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 その人影は日傘を差した小さなものだ。

 狭い様で広い冬木市の、ほぼ同時刻、至る箇所で。
 その小さな影があまたの人々に観測された。
 時間にして一秒程だろうか。瞬きする間に現れて、瞬きする間に消えている。そんな影だった。

 その影に注意を払う人間はほとんどいなかった。皆自分のやるべきことで忙しいしのんきにしている者はただの目の錯覚などと自分を納得させた。

 唯一、その影のことを夜寝て朝起きて覚えていたのは、その影の頭に猫耳が着いていたことを一瞬のうちに目に焼き付けた、ごく一部の人間だけだった。



 喰らう。
 頬張る。
 貪る。

 形容する言葉は多様にあれど、高遠いおりがしていることは至極単純であった。

 すなわち食事。栄養補給。人間ならば欠かせぬ生理現象であり最も原始的な欲求の発露。
 れんげでリゾットをとり、吐く息で冷まし、舌の上におくと猛烈な勢いで咀嚼して炭酸飲料で飲み下す。この単純作業を狂ったように繰り返していた。


「おかわり!」


 叫びながら皿を掲げる。俺はもっと食えると。もっとこの料理を寄越せと。堂々と言動で誇示する。


「あんまり食べ過ぎると、おなか壊すよ。」


 言葉とは裏腹に、ランサー・アリシアは嬉しそうに皿を受けとると盛りつけた。
 彼女としてはマスターであるいおりの体調は大きな心配をもって注視していたが、この食べっぷりならば大丈夫だろうと判断できるものだ。そのペースはとても先ほどまで熱中症で死にかけていた人間のものではない。普通なら脳と胃か拒否して吐くであろうにもいおりはお構いなしに胃へと濁流のように叩き込んでいった。

 いおりから目を離すと、ランサーはちらりと鍋を見る。大人三人前分を作った気でいたがどうやら足りなかったようだ。既に半分を切っている。この勢いならば全て食べきってしまうだろう。
 しかしこれは困りものだ。この家には、野菜や魚などの生鮮食品はもちろんハムやバターなどの加工食材もほとんど無い。驚くべきことにパンは一つもなかった。カップ麺なる糧食のようなものはあったがそれでは一月を過ごすのは難しいだろう。なんとかして調達する必要がある。

 いおりががっつく音をBGMにランサーは考える。食事は大切だ。特にマスターは育ち盛りの子供、なんとかやりくりしなくてはならない。軍人とて一日食べられないだけでどれだけ悲惨なことになるか知っているだけに、ランサーは真剣に考える。街の外れに畑のようなものが見えたが、市場はどこだろうか?そんなことを考えているとシュワシュワという音が聞こえた。あのサイダーを注いでいるのだろう。病み上がりどころかまさに病んでいる人間が飲んでいいものとはランサーには思えないのだが、気付けのような効果があるのかもしれない。そのシュワシュワという音と共にれんげが皿を擦り頬張る音が聞こえた。なにも一辺にやらなくてもいいものを……


「熱、ちょ、熱い!?」


 さすがに注意しようとしたランサーの視線が、いおりの後で止まる。その視線を感じ、いおりもコーラを注ぎ終わると、キャップも絞めずに後ろを振り返った。


「ちょっと熱いんじゃないの?できたてだけあって美味しいけどさ。」


 猫耳を生やした軍服の小さな影ーーシュレディンガー准尉はそう言うと不敵に笑った。



 咄嗟にライフルを出そうとして、アリシアは踏みとどまる。謎の猫耳サーヴァントがいるのは、いおりの真後ろ。つまりこの状況、マスターを人質に捕られ盾にされている。そしてアリシアのとれる攻撃手段は、この場合ライフルしかない。本来ならばサイドアームを使いたい局面だがあいにく召喚されるに当たってオミットされてしまっている。手榴弾なら使えるがそんなものを使えばいおりどもども死んでしまう。宝具に至っては論外だ。

「賢明だね。」

 ニヤニヤと笑いながらいおりの頬を突っつくサーヴァントをランサーは睨む。この状況、完全にランサーのミスだ。
 追跡を受けている可能性はいくらでもあった。何事もなく目が覚めたことから幸運にも捕捉されなかったと思い込んでいたが、実はずっと見張っていたのだろう。なのにその目論見に気づくどころか警戒すらしていなかった。
 思わず伏せそうになる目を、力を込めて前へ向ける。冷静に考えれば、マスターを殺せるチャンスはいつでもあったのに殺さなかったことがわかる。この行動にも意味があるはずだ。

 だが。

 ランサーはいおりを見る。突然自分の後ろにサーヴァントが現れたのだ。遠くから戦っているのを見ていた橋とは違い、矢面に立つのはいおりである。それがどんな影響を彼女にもたらすのかわかったものではない。
 ランサーから顔を背けるように向いた横顔からは、感情を伺うことはできず、それがランサーの不安に拍車をかけた。

「服を着てもいいか?」

 ポン、といおりは固唾を飲んでランサーが見守るなかそんなことを言った。
 これにはランサーもサーヴァントも驚いた。まさかこの状況で服を着ようとするとは予想だにしなかった。

「ベネシュだってサインする時は格好をつけたはずだ。そうだろーー」

「ヒトラー・ユーゲントさん?」
「ーー君、話せそうだね。」

 サーヴァントが猫耳からイヤホンをとると懷からタブレットを取り出す。

 「直接話した方が早いね」と言いつついおりから離れると、顎で部屋の扉を差した。



「先程はこちらの大使が失礼した。食事中に、しかも半裸の状況とは、思いもよらなかったんだ。」
「次からは家に入るときは玄関からにしてほしい。おまけにコイツ俺のリゾットを食いやがった。」
「ハハハ、もっともだ。つまみ食いはいけないなあ。」
「えーだって美味しそうだったし。」
「准尉謝りなさい。」
「はーいすいませーん。」
「私からも謝ろう。後で菓子織りの一つでももっていかせよう。」
「いつ頃になりそうだ?」
「君が望むなら今すぐにでも。」
「それはいいな。」

 小学校の制服に着替えたいおりは、後ろにランサーを立たせるとタブレット越しにライダー・少佐と会話していた。
 場には、否応なく緊張感が漂い、湿っぽい日本の夏であるにも関わらず喉は乾燥していく。いおりは動揺を圧し殺すとコップにコーラを注いで一口含み、口中で転がした。炭酸の刺激が、強制力をもって覚醒へと導く。

「まどろっこしいのは無しによう。ライダー、こっちはダンツィヒを渡す気はない。」

 トンと音を立ててコップを置きいおりがキッパリと告げる。サーヴァントーー准尉ーーが来た意味を考えれば、最後通牒ではないはずだ。
 恐らく彼(?)は同盟を結びに来たのではないか?それがいおりの予想だ。いつの間にか背中をとったにも関わらずただ挑発するようなことだけをしたのは、その証明ではないか。それにご丁寧に着替えを待った。

 ようは、自分は試されているのだろう、と。

「面白いな。そうか、面白い。」

 啖呵を切ったいおりに、冷静にライダーは笑った。笑いながら同じようにコーラをコップに注ぐ。画面一面に広がる白い腹を揺らすと。

「それは教育の賜物か?」
「どういう意味だ。」
「君はやけに我々について詳しいと思ってね。嘆かわしいことに、君より十も二十も年上の人間ですら、我々のことをよく知らないという。全く民主主義には困ったものだ。信じられるかね?彼らは子供の挙手の方法まで変えてしまったのだ。まるでナチだな。」
「この国も似たようなものだ。国歌も歌わなければ国旗も掲げない。」
「その年で国を憂えるかね。」
「ただの普通の愛国者さ。それよりも早く本題を。」


「時間を無駄にした。では提案しよう、我々と同盟を「組もう。名前は枢軸でどうだ。」君凄いノリノリだな。逆に引くわ、まあいいけど。」


 間髪いれずというレベルではない。
 まさに食いぎみ、いや、食っている。
 いおりはライダーが『同盟』という言葉を発した瞬間、受諾。提案から一秒も満たぬ間に、ここにライダー&ランサーによる同盟『枢軸』が締結されたのだった。



「じゃあまた三十分後に来るんで。リゾット美味しかったよ。」

 その言葉を残してシュレディンガー准尉は消えた。時計の秒針がゆっくりと、刻む。その回数が百を越えたあたりで「テレビをつける」といっていおりは席を立った。
 どのチャンネルも冬木市を映していた。でかでかとテロップが踊り、空撮と思わしき映像もあった。

『アリシア。』

 テーブルに着くと、再びコーラを注ぎ、煽る。ザッピングしながら念話が始まった。

『やべえよあれナチだよナチ!思いっきり腕章してたし。それになんで猫耳なの!?ナチスで猫耳て属性盛りすぎじゃない!?』
『い、いおり!?どうしたのいきなり?』
『だってそれは、それはあの猫耳がまだ近くにいるかもしれないし。ていうかあんな奴等とシラフでやりあうのは無理だって!「陸軍は反対である」的なテンションじゃないときついって!』
『……凄い演技力ね。』
『かっこよくがんばったんだよ相手ナチスだし。あの猫耳の目同盟組まないって言ったら「働けば自由になれる場所行きな♪」て感じだったし。それとーー』
「なんでこんなにそこらじゅう爆発してんだよふざけんな!しかも爆破予告てなんだよ!自衛隊なにしてんだ!こういうときの防衛予算だろォ!!」



【新都・高遠いおりの自宅/2014年8月1日(金)1329】

【高遠いおり@一年生になっちゃったら】
[状態]
魔力消費(極大)、衰弱(小)、精神的疲労(中)、満腹、当分寝なくていい。
[残存霊呪]
2画
[思考・状況]
基本行動方針
死にたくないし死なせたくない。
1.ナチスはやべえって。
2.なんだこの爆弾騒ぎ!?
3.バーサーカーのマスター(イリヤ)が心配。
4.あの娘たち(茜と幸村)は逃げ切れたよな?
5.明日の正午、冬木ホテルに言ってアサシンと話す?
[備考]
●所持金はほぼなし。あっても幼稚園児レベル。
●ランサーの名前がアリシア・メルキオットであること以外は世界大戦の英雄だということしか知りません。もちろん出身世界が違うことには気づいてません。
●ランサー(幸村)、バーサーカー(サイト)、アサシン(扉間)、バーサーカー(ヘラクレス)のステータスと一部スキル、宝具を確認しました。
●シュレディンガー准尉のステータスを確認しました。
●ライダー(少佐)と同盟「枢軸」を組みました。1400に家にシュレディンガー准尉が来ます。その場で再度同盟について話します。


【アリシア・メルキオット@戦場のヴァルキュリア】
[状態]
筋力(5)/E、
耐久(5)/E+、
敏捷(10)/D+、
魔力(10)/C+、
幸運(50)/A、
宝具(40)/B
全身の至るところを骨折・打撲、魔力消費(大)、魔力不足によりステータス低下、魔力供給がほぼストップ。
[思考・状況]
基本行動方針
まだ良くイオリのことを知らないけれど、マスターを生きて元の世界に帰す。
1.ライダー達を警戒。
2.もっとイオリ(マスター)のことを知りたい。
3.できればランサー(幸村)とそのマスター(茜)にもう一度会って同盟を組みたい。
4.アサシン(千手扉間)とも話をしたい。
5.バーサーカー(ヘラクレス)とそのマスター(イリヤ)の安否が気にならなくもない。
[備考]
●マスターの本名が高遠いおりだと思っています。また六歳の女の子だと思っています。
●バーサーカー(ヘラクレス)に半端な攻撃(Bランク以下?)は通用しないことを悟りました。
●傷を若干治癒しました。
●現代の家電が使えるようになりました。



「ただいま~。いやー生きた心地しなかった~。あのランサー、目がSSだったよ。」
「御苦労准尉。これで更に同盟の輪が広まる。しかし……」

 少佐はふーっと、輪郭を緩ませた。

「やべえよあの幼女。普通の愛国者なんて言葉使うとかどんだけ教育されてんだよ。え?あんなん少佐知らないよ?少佐の知ってる日本と違うよ?」
「少佐、ベネシュて誰?」
「あ?あー、ええーと、確かチェコだかスロバキアだかの大頭領じゃなかったか?俺でも忘れてるような政治家ポンと出てくるとかアイツ何者だよ。てか准尉もこっちに振るなって。」
「それっぽいこと言ってるから適当に相槌打って少佐に廻せばなんとかなるかなって。」

 脂汗を流しながら会話する二人は、どんどん話を脱線させていく。適当になった絵面は暫く戻ることはないだろう。

「そういえば他に同盟相手いるって言ってなくない?」
「またすぐ行くんだからそのとき話しとけ。それよりさっきの偵察の報告をだな。」
「あんな一瞬じゃあ無理だって紫外線キツいし。」
「だから日焼け止め濡れっつってんだろ!」
「ベタつくからヤダ!」



【新都・冬木ハイアットホテル13階4号室/2014年8月1日(金)1329】

【ライダー(少佐)@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(5)/E-、
耐久(5)/ E-、
敏捷(5)/E-、
魔力(10)/E-、
幸運(5)/E-、
宝具(5)/E-、
健康、令呪使用により魔力倍増。
[残存令呪]
8画
[思考・状況]
基本行動方針
聖杯戦争を楽しみ、セイバー(アルトリア)を嫁にする
1.爆破予告で他の主従をあぶり出す。ルーラーはどのように動くか……
2.サーヴァントと交渉をしたいが……。
3.目的達成のためにルーラーを排除する策を練る。
4.マスター『も』楽しめるように『配慮』。
5.令呪を使った『戦鬼の徒』の召喚を試みたが‥‥まだ目立った変化は見られんか。
5.仮面ライダーにドラえもんか……
6.准尉にも指示をだす。場合によっては今日『最後の大隊』を出すか。
[備考]
●マスターと同等のステータス透視能力を持っています。
また、『戦鬼の徒』で呼び出したサーヴァントと視界共有を行えますが念話はできないようです。
●ライダー(五代雄介)の非変身時、マイティ、ドラゴン、タイタン、ライジングドラゴン時のステータスと一部スキルを確認しました。
また仮面ライダーであることを看破しています。
●ルーラーの特権の一つがサーヴァントへの令呪であることを確認しています。
他にも何らかの特権を複数持っていると考えています。
●セイバー(アルトリア)のマスターが遠坂凛であることを把握しています。
●令呪を使って『戦鬼の徒』を使用することで戦鬼の徒の宝具、スキル等を再現できるのではないかと考えており、召喚したトバルカインで実験するつもりです。そのために場合によってはドクの召喚も考えています。
またこの考えは外れている可能性もあります。
●予選期間中に他のマスターから令呪を多数強奪しました。
●出典が裏表紙なので思考、テンションが若干おかしなことになっています。少佐の周囲にいる人物も場合によってはおかしくなります。
●予選の間にスマホや現金を調達していたようです。
●ありすとのパスが深まりました。
●ランサー(アリシア)達と同盟「枢軸」を組みました。1400にシュレディンガー准尉を家に向かわせます。
●以下の怪文書が新都の警察署を中心にばら蒔かれました。




 冬木市のリトルボーイへ

 メリークリスマス!
 あわてんぼうのサンタクロースだ
 本当は6日に冬木大橋に、9日に冬木中央公園にプレゼントを届けようと思っていたんだが、日付を間違えてしまった
 かわりにたくさんプレゼントを用意したんだが、喜んでもらえたかな?
 なに?足りない?安心してくれ、まだあとプレゼントは7基ある

 冬木教会
 冬木ハイアットホテル
 冬木病院
 冬木中央図書館
 月海原学園
 穂群原学園
 マウント深山商店街

 今日の夜15時に届けにいこう
 そうすれば地上に太陽ができたときによくわかるだろう
 届けにいくまで良い子でいておくれ
 サンタクロースは恥ずかしがり屋なんだ
 家から出る子はお仕置きだ

 第三帝国のファットマンより

 p.s.
 親愛なるアルトリアよ
 私は君がほしい
 もし君に会えたなら
 プレゼントは君だけのものだ
 先の大戦で君はいつエミヤと会った?
 そこで私は待つ




 文字の背景には鉤十字が描かれています。最大で【破壊工作:A-】の効果を持ちます。


【シュレディンガー准尉@ヘルシング(裏表紙)】
[状態]
筋力(10)/E、
耐久(20)/ D、
敏捷(10)/E、
魔力(40)/B、
幸運(5)/D、
宝具(0)/、
魔力消費(微)。
[思考・状況]
基本行動方針
少佐と聖杯戦争を楽しむ。
1.リゾット美味しかったな……
2.1400にランサー達の家に行く。
[備考]
●冬木市一帯を偵察しました。何を目撃したか、誰に目撃されたかは不明ですが、確実に何人かの記憶に残っています。