円谷光彦は後悔していた。

後悔してもし切れない。
自分がもう少し冷静に物事を判断出来たなら灰原さんは死なずに済んだかもしれない。
彼女は痛みを感じずに逝く事が出来たかもしれない。

だが今となっては後の祭り。刻々と迫る不条理──〝死〟に光彦は恐怖した。
最初はあれだけ痛かった右腕も引き裂かれた腹の傷ももう痛みすら感じない。神経が死んで往く。
下半身の感覚が消える。開く瞳孔。必死に暴れるでなんとか取り戻した〝痛み〟。
口から溢れ出る血反吐。全身が硬直して行く。

死にたくない。ボクはまだ死にたくない。
許さない。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
あの男だけは許してたまるものか。必ず、どんな手段を使ってでも殺してやる。

悪魔さん。もし居るなら取引でも何でもします。魂を差し出す事になっても構いません。
だからボクに、あの男に果てしない絶望と痛み、〝死〟を与えられる力を下さい。

差し迫る死。あの男に殺されるくらいなら自分で死を選んだ方がマシだ。
光彦は辛うじて動く左手で、男が笑いながら投げ捨てた《それ》に手を伸ばした。
これを心臓に刺せば死ねるだろうか。痛くてもいい。痛みは自分が生きた証明になる。

(灰原さん……今逝きます……)

光彦は自分に遺された渾身の力で《それ》を心臓に突き刺した。
その瞬間、光彦は死に、そして〝生まれ変わった〟。



時間ほど前に遡る。

円谷光彦はニヤニヤと笑っていた。
無理もない。彼は今、自身の想い人である灰原哀と二人きりなのだから。

少年探偵団のみんなとサッカーを楽しんでいた光彦。江戸川コナンが繰り出す小学生とは思えぬテクニックに光彦は翻弄され続けた。おそらくコナンも遊び半分でやっているんだろう。
だが負けられない。何せ歩美ちゃんと灰原さんがボクの活躍を期待してくれているのだから。
自意識過剰な少年はコナンからボールを奪おうと必死。だが次の瞬間、サッカーボールは光彦の顔面に命中した。不運にも誤作動によって起動したコナンのキック力増強シューズ。大人の男をも一蹴で薙ぎ払う圧倒的な脚力によって穿たれるサッカーボール。
そんな物を真正面から食らった光彦がタダで済む筈も無かった。

目を覚ますと其処は病院では無く暗闇だった。
あれ?痛くないですね。光彦は顔を抑える。特に腫れてもいないし痛みも感じない。
だが次の瞬間、地面と正面衝突する光彦。自分の意思とは関係無しに跪く事となった光彦は、それまでの体勢が不自然だった為に凄まじい勢いで地面と激突したのだった。

そして現れる犯人───都城王土。
淡々と進められるルール説明。いつの間にか着けられていた首輪。鈍い音を立てて破裂する少女の頭部。
光彦は意外にも冷静だった。彼は異常者。小学一年生でありながら幾十もの死体を見て来た異常者である。何故か出掛ける先々で発生する連続殺人事件。最初こそ驚いていたが正直な話、光彦は死体慣れしていた。別に目の前で誰かが殺されようが表面上は驚くだけで内心は無心。

都城の説明が終わったらしく暗転する意識。感触的にポケットの中に入れた携帯電話は入ったまま。次に目が覚めたら速攻で110。もしくは博士の家に電話しよう。

しかし次に意識を取り戻した光彦のポケットの中に携帯電話は無かった。代わりに有ったのは無造作に投げられたデイパックだけ。主催者はボクに何か恨みでもあるんだろうか。

デイパックを拾って手を突っ込む光彦。もしかしたらこの中に携帯電話があるかもしれない。

「痛っ!」

光彦の指先に轟く痛み。何だこれ。光彦は指先に当たった突起物を掴んで取り上げる。
日本刀───それも鞘の無い日本刀。ダラダラと光彦の手から流れ出る鮮血。日本刀の刃先を素手で掴んだのだから当然の結果と言える。
もしかして本当に主催者はボクを虐めてるんじゃないだろうか。
激痛に耐えながら血を止めようとする光彦。だが包帯はおろか携帯電話すらデイパックの中からは見つからなかった。そもそもこの日本刀はどうやってこのデイパックの中に収まっていたんだ?
そんな疑問を抱きながら光彦はデイパックの中にあった紙───参加者名簿で止血を行った。所詮死体慣れしていても光彦は小学一年生。平仮名・片仮名は読めても漢字はほぼ読めない。ましてや初見で漢字に埋め尽くされた参加者名簿に対して良い印象を覚えなかった光彦にとって名簿は単なる紙でしか無い。

痛いけど我慢。携帯電話も探偵バッジも無い以上は助けを待つしかない。
溜息を尽きながら散乱したデイパックの品を整理する光彦。

「円谷くん?」

背後から響く少女の声。ものの数秒で光彦の目は輝きを取り戻す。
聞き間違える筈が無い。声の主は彼女だ。そうだ、どさくさに紛れて抱き着いてやろう。

「……は、灰原さぁ��ん!」

少女に飛び付く小学一年生・円谷光彦。ふわふわしてる。とても可愛い。
すぐに突き飛ばされたが数分ほど光彦の顔から万年の笑みは消える事が無かった。

「江戸川くん達は?一緒じゃないの?」

ハッ。まず聞く事がそれなんですか灰原さん!
まあそうですね。光彦も彼らの安否は気になっていた。
きっとコナンくん達ならサッカーで意識を失った自分に付き添ってくれる筈。そうなれば彼らも巻き込まれた可能性が高い。

「ボクは見掛けてません。そういう灰原さんもですか?」

「そうじゃなきゃわざわざ聞かないわよ」

可愛い。ムスッとしている。さっき抱き着いた事に彼女は怒りを感じているらしい。

自然と会話の流れは江戸川コナンらの捜索に切り替わった。歩み出す小学一年生達。
そして膠着。無言。空気的に謝るべきなのだろうか。しかし光彦はニヤける。

そんな時にヤツは現れた。
夜道の片隅に灯る明かり。火だ。そいつは焚き火をしていた。
光彦と灰原は警戒する。光彦には分からなかったが灰原には彼に見覚えがあった。しかし思い出せない。
2人の存在に気付いたのか二ィっと微笑む黒髪の男───〝絶対悪〟。

「坊や達、迷子かい?」

───悪魔はそっと優しげに囁いた。



男の名前は『アレクサンド・アンデルセン』と言うらしい。

確かに男は外国人だった。幸いにも日本語が話せるらしい。
そして参加者名簿にもアンデルセンの名前はある。
だが灰原哀は決して警戒を解かなかった。灰原の脳裏を駆け巡るは謎の既視感。
何処かで見た記憶があるのだ。まさか組織関係者かと思ったがそうとも思えない。

灰原哀に支給されたランダム支給品は『回転式の拳銃』と『古びた大きめの鉄釘』だった。
最悪、拳銃さえあればこの男から逃げる事は用意ではない。しかし問題はアンデルセンが『怪物』そして『超人』だった場合だ。そんな相手に拳銃如きで立ち向かえるだろうか。アポトキシン4869の服用によって小学一年生にまで若返ってしまった灰原にそれは不可能。たとえ実年齢の姿であっても厳しいだろう。
あと一歩で思い出せる。だが出て来ない。
ここは相手の手の内を伺って様子見と行こう。

「読むかい?そろそろ程良く温まっている筈だよ」

先に動いたのはアンデルセン。彼曰く自分の支給品は『10本の缶ココア』と『鉄鍋』であり、鉄鍋に共通支給された飲料水を注ぎ沸騰させた上で缶ココアを温めていたらしい。貴重な飲料水を丸々一本使って温めていたと言うのだから驚きだ。
確かに其処にあるのは何の変哲もない缶ココア。立ち上る湯気。

「じゃあお言葉に甘えさせて!」

「待ちなさい」

光彦を止める灰原。彼を信用しゆるだけの条件は揃っていない。もし缶ココアの中に毒物でも入っていたらデッドエンド。
灰原哀はいつも以上に慎重だった。それは当然。何せ参加者名簿にあの男の名前があったのだ。
『ジン』───黒の組織の逃亡者・宮野志保を追う幹部格の男。漆黒の追跡者。
彼と鉢合わせしては不味い。幸いにも名簿には『宮野志保』では無く偽名の『灰原哀』の名が刻まれていたが鉢合わせしてしまっては発覚するのも時間の問題。
その恐怖こそが灰原哀を及び腰にする最大要因足りえたのだ。

「まずはアナタが飲んでくれないかしら?」

灰原は揺れる鉄鍋の中の1本を指差し、アンデルセンに試飲を要求する。
こちらが指定した上で毒見させる。これなら仮に毒が混入していたなら一瞬で判断が付く。

「ああ、いいとも」

男は不気味なまでに妖艶な笑みを浮かべて、少女が指さした缶ココアの蓋を開ける。そして一口。ゴクンという豪快な音を立てて動くアンデルセンの喉。

「日本のココアって美味しいんですね」

変化は見られなかった。遅効性の毒薬だったとしても、それを支給された当人が口にする事自体支離滅裂。まずアンデルセンには躊躇いが無かった。

「ちょうど喉乾いてたんですよ��」

ココアに手を伸ばす光彦。どうしてこうも能天気で居られるのだ。
呆れながらも灰原もココアを手に取った。

「では乾杯、と行きますか。日本でもやりますよね?」

「はい!」

陽気な光彦。これが彼なりのアピール。
江戸川コナンに勝てる要素が1つも無い円谷光彦が出来る最大限のアプローチ。自己主張。

「かんぱぁ��い!」

滑稽。光彦の掛け声の元、乾杯が成され、全員が全員ココアを口に含む。
今思えば、これが最大の失態。アンデルセンを名乗るあの男が『ココアを飲んだ』と誤認した事こそが灰原哀の傲りだった。

灰原哀は知らない。彼の名はアレクサンド・アンデルセンでは無く『ゾディア・キューブリック』───『シックス』だと言う事を。
彼が悪意の権化、先祖代々〝悪意〟だけを増長させて行き、遂に人間を超越した第六の存在となった正真正銘の『怪物』である事を。

缶ココアに混ざっていた即効性の睡眠薬。倒れ行く灰原はようやく既視感の正体に気付く。彼は組織の取引相手の1人───世界的兵器メーカー〝ヘキサクス〟の会長その人だったという事に。

遠のく意識。口に含んだ〝2回分の〟液体を吐き捨てるシックス。
灰原哀は見た。無邪気に微笑む男の笑顔を。
次の瞬間、少女の意識は暗転した。



激痛で円谷光彦は目を覚ました。

右脚から流れ出る鮮血。その先に居たのはアンデルセンさん。彼の手には血に汚れた日本刀が握られている。
手は後ろで何かが雁字搦めになっているせいで動かす事も出来ず、叫ぼうにも口に猿轡を咥えさせられ、まともに声すら上げられない。
自分のすぐ横には同じように猿轡を付けられ、拘束される灰原の姿もあった。彼女の脚にも�碾い切傷が遺されている。

「お目覚めのようかな?」

絶対悪は日本刀の血を振り払いながら笑いかける。
彼の服からは袖の部分が無くなっている。光彦は気付く。自分の手に巻き付けられているそれの正体はヤツの袖だ。生地は薄い。思いっきり�燧けば破けるんじゃないか?
灰原にもそれが巻き付いている事を確認して光彦は、何とか引きちぎろうと�燧くが一向に外れる気配は無かった。

「無理だよ。絶対に解けないように結んでおいた。
だって逃げられたら面白くないだろう?
だからキミ達2人の片脚の腱を切っておいたんだ。
これでもうキミ達は逃げられない」

�燧けば�燧くほど溢れ出る血液。駄目だ。殺される。
過剰分泌されるアドレナリン。その恐怖が彼の血行をより活発なモノとして行く。

「キミ達に1つちょっとしたゲームをやって欲しいんだ。
無事勝てれば解放してあげる。約束するよ。
負けた場合は……。キミ達にでも分かるよね?」

殺される。ゲーム?嫌だ。ボクは死にたくない。
端から負ける事を前提に考える光彦。
そんな彼に悪魔は建設的且つ残忍なルールを呟いた。

「すぐ其処に拳銃がある。キミ達のデイパックから失敬させてもらった支給品だね。
弾丸は1発だけ込められている。

───先に片方を撃ち殺せた方が〝勝ち〟だ」

光彦には突き付けられた現実が理解出来なかった。
灰原さんを殺す?そんなの無理だ。嫌。絶対に嫌。

「あくまでも〝片方〟だからね。
別に最初に拳銃を取って自殺してくれても大いに結構。と言うか拳銃なんか使わなくてもいい。
まあその拳銃を私に突き付けるという選択も歓迎するがタダでは済むと思うなよ?」

死にたくない。灰原さんも殺したくない。
誰も殺したくなんかない。この男───アレクサンド・アンデルセンは狂っている。今まで出会った数多の犯人の中でもトップクラス。そうとしか言いようがない。

「まずはゲーム前の所信表明と行こうか!
最初は威勢のいいキミからだ」

猿轡を外される光彦。その頃には出血もだいぶ収まり、少年には冷静な思考が戻りつつあった。

「…ど、どうして!どうしてこんな事するんですか!?」

「決まってるだろう?単なる〝暇潰し〟だよ」

人間とは思えない。常軌を逸している。

「だ、誰か助け────」

決死の思いで叫ぼうとする光彦。しかしその声は痛みによって書き消された。
振り下ろされた日本刀。その刃は光彦の左脚の親指を切断していた。

「次から喋る度に1本ずつ指を切り落とす」

「あああああああああああああああ」

悲鳴。それはアキレス腱を斬られる痛みとは雲泥の差。到底、小学一年生に耐えられる痛みでは無かった。

「1本目」

切断される人差し指。
堪える。真っ赤に充血する眼球。光彦は耐えた。
失禁。痛みから溢れ出る汚水。
しかし斬られる3本目・中指。

「あぁ、手が滑った!」

露骨なオーバーリアクションと共に切り落とされる薬指。とうとう残るは小指だけとなってしまった左脚。
しかし光彦は耐えた。殺されたくないというその執念が光彦に声を上げさせなかったのだ。
跳ね上がる脈拍。一度は止まりかけた右脚から再出血。荒がる呼吸。微かに上がる唸り声。

「偉い偉い。大した根性の持ち主だねキミ。
じゃあ次はお嬢ちゃんの番だね」

続いて外される灰原哀の猿轡。

「───ふざんじゃないわよ」

「え?なんて?」

「ふざけんじゃないわよッ!
アナタ何様のつもり?人の命は尊いモノなの!
決してアナタのような悪党が弄んでいいようなモノじゃない!
必ずアナタは罰を受けるわ!近い将来必ずね!
せいぜい覚悟しておく事ね、小悪魔さん!」

灰原哀の熱弁。どの道助からないと悟ったからこそ口にした科学者として、人間としての真言。
彼女もまた生命の循環から外れた存在───アポトキシン4869の服用で若返ってしまった『怪物』である事に相違なかった。



「……気が変わったよ」

何処か暗そうな表情を見せる絶対悪。男は日本刀で光彦の両手に巻き付いていた布を斬る。
拘束が解かれた!助かった!
押し寄せる痛みの中、何処かで安堵する光彦。

次の瞬間、灰原の首筋が斬られた。




「別のゲームをしよう」

悶え苦しむ灰原の姿を尻目に絶対悪は口を開いた。
一瞬で光彦の足元にまで達する灰原の鮮血。出血量が尋常でない。自分の傷とは比になっていない。

「あそこに拳銃が置かれている。さっきも言った通りだが弾丸は1発のみ。
キミはそれを〝自由〟に使うといいさ」

「え……」

「ただこれだけは言わせてくれ。
そこにいる彼女。私は極限まで苦痛を味わってから死ねるように調整して斬っておいた。
確実に助かる事は無いだろうし、彼女に〝安らかな死〟を与えるというのも選択肢にはある。
尤も、ここで私を撃ち殺すというのも手だがね。
その場合、彼女は苦しみ抜いた果てに死ぬ事になるけど」

悪魔。この男は悪魔だ。
そうじゃなきゃ、こんな惨たらしい事は出来ない。
きっと反論は許されないんだろう。光彦は小指しか無い左脚を懸命に動かし、匍匐前進で灰原哀の支給品『ニューナンブ回転式拳銃』を手に取った。

銃口を向けるは悪魔だ。この男だけは生かしておいてはならない。コナンくん達が同じ憂き目に遭ってしまうかもしれない。
震える光彦の手。今の極限状態にある彼なら人殺しをも厭わないだろう。
しかし苦痛の声が光彦を困惑させた。鬼の形相で首を抑える灰原。その手からは抑えきれなかった血液が噴水のように溢れ出ている。

「……こ……ろし……て」

引き裂かれた喉で必死に叫ぶ擦れた灰原の声。
震える銃口は男から灰原へと向けられる。

「ああああああああああああああ」

光彦にはどうする事も出来なかった。
殺せない。灰原さんを殺せるワケが無い。
痙攣。灰原は今も尚苦しんでいる。その生き地獄から救えるのは自分しか居ない。
引き金に手を掛ける光彦。

「出来ません……。ボクには出来ない……」

半狂乱。泣きながら拳銃共々肩を落とす光彦。
そして灰原は動かなくなった。その死に顔は光彦を恨めしそうに睨んでいた。


【灰原哀@名探偵コナン 死亡】


「あーあ、時間切れだ」

拳銃諸共斬り捨てられる光彦の右腕。悲鳴が暗い森の中に轟く。

「彼女の蛮勇──勇気に称して、キミだけは解放してあげるよ。
でもその傷、その出血量ならもう長くは持たないだろうがね」

ようやく終わった絶望の時。だが光彦の心に淀むは自責の念だった。灰原の死に顔。彼女はきっとボクを怨みながら逝った。

「あ!そうだ、特別にキミに〝サイン〟をプレゼントしよう!」

瀕死の光彦を蹴り倒し、彼の腹部に日本刀を突き立てる絶対悪。光彦は�燧くが顔面を踏み付けられて声が出せない。

「そう言えば私の名前を伝えていなかったね。
実は『アレクサンド・アンデルセン』は偽名なんだ。名簿に有った名前をただ騙っただけ。
本当の名はね……」

日本刀で抉られる光彦の腹部。そこには〝6〟という数字が深々と彫り込まれていた。

「───『シックス』って言うんだ」



「大丈夫。心臓(キュウショ)は外しておいたから。
あと10分、いや5分くらいは持つと思うよ」

日本刀の血を振り払うシックス。シハシハという不気味な笑い声を上げながら右腕だった肉塊から拳銃を取り上げた。
そして男は灰原のデイパックの中にあった《それ》を投げ捨てる。

「《釘》、かな?
頑張れば自決に使えるかもしれないよ?」

光彦の目には生者の輝きが無かった。
新たな余興が見れるかもしれないと期待していたシックスは残念そうに光彦の死体を蹴り上げ、反応が無い事を確認してから、その場から立ち去っていった。



【B-3/一日目/深夜】

【シックス@魔人探偵脳噛ネウロ】
[状態]:愉悦、更なる渇望
[首輪ランク]:怪物
[装備]:日本刀@現実
[道具]:基本支給品一式×3(飲料水1人分使用)、睡眠薬入り缶ココア×7@現実(オリジナル)、鉄鍋@現実、猿轡×2@ジョジョの奇妙な冒険5部、ニューナンブ回転式拳銃とその弾丸×4@現実
[思考・行動]
基本方針:今ある環境(殺し合い)を最大限楽しみ、飽きたら主催者を抹殺して生還する
0:愉しめそうな壊し甲斐のある玩具(参加者)を見つける。
1:一応は信頼を置く葛西善二郎と合流する。
2:ネウロの相方(桂木弥子)は最大限まで嬲ってから殺す。彼女によって罪を暴かれ投獄中の筈のアヤ・エイジアも同様に殺害する。

※参戦時期は脳噛ネウロとの対談以降。
※名簿にあったアレクサンド・アンデルセンの名前を騙っています。
※灰原哀の首輪を回収していない為、首輪はそのまま放置されています。
※円谷光彦の首輪共々回収するつもりはありません。



円谷光彦は生きていた。

〝それ〟を『円谷光彦』と定義する事自体間違っているのかもしれないが、彼は確実に生きていた。
傷痕からは茨が飛び出て、右手に至っては完全に再生している。

光彦が心臓に突き刺した釘の正体は『エレナの聖釘』と呼ばれる先人が遺した聖遺物だった。
ヴァチカンが所有する最大の切り札。それは第二次ゼーレヴェ作戦で使用され、シックスが騙ったヴァチカン最高戦力アレクサンド・アンデルセンが心臓に突き刺す事で怪物化し、王立国教騎士団ヘルシング機関が誇る最強の吸血鬼アーカードを死の直前にまで追いやった代物。

だが光彦の身体はアンデルセン神父ほど強固なモノでは無かった。所詮、円谷光彦は小学一年生なのだ。
彼は聖遺物に呑み込まれた。光彦だったその怪物の脳裏を渦巻くのは果てしない〝破壊衝動〟だった。
シックスを殺したいという純粋無垢な憎悪がその衝動に拍車を掛ける。

〝茨の怪物〟に成り果てた『円谷光彦』だったその生物は、咆哮を上げながら絶望の道を走り去って行った。


【B-3/一日目/深夜】

【円谷光彦@名探偵コナン】
[状態]:暴走、エレナの聖釘による肉体強化(全身から茨)、シックスに対する殺意(極大)、果てしない破壊衝動
[首輪ランク]:人間
[装備]:エレナの聖釘(心臓と融合)@HELLSING
[道具]:なし
[思考・行動]
基本方針:皆殺し (暴走)
0:如何なる犠牲を払ってでもシックスだけは殺害する。

※エレナの聖釘を心臓に突き刺した事で原作におけるアレクサンド・アンデルセン同様に茨の怪物に成り果てました(それまでに負った傷も全て完治している)。
※アンデルセンとは異なり身体が怪物化に着いて行けておらず、破壊衝動に呑み込まれて暴走してしまっています(灰原哀を救えなかったショックも要因の一つ)。
※シックスを認識する器官が機能停止状態にある事や上記の破壊衝動が影響で、自分の真意とは関係無しに人を殺す皆殺し目的の殺戮マシーンに成り果てました(たとえ相手が江戸川コナンでも、それを認識する器官が無い以上は破壊衝撃に呑まれて彼をシックスと誤認して殺しに掛かる)。
※ダメージこそ蓄積されますが再生能力が大幅に向上しており、心臓を破壊されない限りは死にません。

GAME START シックス
GAME START 灰原哀 GAME OVER
GAME START 円谷光彦

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最終更新:2016年08月06日 00:08