「というわけでやって参りましたカフェ・ミュウミュウ。」
「教会に入ったと思ったら追い出されるとはな……」
「いや、だってほら、教会て中立地点?だから何組も一度にこられたら困るし……」
「ここだって教会の敷地だろ。」
「そうだけどさあ……ね?」
「ね、じゃないよ全く……」

 冬木教会はそれなりに年代物であり市の名所の一つにあげられる程度には歴史的価値があるのだが、その敷地にある古びた建物の一階部分に少々ハデな『カフェ・ミュウミュウ』があった。
 ルーラーはそこに慎二達を招くとマスターが全員いることを確認して表の黒板に『臨時休業 ごめんねm(__)m』と書く。鍵を閉めてブラインドを落とすと「よし」と一言呟いて向き直り、今度はカウンターの奥へと消えていく。その間四組のほったらかされた主従はそれぞれに店のなかを見回していた。


「随分とこ洒落てるな。十年後はこんなことになってるのか。」

「ふーん……カフェて割りにはパンが少ないのね。」

「パイにタルトにキッシュに……アーチャー、なにかいった?」
『!な、なんでもありません!赤城は大丈夫です!!』
「そ、そう……」

『この中で一番浮いてるな、マイマスター?』
「キャスター……わかってるよ……」


 各々が勝手にメニューを開いたり内装についてとやかく言うなか、色丞狂介は居心地の悪いものを感じていた。店内は明らかに女子中高生が好きそうな空間だ。アンティーク調の家具の持つ重厚な雰囲気と華やかな暖色の装飾が醸し出すファンシーな雰囲気が絶妙な調和を持って同居している。そのなかを歩くアリスやイリヤは映画のワンシーンのように画になったし、慎二も男性であるにも関わらず溶け込んでいる。
 自分もこういうところに似合う男なら……などと考えていると「おまたせ」といってルーラーが戻ってきた。ほっ、と救われた気分で視線を向ける。

「は?」

 自分の目に飛び込んできたものに、狂介は間抜けな声を出した。それはふりふりだった。黒いミニのワンピースの上に、可愛らしい白のレースとフリルがふんだんに着いた、凡そこれでどうやって飲食を扱うのか不明なメイド服だった。

「あ、昨日の売れ残りのケーキあるけど食べる?ほんとはまかないの代わりなんだけど余ってるし?」
「売れ残りって……」
「さすがに作りたてには負けるけど、けっこう美味しいよ。コンビニのよりは絶対。」
「……おいアインツベルン、ケーキ代なんて出さないからな。水でも飲んでろ。」
「お金ならいいよ。どうせ捨てちゃうことになると思うし。橋が落ちて深山町に住んでるパティシエの人これないって留守電に入っててさ~、今日はお休みするしかないってことになったから。ていうわけでお願い!食べ物粗末にするのももったいないし。」
「しょうがないな……いくつあるんだ?」
「36個。」
「リアルに多いな……」
「ふつうだよ。」

 ネコミミにメイド服というルーラーの姿に驚くこともなく慎二達は会話している。あっけにとられているのは狂介だけだ。

「おい、色丞!早く決めろよ。」
「飲み物は……じゃあこれ、アイスティーで。」
「あ、ドリンクは有料で。」
「ワカメ。」
「お前そろそろしめるからな。」
「じゃあ、ここは私が。」
「マキリはレディに奢られるのね。」
「こういうときだけマキリの名前だしやがって……!払えばいいんだろ払えば!」

 タクシーの時と同じようにやいのやいのと騒ぐ慎二達をみて、狂介は(もっと色んなことに慣れよう)と一人決意した。



「甘ィッ!?」
「ロシアンティーだからね。ジャムをお茶のなかにいれちゃダメだよ。」
「言うだけあって美味しいな。生地がパリッとしていてそれでいてカスタードがしっとりしている。あとを引く味だ。」
「シュークリームは悪くなるの早いから、どうしても午前中には食べてもらいたかったんだ~。」
「これは……ただのバタークッキーじゃないわ。塩味がある?」
「塩バターだって。流行ってるらしいからうちでも作ることになったみたい。」
「この白いのは何て言うの?」
「それは……なんだろ?なんだと思う?」
「お前の店だろ……」
「いや~作ってるの私じゃないし、でも美味しいでしょ?」
「はい、とても。」
「ていうかなんでアーチャーとキャスターまで食べてるんだよ。サーヴァントに必要ないだろ。」
「しかし、残したらごみになってしまいます。食べ物を粗末にするわけにはいきません。」
(だからといって一人で何個食うんだよ……)

 店で一番大きなテーブルに四人のマスターと三騎のサーヴァントが着くと、さながらお茶会の様相だ。
 二十を越すケーキがきらびやかに並びこれでもかと見るものの唾液を誘う。よほど腕のいいパティシエが作ったのだろう、舌の肥えたマスターとサーヴァント達をしてクレーマー0人という快挙を成し遂げている。特に焼き菓子に関してはまさしく絶品と言わざるを得なかった。

「……いや、待て、そうじゃない。話があるからここに来たんだ。そろそろ本題に入っていいかい?」
「え~……」
「なんでルーラーが嫌そうな顔するんだよ、お前がここまで連れてきたんだろ。それはともかく、いいか?」

 すっかりまったりとくつろいでしまった一同を見回しながら慎二は言う。その言葉に「本題?」と最初に返したのはイリヤだった。

「そういえばイリヤちゃんなんでメイド服着てるの?」
「これしか着れる服が無かったのよ。まあシャワーを浴びれただけマシだけども。」
「海に落ちてそのままの格好でケーキ食べてもらうのは、何か気が引けるって言うか……でも着替えのことまで考えてなくてそれでーー」
「お前ら少しは僕の話を聞く気はないのか!!」
「落ち着けよ、ワカメ。」
「そうよ。」
「おい狂介お前のサーヴァントだろ黙らせろ。二度と僕のことをワカメと呼ばせるな。あと今小さな声で『そうよ』て言った奴誰だ。正直に手を挙げろ。」
「それはそれとして、本題に入るぞ。」
(この変態パピヨンマスクが……!)

 後ろからフドウが不憫なものを見る目で見ているのに気づかず、慎二は腹立ち紛れにシュークリームに噛みついた。

「で、本題とはなんだ。俺達はなんとなくここまで一緒に来たが、正式に同盟関係でも結ぶか?」
「そうだよ、それだ!みんなでこの聖杯戦争から脱出ーーあ。」
「え、脱出てなにそれ。」
「なぜルーラーの前でそんなことを口に出すのか。俺には理解に苦しむな。」
「そんなことはどうだっていいのよ!それよりシンジ、オリジナルの聖杯戦争ってどういう意味。」
「……あぁっ!?僕に聞いてるのか?それは、ほら、これは冬木の聖杯戦争を元にしたって意味で。」
「今完全にオフってたね。」
「黙ってろルーラー!」
「ルーラーさん、おかわりもらえますか?」「私も。」「俺も。」
「あ、はい。ちょっとみんな待ってて。」
「それで結局俺達はいったい何のためにここでこうして集まったんだ?」
「ルーラーは待たなくていいのか?」
「あいつは部外者だろ。」
「キャスター!厨房でも聞こえてるからね!」
「全然話が進みませんね。」
「見てる分には面白いわね。」



 全く実にならない話を余所に時間は流れていく。時刻は8時。柱時計が鳴ったことを気に止めたのはフドウだけだった。



【冬木教会敷地内、カフェ・ミュウミュウ/2014年8月1日(金)0800】

【東京会場のルーラー/ビースト(ミュウイチゴ)@東京ミュウミュウ】
[状態]
筋力B(40)
耐久B(40)
敏捷B(40)
魔力B(40)
幸運C(30)
宝具EX(?)
実体化、メイド服(制服)、???。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争をしっかりやっていく?
1:アーチャーとキャスターがアイスコーヒーでアリスさんがアイスティーで……あれ?なんかさっき大事なことを狂介が言った気がするけど忘れちゃった。
2:深い意味はないけどキャスター&色丞狂介に注目。
3:後で二人(チョコ&テレサ)から事情を聞いて……ケーキ残しとかないと。
4:ムーンセルがバグったのを調べる。
5:バーサーカー(サイト)に討伐令を出す。
6:ムーンセルにご奉仕‥‥はしたくないにゃ~。
[備考]
●東京会場のルーラーはミュウイチゴでした。冬木会場でも引き続きルーラーのようです。
●会場内で『時間を巻き戻そうとする』とムーンセルが誤作動を起こして『一瞬NPCが倍加してフリーズ』します。またなんらかの形で誤作動を起こした場合とりあえずルーラーが飛んできます。
●上級AIはマスターの動向をある程度把握しています。
●バーサーカー(サイト)に翌日0時の通達で討伐令を出す予定です。
●チョコの黒魔法についてそこそこ把握しました。
●セイバー(テレサ)のステータス、スキル、宝具を把握しました。
●ルーラーとしての自分への疑念が確固たるものになりました。


【アリス・マーガロイド@東方Project】
[状態]
健康、満腹。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
幻想郷に戻ることを第一とする。
1.一周回って楽しくなってきた。
2.とりあえず色丞狂介、間桐慎二、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと行動を共にする。
3.定期的に赤城の宝具で偵察。
4.できれば冬木大橋を直接調べたい。
5.人形を作りたいけど時間が……
6.聖杯戦争という魔法に興味。結界かあ……
[備考]
●予選中から引き継いだものがあるかは未確定です。
●バーサーカー(ヘラクレス)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)のステータスを確認しました。
●ルーラー(ミュウイチゴ)のステータスを確認しました。

【赤城@艦隊これくしょん】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(150)/A++、
敏捷(20)/D、
魔力(10)/E、
幸運(30)/C、
宝具(30)/E+++
実体化、魔力増(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
マスターを助ける。今度は失敗しない。
1.警戒を厳に、もしもの時は壁役に。
2:戦略資源(魔力等)をもっと備蓄したいなあ……
3:定期的に宝具で偵察し必要なら制空権を確保する。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]
メイド服(ワンピースとエプロン、ソックス)、シャワーを浴びてほかほか、満腹、頭痛、その他程度不明の命に別状はない怪我(全て治癒中)。
[装備]
特別製令呪、私服(ずぶ濡れ、磯臭い)。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
全員倒して優勝する。
1.オリジナルの聖杯戦争について聞き出す。
2:このルーラー……ルーラーとしてはかなりいい加減ね。
3:とりあえずシンジとキョウスケとアリスと行動を共にする。
3.なんなら同盟を組んでもいい。
[備考]
●第五次聖杯戦争途中からの参戦です。
●ランサー(幸村)、ランサー(アリシア)、アサシン(扉間)のステータス、一部スキルを視認しました。
●少なくともバーサーカー(サイト)とは遭遇しなかったようです。
●自宅はアインツベルン城に設定されていますが本人が認識できているとは限りません。
●バーサーカーと共に冬木大橋から落とされました。怪我の有無や魔力消費は不明です。
●アサシン(千手扉間)がハサンではない可能性に気づきました。
●アーチャー(赤城)、キャスター(パピヨン)、キャスター(フドウ)のステータスを確認しました。

【バーサーカー(ヘラクレス)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A+、
耐久(50)/A、
敏捷(50)/A、
魔力(50)/A、
幸運(40)/B、
宝具(50)/A、
霊体化、狂化スキル低下中。
[思考・状況]
基本行動方針
イリヤを守り抜く、敵は屠る。
[備考]
●イリヤと共に冬木大橋から落とされましたが少し流されたあと這い上がっできました。


【間桐慎二@Fate/stay night 】
[状態]
疲労(小)、精神的疲労(中)、満腹、イライラ、そろそろイリヤを殺したい。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯を手に入れる。何を願うかは後から決める。
1.こんなに数が多くなければ殺してるのに……!
2.あのルーラー、かなり軽いな。これなら……
3.ライダー(孫悟空)は許さない。
4.間桐家で陣地作成を行う。
5.会場と冬木市の差異に興味。
[備考]
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ライダー、筋力B耐久B敏捷B+魔力D幸運A
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(パピヨン)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。
●この聖杯戦争を『冬木の聖杯戦争を魔術で再現した冬木とは別の聖杯戦争』だと認識しています。
●ルーラーのステータスを確認しました。
●イリヤ、キャスター(パピヨン)への好感度が下がりました。

【キャスター(フドウ)@聖闘士星矢Ω】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(40)/B、
敏捷(60)/C+、
魔力(100)/A+、
幸運(50)/A、
宝具(50)/A
霊体化。
[思考・状況]
基本行動方針
マスター・慎二を見定める。今のまま聖杯を手にするならば━━
1.そろそろ止めるか……
2.今は慎二に従い、見定める。
3.求めるなら仏の道を説くというのも。
4.色丞狂介、か……
[備考]
●慎二への好感度が予選期間で更に下がりましたが不憫に思い始めました。見捨てることはありません。
●狂介に興味を持ちました。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。


【色丞狂介@究極!!変態仮面】
[状態]
疲労(小)、精神的疲労(中)、満腹、ハンバーガー所持。
[残存令呪]
1画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を止める。悪人をお仕置きする。
1.……バレてないかな?
2. とりあえず狂介とアリスとイリヤと行動を共にする。
3.ランサーだけあって逃げ足は早いんだな……
4.帰ったら家で陣地作成したり核金作ったりしてもらう。
5.下北沢のサーヴァント(サイト)を警戒。冬木大橋も気になるからこのあと寄ってみる?
[備考]
●核金×2、愛子ちゃんのパンティ所持。
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニャースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●孫悟空のクラスとステータスを確認しました。
クラス・ランサー、筋力C耐久C敏捷A+魔力B幸運C
このステータスは全てキャスター(兵部京介)のヒュプノによる幻覚です。
●キャスター(フドウ)、バーサーカー(ヘラクレス)、アーチャー(赤城)のステータスを確認しました。
●ルーラーのステータスを確認しました。

【キャスター(パピヨン)@武装錬金】
[状態]
筋力(20)/D、
耐久(30)/C-、
敏捷(30)/C、
魔力(40)/B、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
実体化、魔力増(小)。
[思考・状況]
基本行動方針
せっかくなんで聖杯戦争を楽しむ。
1.ようやく俺の出番だ。
2.帰ったら家で特殊核金を制作。今日はパピヨンパークは無理か?
3.冬木市の名物は麻婆豆腐‥‥?
[備考]
●予選期間中にサイトの魂食いの情報を得ました。東京会場でニュースを見た場合、サイトの姿や声を知る可能性があります。
●気分で実体化したりします。
●孫悟空が孫悟空でないことを見破っています。
●マスターが補導されたのを孫悟空による罠と考えています。
●ビッグマックとハッピーセットは狂介に押し付けました。



[全体備考]
●冬木教会敷地内にある建物に『カフェ・ミュウミュウ』が開店しています。
最終更新:2016年08月07日 04:23