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 新都の西端、川縁を一台のバイクが南下していく。
 遠目からでもいくらかの傷が見えるそれには、カジュアルな女性ものの服にフルフェイスのメットを被った人物がまたがり、ともすれば真夏のツーリングと思われてもおかしくはない。
 まさかその人物が、聖杯戦争の参加者であるサーヴァントなどと、それもかの騎士王であるなどとーーそして女性であるなどとーー思いもよらないだろう。

『未遠川に着きました、凛。』

 路地で停車すると、セイバーは凛へと念話を送った。既に銀色のセイバー・テレサと、そしてあの黄金のランサー・カルナとの戦いから軽く十分は経っている。その間、二人の間に会話はなかった。

『ーーセイバー。』
『……はい。』
『……ご苦労様。とにかく無事で良かった。』

 ハァ、とため息が聞こえると、凛の雰囲気が和らいだのを念話越しにセイバーは感じた。

『無様ね、私、何もできなかった。任せるて言っても、何かサポートできることはあったはずなのに。』
『いいえ凛。あの戦いに、マスターである貴方ができることは限られていた。令呪を使うかどうかしか、打てる手はなかっただろう。』
『それでも、ランサーの真名がわかったなら、それを教えることぐらいはできまはずなの。まあセイバー、貴女ももうわかってると思うけど。
『カルナ。たしか、インドの神話の英霊。太陽の権化であり施しの英雄。』
『そう。まったく、いきなりとんでもないヤツに目をつけられたわ。』

 声に怒気を含ませて凛は言うと、今度は大きなため息を吐いた。セイバーの脳内に思わず頭に手を置いて眉間にシワを寄せたマスターの映像が浮かぶ。それほど感情のこもったものだ。

 息も吐かせぬ戦いに、驚愕しつつもそれを何倍も上回る興奮を持って戦っていたセイバーと、セイバーを介して映像としてのみ戦いに臨んでいた凛には、大きな心境の隔たりがあった。
 セイバーにとっては日常の一つといえるが、凛にとってはさすがに衝撃が大きすぎた。それは心理的に意味でも物理的な意味でもだ。ランサーの初めての魔力放出を見たときなど初めてフラッシュグレネードを受けたときのように失神しかけた。いくらか戦争の心得がある凛ですらこれなのだからマスターによっては心臓マヒを起こしていてもおかしくはない。

 無理もない、そう思いながら饒舌になった凛に相づちを打つ。だがふと、セイバーは北を見た。
 線路の辺りだろうか、先程自分に飛んできた熱線が何十と空中に向けて放たれている。間違いない。ランサーだ。ランサーが戦っているのだ。しかもあの状況、恐らくは空を飛ぶサーヴァントが優勢に戦いを進めているのだろう。

『……あのランサーをも苦戦させるサーヴァントがいるのか……?』
『?セイバー、どういう意味?』
『凛、視界共有を。』

 セイバーはじっと北を見る。


 ひときわ大きい光が天を割くまで、二人の間からは再び会話がなくなった。



『……』
『……』

 遠目に微かに見えていたビルは光と共に消滅した。その光景は、網膜に焼きついている。それが戦禍であると誇示するかのように。

『セイバー、あなたの宝具を使ってやっと跳ね返せたのよね。』
『ええ。』
『それが何十発も射たれて、最後の一発は特に大きかったように見えたんだけど。』
『……令呪を使ったか、いや、それでも……無尽蔵の魔力でもなければ不可能だ。』
『……もう一ついい?』
『何か。』
『あのランサーにあれだけ宝具を使わせるサーヴァントがいるってことよね?』
『……味方にすれば心強いが、敵にすれば……』

 ずん、と凛の心が重くなったのが何となくセイバーには感覚でわかった。

『冷静に考えれば考えるほどめげるわ……セイバー!これ以上ここで悩んでても仕方ない、今からあのランサーと戦ってたサーヴァントに会いに行くわけにも行かないし、早く戻ってきて。一度落ち着いて話しましょう。』

『わかりました。宝具を使うので注意を。』
『いいわ。まったく、一筋縄じゃないのはわかってたけど……』

 凛からの念話が余韻を残して切れる。お互い、色々と言いたいことはあるが、それは後だ、まずはこの川を渡らなければならない。

「風王結界ーー」

 人目が無いことを確認して、セイバーは宝具を使う。本来は剣に纏わせ透明にしているが、今はバイクごとセイバーを包むように展開する。さすがに精度は落ちるが、遠目に見ればまず見破られることはないだろう。

(行きはスピードを出したからか波を立ててしまった。限界まで速度を落として、対岸へ向かう。見つかっても振りきれるだろう。)

 ふむ、と頷いて。セイバーはエンジンをとろとろとかけてバイクを発車させた。
 が、急停車。1メートルも走らずに停めると下車する。

(姿が見えないのに、エンジン音だけするのは、まずいだろうか?)

 しばし考えるセイバー。小さなことかもしれないが、かといって無視するのは何か避けたいものだ。だがこんなことで凛に再び念話するというのもおかしな話だ。

「おして歩いていこう。少し慎重になりすぎかも知れないが。」

 セイバーはバイクのハンドルを立ったまま持つと歩き始めた。



「NPO法人、あゆが住める未遠川にする会で~す。渡し船のボランティアをやってま~す。」
「未遠川の自然のために募金お願いしま~す。」
「渡し船やってま~す。」
「募金お願いしま~す。」
「渡し船やってま~す。」
「募金お願いしま~す。」
(NPO?凛がやっていた仕事というのはこういうものか。)

 まるで坂道を自転車から降りて歩くようにゆっくりと渡ったセイバーは、その岸の人の多さに困惑した。冬木大橋が寸断された今、川を渡るには数キロ川上に行かなければならない。そのため渡ろうとするものは南へ南へと移動していたのだが、そこに船を持ったものが現れた。彼らは幾らかの『募金』を徴集すると対岸まで人を運ぶという『ボランティア』、なのだろう。暗黙のアピールとして100円玉を袋に入れてちらつかせながら呼び込みをしていた。
 主に老人たちが扇子や団扇をぱたつかせて列になっているのを見るに、なかなか繁盛しているのだろう。そのお陰か、セイバーが宝具を発動して側を通りすぎているにも関わらず、不振な目をするか、「あら風が出てきた」などと呑気なことを言うかぐらいのもの。とても自分達の直ぐ近くにあの騎士王がいるなどとは気づく素振りもない。

「慎重が過ぎたか。」

 無事に人の群れを通り抜けると、苦笑しながら宝具を解く。安全に渡れたのはいいが、だいぶ時間がかかってしまった。早く戻ってきてと言われてこれではまずい。せめてここからの帰り道は少し急ぐとしよう。

『凛、渡河は終わりました。これから戻ります。』
『OK。ここからは更に見つからないように。家がバレるのは絶対に避けたいから。』
『ええ。』

 答えると、またがりエンジンをかける。確かに家の近くの方がより警戒すべきだ。少し気が緩んでいたようだがこれは戒めねば。

(急いでも数分しか変わりませんしね。)

 静かな住宅街にバイクの排気音が鳴る。この音は少々問題だが、宝具など使えば魔力でバレてしまいかねない。

(そこまで大きいという程でもないですが、帰ったら凛に整備を頼みましょう。)

 ノロノロと加速してゆっくりと走らせる。人通りはやはり、少ない。そもそもこんな夏の日に外に出ようとするもの好きは少数派だろう。さっきとはうってかわって誰とも会わずに遠坂邸へとたどり着いた。


「!ッ凛!!」


 エンジンを止める間もなく、セイバー突如跳躍。
 霊体化ですり抜けると同時に直ぐ様マスターの元へと向かう。一瞬後、震動。二瞬後、更に音。まるで隕石でも落ちたように、屋敷は揺れる。


 10時47分。バーサーカー・クウガに幸運にも捕捉されることなくセイバーは凛の元へと帰還した。



【深山町、遠坂邸/2014年8月1日(金)1047】

【遠坂凛@Fate /Extra】
[状態]
魔力消費(小)、疲労(中)、精神的疲労(小)
[道具]
ナイフ@Fate /Extra、ドール(未完成)@Fate /Extra、その他多数の礼装@Fate /Extra
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
当然、優勝を狙う
1:!?
2:礼装、ドールを改良する(索敵・感知系を優先)
3:闇討ちや物量戦法を強く警戒
4:銀色のセイバーにランサーと戦ったサーヴァント……同盟か……
5:なんとなく遠坂家が没落した理由がわかった気がする……
[備考]
●自宅は遠坂邸に設定されています。
内部はStay night時代の遠坂邸に準拠していますがところどころに凛が予選中に使っていた各種家具や洋服、情報端末や機材が混ざっています。
●現実世界からある程度の資金を持ち込んだ他、予選中株取引で大幅に所持金を増やしました。
まだそれなりに所持金は残っていますが予選と同じ手段(ハッキングによる企業情報閲覧)で資金を得られるとは限りません。
●遠坂邸に購入したスズキGSX1300Rハヤブサ@現実が二台置かれています。
アルトリア機は青いカラーリングで駆動系への改造が施されています。
凛機は朱色のカラーリングでスピードリミッターを外した以外には特に改造は施されていません。
●セイバー(アルトリア)から彼女視点での第四次聖杯戦争の顛末を聞きました。


【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]
筋力(50)/A、
耐久(40)/B、
敏捷(40)/B、
魔力(100)/A+、
幸運(100)/A+、
宝具(??)/EX、
健康、実体化、魔力消費(中)。
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯の力で王の選定をやり直す
1:しまった、追跡されていたか!?
2:凛に独断専行を謝罪し、対ランサー(カルナ)の同盟相手としてセイバー(テレサ)を推薦する
3:ハヤブサの整備を凛に頼みましょう。
4:何故冬木が会場に……それにイリヤ……
[備考]
●第四次聖杯戦争の記憶を引き継いでいます。
●スズキGSX1300Rハヤブサを乗りこなせるようになっています。
騎乗スキルの低下を第四次聖杯戦争での経験とバイクの知識を深めることで補っているようです。
●スズキGSX1300Rハヤブサは小破していますが走行に影響はないようです。