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都市伝説B/絶対自分至上主義 - (2017/02/28 (火) 11:52:34) のソース

**都市伝説B/絶対自分至上主義◆7PJBZrstcc

 夜の沖木島に1人の少年が立っている。
 その少年は、胸元の開いた白いシャツとラメの入った派手な赤いパンツを着こなし、輝くような金髪を持った日本人離れした美形の持ち主だ。
 例えるなら、まさしく絵にかいたような王子様。
 そんな彼の名はKENGO、高校生にして歌って踊れるアイドルである。
 そのKENGOは今

「殺し合いか、ドッキリだよな?」

 この現状を、真実かどうか疑っていた。
 常識的に考えて殺し合いなどありえない、現実的じゃない。
 そんな思いがKENGOを支配している。
 しかし

「でもあの最初に死んだ二人の行動や言動は、演技だと思えない……」

 KENGOは同時にドッキリではないのか、とも思っていた。
 もしもこれがドッキリなら、最初に死んだ二人は当然仕掛け人という事になる。
 だがあの二人の怒りや驚きは演技だとは思えなかった。
 KENGOはそれなりに人の良い面も悪い面も見てきた、少なくとも演技しているのであれば多少は分かるつもりだ。
 それにあの二人の死体、東ジョーと名乗った男の方はともかく、最初に首輪の爆発で死んだ五十嵐椿と呼ばれていた女の死体は本物にしか見えなかった。
 もっとも、死体の真贋を区別できるわけではないので何とも言えないが。
 KENGOには、あの死体が日本の誇る技術で作られた特殊メイクだと言われて反論できる自信はない。

「とりあえず、この殺し合いは本物だと仮定して動くか」

 ドッキリという可能性を捨てるわけじゃない、それでも基本的には本当の事だと思うべきだろう。
 殺し合いをドッキリだと楽観して死ぬのはごめんだ。
 そうなるくらいだったら、ドッキリを本物だと思っている方がマシだ。
 それにドッキリだった場合、本物だと思って動いている方が番組の為にもなるだろうし。

 そんな事を考えながらKENGOは周りを見る。
 殺し合いが本物であろうと偽物であろうと、まずすべきは現在地と支給品の確認だ。
 そして支給品の確認を、こんな外でやる気は無かった。
 どこかに建物は無いか、と探しているとKENGOは建物を見つける。
 暗いからか良く見えないが、塔のようなものだろうか。
 更に、今までは気づかなかったが良く聞くと近くから波の音が聞こえる。
 波の音が聞こえるという事は海辺。
 海辺にある塔といえば

「灯台か」

 とりあえず最初の目的地を灯台に定め、KENGOは歩き出した。
 そしてしばらく歩くと灯台の入口の扉の前になんの障害もなく辿り着く事が出来た。
 KENGOは入口の扉を開けようとする。
 しかし、扉はKENGOが開けるよりも先に開く。
 しまった、誰かいるのか。そう思いKENGOは扉から少し距離を取る。
 そして中からはKENGOの予想通り別の参加者が居た。
 その参加者の風体を見て、KENGOは心底驚く。


 その参加者は見た感じ男で、丸々とした力士のような巨漢である。
 そこまではいい、問題はここからだ。
 その男は豚のマスクを被り、エプロンを着こなしていた。
 そして右手には巨大な肉斬り包丁。
 KENGOは知っている。その姿をした存在を知っていた。

「ブッチャー、マン……!?」

 都市伝説ブッチャーマン。
 それは夜、人気のない場所に現れる謎の男である。
 その男に攫われた者は一片の容赦なく殺され、解体されるという。
 解体された死体の用途は不明。
 食べるためとも言われているし、一説には邪教の神に捧げているとも言われている。

 確かなことはただ一つ。
 ブッチャーマン、そいつに出会う事は死を意味する。
 ただ一つの例外を除いて。

「本当にいたのか……!?」

 KENGOは都市伝説であり、実在するとは思っていなかったブッチャーマンに驚く。
 そしてブッチャーマンはその隙を見逃さない。
 力士のような巨体からは想像もできない俊敏さでKENGOの目の前に移動する。
 KENGOがその事に気づき逃げようとするものの、ブッチャーマンの左手がKENGOを掴んでいた。

「いつの間に!?」

 KENGOが自分はもう逃げられないと悟ると、ブッチャーマンに立ち向かう決意をする。
 そしてKENGOは、ブッチャーマンが被っている豚のマスクへ右手を伸ばす。

 ブッチャーマンと出会い、死から逃れる方法はただ一つ。

 ――それは確か、マスクを剥がして素顔を見る事だったな!

 ブッチャーマンが何故都市伝説という形とはいえ人に知られているのか。
 その答えは一つ、ブッチャーマンと出会い生き残っている人間が一人居るから。
 そしてブッチャーマンと出会った人間はこう言った。

『無我夢中で抵抗していたら、いつの間にかマスクを剥いでいた。
 そしたら、こっちの事なんか忘れて必死になって落ちたマスクを拾っていた』

 とはいえ、この状況でマスクの下の素顔なんて覚えているわけもなく、豚のマスクを被った危険人物がいるという風に警察は捜査する。
 しかし、そんな人物はいくら捜査しても出てこないので次第に風化し、都市伝説となっていったのだった。

「これでなんとか……!」

 そしてその話を知っていたKENGOはブッチャーマンのマスクを狙う。
 だが

「くそっ……、たれ……」

 KENGOの手が届くよりも先に、ブッチャーマンがKENGOの上半身と下半身を分断させる。
 そしてブッチャーマンは一片の油断なく、KENGOの頭を踏みつぶした。

&color(red){【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス 死亡】}

◆

 ブッチャーマンが殺し合いの宣言を受けて、最初に思ったことは歓喜だった。
 何せ人を殺しつくすだけでどんな願いでもかなうと言うのだから。
 そんなブッチャーマンの願いは、食事に困らない生活をすることである。

 ブッチャーマンは殺人鬼である。
 だが人を殺すことに喜びを覚える快楽殺人鬼ではない。
 彼が人を殺す理由は、食料を獲得する為にほかならない。
 人を殺して食べれば食費は0。金銭を得て社会に適応しているわけではない彼からすれば一番楽な手段なのだ。
 だが狩りというものは危険がつきもの。危険がないに越したことは無い。
 そんな彼からすればこの殺し合いはチャンスそのものだ。
 このゲームにリスクはあるものの、これを勝ち抜けば未来永劫の安息が得られるのだから。

 そんな事を考えていると、いつの間にかブッチャーマンは灯台の展望部分に移動していた。
 自身に起きた瞬間移動に少し驚きつつも、彼は自分のデイバッグを調べる。
 すると中に入っていたものは愛用の肉斬り包丁だった。
 愛用の武器がある事に安心しつつ、彼は他のデイバッグの中身を見る。
 色々調べるうちにこの島の地図を見つけ、現在地を調べ、これから先行く場所を考える。

 そして次の目的地をH-8にある集落に決め、出発しようとした矢先、1つの人影がこっちに向かってくるのが見えた。
 その人間を出発前に殺しておこうと思ったブッチャーマンは灯台の中から奇襲する。
 その後、多少抵抗されたもののブッチャーマンはその人間の殺害に成功したのだった。

 改めて出発しようと思った所で、ブッチャーマンはこう思った。

 ――この人間どうしよう、と。

 他の支給品は別にいらなかった。ブッチャーマンに必要な武器は愛用の肉斬り包丁だけだ。
 それに他に荷物を増やしたらいざという時に必要なものを出せなくなるかもしれない。

 この人間の一部を切り取って非常食に持ち歩く事も考えた。
 だが人間の死体というのは臭いがきつい。もしも隠れている最中に臭いが原因で見つかったら大変だ。
 だけど非常食にするくらいならいいかもしれない。
 そう思ったブッチャーマンは死体を灯台の中に放り込む。
 隠し方が雑なのは、この死体はあくまで予備なので別に見つかっても対して支障がないからである。

 一連の作業を済ませたブッチャーマンは出発する。
 これから歩く道はブッチャーマンにとっては幸せへの架け橋、そのせいか足取りは軽やかだ。
 そして灯台は、しばらく歩くと見えなくなっていった。

【一日目・1時00分/C-10】

【ブッチャーマン@喰種の肉体と赫子/東京喰種】 
[状態]:健康
[装備]:巨大な肉斬り包丁
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(確認済み) 
[思考・行動] 
基本方針:優勝して食事に困らない生活を手に入れる
1:人の多そうな集落に向かう



















 時は少し遡る。


&color(yellow){【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス 復活】}

◆

 ブッチャーマンが灯台を出発して数分後、KENGOは死体から生きている体に戻った。
 それも、潰された頭も両断された体も元に戻った状態で。
 KENGOは自身の体を見ながら呟く。

「とりあえず、これは間違いなくドッキリじゃないな」

 KENGOはここでドッキリの可能性を捨てた。
 殺し合いもという現実も、ナオ・ヒューマが言っていた異能も間違いなく真実だ。
 自分は間違いなく一度死んで、そして甦った。

「となると、俺に与えられた異能は死から甦るほどの治癒能力なのか?」

 自身の異能を考察したものの、明確な答えは出ない。
 KENGOは考察を打ち切り、違う事を考え始める。
 それはこの殺し合いでどうするか、どんなふうに立ち回るかだ。

「確かナオ・ヒューマは言ってたな、ここでいくら殺しても経歴に傷はつかないと」

 KENGOはアイドルだ、そしてアイドルに傷はあり得ない。それがないと保障されているのはありがたい。
 だが問題がある。それは――

「ふざけるな。俺明日も仕事があるんだぞ……!」

 KENGOはアイドルだ、それも大人気と上に付けても問題ない程の。
 そんな彼に休みの日は少ない。明日も当然仕事だ。
 それをバックれるなどしたら今後の人生に関わる。
 まさかこの殺し合いが1時間や2時間で終わる訳はないだろう。

「それにもう一つ問題がある」

 そう言ってKENGOが思い浮かべるのはナオ・ヒューマが殺し合いの開催を告げたあの場所だ。
 あの場所に居たのはKENGOから見ればほとんどがどうでもいい一般人だ、そいつらの事は気にする事はない。
 だが一部、どうでもいいと割り切るには問題のある人間が居た。

 井上快夢
 郷音ツボミ
 道端ロクサーヌ
 天草時春
 レオパルド・ガーネット

 この5人だ。
 最初の二人はアイドル、正直どうでもいいが同時間に居なくなった事を見て週刊誌の記者がある事ない事書きかねない。
 なので死なずに生きていて欲しい人間だ。生きて元の場所に戻れればあいつらも否定するだろう。
 だが残り3人はどうでもいいとは言い難い。
 この3人は悔しいが間違いなく自分以上の知名度を持つ、そいつらがこの殺し合いで死んで万が一自分が生き残り元の場所に帰ったら世間は何と思うだろうか。
 勿論大半の人間は気にも留めないかもしれない、だがひょっとしたら誰かが関連づけるかもしれない。
 それがスキャンダルになったら俺のアイドル人生にケチがつくかもしれない。
 となると選択肢はこうだ。


「俺が優勝してブッチャーマン除く参加者全員を蘇生させるか、殺し合いに呼び出された直後の時間に帰るしかないって事か」

 どっちにしろ優勝しなきゃいけないってのは決まりだな。
 ならばすることは

「変装だな」

 殺し合いに乗ると決めた以上、やるべきことはなるべく目立たないようにすることだ。
 だがKENGOは有名アイドル、どうやっても目立ってしまう。
 ならば変装するしかない。
 カツラでも被って、メガネでも掛けて、あとは雰囲気で分からないように演技すれば問題ないだろう。

「変装か、正直抵抗はあるな……」

 自分のこの美しい顔を隠すことになる、それは正直なところ嫌なものだ。
 だが醜い死に様を晒すのはもっと嫌だ、死後に崇められるのは画家だけで沢山だ。

「それにしても……」

 こうしてある程度の行動方針を決めたところで、KENGOは小さな疑問が芽生える。
 ナオ・ヒューマが殺し合いの開催を告げたあの場所で見たアイドル、井上快夢の事だった。

「あいつって、あんな雰囲気だったか?」

 井上快夢とは何度か共演したことがある、その時の彼女はもっと清らかというか穢れがない感じがした。
 だがあの場に居た彼女からは途方もない憎悪、ドス黒い何かを感じた。

「まあいいか」

 ここまで考えてKENGOは考えを打ち切った。
 別にあいつがどんなキャラだろうと自分には関係ないし、いずれは殺すかもしれない相手をそこまで気に掛ける道理はない。

「そんな事より、まずは灯台を探索をするか。何かあるかもしれないからな」

 こうしてKENGOは優勝を目指して動き始めた。

 だが彼は知らない。
 井上快夢が郷音ツボミの悪意と、善養寺十次という老人が告げた真実によって発狂している事を。
 少なくとも一部の参加者が自分とは違う時間から呼び出されている事を。
 そして、自分に与えられた異能が治癒能力のような前向きな力ではない事を。

【一日目・1時00分/C-10 灯台内部】

【KENGO@大嘘憑き/めだかボックス】 
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・行動] 
基本方針:優勝して、自分に関わるスキャンダルが起きないような願いをする
1:灯台を探索する
2:アイドルのKENGOとばれないようにする為に変装し、目立たないように他の奴を殺す
3:井上快夢って、あんな雰囲気だったか?
[備考]
※井上快夢がビルから突き落とされるより前から参戦しています
※参加者は全員同じ時間から参戦していると思っています
※自分の異能を治癒能力だと思っています
※大嘘憑きの制限は以下の通りです。
首輪、参加者の存在、支給された異能、沖木島や島の施設をなかったことにすることは出来ません。
自身の復活:5回まで(残り4回)
他者の復活:5回まで(残り5回)
それ以外の使用は1時間に1回可能

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