんまりコイツ(ルナ)からは魔力貰いたくない……
4.教会に行くっていったけど多分キャンセルだろうなあ。
[備考]
●赤色の影をバーサーカーと、銀色の影をマスターの『ルナ』と認識しした。
●ルナをホムンクルスではないかと思っています。また忌避感を持ちました。


【竜堂ルナ@妖界ナビ・ルナ】
[状態]
封印解除、精神的疲労(小)、肉体的疲労(大)、妖力消費(大)、気絶、靴がボロボロ、服に傷み。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
みんなを生き返らせて、元の世界に帰る。
1.???
2.明日のお昼に教会に行く。赤いサーヴァントの女の子(クロエ)とは仲良くなれるかな?
3.学校の保健室を基地にする‥‥いいのかな‥‥
4.誰かを傷つけたくない、けど‥‥
5.バーサーカーさんを失いたくない。
[備考]
●約一ヶ月の予選期間でバーサーカーを信頼(依存?)したようです。
●修行して回避能力が上がりました。ステータスは変わりませんが経験は積んだようです。
●新都を偵察した後修行しました。感知能力はそこそこありますが、特に引っ掛からなかったようです。なお、屋上での訓練は目視の発見は難しいです。
●第三の目を封印解除したため、令呪の反応がおきます。また動物などに警戒されるようになり、魔力探知にもかかりやすくなります。この状態を解いて休息をとらない限り妖力は回復しません。
●身分証明書の類いは何も持っていません。また彼女の記録は、行方不明者や死亡者といった扱いを受けている可能性があります。

【バーサーカー(ヒロ)@スペクトラルフォースシリーズ】
[状態]
筋力(20)/D+、
耐久(30)/C+、
敏捷(20)/D+、
魔力(40)/B++、
幸運(20)/D、
宝具(40)/B+
精神的疲労(微)、魔力消費(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
拠点を構築し、最大三組の主従と同盟を結んで安全を確保。その後に漁夫の利狙いで出撃。
1.まずはマスターの介抱。実体化できるうちにやっておく。
2.サーヴァント(クロエ)のマスターがコンビニ?にいるようだがーー
3.学校に拠点を構える。
4.マスターがいろいろ心配。
5.一応教会には行くか……?
[備考]
●新都を偵察しましたが、拠点になりそうな場所は見つからなかったようです。
●同盟の優先順位はキャスター>セイバー>アーチャー>アサシン>バーサーカー>ライダー>ランサーです。とりあえず不可侵結んだら衣食住を提供させるつもりですが、そんなことはおくびにも出しません。