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天草士郎という少年は恵まれている。それはだれの目にも疑いようがない。 日本有数の大企業『天草財閥』の御曹司、道を歩けば10人中10人が振り返る程の美形、そして美人な妹と婚約者。 これで恵まれていないなどと卑下しようものなら周囲からの袋叩きは必定である。 そのためか、また自身の御曹司という立場もあり、彼は普段より非常に物腰柔らかな人間であると知られている。 事実、彼は父親の影響で重度の特撮オタクであること以外は完璧と言ってよい人格を有しており、人とのコミュニケーションなどで困ったことはほとんどない。 そう、ほとんどである。 「何をしているんですか!急ぎますよ、オニイサマ!」 誰にでも苦手なものは存在する。 その数少ない例外の一人が現在、彼の目の前にいる少女である。 「え?あ……うん、……オニイサマ?同い年だった……よね、僕ら」 「……?ゆたかちゃんのお兄さんの天草士郎。違いますか?」 「あぁ……うん……ソウデスネ……、はぁ」 頭を抱えたくなるのを必死でこらえながら士郎は心なしかうれしそうに話す少女、江本咲穂の言葉を聞き流す。 士郎は彼女が得意ではない。 むしろ苦手と言っていい。 付き合いの時間自体は短くはなく、人によっては二人の関係は幼馴染だと言うほどには長い。 ただ、その事実に反して二人の関係は浅い。 元々誰かに依存気味な咲穂の性格を士郎が苦手としていたのもあるが、そもそもの原因は彼女のやや複雑な立ち位置にある。 天草財閥重鎮の娘であり、御曹司の縁者となるために送り込まれた少女。 妹、ゆたかは問題なく彼女と友人になれたが、情報の行き違いかすでに婚約者がいた士郎はそうもいかなかった。 無邪気に自分を慕ってくれる婚約者、あかねを悲しませるわけにもいかず、かと言って咲穂をないがしろにするわけにもいかず。 どっちつかずを続けること数年、気づけば咲穂の方が士郎への興味を無くしていた。 結果的にはゆたかに完全に押し付けてしまった形となってしまっている。 そして現在、自身の怠惰を猛烈に後悔している最中である。 「……はぁ」 もう何度目かにもなる溜息を吐きながら士郎は思考を切り替える。 過ぎたことを考えても仕方がない。大切なのはこれからのことだ。 「ええと。江本さん、これからの……」 「ゆたかちゃんを探します!」 半ば答えが分かり切った質問をするつもりだったが、想定以上に予想通りの言葉が返ってきてややひるむ。 彼女がゆたかに対して並々ならぬ思いを抱いているのは普段の恰好などから薄々感じてはいたが、 異常な状況ともいえる現在でもそれは健在のようでどことなく安心感を覚える。 しかし、彼女の言葉は間違ってはいないだろう。 あの場、ナオ・ヒューマによって殺し合いが告げられた小部屋、に彼の大切な家族がいたことは自身の目で確認済みだ。 士郎は昔、母を亡くした経験を持つ。 幼いながらに感じた当時の悲しみと喪失感は今も脳裏にこびりついて離れない。 今再び家族を失う可能性、しかも他人の手によって、そんなことは想像するだに怖気が走る。 そしてだからこそ、今は冷静さを保つべきときだと士郎は確信する。 もう二度とこの島で咲穂に出くわした時のような失態は犯さない。 「江本さん」 心中で密かに決心をしながら改めて咲穂に声をかける。 今度は質問ではなく、提案だ。 「僕らはお互いのことをもっと知るべきだと思うんだ」 向き合うべきなのだろう、今度こそ。 【一日目・2時00分/D-3・丘】 【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】 [状態]:精神疲労(小) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3) [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らない、 1:咲穂と向き合い、情報交換 2:家族を優先的に探す ◆ 士郎が犯した失態は一つ。 殺し合いへの焦りと家族への心配、それらがない交ぜとなった状態で咲穂と遭遇。 その結果、普段はあり得ないことだが『咲穂とゆたかを間違えた』。 彼はまだ知らない。 咲穂が彼の妹、ゆたかに対して抱いている想いの正体を。 愛や忠誠などとはまた違う、自己投影そして同一視という脆く歪んだ感情を。 『ゆたかの兄が自分をゆたかと間違えた』という事実が彼女の中にどう響くのか。 天草士郎はまだ何も知らない。 【一日目・2時00分/D-3・丘】 【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】 [状態]:健康、上機嫌 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3) [思考・行動] 基本方針:ゆたかちゃんを最優先 1:??? |[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|時系列順|さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を| |[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|投下順|さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を| |&color(blue){GAME START}|天草 士郎|| |&color(blue){GAME START}|江本咲穂||
天草士郎という少年は恵まれている。それはだれの目にも疑いようがない。 日本有数の大企業『天草財閥』の御曹司、道を歩けば10人中10人が振り返る程の美形、そして美人な妹と婚約者。 これで恵まれていないなどと卑下しようものなら周囲からの袋叩きは必定である。 そのためか、また自身の御曹司という立場もあり、彼は普段より非常に物腰柔らかな人間であると知られている。 事実、彼は父親の影響で重度の特撮オタクであること以外は完璧と言ってよい人格を有しており、人とのコミュニケーションなどで困ったことはほとんどない。 そう、ほとんどである。 「何をしているんですか!急ぎますよ、オニイサマ!」 誰にでも苦手なものは存在する。 その数少ない例外の一人が現在、彼の目の前にいる少女である。 「え?あ……うん、……オニイサマ?同い年だった……よね、僕ら」 「……?ゆたかちゃんのお兄さんの天草士郎。違いますか?」 「あぁ……うん……ソウデスネ……、はぁ」 頭を抱えたくなるのを必死でこらえながら士郎は心なしかうれしそうに話す少女、江本咲穂の言葉を聞き流す。 士郎は彼女が得意ではない。 むしろ苦手と言っていい。 付き合いの時間自体は短くはなく、人によっては二人の関係は幼馴染だと言うほどには長い。 ただ、その事実に反して二人の関係は浅い。 元々誰かに依存気味な咲穂の性格を士郎が苦手としていたのもあるが、そもそもの原因は彼女のやや複雑な立ち位置にある。 天草財閥重鎮の娘であり、御曹司の縁者となるために送り込まれた少女。 妹、ゆたかは問題なく彼女と友人になれたが、情報の行き違いかすでに婚約者がいた士郎はそうもいかなかった。 無邪気に自分を慕ってくれる婚約者、あかねを悲しませるわけにもいかず、かと言って咲穂をないがしろにするわけにもいかず。 どっちつかずを続けること数年、気づけば咲穂の方が士郎への興味を無くしていた。 結果的にはゆたかに完全に押し付けてしまった形となってしまっている。 そして現在、自身の怠惰を猛烈に後悔している最中である。 「……はぁ」 もう何度目かにもなる溜息を吐きながら士郎は思考を切り替える。 過ぎたことを考えても仕方がない。大切なのはこれからのことだ。 「ええと。江本さん、これからの……」 「ゆたかちゃんを探します!」 半ば答えが分かり切った質問をするつもりだったが、想定以上に予想通りの言葉が返ってきてややひるむ。 彼女がゆたかに対して並々ならぬ思いを抱いているのは普段の恰好などから薄々感じてはいたが、 異常な状況ともいえる現在でもそれは健在のようでどことなく安心感を覚える。 しかし、彼女の言葉は間違ってはいないだろう。 あの場、ナオ・ヒューマによって殺し合いが告げられた小部屋、に彼の大切な家族がいたことは自身の目で確認済みだ。 士郎は昔、母を亡くした経験を持つ。 幼いながらに感じた当時の悲しみと喪失感は今も脳裏にこびりついて離れない。 今再び家族を失う可能性、しかも他人の手によって、そんなことは想像するだに怖気が走る。 そしてだからこそ、今は冷静さを保つべきときだと士郎は確信する。 もう二度とこの島で咲穂に出くわした時のような失態は犯さない。 「江本さん」 心中で密かに決心をしながら改めて咲穂に声をかける。 今度は質問ではなく、提案だ。 「僕らはお互いのことをもっと知るべきだと思うんだ」 向き合うべきなのだろう、今度こそ。 【一日目・2時00分/D-3・丘】 【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】 [状態]:精神疲労(小) [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3) [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らない、 1:咲穂と向き合い、情報交換 2:家族を優先的に探す ◆ 士郎が犯した失態は一つ。 殺し合いへの焦りと家族への心配、それらがない交ぜとなった状態で咲穂と遭遇。 その結果、普段はあり得ないことだが『咲穂とゆたかを間違えた』。 彼はまだ知らない。 咲穂が彼の妹、ゆたかに対して抱いている想いの正体を。 愛や忠誠などとはまた違う、自己投影そして同一視という脆く歪んだ感情を。 『ゆたかの兄が自分をゆたかと間違えた』という事実が彼女の中にどう響くのか。 天草士郎はまだ何も知らない。 【一日目・2時00分/D-3・丘】 【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】 [状態]:健康、上機嫌 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3) [思考・行動] 基本方針:ゆたかちゃんを最優先 1:??? |[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|時系列順|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]| |[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|投下順|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]| |&color(blue){GAME START}|天草 士郎|| |&color(blue){GAME START}|江本咲穂||

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