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**相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ 午前0のバトルロワイヤル開始から、十分程が経過した頃。  早川千夏は、会場内に設置された分校の一角で目を覚ました。  起きる気力もなく、千夏は寝転がりながら周囲に目を向ける。  すると、どこのド田舎だ、と言いたくなる程の古ぼけた教室内に、妙に多くの整頓された机と椅子が並べられている。  そこは、原作『バトル・ロワイアル』において、最初に生徒たちが集められた場所だ。  一部の原作を知っている者にとっては、まさしく『始まりの場所』といえる場所だろう。  しかし、千夏はその一部の者には当て嵌ってはいない。  いきなり「ナオ・ヒューマ」なる人物に殺し合いをしろと言われただけの、ただの一般人だった。 「はぁ……なんでこんなことになっちゃうかなぁ……」  思わず口から溢れだしたその呟きも、誰の耳にも入ることは無かった。  この場所は原作と異なり、始まりの場所ではなく会場の一部なのだ。  当然の事ながら、同じ教室内には人っ子一人いなかった。  もちろん千夏にはバトルロワイヤルに巻き込まれる覚えなど無い。  いつも通り学校に通い、帰り際のファーストフード店で幼馴染の萩原舞から興味もないミリタリー談義を聞かされ、いつも通り帰宅した。  その記憶に一切の違和感など覚えてはいない。  しかし、現に千夏はこんな場所に転がされているのだ。  なにやら身体がゴワゴワすると思い、身体を見れば軍服まで着せられている。  完全にこれは夢だと思い、千夏は自分の頬をつねった。 「……いふぁい……夢じゃない、かぁ」  考えられる要因としては、間違いなく萩原舞の仕業だろう。  むしろそれ以外で自分に落ち度があったとは思えないからだ。  以前にも勝手に自衛隊の軍事演習の見学を2人分申し込まれたことあった事を思い出しながら、千夏はこの『プログラム』も危険な物とは知らずに申し込まれたのだろうと当たりをつけた。  軍服を着させられているのがそれのいい証拠である。    ――面倒くさい。  そんな感情が千夏を支配していた。  もともと千夏は積極的に動くタチではなく、学校のイベントや体育などでも指示されなければ全く動かない事が大半である。  逆に指示されれば、余程の重労働じゃない限りなんでも淡々とこなすことから、そこまで目立ったサボり症だとは思われていなかったが……。  千夏はなるたけ楽して静かに暮らせればそれでいい、という隠居老人のような思考をしている。  そして今、バトルロワイヤルという平穏とは正反対の事件に巻き込まれてもなお、積極的に動く気は毛頭なかった。  平穏を取り戻すために殺し合いなどという動乱に身を投じるなど本末転倒であるからだ。 「(そういえば能力がどうとか言ってたっけ……あ、あと荷物も見ておかなきゃ)」  正直に言って能力のことはよくわからなかったが、荷物は大事な生命線だ、確認しておかなければならない。  千夏はようやく上半身を起こし、脇に置かれていたデイパックに視線を移す。  学生鞄よりも少し大きめのソレは、否が応でも今の自分の全てであると実感させられる。    千夏はデイパックのチャックを開くと、とりあえず中身を全て外に出してみる。  まず出てきたのは、地図やコンパス、何も書かれていない表が書かれている冊子に、食料と飲料。   「コーヒー……ないかぁ……」  一般にカフェイン中毒と呼ばれるほどのコーヒーマニアの千夏にとって、これは死活問題ある。  これは決して比喩などではなく、起床性低血圧の千夏は毎朝一杯のホットコーヒーがなければ活動開始までにかなりの時間を要するのだ。  殺人者が頭の覚醒を待ってくれるはずもないため、千夏はどこかでカフェインを調達することを第一の目標に決めた。  そして、次に出てきたのは『戦場での立ち回り本セット』という本の束である。  「軍事戦略入門」「現代の孫子の兵法」等と言ったハードカバーから文庫までの本が6冊まとめられていた。  機敏に動かなければならない戦場で、本を5冊も持っていたら重くて立ち回りどころではない、まるで嫌がらせである。  そして、最後に出てきたのが、デイパックの隙間を埋めるようにギチギチに詰められた手榴弾であった。  「うわっ、あぶなっ」  何のケースにも入っていないむき出しの手榴弾が、無造作に少なくとも10個以上入っている。  それはアメリカが主に使用しているM67手榴弾は破片手榴弾と呼ばれるものであり、15m以内に入れば即死、100m以上離れても大怪我する事もある程のものである。  それを“瞬時に理解していた” 千夏は、額に冷や汗を垂らした。  乱暴に扱っていたら、すでに死んでいてもおかしく無かった状況なのだ。  ――ふと、そこで千夏は違和感を覚えた。  萩原舞から散々ミリタリー知識を押し付けられていた千夏だが、その大半を聞き流していたため、手榴弾といえば「パイナップルっぽい奴」程度の認識しかなかった。  しかし、この手榴弾は丸く膨らんでいて、どちらかと言えばリンゴに近い形をしている。  おそらくピンなどから手榴弾だということは理解できただろうが、種類や効果などまで分かるはずがない。 「(……舞のミリオタが伝染っちゃったのかな……?)」  千夏はどこまでも自分に影響を及ぼしてくる幼馴染の存在にため息を吐いたが、勿論そんなことはない。  それだけで兵器の知識が得られるならば、世界の軍人達も苦労はしていないだろう。  それは千夏に与えられた能力に寄るものだったが、その小さな違和感だけではまだ能力を自覚するには至らなかった。  地図を見る限りでは、幸い会場の区分けは細かく設定されている。  まだ夜中であることだし、もう少しゆっくりしてもいいだろう、と千夏は荷物を散らかしたまま、また床に寝転がった。  ――しかし、その時。  ガララッと扉が開いた音がしたかと思うと、千夏の視界が一気に明るくなる。  何者かによって教室の電気が付けられたのだ。  どうやらインフラは正常に機能しているようである。  千夏はとっさに手榴弾を一つ拾い上げ、扉から隠れるようにして机の影に身を隠した。 「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」  千夏の耳に、まだ年若い女性のものであろう凛とした声が聞こえてくる。  千夏もその言葉を鵜呑みにするほど愚かではない、手榴弾をよく見える位置に掲げたまま、頭だけを机から露出させた。  そこにいたのは、グロック18Cと呼ばれる自動拳銃を構え、最初から場所がわかっていたかのように、こちらをじっと見つめている同い年くらいの少女だった。 ◇   ◇   ◇  少し時間を巻き戻して、午前0時丁度。  石黒千晶はバトルロワイヤルが開始されると同時に目を覚ました。  周囲の状況確認と記憶の整理を同時に行い、効率的に最短で事態の把握に努める。  どうやら場所は分校のような物の一室で、ここは殺し合いの会場だと理解した。 「(どうやら冗句の類じゃなさそうね……)」  全ての情報の整理を終え、千晶はどう動くかを思案し始める。  外出する際は必ず着用する簡素な腕時計を確認すると、0時0分30秒を指していた、“時間のズレはない”。  日常のおける最後の記憶はまだ昼間だったはずである。  ずっと眠らされていたとしても、能力の付与などが数時間で終わるはずもない。  千晶は日付が気になったが、それよりも早く移動することが先決だと考え、思考を切り捨てる。  立ち上がると同時にデイパックを開き、歩きながら中身を確認する。  中から出てきた武器であろう物は拳銃であった。  名称や威力などはわからないが、なぜだか構造が手に取るように分かる。  なるほど、これが能力か、と千晶は特別何か感情を抱くわけでもなく、すとんと理解できた。  これが『炎を出す能力』や『物を動かす念動力』だったらもう少し感動していたかもしれないが、物の構造を理解するだけなら一般人の延長にいると言えるだろう。  見たところ異常はない銃だったが、千晶の意識は急に“分解したい”という欲で満たされた。  元々知識欲が旺盛な千晶である、本が手元にない今絶好のストレス発散道具に見えて仕方がなかった。  そのうえ、千晶に付加された能力『直観』は能力者の知識欲を増幅させ、殺人衝動にまで昇華させる程のものである。  普段から自身を律している千晶だが、知識欲については自分に甘いところがあるため、この欲求に逆らうことはできなかった。  静かに扉を開け、廊下に人が居ないことを確認すると、窓のカーテンも全て締め切る。  完全な暗闇となった教室には、千晶が点けた懐中電灯の灯りだけが灯っていた。  5分だけ自分の時間を作ろう、と取り決め、早速銃の分解に入る。  15秒程で分解は終わり、やはり部品に以上は無いと理解した。  余談だが、グロック18Cはフルオート・セミオートが切り替えられる自動拳銃であり、素人にはとても組み上げられる物ではない。  しかし、分解よりも時間はかかったものの、分解&組み立ての作業を1分以内に終了することができた。  千晶に与えられた能力がきちんと発揮されている証明でもあった。 「(やっぱり初めから構造が分かっている物だとダメね……)」  幾分か気は紛れたが、知識欲はあまり満たされていない。  早くまだ目を通したことのない本を手に入れなければ、気がおかしくなってしまいそうだった。  図書室を探そうと千晶は廊下に出た、勿論足音は極力立てないようにすることを忘れない。  デイパックからは銃と地図を手元に残し、姿勢を低く保ちながら素早く移動する。  今まで滞在していた教室は端にあったため、反対の端へと一部屋ずつ中の様子を伺っていった。  どうやら2階への階段は無いようだ。 「(この能力で本の内容もわかっちゃった最悪ね……)」  まだ能力の全容を理解できていない千晶は、能力の考察を進めながら最悪のケースも頭の隅に思い描いていた。  小さな島の分校に期待した図書館など無く、とうとう最後の教室の前に到着する。  中を覗くと、自分の物と同じような食料や飲料に加え、数冊の本が散乱しているのが見えた。  注意深く観察すると、人間の足のようなものが荷物の近くに転がっている。  拳銃の安全装置を外し、行動しやすいように左手に持ち替えた。  生存者にしても死体にしても、先手を取る事は重要だと考えた千晶は、わざと音を立てながら扉を開き、素早く電気のスイッチを入れる。 「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」  千晶は銃を構えながら、転がっている足と、もし殺人者がいるならばその者に向かって声を掛ける。  この言葉は本心であり、相手が危害を加えてこない限り銃を撃つつもりはない。  生き残った場合には刑法第36条及び第37条の正当防衛・緊急回避を主張するつもりであるからだ。  すると、転がっていた足は引っ込み、少し経って手榴弾を構えた軍服の少女が顔を出した。 ◇   ◇   ◇  今、2人の女子高生が手榴弾と拳銃を構えて対峙している。  傍から見れば間違いなく緊迫した状況であった。  もちろん、本人たちにとっても。  そこで、先に口を開いたのは軍服の手榴弾を持った少女――早川千夏である。 「この手榴弾結構威力高いっぽいし、そこから撃ったらアンタも死ぬよ……」  荒事に慣れていない少女の精一杯の威嚇だった。  対する拳銃を構えた少女――石黒千晶は千夏の手榴弾のピンが外れていないことを確認すると、素直の銃を下ろした。   「申し訳ございません。 危険人物が潜んでいる可能性も考慮していましたので……私に交戦の意思はありません」  千晶は拳銃の安全装置をロックすると、制服のポケットに仕舞って有効の意思をアピールする。  相手に協力者がいることも考慮していたが、言葉の通りここで手榴弾を使うことは考えにくい事と、廊下に出て安全装置を外すのに1秒も掛からないことが解っていたからだ。  その様子に安心したのか、千夏も手榴弾を鞄に放り、立ち上がる。  演技とは思えない千夏のホッとした様子に、千明も警戒を解いて扉から離れた。 「私は石黒千晶と申します」 「あ、はい……早川千夏です」  自己紹介と同時に、千晶は満面の笑みで千夏に握手を求めた。  あまりにも普通な彼女の様子に千夏は、さっきまで武器を構え合っていたのに変な人だな、と思いながらも自己紹介と握手を返した。  ――しかし、そこで友好を示して終わり、とはいかなかった。  握手が終わっても、千晶は千夏の手を離す気配がないのだ。  千晶はただ黙って掴んだ千夏の左手の甲を凝視している。 「これは……貴方は入墨を入れているのですか?」  千晶の声に千夏は自分の左手の甲を見る。  すると、そこにはこれまで無かったはずの奇妙な模様が描かれていた。  確かに入墨や痣に見えるが、当然千夏には入墨の記憶など無い。  猫や熊の手形にも見える丸と三角で構成されたその模様は、いつだったか萩原舞に進められたとある漫画を千夏に連想させた。  『放課後アサルト×ガールズ』という漫画である。  いつも舞のミリタリー談義を聞き流している千夏だったが、漫画は人並みには読むため、いまだ2巻しか発売されていないこともあって流し読みをしたことがあったのだ。 「……これは、多分“能力”って奴のせいだと思う」  千夏がそう説明すると、少し険しくなっていた千晶の顔は笑顔に戻り、握手を解いた。  そんな千晶の様子はよそに、千夏は能力を必死で思い出そうと試みている。 「こう、かな?」  千夏は荷物へと向き直ると、左手でキツネの形を作り、荷物を収容するイメージを浮かべる。  すると、散乱していた食料も飲料もデイパックでさえ、一瞬で消え去ってしまう。 「おおっ……重くない、これは便利だ」  あの非常に重たい荷物をどうしようか悩んでいたところなので、千夏は素直に喜んだ。  身軽であるというのは大きなアドバンテージとなるだろう。   「今のは……物体を収納できる能力という事でしょうか?」    横から見ていた千晶が、千夏に能力の説明を求めた。  千夏も完璧に覚えていたわけでもないが、思い出せる限りの説明を簡潔に行った。  ――その際、どうせだからと千晶は情報交換や詳細な自己紹介を提案し、千夏もこれを承諾。  千晶も完全には把握しきれていない自分の能力を考察も交えて伝え、情報交換は終わった。  長話が嫌いな千夏と、効率を求める千晶の会話は非常に短い時間で終わったが、両者ともに相手への印象は少しばかり向上していた。  2人の他者に求める自身のエゴが、うまく合致した結果である。 「早川さん、貴方も私も『ナオ・ヒューマ』という人物による拉致・監禁の被害者であることは明白です。 そこで、私達が生き延びるために協力関係を結びたいと思うのですが、どうでしょうか?」 「ああ、はい。 ウチはもう千晶さんと行動する気満々だったんで……どうぞよろしくお願いします」 「ありがとうございます。 こちらこそ、宜しくお願い致します」  非力な女子高生達は、バトルロワイヤル中は協力し合うが決まった。  まだ完全に信頼し合っているわけではないが、千晶は素直な協力者を得て、千夏は方針を決めてくれるまともな牽引者を得た。  要するに、需要はお互いに満たされているのである。 「……あ、そういえば。 千晶さん、荷物、ストレージにしまいます?」 「ありがとうございます。 では、拳銃と懐中電灯意外をお願いできますか? それと……早川さんの所持している本を、一冊貸していただけないでしょうか?」 「本、ですか?」  何に使うのか疑問に思いながらも、千夏は千晶の荷物を収納し、ストレージ内の本を確認する。 「お恥ずかしい話ですが、手元に未読の本が無いと少々落ち着かない性分ですので……」  日常生活では家族にしか知られていない事だったが、この会場ではいつでも本が手に入る状況では無いため、千晶は素直に打ち明けた。  周囲の人間には完璧な人として認知されたい欲求がある千晶も、この緊急事態ではプライドよりも効率化を優先しなければいけないと考えているからだ。  最後の砦である丁寧口調も、保っていられない状況が来るかも知れなかった。 「……では、一番軽い文庫サイズのこれで良いですか? 他のは結構重いのとかありますけど」  そう言って千夏が差し出したのは、『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』という本だった。  歴史書は多く読んでいたが、自分とは関係ないとしてこういった本は読んでいなかったため、千晶の欲求を満たすには十分な本である。  千晶は手にとって確認してみたが、どうやら自分の能力では本の中身まではわからないようだとホッとする。  全何ページだとか、糸栞が273ページに挟まっているだとか、そういった情報しか頭に入ってこない。 「重量の事まで考慮していただき、誠にありがとうございます。 早川さんは何か欲しい物はありますか?」  見返りというわけでも無いが、千晶は行動方針を決める一環として、千夏に訪ねた。  特に無いようであれば、I7の図書館・G9の診療所・J10の資源開拓プラントといった物資のありそうな場所に向かう予定であった(一つは完全に私事だが)。   「あー……ウチもコーヒー、というかカフェインが欲しいかなー、無いとヤバいかなー、みたいな……」 「わかりました。 では、民家にコーヒーが存在するかは不確かなので、G9の診療所に向かいましょう。 恐らく給湯室もあるでしょうし、カフェインの錠剤が置いてある可能性もあります。 その後、J10に置かれている資源開拓プラントに向かいます。 ここで早川さんの能力に必要な資源を探しましょう。 プラントは海上に存在していますが、早川さんの能力で簡単な小舟を作れば渡ることが出来ると考えられます。」  さながら企画会議のプレゼンテーションの様に、すらすらと千晶は方針を説明していく。 「もし仮にはぐれてしまった場合は、集落で最も南にある建物に集合しましょう。 地図に名称の記載されている建物は長時間の滞在には不向きだと考えられます。 大まかな方針は以上ですが、詳細な方針は実際に行動を開始してから決めましょう。 ここまでで何か質問はありますか?」 「いや、特に無いです」  千晶の問いに、千夏は即答で返した。  深く考えるのも面倒くさかったし、何かあればまた言ってくれるだろう、と千夏は半ば思考を放棄し始めていた。  千晶の立てた計画に不都合はないし、ディベートの様な事になったらなどと考えたくもなかったからだ。  では、ここを出ましょう、という千晶の声によって、行動は開始された。  去り際に放たれた千晶の提案によって、教室内の机や椅子をストレージに仕舞い、木と鉄の資源を稼ぐ。  教室はすっかり寂しくなり、そこから人影までも去っていく。  方や拳銃と本、方や手ぶらという、一見サバイバルをナメているような装備の2人は、診療所を目指し、分校を後にした。 【一日目・0時45分/G-7・分校周辺】 【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】 [状態]:健康、工兵変身状態、 [装備]:工兵服(シールドフル状態) [道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×42}分のリソース [思考・行動] 基本方針:千晶と行動し、生き残る。 1:カフェイン欲しい。 2:千晶さんに付いていけばなんとかなる。 3:舞に合ったら一発シメてやる。 [備考] ※石黒千晶と情報交換しました。 ※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。 ※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。 ※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。 【石黒千晶@『直観』/HEROS】 [状態]:健康 [装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯 [道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』) [思考・行動] 基本方針:生き残る。 1:診療所へ向かう。 2:資源開拓プラントへ向かう。 3:協力者を増やす。 [備考] ※早川千夏と情報交換しました。 ※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。 |[[日常のオワリ 物語のハジマリ]]|時系列順|[[GOD&DEVIL]]| |[[風吹けば]]|投下順|[[ ]]| |&color(blue){GAME START}|早川千夏|| |&color(blue){GAME START}|石黒千晶||
**相性-たった二人の生存協定- ◆IPU8SGkvmQ 午前0のバトルロワイヤル開始から、十分程が経過した頃。  早川千夏は、会場内に設置された分校の一角で目を覚ました。  起きる気力もなく、千夏は寝転がりながら周囲に目を向ける。  すると、どこのド田舎だ、と言いたくなる程の古ぼけた教室内に、妙に多くの整頓された机と椅子が並べられている。  そこは、原作『バトル・ロワイアル』において、最初に生徒たちが集められた場所だ。  一部の原作を知っている者にとっては、まさしく『始まりの場所』といえる場所だろう。  しかし、千夏はその一部の者には当て嵌ってはいない。  いきなり「ナオ・ヒューマ」なる人物に殺し合いをしろと言われただけの、ただの一般人だった。 「はぁ……なんでこんなことになっちゃうかなぁ……」  思わず口から溢れだしたその呟きも、誰の耳にも入ることは無かった。  この場所は原作と異なり、始まりの場所ではなく会場の一部なのだ。  当然の事ながら、同じ教室内には人っ子一人いなかった。  もちろん千夏にはバトルロワイヤルに巻き込まれる覚えなど無い。  いつも通り学校に通い、帰り際のファーストフード店で幼馴染の萩原舞から興味もないミリタリー談義を聞かされ、いつも通り帰宅した。  その記憶に一切の違和感など覚えてはいない。  しかし、現に千夏はこんな場所に転がされているのだ。  なにやら身体がゴワゴワすると思い、身体を見れば軍服まで着せられている。  完全にこれは夢だと思い、千夏は自分の頬をつねった。 「……いふぁい……夢じゃない、かぁ」  考えられる要因としては、間違いなく萩原舞の仕業だろう。  むしろそれ以外で自分に落ち度があったとは思えないからだ。  以前にも勝手に自衛隊の軍事演習の見学を2人分申し込まれたことあった事を思い出しながら、千夏はこの『プログラム』も危険な物とは知らずに申し込まれたのだろうと当たりをつけた。  軍服を着させられているのがそれのいい証拠である。    ――面倒くさい。  そんな感情が千夏を支配していた。  もともと千夏は積極的に動くタチではなく、学校のイベントや体育などでも指示されなければ全く動かない事が大半である。  逆に指示されれば、余程の重労働じゃない限りなんでも淡々とこなすことから、そこまで目立ったサボり症だとは思われていなかったが……。  千夏はなるたけ楽して静かに暮らせればそれでいい、という隠居老人のような思考をしている。  そして今、バトルロワイヤルという平穏とは正反対の事件に巻き込まれてもなお、積極的に動く気は毛頭なかった。  平穏を取り戻すために殺し合いなどという動乱に身を投じるなど本末転倒であるからだ。 「(そういえば能力がどうとか言ってたっけ……あ、あと荷物も見ておかなきゃ)」  正直に言って能力のことはよくわからなかったが、荷物は大事な生命線だ、確認しておかなければならない。  千夏はようやく上半身を起こし、脇に置かれていたデイパックに視線を移す。  学生鞄よりも少し大きめのソレは、否が応でも今の自分の全てであると実感させられる。    千夏はデイパックのチャックを開くと、とりあえず中身を全て外に出してみる。  まず出てきたのは、地図やコンパス、何も書かれていない表が書かれている冊子に、食料と飲料。   「コーヒー……ないかぁ……」  一般にカフェイン中毒と呼ばれるほどのコーヒーマニアの千夏にとって、これは死活問題ある。  これは決して比喩などではなく、起床性低血圧の千夏は毎朝一杯のホットコーヒーがなければ活動開始までにかなりの時間を要するのだ。  殺人者が頭の覚醒を待ってくれるはずもないため、千夏はどこかでカフェインを調達することを第一の目標に決めた。  そして、次に出てきたのは『戦場での立ち回り本セット』という本の束である。  「軍事戦略入門」「現代の孫子の兵法」等と言ったハードカバーから文庫までの本が6冊まとめられていた。  機敏に動かなければならない戦場で、本を5冊も持っていたら重くて立ち回りどころではない、まるで嫌がらせである。  そして、最後に出てきたのが、デイパックの隙間を埋めるようにギチギチに詰められた手榴弾であった。  「うわっ、あぶなっ」  何のケースにも入っていないむき出しの手榴弾が、無造作に少なくとも10個以上入っている。  それはアメリカが主に使用しているM67手榴弾は破片手榴弾と呼ばれるものであり、15m以内に入れば即死、100m以上離れても大怪我する事もある程のものである。  それを“瞬時に理解していた” 千夏は、額に冷や汗を垂らした。  乱暴に扱っていたら、すでに死んでいてもおかしく無かった状況なのだ。  ――ふと、そこで千夏は違和感を覚えた。  萩原舞から散々ミリタリー知識を押し付けられていた千夏だが、その大半を聞き流していたため、手榴弾といえば「パイナップルっぽい奴」程度の認識しかなかった。  しかし、この手榴弾は丸く膨らんでいて、どちらかと言えばリンゴに近い形をしている。  おそらくピンなどから手榴弾だということは理解できただろうが、種類や効果などまで分かるはずがない。 「(……舞のミリオタが伝染っちゃったのかな……?)」  千夏はどこまでも自分に影響を及ぼしてくる幼馴染の存在にため息を吐いたが、勿論そんなことはない。  それだけで兵器の知識が得られるならば、世界の軍人達も苦労はしていないだろう。  それは千夏に与えられた能力に寄るものだったが、その小さな違和感だけではまだ能力を自覚するには至らなかった。  地図を見る限りでは、幸い会場の区分けは細かく設定されている。  まだ夜中であることだし、もう少しゆっくりしてもいいだろう、と千夏は荷物を散らかしたまま、また床に寝転がった。  ――しかし、その時。  ガララッと扉が開いた音がしたかと思うと、千夏の視界が一気に明るくなる。  何者かによって教室の電気が付けられたのだ。  どうやらインフラは正常に機能しているようである。  千夏はとっさに手榴弾を一つ拾い上げ、扉から隠れるようにして机の影に身を隠した。 「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」  千夏の耳に、まだ年若い女性のものであろう凛とした声が聞こえてくる。  千夏もその言葉を鵜呑みにするほど愚かではない、手榴弾をよく見える位置に掲げたまま、頭だけを机から露出させた。  そこにいたのは、グロック18Cと呼ばれる自動拳銃を構え、最初から場所がわかっていたかのように、こちらをじっと見つめている同い年くらいの少女だった。 ◇   ◇   ◇  少し時間を巻き戻して、午前0時丁度。  石黒千晶はバトルロワイヤルが開始されると同時に目を覚ました。  周囲の状況確認と記憶の整理を同時に行い、効率的に最短で事態の把握に努める。  どうやら場所は分校のような物の一室で、ここは殺し合いの会場だと理解した。 「(どうやら冗句の類じゃなさそうね……)」  全ての情報の整理を終え、千晶はどう動くかを思案し始める。  外出する際は必ず着用する簡素な腕時計を確認すると、0時0分30秒を指していた、“時間のズレはない”。  日常のおける最後の記憶はまだ昼間だったはずである。  ずっと眠らされていたとしても、能力の付与などが数時間で終わるはずもない。  千晶は日付が気になったが、それよりも早く移動することが先決だと考え、思考を切り捨てる。  立ち上がると同時にデイパックを開き、歩きながら中身を確認する。  中から出てきた武器であろう物は拳銃であった。  名称や威力などはわからないが、なぜだか構造が手に取るように分かる。  なるほど、これが能力か、と千晶は特別何か感情を抱くわけでもなく、すとんと理解できた。  これが『炎を出す能力』や『物を動かす念動力』だったらもう少し感動していたかもしれないが、物の構造を理解するだけなら一般人の延長にいると言えるだろう。  見たところ異常はない銃だったが、千晶の意識は急に“分解したい”という欲で満たされた。  元々知識欲が旺盛な千晶である、本が手元にない今絶好のストレス発散道具に見えて仕方がなかった。  そのうえ、千晶に付加された能力『直観』は能力者の知識欲を増幅させ、殺人衝動にまで昇華させる程のものである。  普段から自身を律している千晶だが、知識欲については自分に甘いところがあるため、この欲求に逆らうことはできなかった。  静かに扉を開け、廊下に人が居ないことを確認すると、窓のカーテンも全て締め切る。  完全な暗闇となった教室には、千晶が点けた懐中電灯の灯りだけが灯っていた。  5分だけ自分の時間を作ろう、と取り決め、早速銃の分解に入る。  15秒程で分解は終わり、やはり部品に以上は無いと理解した。  余談だが、グロック18Cはフルオート・セミオートが切り替えられる自動拳銃であり、素人にはとても組み上げられる物ではない。  しかし、分解よりも時間はかかったものの、分解&組み立ての作業を1分以内に終了することができた。  千晶に与えられた能力がきちんと発揮されている証明でもあった。 「(やっぱり初めから構造が分かっている物だとダメね……)」  幾分か気は紛れたが、知識欲はあまり満たされていない。  早くまだ目を通したことのない本を手に入れなければ、気がおかしくなってしまいそうだった。  図書室を探そうと千晶は廊下に出た、勿論足音は極力立てないようにすることを忘れない。  デイパックからは銃と地図を手元に残し、姿勢を低く保ちながら素早く移動する。  今まで滞在していた教室は端にあったため、反対の端へと一部屋ずつ中の様子を伺っていった。  どうやら2階への階段は無いようだ。 「(この能力で本の内容もわかっちゃった最悪ね……)」  まだ能力の全容を理解できていない千晶は、能力の考察を進めながら最悪のケースも頭の隅に思い描いていた。  小さな島の分校に期待した図書館など無く、とうとう最後の教室の前に到着する。  中を覗くと、自分の物と同じような食料や飲料に加え、数冊の本が散乱しているのが見えた。  注意深く観察すると、人間の足のようなものが荷物の近くに転がっている。  拳銃の安全装置を外し、行動しやすいように左手に持ち替えた。  生存者にしても死体にしても、先手を取る事は重要だと考えた千晶は、わざと音を立てながら扉を開き、素早く電気のスイッチを入れる。 「どなたかいらっしゃいますか? 隠れる必要はありません、私は殺し合いをしようとは思っていませんので」  千晶は銃を構えながら、転がっている足と、もし殺人者がいるならばその者に向かって声を掛ける。  この言葉は本心であり、相手が危害を加えてこない限り銃を撃つつもりはない。  生き残った場合には刑法第36条及び第37条の正当防衛・緊急回避を主張するつもりであるからだ。  すると、転がっていた足は引っ込み、少し経って手榴弾を構えた軍服の少女が顔を出した。 ◇   ◇   ◇  今、2人の女子高生が手榴弾と拳銃を構えて対峙している。  傍から見れば間違いなく緊迫した状況であった。  もちろん、本人たちにとっても。  そこで、先に口を開いたのは軍服の手榴弾を持った少女――早川千夏である。 「この手榴弾結構威力高いっぽいし、そこから撃ったらアンタも死ぬよ……」  荒事に慣れていない少女の精一杯の威嚇だった。  対する拳銃を構えた少女――石黒千晶は千夏の手榴弾のピンが外れていないことを確認すると、素直の銃を下ろした。   「申し訳ございません。 危険人物が潜んでいる可能性も考慮していましたので……私に交戦の意思はありません」  千晶は拳銃の安全装置をロックすると、制服のポケットに仕舞って有効の意思をアピールする。  相手に協力者がいることも考慮していたが、言葉の通りここで手榴弾を使うことは考えにくい事と、廊下に出て安全装置を外すのに1秒も掛からないことが解っていたからだ。  その様子に安心したのか、千夏も手榴弾を鞄に放り、立ち上がる。  演技とは思えない千夏のホッとした様子に、千明も警戒を解いて扉から離れた。 「私は石黒千晶と申します」 「あ、はい……早川千夏です」  自己紹介と同時に、千晶は満面の笑みで千夏に握手を求めた。  あまりにも普通な彼女の様子に千夏は、さっきまで武器を構え合っていたのに変な人だな、と思いながらも自己紹介と握手を返した。  ――しかし、そこで友好を示して終わり、とはいかなかった。  握手が終わっても、千晶は千夏の手を離す気配がないのだ。  千晶はただ黙って掴んだ千夏の左手の甲を凝視している。 「これは……貴方は入墨を入れているのですか?」  千晶の声に千夏は自分の左手の甲を見る。  すると、そこにはこれまで無かったはずの奇妙な模様が描かれていた。  確かに入墨や痣に見えるが、当然千夏には入墨の記憶など無い。  猫や熊の手形にも見える丸と三角で構成されたその模様は、いつだったか萩原舞に進められたとある漫画を千夏に連想させた。  『放課後アサルト×ガールズ』という漫画である。  いつも舞のミリタリー談義を聞き流している千夏だったが、漫画は人並みには読むため、いまだ2巻しか発売されていないこともあって流し読みをしたことがあったのだ。 「……これは、多分“能力”って奴のせいだと思う」  千夏がそう説明すると、少し険しくなっていた千晶の顔は笑顔に戻り、握手を解いた。  そんな千晶の様子はよそに、千夏は能力を必死で思い出そうと試みている。 「こう、かな?」  千夏は荷物へと向き直ると、左手でキツネの形を作り、荷物を収容するイメージを浮かべる。  すると、散乱していた食料も飲料もデイパックでさえ、一瞬で消え去ってしまう。 「おおっ……重くない、これは便利だ」  あの非常に重たい荷物をどうしようか悩んでいたところなので、千夏は素直に喜んだ。  身軽であるというのは大きなアドバンテージとなるだろう。   「今のは……物体を収納できる能力という事でしょうか?」    横から見ていた千晶が、千夏に能力の説明を求めた。  千夏も完璧に覚えていたわけでもないが、思い出せる限りの説明を簡潔に行った。  ――その際、どうせだからと千晶は情報交換や詳細な自己紹介を提案し、千夏もこれを承諾。  千晶も完全には把握しきれていない自分の能力を考察も交えて伝え、情報交換は終わった。  長話が嫌いな千夏と、効率を求める千晶の会話は非常に短い時間で終わったが、両者ともに相手への印象は少しばかり向上していた。  2人の他者に求める自身のエゴが、うまく合致した結果である。 「早川さん、貴方も私も『ナオ・ヒューマ』という人物による拉致・監禁の被害者であることは明白です。 そこで、私達が生き延びるために協力関係を結びたいと思うのですが、どうでしょうか?」 「ああ、はい。 ウチはもう千晶さんと行動する気満々だったんで……どうぞよろしくお願いします」 「ありがとうございます。 こちらこそ、宜しくお願い致します」  非力な女子高生達は、バトルロワイヤル中は協力し合うが決まった。  まだ完全に信頼し合っているわけではないが、千晶は素直な協力者を得て、千夏は方針を決めてくれるまともな牽引者を得た。  要するに、需要はお互いに満たされているのである。 「……あ、そういえば。 千晶さん、荷物、ストレージにしまいます?」 「ありがとうございます。 では、拳銃と懐中電灯意外をお願いできますか? それと……早川さんの所持している本を、一冊貸していただけないでしょうか?」 「本、ですか?」  何に使うのか疑問に思いながらも、千夏は千晶の荷物を収納し、ストレージ内の本を確認する。 「お恥ずかしい話ですが、手元に未読の本が無いと少々落ち着かない性分ですので……」  日常生活では家族にしか知られていない事だったが、この会場ではいつでも本が手に入る状況では無いため、千晶は素直に打ち明けた。  周囲の人間には完璧な人として認知されたい欲求がある千晶も、この緊急事態ではプライドよりも効率化を優先しなければいけないと考えているからだ。  最後の砦である丁寧口調も、保っていられない状況が来るかも知れなかった。 「……では、一番軽い文庫サイズのこれで良いですか? 他のは結構重いのとかありますけど」  そう言って千夏が差し出したのは、『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』という本だった。  歴史書は多く読んでいたが、自分とは関係ないとしてこういった本は読んでいなかったため、千晶の欲求を満たすには十分な本である。  千晶は手にとって確認してみたが、どうやら自分の能力では本の中身まではわからないようだとホッとする。  全何ページだとか、糸栞が273ページに挟まっているだとか、そういった情報しか頭に入ってこない。 「重量の事まで考慮していただき、誠にありがとうございます。 早川さんは何か欲しい物はありますか?」  見返りというわけでも無いが、千晶は行動方針を決める一環として、千夏に訪ねた。  特に無いようであれば、I7の図書館・G9の診療所・J10の資源開拓プラントといった物資のありそうな場所に向かう予定であった(一つは完全に私事だが)。   「あー……ウチもコーヒー、というかカフェインが欲しいかなー、無いとヤバいかなー、みたいな……」 「わかりました。 では、民家にコーヒーが存在するかは不確かなので、G9の診療所に向かいましょう。 恐らく給湯室もあるでしょうし、カフェインの錠剤が置いてある可能性もあります。 その後、J10に置かれている資源開拓プラントに向かいます。 ここで早川さんの能力に必要な資源を探しましょう。 プラントは海上に存在していますが、早川さんの能力で簡単な小舟を作れば渡ることが出来ると考えられます。」  さながら企画会議のプレゼンテーションの様に、すらすらと千晶は方針を説明していく。 「もし仮にはぐれてしまった場合は、集落で最も南にある建物に集合しましょう。 地図に名称の記載されている建物は長時間の滞在には不向きだと考えられます。 大まかな方針は以上ですが、詳細な方針は実際に行動を開始してから決めましょう。 ここまでで何か質問はありますか?」 「いや、特に無いです」  千晶の問いに、千夏は即答で返した。  深く考えるのも面倒くさかったし、何かあればまた言ってくれるだろう、と千夏は半ば思考を放棄し始めていた。  千晶の立てた計画に不都合はないし、ディベートの様な事になったらなどと考えたくもなかったからだ。  では、ここを出ましょう、という千晶の声によって、行動は開始された。  去り際に放たれた千晶の提案によって、教室内の机や椅子をストレージに仕舞い、木と鉄の資源を稼ぐ。  教室はすっかり寂しくなり、そこから人影までも去っていく。  方や拳銃と本、方や手ぶらという、一見サバイバルをナメているような装備の2人は、診療所を目指し、分校を後にした。 【一日目・0時45分/G-7・分校周辺】 【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】 [状態]:健康、工兵変身状態、 [装備]:工兵服(シールドフル状態) [道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×42}分のリソース [思考・行動] 基本方針:千晶と行動し、生き残る。 1:カフェイン欲しい。 2:千晶さんに付いていけばなんとかなる。 3:舞に合ったら一発シメてやる。 [備考] ※石黒千晶と情報交換しました。 ※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。 ※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。 ※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。 【石黒千晶@『直観』/HEROS】 [状態]:健康 [装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯 [道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』) [思考・行動] 基本方針:生き残る。 1:診療所へ向かう。 2:資源開拓プラントへ向かう。 3:協力者を増やす。 [備考] ※早川千夏と情報交換しました。 ※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。 |[[日常のオワリ 物語のハジマリ]]|時系列順|[[GOD&DEVIL]]| |[[風吹けば]]|投下順|[[ ]]| |&color(blue){GAME START}|早川千夏|[[秩序・狂と混沌たち]]| |&color(blue){GAME START}|石黒千晶|[[秩序・狂と混沌たち]]|

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