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LOVE DELUXE - (2017/08/28 (月) 12:54:23) のソース

**LOVE DELUXE◆j0K3675zFI 

◇◇◇


『あの、ママ……』


何となく目が覚めてしまった夜中の出来事。
その日のママの後ろ姿を今でも覚えている。
空っぽで、ちっぽけで、どこか物悲しかった。
その日のママの横顔を今でも覚えている。
苛立ってて、怒ってて、そしてどこか悲しそうで。
幼い僕は、不安で仕方無かった。
何かが変わってしまったということを、何となく察してしまった。


『なに……してるの……?』


ママは物置の部屋で、黙々と何かを破いていた。
僕の質問に答えることも無く、何度も何度も。
ママは俯き気味に『それ』を破き続けていた。
僕は『それ』に見覚えがあった。
否、覚えていて当然だった。


『ママ、それ……!』
『ツボミッ!!いいから寝てなさい!ママは忙しいのよ!ママは……!』


ママは、すごくつらそうで、悲しそうな顔をしていた。
そんな表情で、何度も何度も『写真』を破っていたのだ。
僕は驚いたし、怖かった。
ママが破っていたのは――――――――パパとの写真だったのだから。
幼稚園の入園式の時の写真。
家族で遊園地に行った時の写真。
『久しぶり』に家に来てくれた時の写真。
ママが破り捨てていたのは全て、パパが一緒に写っていた家族の写真だった。

何でこんなことしてるの?
何でパパとの写真を破ってるの?
何でそんな酷いことするの?
その時の僕は、混乱するばかりだった。
どうしてパパとの思い出を破ってしまうのか、わからなかった。
だから僕は、怖かった。



『だめだよ、ママ!そんなこと、だめ……!』



止めなくちゃ、と思った。
やめさせなくちゃ、と心から感じた。
だから僕は、ママにしがみついた。
でも、ママは。



『うるさいっ!!!ママの言うことを聞きなさい!!!』



ママは、僕を強引に振り払った。
右腕を思いっきり振るって、僕の頭をガァンと叩いた。
僕は堪らず、尻餅を突いた。
頭の痛みがじんじんと響いて、そしてママから叩かれたことが悲しくて。
気が付けば、くしゃくしゃになって泣きじゃくっていた。

そんな僕を見て、ママはハッとしたような顔をして。
そして、凄くつらそうな表情を浮かべた。
でも、複雑な面持ちのまま顔を背けて、僕にこう言った。


『……今日はもう、寝なさい……ツボミ……』



僕はただ、泣きながらこくこくと頷くことしか出来なかった。
ママから逃げるように寝室へと向かった。
何が起こっているのかも解らなかったし、どうしてこうなったのかも知らなかった。
その時の僕はただ、とにかく不安で、怖かった。



そんな僕の恐怖を裏付けるかのように。
その日から、パパとは会えなくなった。


◇◇◇
◆◆◆


やっほー、久しぶりー!
改めまして、僕の名前は郷音ツボミ!
ごーね!☆って呼んでね♪

さて、売れっ子アイドルでボクっ娘のカワイイ僕なんだけど。
どういうわけか、あのナオ=ヒューマとかいう男に拉致されちゃったんだ。
しかも『最後の一人になるまで殺し合え』とか言われちゃう始末!
つまり僕はバトル・ロワイアルの参加者に選ばれてしまったのです!
まあ、だから、その―――――――


「………はぁ」


――――――そんなふざけた催しに巻き込まれたら、溜め息の一つや二つ吐きたくなるよね。
勿論、最初はペテンかドッキリだと思ってた。
いきなりこんな大人数を集めて『殺し合え』だなんて言われても現実味がない。
でも、僕の目の前で二人の人間が確かに死んでいた。
あれは作り物にしては生々し過ぎたし、僕の前に飛んできたのはどう見たって本物の眼球だった。
色々とツッコミたい所もあるのだけれど、これがペテンでは無いのは確か。
これで後になって『ドッキリです!』とか言われたら悪趣味過ぎて怒りたくなる。
きっとこれは、本物。
そして殺し合いは、本当に起こる。
僕は半ばそう確信していた。


木製の座席に座っていた僕は周囲を見渡してみる。
ここはどうやら、建物の中らしい。
如何にも田舎の観光協会って感じの、しょぼくてこじんまりとした施設だ。
『沖木島観光ガイド』だの『沖木島の海の幸紹介』だのつまんなそーなパンフレットやポスターも見受けられる。
こんなとこ、観光でも来る人がいるんだろうか。
僕だったら絶対来ないな。
すっごいつまんなそうだし。
そんな失礼なことを考えながら、僕はこれからのことを考える。



『優勝者は家に帰してやるし、願いがあるなら一つだけ何でも叶えてやろう』



あのナオ=ヒューマとかいう男はそう言っていた。
あいつの手に掛かれば死者蘇生だろうと、記憶消去だろうと、大金や名声だろうと、何でも叶ってしまうらしい。
正直言って、かなり胡散臭いとは思う。
そんなことが出来たら魔法とか異能とかそういうレベルじゃない。
それはもう神なんじゃないかと僕は思うし、幾ら異能があってもそこまでのことが出来るのだろうか。
それに例え本当に叶えられる力があったとしても、受け付けてくれるのはあいつにとって都合のいい願いだけだと思う。
『殺し合いを無かったことにしてくれ』とか『この殺し合いの犠牲者を生き返らせてくれ』なんて言って、あいつが叶えてくれるか。
きっと拒否されるだろうと、僕は思う。
それが罷り通るんなら殺し合わせる意味なんて無くなるし。
まあとにかく、僕はあいつがちゃんと願いを叶えてくれることに関してかなり懐疑的なのである。



でも。
それでも、僕は思う。



(………死にたくはないよ。まだパパに会えてないもん)



殺し合いで願いが叶おうと、叶わなかろうと、僕は生き残らなくちゃいけない。
だってまだパパに会えていないのだから。

それは数年前―――――と言っても、実際は十年近く前のこと。
僕のパパはいなくなってしまった。
ある日忽然と蒸発してしまった。
思えば、パパはよく家を空けていた。
普段は家にいなかったし、時折しか帰ってくることはなかった。
よくだらしないスーツを着ていたけど、パパが外で何をしているのかは解らなかった。
でも、そんなことはどうでもよかった。

さっきも言ったように、パパは時折帰ってきて。
そして僕を可愛がってくれた。
僕を目一杯愛してくれていた。
休みの日に帰ってきた時には、公園や遊園地に連れて行ってくれたこともあった。
不定期にしか会えなかったけど、それでもパパの温もりはしっかり覚えていた。
短い時間の中での関わりだったからこそ、僕の中でパパの存在は大きくなっていたんだと思う。
僕はパパのことが大好きだった。
パパもきっと僕のことを愛していた。
でもパパは僕の前から消えてしまった。
今となってはパパの顔も殆ど忘れてしまったのが、無性に悲しい。
時間と共に記憶は薄れ、破り捨てられた写真と共に思い出はセピア色に蝕まれた。

ママは何も言わなかった。
どうしてパパが帰ってこないのか、何一つ教えてくれなかった。
どうしてパパとの思い出の写真を全て破り捨てたのか、理由なんて言ってくれなかった。
聞いてみても暗い表情で誤摩化されるばかりで、時には怒鳴られることもあった。
僕は、そんなママが憎かった。
パパのことを教えてくれないママが心底嫌いだった。

だから僕は飛び出した。
そして僕はスカウトを切っ掛けにアイドルになった。
何故スカウトを受け入れたのかって?
そんなの決まってるじゃない。
人前に立って目立てる世界にいれば、パパもきっと僕に気付いてくれるって思ったから!

あのナオ=ヒューマとか言う男が本当に願いを叶える力を持っているのかは解らない。
もしかしたら本当に願いを叶えてくれて、パパと再会できるのかもしれない。
でも、そうでなかったとしても、僕はこのまま死ぬのなんて御免だ。
どっちにせよ、生きて帰れなくちゃパパには会えないんだから。
お歌やダンスのレッスン、枕営業、お偉いさんやファンとの関係を使った根回し。
あらゆる手段を使ってアイドル業界を駆け上がったのも、パパに気付いてもらうため。
死んでしまえば、それさえも水の泡になる。
そんなの、絶対にイヤ。



(生き残るよ、僕。パパのために……パパとまた会うために!)



だから僕は決意した。
この殺し合いで、絶対に優勝してやるって。
どんな手段を使ってでも、必ず生きて帰ってやるって!


さて、と。
その為にはまず、支給品とかを確認しないと。
今はまだ自分の異能すら何なのか解っていないのである。
この場に『熱狂的なファン』はいないし、枕営業で頼み事を聞いてくれる『都合の良い権力者』もいない。
つまりまっさらな状態で立ち回らなくてはいけないのだ。
出来ることなら適当なお人好しを掴んで、漁父の利とかそういうのを掴みたいのだけれど……


「……これ、なんだろ」


その時、ふと気付いた。
僕の首に奇妙なペンダントが掛けられているということを。
まるで宝石か何かのような結晶で、集音マイクのように見えなくもない。
勿論、こんなアクセサリーを身に付けていた覚えはない。
もしかすると、これが異能に関する道具なんだろうか?
そう思っていた矢先。



「……あの、誰かいますかね?」


入り口の扉が軋む音。
そして、男の人の声が聞こえてきた。
僕は咄嗟に身構えてそちらの方へと向く。



「ああ、いや、自分は別に怪しいもんじゃないですよ」



入り口から入ってきたのは、中年の男の人。
スーツやネクタイに身を包んだ、いかにもサラリーマン風の格好と言った所。
だけどネクタイは変に曲がってるし、スーツも皺が目立ってる。
正直言ってだらしないというのが最初に抱いた印象である。
顔立ちはそれなりに端正だけれど、猫背気味の姿勢でやっぱりだらしなさを感じてしまう。
そんなだらしなさそうな男の人は、両手を上げて安全をアピールしながら僕に話し掛けてきた。



「自分は……河野 英雄って言うもので。しがないサラリーマンです。
 殺し合いに乗る気はないんですよ。だから安心して……」



そう言ってから、河野さんは―――――少しだけびっくりしたような表情を見せた。
僕の顔を見て、河野さんは驚いていたのだ。
何でだろうって一瞬思ったけど、すぐに合点が付いた。
あー、僕がアイドル『ごーね!☆』ってことに気付いちゃったかな?
僕ってば、やっぱり売れっ子だね!


「えっと、僕、郷音ツボミって言います……その、河野さん……」
「どうしました?」


そうして僕は河野さんに不安げな顔を見せて。
そのまま――――――河野さんに駆け寄る。
それで、ギュッと抱きつくようにスーツにしがみつく。



「うぇっ……怖かったんです、僕……こんなことになっちゃって……不安で……!」



怯えた表情と今にも泣きそうな声で、僕は河野さんに訴える。
端から見れば『理不尽な殺し合いに巻き込まれたカワイソーな女の子』だ。
まあ、演技なんだけどね。
僕はこれまで、業界の裏で色んな汚い手段を使ってきた。
これくらいの芝居だって朝飯前です。
僕ってば、名役者だね☆


「そ……そうですか……よしよし、不安だったろうに……」
「ひっぐ……河野さんみたいな人が来てくれて、よかった……」
「君の不安は、わかりますよ……自分もこんなことになって、不安ですし……
 とにかく、安心して下さい……自分は敵じゃありませんから……」


河野さんは優しく僕の頭を撫でてくれる。
ああ、この人は、きっと『人並み』に優しい人だ。
まるっきりの善人ではないかもしれないけど、少なくとも良心はある。
僕のファンにも一杯いた、『普通の人間』だ。
そういうやつこそ利用し易い。
適当に良心に付け込んで、僕の色に染め上げてやれば―――――コロっと味方になってくれる。
普通の人だからこそ、如何様にも転ばせることが出来る。
だったら利用させてもらうだけだ。
僕の為に頑張ってもらうよ、河野さん。
最悪、適当な所で切り捨てちゃえばオッケーだし。



「河野さぁん……ありがとうございます……僕、嬉しい……」



それにしても。
何だろう、この懐かしい感じ。
なんか、河野さん見てると、安心する。
……なんでだろうね。わかんないや。



◆◆◆
◇◇◇




『あなた、どういうことなの?』
『……どういうことって?』



自分/河野 英雄を問いつめる声。
煩わしい女の糾弾。



『探偵に依頼したの。あなたの調査を』
『そうですか』
『それで、これが送られてきた』


そういって、彼女は自分に三枚の写真を差し出してきた。
それは自分が他の女―――サユリ―――と一緒に出かけていた時の写真。
それは自分が他の女―――アユミ―――の家に訪れた時の写真。
それは自分が他の女―――ミヤコ―――とホテルに入った時に写真。
どうやら探偵が自分を尾行し、これらの写真を撮影したらしい。

正直に白状すれば、これらの写真はでっちあげなんかじゃあない。
全て事実である。
自分は確かに複数の女性と関係を持っている。
あの『クソ女』との結婚生活に嫌気が差し、自分は会社に行くふりをして複数の女性と関係を結んでいる。
端正な顔立ちと天性の話術によって女性を口説き、彼女たちから経済的な支援を受ける。
所謂ヒモとしての関係だ。
腐った結婚生活を送り続けるよりもよっぽど刺激的で楽だ。
中には自分に本気で惚れ込み、肉体関係を結んだ相手だっている。
そういう女は特に利用し易いから楽だ。
惚れている男の言うことは何だって聞く。
彼女もまた、その一人だと思っていた。
だが、案外面倒な女だったらしい。
まさか僕の女性関係を嗅ぎ付けるとは。



『これは誤解だよ、僕の仕事の同僚さ。
 僕は浮気なんてしてないよ。僕は君を愛して―――――』
『ふざけないで、白々しい!!そんな嘘で誤摩化せると思ってるの!?』



まあ、そういう返事は予想していた。
どうせ拒絶するんだろうと理解していた。
何人もの女性と関係を結んでいると、こういうことはたまに起こる。
なので特に感慨もないし、衝撃を受けたりもしない。
正式な婚姻関係も結んでいないので、面倒な手続きも必要とはしない。
適当にすっぱりと口約束で関係を切って、それで終わりだ。
彼女と別れた所で、どうせ他にも僕に尽くしてくれる女性はいる。


『……私、あなたのことを愛していた。
 なのに、こんな、こんなことって……!』



そして、彼女が泣き出し始めた。
自分に裏切られたことが余程ショックだったらしい。
当然の反応だろう。
愛していた男が複数の女性と関係を持っていたなんて。
ましてや一夜を共にし、『子供だって授かった』相手から裏切られたなんて。
彼女にとっては大きなショックだったのだろうと推測する。

自分にとって、彼女は大勢いる愛人の一人に過ぎない。
正直言って自分の中では別にショックなんてない。
毎日大勢の女と出会い、はりぼての愛を育んでいるのだから、いちいちショックなんか受けていられない。
だから自分は、彼女のように泣くことは出来ない。



――――――――ああ、でも、あの娘との関係は少し楽しかったかな。



彼女との間に授かった子供のことをふと思い出す。
たまにしか会うことは出来なかったが、あの子は随分と僕に懐いていた。
自分が帰ってくればすぐに駆け付けてきて、べたべたとくっついてきたな。
あの娘に関しては自分も嫌ってはいなかったし、一緒に出かけた時はそれなりに楽しかった。
素直で明るくて、快活なあの娘との時間は悪くなかった。
尤も、あの娘ともお別れだ。
きっと彼女は自分をあの娘と会わせてはくれないだろう。
まあ、当然か。
どうせ数ヶ月もすればあの娘のことも忘れるだろう。
でも、やはり少しは名残惜しいので聞いてみることにした。



『あの』
『……出てって』
『僕がいなくなったら、あの娘が心配すると思うのだけど』
『出てって!!』




――――こうして怒ってくれる女性がいることに、なんだか安心する。
自分は英雄になりそこねて、成り行きで従姉妹と結婚してしまったどうしようもない男だ。
そんな自分に憤り、糾弾してくれる者がいることにほっとする。
きっとそれは、過去の罪の意識があるからなのだろう。
英雄になれなかったクズだからこそ、そんな自分を誰かに蔑まれたいと思っている。
自分にとっての理想の英雄は、磔の負け犬だ。
なのに自分は女性を利用しながら生きるし、自分に尽くす女性を見下す。
自分でも自分が度し難いとつくづく思う。



◇◇◇
◆◆◆



こんな巫山戯た催しに巻き込まれるとは思わなかった。
そもそもバトル・ロワイアルなんて十年以上も前の小説だ。
今更それを模した催しが行われるなんて思わなかった。
といより、あの殺し合いが実際に行われるなんて思っていなかった。
あのルール説明の際、二人の参加者が死亡した。
この殺し合いが嘘ではないということを証明するには十分な犠牲だった。

さて、自分はこの殺し合いでどう動くか。
正直言って、まだ殆ど考えていない。
自分だって死にたくはないが、かといって「生きる為に皆殺しだ」なんて堂々と宣言できる元気もない。
体力的にも若い頃と比べて衰えが見え始めている。
そんな初老に差し掛かった男に殺し合いをさせるだなんて、ナオ=ヒューマとやらは酷い男だ。
だが、やはり死ぬのは怖い。
なので適当に近くの施設に足を運び、休息を取りつつ支給品等の確認を行おうかと思ったのだが……



「河野さぁん……ありがとうございます……僕、嬉しい……」



まさか、既に参加者がいたとは。
しかも―――――――この娘は。
自分は適当に慰めるような言葉を投げ掛けながら、彼女の頭を撫でてやる。
この娘は『郷音 ツボミ』と名乗っていた。
テレビで何度か見たことがある。
ほんの数年足らずで出世街道を駆け上がったアイドル、だったか。
その人気はあの井上 快夢に匹敵する程だという話も聞いたことがある。

そして、自分はこの娘のことを。
ぼんやりと、何となくだが、記憶している。



(数ヶ月程度で、忘れると思ったんだけどな……)



自分が彼女を見て驚いたのも、複雑な感情を覚えたのも、彼女を知っていたからだ。
23歳の時、自分はある女性と関係を結んだ。
その女性とはおよそ10年前後の交際を経て破局した。
彼女とは子供も儲けていた。だが破局以来、一度も会った事は無かった。
彼女以外にも関係を持っている女性は大勢いる。
どうせ彼女のことなんかすぐに忘れるだろう。
そう思っていたし、実際に彼女のことなんて今となっては殆ど記憶していない。
だが、彼女との間に出来た娘のことは忘れられなかった。
否、正確に言うなら『思い出してしまった』。

彼女の娘は、スターになっていたのだから。
歌って踊れるアイドルとなっていたのだから。
人気絶頂の大型ルーキーとして、テレビに幾度と無く出演していた。
ある日テレビで彼女の顔と声を聞いた途端、自分は思い出してしまったのだ。


(彼女……ええと、郷音……名前は何だったかな。すっかり忘れてしまった。
 まさか彼女との間に出来た『あの娘』が、こんな大物になるとは……)



言わないでおこう、と自分は思う。
もしも自分が父親であることを知ったら面倒なことになる。
彼女と同様に、この娘も自分を憎んでいるかもしれない。
そうでなくとも『もう一度関係をやり直そう』なんて言われたら堪ったものではない。
彼女と築いた家庭はもはや過去のものでしかないのだ。
だから自分は何も言わない。気付かれるのも御免だ。



(……それにしても、大きくなったなぁ……)



だけど、同時に自分の心はそんなことをしみじみと感じていた。
娘に愛着を覚えることなんて無いと思っていたが、どうやら違ったらしい。
自分は娘の―――――ツボミの成長した姿に、少しばかりの感慨を覚えていた。

【一日目・1時00分/E-9 観光協会】

【郷音 ツボミ@立花響(ガングニール)/戦姫絶唱シンフォギア】
[状態]:健康
[装備]:ガングニールのギアペンダント
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:生きてパパと会うために優勝する。
1:ひとまず英雄と行動を共にして利用。
2:移動する前に自分の異能を確認したい。
※実父が失踪したのは小学生の頃です。
母親が実父の写真を全て消却していること、実父とは時折しか会えなかったことから顔は殆ど覚えていません。
※英雄に無意識に懐かしさを感じていますが、実父とは気付いていません。


【河野 英雄@ガッツ星人/ウルトラシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~3、確認済)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず死にたくない。
1:ツボミとの関係は黙っておく。
2:磔になりたいという無意識の願望。
※郷音ツボミの実父です。彼女の母親とは「諸星 茂(モロボシ シゲル)」という偽名で関係を持っていました。
英雄本人もツボミが娘であると何となく気付いていますが、面倒なので黙っています。
※異能力を確認しているのかどうかは後の書き手にお任せします。

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