※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 聖杯戦争の舞台、冬木市は日本海に面している。
 暖かな対馬海流のお陰で冬の寒さは和らぎ、近代的な港が整備される前までは豊かな漁場でもあった。その名残は今でも未遠川に生きる魚達が雄弁に物語る。色々と曰く付きの土地のようにも言われるが、自然はそ知らぬ顔で確かに息づいていた。

「クロノォ、これ、オマケ。」
「えーと、ハマグリと、アサリ、ですか?いいんですかこんなに?」
「いいんだよいいんだよ、遠慮なんかするな。それに、実はさ、それちょっと小さいんだよ。時々仕入れてから気づくことがあってな、店に出すと近所のジイサンバアサンになに言われるかわかんないわ捨てるわけにはいかないわでめんどくさくてよ。だったらお前にやった方がいいだろ。」
「ありがとうございます、後でシーフードカレーにしてお裾分けしますね。」
「おお!そいつは楽しみだ、じゃあまたな!」

 そういって騒々しく出ていく男を見送ると、クロノ・ハラオウンはほっと息を吐いた。

「もう少し休んだほうがいいと思うよはいコーヒー。あ、これから寝るんだったらまずいか……」
「いや、大丈夫です。ちょっと戸惑っただけで。コーヒーもらいますね。」

 いつの間にか後ろにコーヒーを持って立っていたライダー・五代雄介にそう応える。カップを受けとり口に運ぶと想像以上の甘さが口を満たした。思わず眉を寄せるが、ストレスから逃れようと体が甘味を求めるからかハイペーストで飲み進めていく。ほどよい温さも助け気がつけば数分と経たずに飲み干していた。

「甘いですね、ずいぶん。」
「さすがに甘過ぎたかな……」
「たまにはこういうのも。」
「そう?ああ、じゃあ今度はチリペッパーコーヒー試してみる?目覚めるよ~。」
「……遠慮しておきます。というか、それコーヒーなんですか?」
「パンチが利いてて眠気は一発で覚めるよ。スゴい喉乾くけど。」

 これが甘くて良かった、と心中で思いながら「おかわりいる?」と聞いてきたライダーに「もう一杯、今度はブラックで」と反す。
 クロノの分とライダーの分、二つのカップを持ってコンロに向かうライダーの背中から目をはなすと、クロノは仕入れた魚介を冷蔵庫へと手際よく入れていく。だが頭のなかでは先程の魚屋の青年のことを考えていた。

「さっきのツンツン頭の人のこと考えてる?」

 静かな水音と背中越しにライダーは聞いてきた。

「それも特技の一つですか?」
「う~ん、まあそうかな。」

 クロノがおかわりすることを見越してか単に自分が飲みたいからか、多目に作っておいたのだろう。振り向けばライダーは既にカップにコーヒーを満たしていた。よく見ればカップの淵には溶けきらなかったであろう砂糖の粒が波打ち際に取り残されたか泡のようにキラキラとした光を反す線をつくっている。入れられた砂糖の多さとそれをなんなく飲み干した自分に驚きながら「二杯目はブラックを頼んで良かった」と呟いてカップを受け取った。

 「自分は知らないのにーー」とクロノは口にした。今度は、クロノはゆっくりとコーヒーを飲んでいた。既に十分、とはいかないまでもそのくらいの時間が経ったとライダーが思うぐらいの間だ。その間に、なにか色々と整理したのだろうか。クロノは続けた。

「知らないのに、相手はこちらのことを知っている。」
「それも『そうであることを知って』話しかけるような感じではなくて、『旧知の間柄』であるかのように。」

 クロノは唇をコーヒーに浸けた。

「自分の頭に、自分の人生で関わったことのない人が、『関わったことがあるかのように』記憶されている。」
「これは、気持ちのいいものじゃない、そう思って。」

 クロノはまた、コーヒーに唇を浸した。

 ライダーは一口飲むと口のなかでコーヒーを転がす。
 苦味と酸味が舌の異なる部分の味蕾を刺激し呼吸の度に鼻腔を薫りが満たす。
 それがすっかり一肌になり唾液でとろみを帯びてから飲み干すと口を開けた。

「頭に……自分のものじゃない……違うか。」
「自分が知らない自分の記憶がある、てこと?」

「ーーはい。」

 う~ん、とライダーは頭をかいた。頭をかき、そして、またコーヒーを飲む。こういうときになにか気の利く言葉の一つも言いたいが、さしものライダーもこのような状況の人間になんと声をかけるべきかは簡単にはわからない。壁掛け時計の秒針が刻む音がしばらくささやかに時の流れを伝えていた。


 やおら、クロノはカップをシンクに置いた。中身は空。ライダーもカップを覗けば、既にその黒い液体が冷めきっていることに気づく。

「ーーいいの?」
「ええ、今は。まだ。」

 「それよりも」と言いながらクロノはレジの下の棚からごそごそとファイルを取り出す。取り出されたのは、一枚の簡略化された地図だ。商店街の様々な店を特徴をとらえつつデフォルメして記したそれを一つのテーブルの上に広げると、一つ一つ指さして確認する。

 「どこいく?」ライダーは隣に立つと聞いた。「今度はハズレです」とクロノは返す。

「記憶を整理しました。」
「魚屋がツンツン頭の相良さん、八百屋が左頬に傷がある樋園さん、肉屋が看板娘のいる二階堂さん。」
「この店と関わりが深いのはとりあえずはこの三店です。NPC、プログラムらしいですけど疑われないようにしないと。」

 「ご近所付き合いは大事」とライダーは頷いた。なるほど、自分のマスターは既に切り替えたのだろう、と判断する。
 「あれ、ていうと……」とライダーは続けた。視線はキッチンへと向かう。

「もしかして、お店開ける?」
「喫茶店というのは人が集まりますから。それに、『クロノ・ハラオウンは滅多なことでは店を休まない』と『思い出し』ました。」
「それって、その、設定でしょ?」
「設定から外れれば、それだけで目立ちます。そうすれば思いもよらないところでマスターであることが露見しかねない。」
「開けたほうがバレやすいんじゃ?そのほら、魔力とか。」
「ここは夜のうちに一通り対策をしておきました。この店からでない限りは、まずわからないかと。」
「どうりで、徹夜して……」

 ライダーはコーヒーを飲み干した。それがふと、あることを気づかせる。

「さすがにサーヴァントがいるのはバレるんじゃ……」

 クロノはファイルからまた一枚の紙を取り出した。今度は、冬木市全域を詳細に記した、正確な地図だ。その一点、冬木大橋を指で示す。

「確かに、サーヴァントが実体化していればそうなると思います。」
「なので店を開けている間は極力霊体化するか店から離れていてもらえれば……それに。」

 次にクロノが取り出したのは新聞だ。その一面には冬木大橋の惨憺たる姿が大きな写真で写っている。

「調べてほしい場所もありますし。」



 「じゃあ冬木大橋に着いたら連絡するよ」という言葉を最後にライダーは霊体化する。数十秒後、既に聞き慣れたエンジン音が遠ざかっていくのを聞いてクロノは椅子に腰を下ろした。
 頭にちらつくのは金髪の少女。彼よりも幼く小さい影だ。

「ホームシックになってる場合じゃないな。」

 振り払うかのように、頭を強く振る。目をギュッと二三秒ほどつむったかと思えばカッと開く。立ち上がる。この間腰を下ろして十五秒。


「さあ、開店だ。」

 自分でない自分を自分が自分であるために。
 クロノ・ハラオウンは喫茶店・翠屋のマスターとして聖杯戦争に挑む。



【深山町・マウント深山商店街・喫茶「翠屋」/2014年8月1日(金)0900】

【クロノ・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]
魔力消費(小)、カフェインによる活性。
[装備]
S2U(待機)、デュランダル(待機)
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争、ムーンセルについて調査する
1.翠屋のマスターとしての役割を演じ、情報を集める。
2.ライダーからの連絡を待つ。
3.あの女サーヴァント(リップバーン)は一体……?
4.折を見てマスターと確認できた少年(亘)と接触する
[備考]
●深山町マウント深山商店街にある喫茶店「翠屋」が拠点として設定されています。
クロノはそこのマスターです。
●リップバーンの死や行動について強い疑念を感じています。
●翠屋を拠点化しました。建物内の対象にたいして魔力を感知しづらくなります。またそれ以外にも何らかの処置が施されている可能性があります。
●冬木市におけるクロノ・ハラオウンについての記憶を整理しました。NPCに違和感を与えにくくなります。

【ライダー(五代雄介)@仮面ライダークウガ】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/D、
敏捷(10)/E、
魔力(10)/E、
幸運(40)/B、
宝具(??)/??
実体化、魔力消費(小)、精神的消耗(小)
[思考・状況]
基本行動方針
クロノ君を助けながら聖杯戦争を止める
0.乗っているサーヴァントとは殺し合うしかないのか……
1.まずは冬木大橋へ。
2.あの子(亘)は無事なのか……?
3.できたら協力してくれる人が欲しい
[備考]
●バーサーカー(小野寺ユウスケ)の存在にはまだ気づいていません。
ペガサスフォームに変身すれば存在を感知できるかもしれません。
●封印エネルギーを込めた攻撃は「怪物」の属性を持つ者に追加ダメージを負わせることができるようです。
ただし封印エネルギーによるダメージは十分程度時間が経つと自然に回復してしまいます。