「けものフレンズプロジェクトA」公式声明の疑問点

声明の概要

「けものフレンズプロジェクトA」(以下KFPA)は
2017年9月27日午前0時過ぎに、「けものフレンズ」映像化プロジェクトに関する重大な声明を発表した。
一部語句を借りつつ要約すると
  • 実際のアニメーション製作を担当していたヤオヨロズ(株)が"8月に入った段階で辞退したい旨を受け"、KFPAは"制作体制を一から模索"している。
  • KFPAはヤオヨロズ社が辞退したいと述べた理由について、「ヤオヨロズ社には"関係各所への情報共有や連絡がないままでの作品利用があり" "情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ"を行ったが、ヤオヨロズ社からは"その条件は受け入れられないので辞退したい"」と発表している。


疑問点の列挙

  • "ヤオヨロズ社辞退希望"の疑問
  • "情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ"の疑問
  • 時期の疑問
  • 声明自体の疑問

ヤオヨロズ社辞退希望の疑問

KFPA声明を額面通りに受け取った場合、まず次のような解釈と要約が可能となる。
  • ヤオヨロズ社は情報共有を行わずに作品を利用しており、今後の情報共有の正常化という条件を受け入れられずヤオヨロズ社は辞退したいと述べた
更に噛み砕いて言うと
  • 「①これまで事前連絡なしに作品使いました、②今後も事前連絡なしに作品使います、ダメならプロジェクトから降りますね」という主張をヤオヨロズ社が行っている
と受け取ることが可能になるのだが、この解釈は後述する理由により高確度で否定される。


これまで事前連絡なしに作品を使ったか?

表面化した事柄のうち、①に該当しうる事柄はひとつだけ。
2017年4月5日にたつき氏によって発表された「ばすてき」
である。しかしこれも事前に許諾を取っていることが判明しており、①の事柄には該当しない。
当然、表面化していない事柄について「事前に連絡を行っていなかった」可能性は存在するが、声明が実際にどの事柄について指しているか述べていないために無為に主語が拡大し、日清やJRAが声明を発表する異例の事態となっている。

今後も事前連絡無しで作品を使う意思を貫こうとしている?

また②については以下の点から疑問視される。
  • ヤオヨロズ社とたつき氏の姿勢
  • ヤオヨロズ社にとっての『けものフレンズ』コンテンツの比重の大きさ
ヤオヨロズ社に所属するたつき氏は2017年8月11日にコミックマーケット(C92)、また2017年8月22日にコミティア121にて「けものフレンズ」に関する同人誌を頒布しているのだが
この同人誌にはKFPAの許諾の証であるコピーライトが捺されている。
また2017年8月には『けものフレンズ』とJRAとのコラボ映像「けいばじょう」が、9月には『日清のどん兵衛』のコラボ映像「ふっくら」
公開されているのだが
それぞれ「3月の企画段階から正規のライセンス窓口であるKADOKAWAを通じてKFPの許諾を得て」、「6月の企画段階からKFPと連携の上」である旨が、2017年9月27日に各ウェブサイト上に掲示された。
つまりこれら表面化した事柄から判断すると、②「今後も事前に情報共有を行う意思がない」と論じることが難しくなるのである。

更に一般的な観点からみて「事前連絡という容易に遵守可能であろう条件をヤオヨロズ社が受け入れられない」とは考えにくい。
ヤオヨロズ社にとっての「けものフレンズ」は単なる1成果物ではなく、会社の顔ともなりうる大きな実りを秘めたコンテンツなのである。それを「事前連絡を行う」というコンプライアンスレベルの条件を破りたいがために手放すというのは非常に考えにくいのである。


つまり
「これまで事前連絡なしに作品使いました、今後も事前連絡なしに作品使います、ダメならプロジェクトから降りますね」という主張をヤオヨロズ社が行っている
という解釈は、高い確度で否定される。

"情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ"の疑問

この声明が正しいと仮定して先述の解釈が不適であるならば、ではどのような解釈を行うのが妥当なのか。

結論として先の声明の中で最も不明瞭な文言は"情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ"であり、この部分の解釈に焦点が当たることとなる。
例えば「情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ」とは単に「事前に連絡を行う」といったコンプライアンスレベルの行動を促すに留まらず、互いの利害折衝に触れる申し入れであったとするならば、ヤオヨロズ社が辞退することもありうるといえる。
当然「利害折衝に触れる申し出」がなされたか否かは公式声明がない現状(2017/09/28)では憶測でしかないが、声明を額面通りに解釈することは前述の理由から難しいため、この辺りの詳細な説明を引き出すことが事態進展の大きな鍵となるのは間違いない。

時期の疑問


仮に声明が正しいとすると、KFPAは「8月にヤオヨロズ社が辞退したい旨」を受け「制作体制を模索」していることをコラボ先企業に説明する必要があると思われる。
しかし先述したように日清からの声明は「制作体制変更に関しては、事前に知りえない情報」としている。
日清の声明が正しいとすると、KFPAは本来、「ふっくら」コラボ期間(少なくともコラボ効果が持続するであろう初動数週間)中には日清に説明する予定がなかった、と捉えることができる。
ある程度推測できたものの、これでほぼ確定的に「KFPAの公式声明は、緊急的に(本来の発表予定より大幅に繰り上がって)発表されたものである」といえるだろう。
本来の予定ではいつごろ日清に説明を行うこととなっていたのかは不明だが、日清らコラボ企業に内内に説明→対外的に声明発表が正当な順序と考えると、最悪数か月以上予定が繰り上がった可能性も存在する。

声明自体の疑問

額面通りの解釈が難しいだけでなく、この声明自体にも疑問点が存在する。
  • そもそもこの声明にある内容は事実なのか
  • この声明はKFPAの総意なのか

そもそもこの声明にある内容は事実なのか

額面通りの解釈を行うのが難しい、という時点で公式声明としての信用度が下がるのは印象として自然であるが、これもまた現状で判断するには材料が少なすぎると言わざるを得ない。

この声明はKFPAの総意なのか

2017年9月28日、KFPAの協賛企業のひとつであるテレビ東京(以下テレ東)が定例会見の中で(けものフレンズのヤオヨロズ辞退に関して)

私ども制作委員会の一員でありますので、制作委員会がすでにコメントをお出しになっております。これを超える私ども、あるいは私個人の見解は差し控えるべきかと思っております
としつつも
全国、あるいは世界多くのファンの皆さんとまったく同じ思い
何とか将来、すでに発表されているような第2弾ができるよう、いろんな形で模索していければ
との声明を発表した。


これはつまり先述の「KFPAからとされる声明」は、KFPAの総意ではないことを表明するものと捉え得る。
少なくともテレ東はKFPA内でヤオヨロズ社の離脱を留めようとした立場であることが明らかになった。

つまり何が問題なんだってばよ??


この声明が事実を捉えたものだと仮定すると
つまるところ事の顛末は「テレ東およびその他協賛企業(どの程度の企業がその立場かは現状不明瞭)がヤオヨロズ社を留めようとしたにも関わらず、その総意たるKFPAは謎の"情報は事前に共有してほしい旨の正常化を図る申し入れ"をヤオヨロズ社に提案し、ヤオヨロズ社はその"申し入れ"を受け入れがたいがために辞退したいと述べた」となる。
一番の問題は、"申し入れ"の内容が現状明らかにされていないことであり、これが詳らかにされることこそ、たつき氏の無念さをひしと感じるツイートの真相に迫る第一歩である。
最終更新:2017年09月29日 19:49