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 マイケルはタクシーに揺られていた。点滴をしたまま車に乗るというのはなかなかに困難ではあるが、そのタクシーの運転手はこういった客を相手にすることにも慣れているのだろう。何とかまとめて乗り込むと無事シートベルトを締められた。

「新都の……スーパーわかります?」
「線路の南ですか?」
「そうです、そこまでお願いします。」

 短く話し、首をのけ反らせ、体重を預ける。体は重い。当然だ、過労で倒れて直ぐなのだから。本来は出歩くわけにはいかないだろう。
 だが今の「重さ」はそれだけではない。

「ラジオつけますよーー」

 はい。そう返事する。生返事だ。体にのし掛かる重さは、マイケルから思考力を奪う。

 ーーそんな人間が、一人の人間を殺そうとしている。

 耐えがたき睡魔がマイケルを襲い、遠のく。「人を殺す」。その事実が疲労や魔力の枯渇による、睡眠という逃避を阻害する。休もうとする体とは裏腹に、心は覚醒を要求する。
 落ちるまぶたを強引に上げてスマホを見れば、十二時を回ったあたりか。ラジオのノイズが心地よい子守唄にも、呪詛の言葉にも聞こえる。

 人殺し、殺人鬼、暗殺犯。

 頭のなかに浮かぶ言葉はそんなものばかりだ。わかっている。聞きなれたものだ。

(これは必要なことなんだ。)

 自分は、犯罪者だ。それも脱獄犯で、逃亡犯だ。

(どのみち、生き残るのは一人だろ。)

 今まで何人の人間を裏切ってきただろう。何人の人間の人生を狂わしてきただろう。そしてそれがなんだというのだろう。

(マイケル、お前が本当に大切にしているものは、なんだ。)

 眉間に皺を寄せ、マイケルは目をつむる。

 思い出すのは、走馬灯のような光景だった。それはマイケルの死を意味しているのかはわからないが、とにかくここまでの記憶だった。

 海に沈むときに桟橋をつかんだこと。
 金を手にいれてこれで逃亡生活を終えられると思ったこと。
 共に脱獄した囚人たちが、一人一人とFBIの捜査官に追いつめられていったこと。
 好意を裏切り、時に見捨て、刑務所を脱獄したこと。
 掘り進んだ穴、手にいれた情報、薬、切り落とされた指、目の前で死んだ囚人、裁判、武装強盗、証拠の隠滅。

 何人もの人間を失望させてきた。

(だとしてもやるしかない。)

 マイケルは固く目をつむる。もう決めたのだ。自分は魂喰いするしかない。そのための獲物は目の前にあった。気絶するまで弱ったアサシンと、アイドルになろうという日本人の少女。限界に近いアーチャーでも問題なく殺せるだろう。あわよくば、あのランサーも殺せるかもしれない。二騎のサーヴァントを落としてなおかつ魔力のあてができるのだ。悪い話ではない。たとえランサーを殺し損ねても、今の自分は既に病院から離れている。彼が自宅を突き止められるとは思わないし、その時間もないだろう。

 マイケルがアーチャーに依頼したのはあの部屋の爆破だ。あの部屋だけ、というわけにはいかないだろうが、一応爆破の規模は小さくするように指示を出した。この町ではもう二回は爆弾騒ぎがあるのだ、アーチャーの犯行と特定するのは難しいはず。これで魂喰いが、ついにできる。後はマイケルが念話でアーチャーに指示を出せば、終わりだ。

「ーースーパーの駐車場に停めますんで。」
「ーーはい。」

 今度は意識をはっきりと覚醒させる。外を見るともう目的地は目の前だった。スマホを見ると、12時15分。少しの間微睡んでいたようだ。今なら茜は昼食を食べているだろうか。最後の晩餐ならぬ……

「渋滞してました?」
「近くの警察署の辺りに人が多くて。なにせあのテロに爆破予告でしょう。」
「爆破予告?」
「これですーーあ、はい着きました。」

 粗末な庇の下にタクシーを停めると、運転手はカーラジオのボリュームを上げた。精算しながら耳を傾ける。どうやら、病院に爆破予告があったようだ。

(好都合だ。)

 これでますます、アーチャーが疑われる確率は減る。どうやら、運が向いてきたようだ。


 マイケルは金を払うとタクシーから降りてスーパーへ向かう。駐車場に日陰があるのは、素直にありがたい。運転手に感謝したい。



  C D C C E。



(なんだ、文字?)

 ふと、マイケルは店の入り口に立つ一人の男に目を止めた。今のマイケルはスーツを着ているものの点滴を転がして歩いている。奇異の視線が来ることはわかっていたが、その人のなかに、頭上に文字が浮かぶ人間がいたのだ。

「私は、運がいい。運が向いてきたようだ。」
(サーヴァント……!?)

 声を出すよりもはやく親しげにーーしかししっかりと体を固定してーーそのスーツの男はマイケルと肩を組んだ。そのまま引きずられるように、店内へと連れ込まれる。周りの人間はそれを奇異の目では見ても、関わろうとはしない。外国語で捲し立てる外人に好き好んで話しかけようとする人間は冬木でも少数派だ。

「他のマスターもそんなところに令呪があるといいのだがね。ああ、安心してもらいたい、傷病者の扱いはなれてるんだ。君が安静にしていれば良くなるだろう。」

 男の手に一枚のトランプが魔法のように現れる。それはほんの少し服に触れただけで簡単に布地を切り裂いた。

「君に会えて嬉しいよ、それでなんて呼んだらいい?」
「うーん……?そうだなあ!伊達ーー」

 ひきつった顔で話すマイケルとは裏腹に、そのブラウンのスーツの男は人を食ったような顔だ。楽しげに愉しげにもったいつけると名前を言おうとし。


 タタタン↑タタタン↑パー(ダンダンダンダン)タタタン↓タタタン↓パー(ダンダンダンダン)

 マイケルの持っていたスマホが、思わずペダルを踏んで隠れながら銃撃戦をしたくなる軽妙なメロディを奏でた。赤弾飛んできたら隠れないと。

「出てもいいかな?」
「……もちろん、いい着メロだな。」
「ありがとう。友達はこの曲をなぜか嫌いでね。じゃあ。」

 若干輪郭の怪しくなったスーツの男の許可を得ると、マイケルはスマホを改めて見る。『HI-NO AKA-NE』の文字。日野茜からだ。
 通話を躊躇する。まさに、これから殺そうとしている相手だ。スーツの男からのプレッシャーが増す。出ないわけにはいかない。電話に出た。

『マイケルさん今どこですか!?大変なんです!!爆弾ですよ爆弾!!!』
「茜さん、落ち着いてくれないか。ゆっくり、深呼吸をし」
『早く病院から離れてください!いつ爆発するかわからないんです!』
「ほう?そういえば病院に爆破予告があったらしいが、はて?」

 スーツの男が獰猛な笑みを浮かべる。喜色を隠そうともしない顔だ。

「爆破予告だろ?知ってる、落ち着いて」
『マイケルさん!落ち着かないで早く逃げて!!私の病室に爆弾が仕掛けられてたんです!!!』
「は?」

 スーツの男が虚をつかれた顔をする。驚きを隠せなかった顔だ。

『マスター。』
『ベットの下に仕掛けておいた爆薬を発見されました。』

 アーチャーからの念話が来る。今度はマイケルが虚をつかれた顔になった。



 時間は五分ほど遡る。
 千手扉間は夢見ることもなく昏倒していた。体は重く、弱々しく、できることなどなにもなかった。
 だから、この場で彼に言及する意味はない。この場の『ヒロイン』は、日野茜であった。



『マイケルさん、スゴい顔色悪かったよね。手とか震えてたし、休んでもらって良かったあ……』
『ますたぁ、まいける殿を休ませたいというのはわかりますが無理やり寝かせつけようとしたのはまずかったのでは。』
『休むときは休まないとダメだと思うけどなあ。何度も目を擦ってたし。』
『その通り。しかし男には、歌舞かねばならぬと決めたときもあるのです。その心意気は無下にしてはなりませぬ。』
『そっか……じゃあ私がその分頑張らないと!!いくぞおおおぉぉぉぉぉっ!!!」
『その意気ですぞますたぁ!うおおおおおおおっっ!!!」
(ウルサイ、サルドモメ……)

 アーチャー・ワイルド・ドッグからの侮蔑的な視線に気づくこともなく、茜とランサー・幸村の二人は気勢を上げる。彼女達は知らない。彼女達が心配しているマイケルその人が、彼女達を殺そうとしていることを。

 冬木の病院の最上階にあるVIP用の病室にいる茜はスマホを忙しなく操作していたが、もちろん遊んでいるわけではない。情報戦という、聖杯戦争における一つの戦闘の形の為に行動していた。
 今、茜とマイケルのスマホにはあの金色のランサー・カルナとそのマスターである少女ーーイリヤーーの映像がある。彼女達と同盟を結んだアサシン・千手扉間が命懸けで手に入れた「スクープ」だ。この価千金の情報を利用してなんとかランサー打倒のための活路を開くために彼女達は工作活動に従事していた。といっても、茜はその様な人を貶めるようなことをした経験はなかったしマイケルは塀の中にいたこともあってネットを利用した情報操作などできるはずもない。そのため、茜はとにかく情報を拡散することだけを考えて「準備」をしてーーまさか事務員の話をお菓子を食べながら適当に聞いていて役に立つとは思わなかったーーそしてその最終段階を終えようとしていた。



 時間は更に十分ほど遡る。
 アーチャーのマスター、マイケル・スコフィールドが冬木市で住んでいるマンションの近くには、小さな公園と、それなりのスーパーと、チェーン店のファミレスと、警察署があった。
 警察署といっても、大きなものではない。マイケルの住むマンションより敷地は大きいが、高さは無い。もしここに捜査本部でもおこうものならば、柔道場に布団を敷き詰めなければならないだろう。そして今、まさに緑の畳は白い布団に覆われていた。
 『冬木連続爆破テロ』。どこのテレビ局が着けたとも知らぬその名が、事態の重大さを示していた。冬木大橋、冬木中央公園、線路脇の雑居ビル、深山町住宅街。確認できているだけで四ヶ所が12時間の内に爆破されるという前代未聞の事件だ。死者・行方不明者は百人とも数百人とも情報が飛びかっている。怪我人は千人を越え、もはや災害と言えよう。

 当然、マスコミの報道は過熱していた。あるコメンテーターは、イスラム過激派組織によるものだと指摘した。またあるコメンテーターが極右勢力の白色テロと言えば、裏番組では極左勢力の革命だと言い、そのまた裏番組では北朝鮮の工作員が潜入したからだと冗談を飛ばしたかと思えば、更に裏番組では某ランサーをUFOに見立てて宇宙人の侵略という説を展開していた。

 警察署長の記者会見は、そんな混乱と興奮のるつぼにて行われた。各局は放送予定を変更し、冬木警察署に中継を繋いだ。テレ東でさえもだ。ワイプで流れる国会中継では、政治家達がスマホを除き込む。電気屋のテレビも、当然のように中継していた。中華屋のテレビも、夏期講習の塾のパソコンもだ。


「警察署長の須藤です。本日はーー」

 時計の針が『12』を指して重なる頃、署長のその言葉で記者会見は始まった。
 一礼し、名前を言っただけで百を越すカメラがシャッターをたき、狭い会見の部屋が白い光に包まれる。たっぷり五秒は光の嵐が続く。
 民放は一斉にワイプと切り替えた。大画面で署長の会見を写し、左下や右下でアナウンサーを写す。あるテレビ局は、スタジオともうひとつ、警察署の外観も写していた。それは単に構成のミスだったのかもしれない。慌ただしく準備をする内に、手違いがあったのか。それはある種放送事故だったろうしそのあとの放送事故にもつながった。



 ふしぎな光景だった。
 警察署を囲む何十という人間。または警察署が目視できる範囲にいる何百という人間。そのすべてがその超常現象を同時に確認できた。そして一局の放送事故により、その光景は広く知られることになる。

 紙が舞っているのだ。A4用紙だろうか、風もたいしてないのに、竜巻のように警察署の周りを渦巻いているのだ。まるで一枚一枚が意思を持って動いているかのように、美しくも怪しく飛んでいるのだ。

 よく見れば、その紙にトランプが着いていることに気づいただろう。現にその紙を拾った人間の中には、太陽の光でトランプが消えていく光景を目撃したものもいる。その紙の内容よりも、そちらの異常さを理解する人間は、ごく限られていたが。

 ペラリ。マイクを持ったアナウンサーが一人、紙を手に取った。カメラが寄り、文面を写そうとする。アナウンサーは一瞬躊躇ったものの、紙を画面に写した。



 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ



 紙一面にでかでかと書かれた鉤十字を背景に、不穏な文書が書かれた紙が写し出された。



 時間は十分進む。

『マイケルさんがお昼に行ってる間になんとか終わりそう。時間は……12時10分。』
『そういえば、病院というのは食事が出ると聞きましたが。』
『どうでしょう、一階はてんてこ舞いみたいだし、ないんじゃないかな。』
『ではまいける殿が帰ってきたら某がなにか買ってきましょう。』
『そろそろお腹も空きましたしね。』

 ふぅ、と茜は息を吐くと、うーん!と背伸びをした。デスクワークは、彼女には合わない。特にスマホを慣れない目的のために使うのはなかなかに体力を使う。気絶から目覚めて半日もしていない人間には少々酷な業務だった。
 だがそれもようやく終わった。既に先に作業を終えていたマイケルを追い出すように休憩に出し、病室に残ってスマホと格闘していたが、ひとまずこれでなんとかなるだろう。後は肝心の動画をアップロードするだけだ。

「ほっ!」

 仕事から解放され安らぎを求めて大の字でベットにダイブすると、茜は「おお!?」と声を漏らす。やわらかい、ふかふかだ、これはいけない、疲れからか寝てしまいそうだ。
 睡魔の急襲に決死の抵抗をしながら、茜はテレビのリモコンに手を伸ばした。人を休ませようとしておいて自分が寝てしまってはいけない。ここは眠気覚ましのためのテレビだ。断じてくつろごうとはしていない。アイドルだから芸能情報に目を通す的なやつだ。

『本会議終了後、政務活動費の領収書を偽造したとして、冬木市議のーー』
『冬木市の市議会議員が、市内の温泉施設など四ヶ所に二百回以上訪れながら、明確なーー』
『冬木大橋、そして冬木中央公園で相次いで爆破がありましたが先程思いもよらない展開が冬木警察ーー』

「ろくなニュースがない……」

 なんとなくガッカリして、リモコンを枕元に放る。どうしよう、このままでは寝てしまう、いやもう逆に寝ちゃっていいんじゃないかな?そんなことを考えながらベットでごろごろしながらマイケルを待っていると部屋の扉がノックされた。

「マイケルさん?」
『違うようです、彼らは……』

 小声で聞く茜に幸村が答えたのと同じタイミングで扉が開く。ずかずかと中年の男達が入ってきた。部屋に居る者の返事など最初から聞く気のないことがありありとわかる入り方である。
 男達はそれぞれ上等なスーツやタイを身につけていた。しかしその顔には焦りのようなものがこびりついているかのようだ。彼らは部屋を一通り見回すとベットの脇に並んだ。

『ますたぁ!』
『ダメですよ姿を見せちゃ。』

 とっさに茜は念を押した。この状況で突然幸村が現れれば、心霊現象に他ならない。騒ぎになるのは確実だ。


 もっとも、とっくに騒ぎは起きていたのだが。


「日野茜さん、ですね?」
「……先程報道にもあったように、この病院を爆破予告したと思われる怪文書がばらまかれまして。」
「安全確認のため、部屋を調べたいのですが……」



 時間は一時間遡る。
 午前11時過ぎ、両手にパソコン等の電化製品を買い込んだ伊達男ことトバルカインは冬木ハイアットホテルにタクシーをつけるとえっちらおっちら入っていった。
 なぜ自分はこんなことをしているのか。自問自答する。
 最初は、タクシーを走らせて少佐の元に戻ろうとしていたのだ。それが途中で金策やら魂喰いやらを命じられ、買い出しもついでに頼まれ、今度は拠点を変えたからホテルに来いと言われた。もしやこれが世に言うブラック企業というものだろうか。

「ホテルか……」

 伊達男は渋い顔をしながらロビーへと足を進める。どうも、死んだときのことを思い出してしまう。それに少佐殿はホテルは捕捉される可能性が高いからと避けていたはずだ。なのになぜ……

「まああの人のことだ、どうせろくでもない悪巧みでも思いついたんだろう。」
『それ正解~、サーヴァントになってから勘が鋭くなったんじゃない?』
「なるほど、やっぱりな。」
『えー、それだけー、もうちょっとなんかないの~。』

 頭の中を適当な絵面になりながら飛び回る猫耳の少年……少女?よくわかんないがとにかくかわいいシュレディンガー准尉を無視して歩く。この男だか女だかがここにいるということは、少佐殿が召喚したのだろう。これは確実にろくでもないことをしようとしている。

『13階の4号室だよ。』
「縁起のいい数字だ。」

 このような伊達さの欠片もない格好はなんとも情けないが命令なんだししかたない。そう思いながらエレベーターで上へ。降りると左見て右見て歩きだす。

「少佐殿!入りますよ。」
「准尉、鍵を。」
「いらっしゃいませ。ところで大声で少佐殿はマズイと思うよドイツ語でも。」
「やかましい。こんなところに陣を構えたんだ、バレることは折り込み済みだろう。」

 そう言うと准尉に荷物を押しつけようとし、逃げられる。少佐の背中からあっかんべーしてくる准尉を一睨みすると少佐に敬礼した。

「少佐殿、こちらがノートパソコンでこちらがプリンター、そしてこちらがシヴィライゼーションでこちらがトロピコ、そしてこれがハーツオブアイアン3です。」
「ご苦労中尉。さて、なぜ私がホテルに拠点を変えたのか知りたいようだが……見当はついているのだろう?」

 伊達男はちらりと准尉を見た。

「このホテルを陽動に、なんらかの作戦を行うのかと。」
「ふむ、いい線だ。なぜそう思った?」
「陽動は基本です。それにアーカードの時のこともありますので。」
「ハハハ、根に持ってるのか!」
「まさか、少佐殿の人間性を信じているだけです。」

 そう言うと准尉に一瞥をくれる。中指を立ててきたのは無視した。

「中尉、君とは長い付き合いだ。だがーー」
「いささか、私という人間を読み違えたようだな。」

 おしりペンペンしてくる准尉にトランプを一枚飛ばす。尻が四つに割れた。

「中尉、聖杯戦争のヒロインはアルトリアだ。」
「はあ。」

 誰だよ、と言いたかったがとりあえず流した。

「では聖杯戦争の主役は誰だ?」
「主役ですか?」
「そうだ、主役だ。」

 ぶっちゃけ質問の意図がわからないが、こういうときはとりあえずこう答えておくのが安全、という回答がある。

「我々です。」
「そうだ。」

 当たった。

「聖杯戦争の主役は我々だ。」



「というわけで始まりました聖杯戦争。皆さん今回も頑張っていきましょう。」
「うるせえよデブ!」
「まずはこちらをご覧いただこう。」
(なんだ、なにか茶番が始まったぞ。)

 急にテンションを上げた二人に伊達男は困惑する。とにもかくにも差し出された手書きの紙を受け取った。



 【冬木ブッチギリヴァンパイアーズ作戦指令書】
1.冬木市のいろんな場所に爆破予告します。
2.適当に中尉が突っ込んでいってNPCぶっ殺します。
3.NPCが町から逃げます。
4.マスターが町に取り残されたところで最後の大隊召喚します。
5.勝った!第三部完!



「すみません、どういうことでしょう?」

 思わず素のテンションで聞き返す。彼は大教授やバレンタイン兄弟がときどきやるこのようなノリはイマイチ苦手なのだ。なんというかノリきれない。

「わかる?突っ込め!突っ込めて言ってんの!!」
「突っ込めと言われても……」
「何だよコイツノリ悪ーな。」
「そうだ少佐、中尉をルーラーに特攻させよう。そうすればコイツはお陀仏だ。」
「そしたら俺にも討伐令くるだろ!いい加減にしろ!!」
「細けーことはいいんだよ。」
(いかん、いかんぞお、アーカードより対処法がわからん。せめて大教授が居てくれれば……)

 基本的に伊達男は、ヘルシングの裏表紙には出てこない。下手したらガンダムはおろかヘルシング人気投票二位よりも登場回数は少ないのだ。そんな彼では、少佐のノリについていけない。ある意味一番「この」少佐と相性が悪いのが伊達男であった。
 これまではなんとか少佐が本編のノリを維持していたためにコミュニケーションが取れていたが、一度裏表紙となれば会話すら困難になるのだ。

「少佐~、トランプおじさんが会話に入ってこれなくて悲しそうなんでわかりやすく言ってあげた方がいいと思いま~す。」
(とりあえずコイツはノリが変わろうと腹立つな。)
「ではしかたない。そろそろシリアスにいくか。それで中尉、何が疑問なのかね。」
「……はぁ、ではまずこのNPCが町から逃げるというところです。」
「爆破予告はいいのかよ。」
「少佐殿が予告までで済ませるのなら普段よりマシです。」
「確かに。」

「それで、いなくなるというのはどういうことでしょう?」
「この街の外に行くという意味だ。NPCは自由に市の内外を行き来できるが、マスターやサーヴァント等はできないのだろう。先程准尉で確認した。」
「ほとんど逝きかけました。」

「それと最後の大隊の召喚というのはどういうことでしょう。召喚できるんですか。」
「バレンタイン兄弟以外は飛行船とかもまとめて全部出るな。ただ時間かかるんで広い地下がないとキツい。このホテルは基盤の部分がけっこう広いからうってつけてわけ。」
「裏表紙なのに兄弟出れないんだ……」
「アイツらはいらん。」
「中尉、君も大概辛辣だな。」

「というわけでこれで質問はもう無いな。」

 やりきった、そんな顔の少佐を見て伊達男は考える。ノリにはついていけない、だがこれは少佐だ。

「ところで少佐、だからといって今ここに移動しなくても良かったのでは?」
「ラスボスがカラオケ店に潜伏とかかっこつかないだろ。」
「ジャブローの穴蔵よりはマシでは?」
「まあな。では中尉、このビラを2600枚ぐらい刷って警察署でばら蒔いてこい。なんなら適当に警官の十人や二十人殺して鉤十字書いてきてもいいぞ。」
「畜生の発想ですな。」
「ナチだからな。てかリップバーンもやっただろ。あとその後は適当に爆破予告した場所を襲撃したりしておくって感じで。どのくらいでルーラーが来るのかが知りたいからな。」
「他のサーヴァントに会った場合は殺しても?」
「ホテルに来るように言って逃げろ。ゾーリンのアレでホテルの人間全部人質にすれば討伐令怖いだろ。憲法九条だ。」
「それは、我らの、もしくはワイマールですかな?」
「いや日本国憲法。」
「ほう。どのような内容ですか?」
「軍隊持たない。」
「屑ですな。」
「やっぱナチて糞だわ。」



【新都・冬木ハイアットホテル13階4号室/2014年8月1日(金)1110】

【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
健康、令呪使用により魔力倍増。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1.爆破予告で他の主従をあぶり出す。ルーラーはどのように動くか……
2.サーヴァント(ワイルド・ドッグ)と交渉をしたいが……。
3.目的達成のためにルーラーを排除する策を練る。
4.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
5.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥まだ目立った変化は見られんか。
5.仮面ライダーにドラえもんか……
6.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●令呪を使って『戦鬼の徒』を使用することで戦鬼の徒の宝具、スキル等を再現できるのではないかと考えており、召喚したトバルカインで実験するつもりです。そのために場合によってはドクの召喚も考えています。
またこの考えは外れている可能性もあります。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/ D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.今のところ命令ないしどうしよっかな~。



【新都・病院/2014年8月1日(金)1210】

【アーチャー(ワイルド・ドッグ)@TIME CRISISシリーズ】
[状態]
筋力(15)/C、
耐久(15)/C+、
敏捷(10)/D、
魔力(1)/E、
幸運(10)/D+、
宝具(0)/E
魔力不足(極大)、実体化に支障、魔力の不足により全パラメータ半減、魔力不足により宝具使用不可。
[思考・状況]
基本行動方針
優勝するためには手段を選ばず。一応マスターの考えは尊重しなくもない。が、程度はある。
1.バレるとはな……
2.最悪の場合はマスターからを魔力を吸い付くせば自分一人はなんとかなるので積極的に同盟相手を探す。
3.マスター(マイケル)に不信感とイラつきを覚えていたがだいぶ緩和。
[備考]
●乗り換えるマスターを探し始めました。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。好感度はかなり下がりました。
●ドラえもんでの魂食いしました。誤差の範囲で強くなりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。


【ランサー(真田幸村)@戦国BASARAシリーズ】
[状態]
筋力(20)/B、
耐久(20)/B、
敏捷(15)/C、
魔力(15)/C、
幸運(15)/C、
宝具(0)/B、
霊体化、疲労(中)、魔力消費(極大)、魔力不足により宝具使用不可、魔力不足により全パラメーター半減、肋骨にひびと内臓に損傷(どちらもまあまあ回復)、安堵と屈辱と無力感、そして茜への責任感。
[思考・状況]
基本行動方針
強敵たちと熱く、燃え滾る戦を!!だが‥‥
1:いつの間に爆弾を……!
2:あさしん(千手扉間)が生きて帰ってきて安堵。
3:ますたぁ(茜)に聖杯戦争について伝えたが……どうしてこうなった。
4:ますたぁ(茜)への申し訳なさと不甲斐ない自分への苛立ち。
5:あの爆発、あーちゃー(アリシア)は無事とアサシンは言ったが‥‥
6:俺は……
7:せいばぁ(テレサ)、ばあさあかぁ(小野寺ユウスケ)と再戦し、勝利する
8:あの卑劣な作戦、やはりあさしん(扉間)は忍びの者……?
[備考]
●ランサー(アリシア)のクラスをアーチャーと誤認しています。
●ランサー(アリシア)の真名を悟ったかどうかは後の書き手さんにお任せします。
●アサシン(千手扉間)を忍のサーヴァントだと考えています。
●病院内にランサーの噂が立ちました。『アイドルの関係者』、『映画の撮影』、『歌舞伎』、『うるさい』、『真田』といった単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が広まり始めています。また病院外でも地方紙で報じられています。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への警戒心が薄れました。

【日野茜@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]
魔力消費(大)、頭にタンコブ(応急処置済)、???
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争はサーヴァント同士の格闘技!だと思ってたけどマスターも頑張らないと!!
1 .聖杯戦争という企画を頑張る!
2.爆弾!?
3.アサシンさん(扉間)がとってきた映像をアップロードする……視聴者参加型なのかなやっぱり。
[備考]
●予選期間中他のマスター、サーヴァントと出会うことはありませんでした。
●月海原学園高等部の生徒という立場が与えられています。
所持金は高校生相応の額となっています。
●自宅は深山町のどこかです。
●セイバー(テレサ)、バーサーカー(小野寺ユウスケ)の基本ステータスを確認しました。
●気が動転していたため、ランサー(アリシア)、バーサーカー(サイト)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスを確認できていないかもしれません。
●病院にアイドル・日野茜の噂が立ちました。『アイドル』、『撮影』、『外人』などの単語やそれに関連した尾ひれのついた噂が拡がりはじめています。
●病院の特別病床に入院しました。病室のある階に立ち入るにはガードマンのいる階段を通るか専用のIDカードをエレベーターにタッチする必要があります。
●聖杯戦争を番組の企画だと考えたり考えなかったりしました。とりあえず今後自分が常にカメラに撮られていると考え視聴率が取れるように行動します。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。



【新都・警察署近くのスーパー店内/2014年8月1日(金)1215】

【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
点滴、魔力消費(極大)、精神的な疲労(大)、衰弱(中)、覚悟。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.他のサーヴァントなら……魂喰いしても……
2.謎のサーヴァント(トバルカイン)を何とかする。
3.もう一度病院に潜伏するか、それとも……
4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は……
5.アサシンのマスターはどこだ?
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。


【トバルカイン・アルハンブラ(-)@ヘルシング】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(20)/ D、
敏捷(30)/C+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/E、
宝具(0)/-、
決意、実体化、裏表紙のノリへの耐性。
[思考・状況]
基本行動方針
この聖杯戦争で軍功を挙げ、意地を見せる。
1.最寄りの病院を襲撃しようと思ったが、マスターと会うとは。
2 今度こそ軍功をあげてみせる。
3.‥‥どうせなら葉巻を吸いたいな。
[備考]
●一応本編からの召喚ですが若干テンションがおかしいです。
マスターである少佐と視界共有を行えますが念話はできないようです。
●冬木大橋でのイリヤ&バーサーカーvsいおり&ランサー戦を観戦しました。どの程度把握したかは不明です。
●トバルカインのマスター(少佐)と三人で話しました。