私の名前はトバルカイン・アルハンブラ。諸君も知っている通り『最後の大隊』の構成員、吸血鬼だ。今回は指揮官たる少佐殿がライダーのクラスで召喚され、私はその宝具で呼び出された。イレギュラーな立場だがそれがまた我々らしい。


 さて、現在の私に与えられた任務と私自身の現状について説明しておこう。ブリーフィングというのは大切なものだからな。

 まず任務から説明しよう。その一、警察署に怪文書を撒く。これは先程無事成功した。親衛隊のビラ配りとは違う、空中にばら蒔いた。まるで米軍みたいにだ。少佐殿が印刷した原本をコンビニで印刷して日傘片手に警察署に行きトランプで挟み込んでなるべく多くの人間に渡るようにした。現代で言う情報戦・心理戦というものだな。一部の地域ではまだまだ現役の作戦だ。

 ではその二、怪文書にある場所に行き適当に攻撃する。この場合の適当というのは適切に当たれという意味だ。各員の総力を尽くし柔軟に事態に対処せよということだな。つまりこれは威力偵察せよということだ。助攻とも言えるかもしれない。リップバーンがアーカードを誘い出したのと同じようなものだ。まあ私は犬死にする気はないがね。

 その三、と言いたいところだが、諸君、残念ながらその前に現在私がおかれてる状況について話さなくてはならない。というのも、現在は先に述べた一と二の間なのだが問題が発生したからだ。いや、二の目的を考えれば、むしろ幸運と言えるのだが、まあそれがどういうことなのかを説明するとしよう。

 私は警察署で怪文書を撒いた。これは先程言ったな?ではその後どうしたか。私は警察署から速やかに移動した。そして日影のあるこのスーパーマーケット、まあドイツにあるのとは多少は違うがその違いについての説明は割愛させてもらう。とにかくこの建物に潜伏し少佐に連絡した。ここまではなんの問題もない、全く予定通りだ。

 さて、私は予定通り『その二』へと進もうとした。場所はホテル以外の六ヶ所からどこに行こうかということだが、まず市の西部、深山町側は候補から外した。サーヴァントが市から出られず、川に架かる唯一の橋はポッキリと折れてしまっているのでは、吸血鬼の私が西側へ行くことは不可能だ。ベルリンよりも。

 というわけで東側の四ヶ所、教会、学校、図書館、病院からどれかということになるが、まず学校は避けたい。長い休みというなら人はいないだろう。教会もだ。我々の天敵の上にルーラーがいる。直接襲うような愚を犯すわけにはいかない。では駅と病院のどちらかということになるが、まあ私はどちらでも良いと思っていた。この店はタクシーが停まるスペースか何かがあるらしく、乗ってから決めてもさほど問題はない、そう判断したからだ。

 私は出入口の近くで暫し待っていた。日本の夏は暑い。それも中東のサウナのようなものではなくアマゾンのベタつく感じだ。涼しい店内は吸血鬼といえど嬉しいものだ。日本人には他の人種は珍しいのか多少の視線はあったが直ぐに興味を失うようで、ウィンドウショッピングを楽しむ余裕すらあった。まあ、大したものはないがね。

 さて、ここまで長々と話したが現在の私の状況を簡潔かつ端的に説明しよう。

 『一人でいたマスターにトランプを突きつけなから身体を密着させて一緒のスマホに耳を傾けている』。


 訳がわからないという顔だな。全くだ!私にも訳がわからない。



「茜さん、こっちは今スーパーにいるんだ。安心してほしい。少ししたらこっちからかける。」

 マイケル・スコフィールドはそう言うと手早く通話を切り「状況を整理したいと思う」と口にした。

「彼女を放っておいていいのかね?」
「優先するべきは、遠くの知り合いより目の前の相手だ。違うか?」

 ゆっくりとスマホをスーツのポケットへとしまいながら、目は真っ直ぐトバルカインを見る。口許には友好的なセールスマンの笑みを浮かべながら、その視線が『こちら側』の雰囲気を感じさせる。

「なるほど、気骨のある方のようだ。非礼を侘びよう。手荒な真似をして申し訳ない。」
「どうも。さて、一つ確認しても?」
「ああ、構わないさ。私が答えるべきだと判断すればなんでも答えよう。」

 トバルカインは身体を離した。さすがにスーツ姿の成人男性が二人密着しているのは人目につく。傍らの棚からオレンジを一つ取ると首で促す。

「君は、もしくは君達は誰かと同盟を組もうとしているんじゃないか?」

 オレンジの影で、トバルカインは一枚のトランプを出した。

「話せるな。なぜそう思う?」
「わざわざ殺さずに捕まえたから。捕虜にする価値は低いはずなのに。」
「君の過小評価ではないかね?人命は尊い。」
「確かに。でも『ここ』は違う。」

 目線が正面からぶつかる。

「ここは殺しあいの場だ。万人の万人に対する闘争ていうのはホッブスだったかな。あるいはロングウォークみたいに、自分以外は全員敵とも言える。」
「そんな場所で生け捕りにされたのは、同盟を組むためだと?」
「自分ならどうするか考えたんだ。そうしたら、結論は出た。」
「私にその意思があるとは限らない。」
「そちらになくてもこちらにはある。」

 強い。体から覇気は感じられないが、それを補ってあまりある意思の強さがこの男にはある。トバルカインはそう感じた。


「俺達は君達とも同盟を組みたい。」



 私は前にもこうしたことがある。つい六時間前だ。料理をつつきながら、同盟について話す。

「ちょうど昼を食べたいと思っていたんだ。」
「箸は使えるのかね?」
「店を変えようか?」
「ノープロブレム。」

 今私の目の前で丼屋ーー日本のファストフードの一つだーーの食券を買っている男、マイケル・スコフィールド。憎っきアメリカ人だ。私は彼とスーパーの中にあるレストランに来ていた。なに、深い理由はない。大の男が二人腰を据えて話そうと思えば、場所は限られる。私が吸血鬼であると明かさないためにもスーパーの中で落ち着ける場所を探したらここしかなかっただけた。

「数分で料理は来るみたいだな。ちょうどいい時間だ。」
「君のサーヴァントと会話する時間か?」
「それはさっきすませた。」

 やはり、少佐以外のまともなマスターは念話を使えるのだろう。私にはいったい彼がいつサーヴァントと話したのかわからなかった。まあ大した問題ではないのだが。

「ここにサーヴァントを呼ぶのかね?まだ来ていないようだが。」
「最近少し影が薄くてね。」
「アサシンか。怖いなこれは。」
「いや、アーチャーさ。」

 何気ない会話だが、彼の声からは緊張感が伝わってきた。当然だ、彼の目の前にいるのは、私なのだから。
 それにしてもアーチャーか。どうやら私はアーチャーに縁があるようだ、あの赤いアーチャーといい今度のアーチャーといい……

「赤いシャツにサングラスでね、彼は熱心に同盟を結ぶために、動いていたようだよ。」


 気がつけば私は手にトランプを出していた。


「朝、俺のところのアーチャーが世話になったらしい。礼を言うよ。」
「……一つ確認していいかね?」
「答えるべきだと判断すればなんでも。」
「この聖杯戦争……なかなかどうして狭いと思わないか?あるいは。」
「……経験則だがーー」

 私と彼の間、テーブルに立体的な料理が置かれる。ドンという音と共に初老の女性によって配膳されたそれは食欲をそそる匂いをもたらした。

 マイケルは一言、「ロングウォークじゃなくてランニングマンかも」とだけ言うと丼に箸を入れた。



【新都・警察署近くのスーパー店内の丼屋。/2014年8月1日(金)1224】

【マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ】
[状態]
点滴、魔力消費(極大)、精神的な疲労(大)、衰弱(中)、覚悟。
[残存令呪]
3画
[思考・状況]
基本行動方針
優勝を目指しているが‥‥?
1.他のサーヴァントなら……魂喰いしても……
2.伊達男(トバルカイン)を何とかする。
3.もう一度病院に潜伏するか、それとも……
4.予選と同じくキャスターとの同盟を狙うがあのキャスター(兵部京介)は……
5.アサシンのマスターはどこだ?
[備考]
●大手企業のサラリーマンが動かせるレベルの所持金。
●自宅は新都の某マンションです。
●予選の時に学校で盗撮をしましたが、夏休みということもありなんの成果も得られなかったようです。
●SEASON 2終了時からの参戦です。
●アサシン(千住扉間)、ランサー(真田幸村)達と同盟を結ぶました。
●日野茜への好感度が上がりました。
●ランサー(カルナ)の戦闘を目撃しました。
●アサシン(千手扉間)への好感度が上がりました。
●スマホにアサシン(千手扉間)が病院を出てから帰ってくるまでの映像があります。写っているのはランサー(カルナ)、ランサーのマスターのイリヤ、キャスター(兵部京介)です。
●魂喰いに踏み切る覚悟をしました。ただし、聖杯戦争の当事者である他の主従だけです。
●トバルカインのステータスを確認しました。
●アーチャーよりトバルカインの情報を聞きました。


【トバルカイン・アルハンブラ(-)@ヘルシング】
[状態]
筋力(30)/C、
耐久(20)/ D、
敏捷(30)/C+、
魔力(30)/C、
幸運(10)/E、
宝具(0)/-、
決意、実体化、裏表紙のノリへの耐性。
[思考・状況]
基本行動方針
この聖杯戦争で軍功を挙げ、意地を見せる。
1.ハメられたか?
2.最寄りの病院を襲撃しようと思ったが、まずはマイケルをなんとかする。
3.今度こそ軍功をあげてみせる。
4.病院で爆弾が見つかったらしいが……?
5.‥‥どうせなら葉巻を吸いたいな。
[備考]
●一応本編からの召喚ですが若干テンションがおかしいです。
マスターである少佐と視界共有を行えますが念話はできないようです。
●冬木大橋でのイリヤ&バーサーカーvsいおり&ランサー(with茜&ランサー、アサシン)戦を観戦しました。どの程度把握したかは不明です。
●トバルカインのマスター(少佐)とアーチャー(ワイルド・ドック)と三人で話しました。
最終更新:2016年08月10日 02:07