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対ちょっぴり怖い資産家」(2017/07/07 (金) 09:07:08) の最新版変更点

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 G-2の山の中腹部、午前1時を少し過ぎたころ、トーマス・ベイカーと鏑木シリカは地図を見ていた。  シリカの着替えを探す為に、そしてトーマスとシリカの間で交わされた約束を書いた誓約書を作る為に必要なものがありそうな場所を探していた。。  とりあえず一番近い家に行こうということになり、E-4の井戸のある家を目指すことになる。  片やボロボロのパーカー、もう片方は高級そうなスーツ。  そんな山歩きには到底向いていないであろう格好のせいか、山を下りるのに少々手こずる2人。  やがて山を下り、平地に出ても目的地までの間に目印があるわけでもないから方位磁石や地図を見ながら四苦八苦。  こうして、直線距離ならそうたいした距離でもないE-4まで、結構な時間を掛けながら歩いた。  そして到着し、トーマスは家のドアノブに手を掛ける。  ノブを回して開けようとするも、ドアはガチャガチャというだけで開く気配を見せない。 「おかしい、開かないぞ」  ドアに対して悪戦苦闘するトーマス。  それを見ていたシリカはあることに気付く。 「あの、ベイカーさん……」 「何かねミス鏑木」 「……日本の家のドアは外開きです」  シリカの言葉にトーマスは思わず手を叩いていた。 「ああ、そういえばそうだったな。ここ数年日本に来る事が無かったから忘れていたよ」 「そう言えばベイカーさんはどこに住んでるんですか?」 「私はイギリス人だ」 「へぇ……」  などと雑談しながらトーマスは再びノブを回し、ドアを引く。  そしてドアが開き、シリカが目撃したのは2人の男だった。  1人は自分より年上、高校生くらいの男。  もう1人は小学生くらいの男の子だった。  その高校生は剣を持ち、小学生をかばいながら2人を睨む。  睨まれる原因は間違いなくシリカが着ている血まみれの服。だが今のシリカにはどうすることも出来ない。  すがる様な思いでトーマスを見るシリカ。  一方、見られたトーマスは睨まれていることなど気にも留めないような態度でこう言い放つ。 「言いたいことは分かっている。だがその前に自己紹介の一つでもしようじゃないか」 「「え?」」  トーマスの発言に驚き、台詞がハモってしまうシリカと高校生。  それを気にせずトーマスは自己紹介を始めた。 「私はトーマス・ベイカー、資産家だ。  そしてこちらは鏑木シリカ、私の同行者だ。  私も彼女も殺し合いには乗っていない」 「……どうも」  突然の展開について行けないながらも何とか挨拶はするシリカ。  一方、対峙している高校生は完全に呆気に取られている。 「どうした? こちらは自己紹介したのだから君達も自己紹介すべきではないのかね?」 「あ、はい。  俺は島原翼です。こっちは丹美寧斗」 「ふむ、よろしく頼む」  そう言ってトーマスは家に上がりこんだ。  靴のままで。 「えぇ……」  シリカは日本の家は靴を脱ぐんですよ、と言うべきかと思ったが我慢した。  なぜなら、何かあったときに靴のままの方が逃げやすいと考えたからだ。  だからシリカもトーマスに追従し、靴のままで家に上がった。 ◆  あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!  俺は血まみれの女の子相手に警戒していたら自己紹介されて、いつの間に上がりこまれていた。  何を言ってるのか分からないと思うが、俺も分からなかった……。 「なんでさ」  あまりの現状に思わずジョジョ風のモノローグをした挙句、衛宮士郎の口癖が飛び出してしまう翼。  その動揺など目に入らないとばかりにトーマスは話し始めた。 「正直信じてもらえるとは思っていないが、我々は殺し合いに乗っていない」  トーマスの言葉を黙って聞く翼。  翼はこの言葉をどう受け取るか考える。  疑うのが妥当だろう。しかし目の前の二人は武器も持たずこっちと話している。  自分は剣を持っているにも関わらずだ。  なら少なくともこの場で襲い掛かる気は無い、ということだろうか? 「なら、その子の服が血まみれなのはどういうことですか?」  とはいえこれだけは聞いておかなければならない。  乗っていないというなら服が血まみれな理由は聞かなければならない。  しかし、トーマスはその問いを当然のように予測していたのか、素早く回答を返してきた。 「ああこれかね?  これはこの殺し合いが始まる前に怪我をした犬と猫を抱えていたために付いた血だよ」 「犬と、猫? 人間の血じゃないのか…?」 「はい。これは怪我をしていた犬と猫を動物病院に連れて行こうとして抱きかかえていたときについた血です」  あらかじめ言っておくことを決めていたかのようなシリカの言葉を翼は黙って聞く。  そして翼はそれを受け入れる。 「分かりました、とりあえずあなた達を信じます」 「感謝する。後ろの少年、ミスタ丹美もそれでいいかね?」  トーマスは翼だけじゃなく寧斗にも確認を取る。  その言葉の後に翼が寧斗の方を見ると、寧斗は翼に抱き着きながら首を縦に振っていた。  翼は寧斗の反応を見て、これは怖いけど俺を信頼してくれてるんだな、と解釈した。 「ミスタ丹美にも礼を言おう」  そしてトーマスは寧斗に頭を下げた。  その行いに翼は軽く驚く。まさかこんな小さい子にまで礼儀を尽くすとは、と。  少なくともこのこの人は悪い人じゃないな。  子供をないがしろにしない人間に、悪い人はいないと思うし。  と翼は感心していた。 「それでは、悪いのだがいくつか頼みがある」 「頼み、ですか?」 「そうだ。まず一つはミス鏑木が着替えられそうな服を持っていないだろうか。  私が用意すべきだと思うのだが、ナオ=ヒューマはレディの服装には無頓着な男の様でね」 「殺し合いを暇つぶしで起こすような奴に、そんな甲斐性がある方が驚きですが……」 「それは言えているな」  軽口を叩きながら翼は考える。  寧斗君の支給品がアイスピックしかなかった以上、着替えは俺の支給品から出すことになる。  ――そういえば。 「えっと、こっちか?」  翼はデイバッグをガサゴソと探す。  そしてしばらくすると。 「あった、これだ」  そう言って翼はデイバッグから服を出す。  それは、黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイと言った黒一色の男性ものの服装だった。 「黒一色だな。喪服か何かかね?」 「違います」  実はこの服は、Fate/Zeroでセイバーが普段着としていた服装である。  Fate好きである翼は当然知っているのだが、その事をわざわざ説明すると長くなりそうなので説明しなかった。 「デザインの是非はともかくとして、なかなかいい生地を使っているなこの服は」 「……そうなんですか?」 「うむ、そうだ」  シリカの疑問の言葉に強く言い切ったトーマス。  その言葉を聞いてシリカはスーツをじっと見るものの、やはり分からないのか首をひねる。 「では着替えてくると良い。  ミスタ島原、彼女にどこか着替えが出来そうな場所を教えてやってくれ」 「それならあっちに洗面台があります」  そう言って翼は指を指す。  その方向を見てシリカは服を持ち歩いていくが、その途中小声で呟く。 「似合うかな、こんな服」 「君なら似合うさ」  小声での呟きに律儀に反応され、シリカは恥ずかしかったのか顔を赤らめながら洗面台へ駆け込む。  それを見ていた翼は思わずこう言った。 「喪服とか言ってませんでした?」 「彼女が着れば何でも似合うさ」  翼は何も言えなかった。 ◆  ――早く出てってくんねえかな、あいつら。  それが丹美寧斗のトーマス・ベイカーと鏑木シリカへの偽りなき思いだった。  そもそも殺し合いに乗っているいないはともかく、こっちを攻撃する意図が無いのは分かっていた。  シリカが血まみれなのには少々驚いたが、あいつが人を殺した直後の人間かどうかくらい見れば分かる。  素振りとして怯えている様子を見せていたが、あんなものはほとんどポーズだ。  だからこそ、少なくともこの2人に対し警戒する気は寧斗には無かった。  だからといって気を休められるかと言われれば、そんなことは無い。  寧斗にとってはトーマスもシリカも厄介な存在だ。  この場で殺したいとは言えないが、さっさと死んでほしいと思っている。  なぜなら、寧斗から見て2人は余りにも異様なのだ。  殺人鬼なのに異様に見えるのか、殺人鬼だから異様に見えるのか分からないが、とにかく寧斗には異様に見える。  まずは目の前に居るトーマス・ベイカー。  寧斗にはこの男が自分と近い、あるいはそれ以上の欲求を持っているように見える。  殺し合いに乗っていないというからには無闇矢鱈に殺さないとしても、殺し合いに乗った参加者は躊躇なく殺す、そんな目をしている。  否、『殺す』だけで済むのだろうか。何か自分でもしない『それ以上』を望んでいるような――  そんな気がする。  次にこの場にはいない鏑木シリカ。  こっちはトーマス・ベイカーほど警戒する相手じゃない。  犬猫を殺すのが趣味の様だが、人の代わりに殺しているわけじゃなさそうだ。  それに、あいつみたいな雰囲気の人間は何度か見たことがある。  かつて入院していた精神病院でも、シリカみたいにどこに向かえばいいのか分からない人間はいた。  トーマスみたいに強い意志を持った人間を、道しるべにしなければ歩くこともままならない人間は。 (だからこそ、あいつの方がやばいかもしれない)  裏を返せば、道しるべがなくなると何処に向かうか分からなくなるということだから。  何をするか分からない奴ほど危険な奴はいない。 (それに、あの目……)  寧斗は一瞬だけシリカの目を見た。  その目を見たとき、寧斗は得体のしれない恐怖を覚えた。  自分よりも年下の、自分では何も決められなさそうな子供の目を見ただけで。 (異能か?)  そうでもなければありえない、と寧斗は思う。  だが同時にこうも考える。  ただ恐怖を与えるだけが、あいつの異能なのか。  これは自分の異能がT-1000、翼の異能が衛宮士郎の能力だったからこそ起きた考えだ。  寧斗は無意識に、参加者に授与された異能は相手にダメージを与えるものだと考えていた。 「寧斗君、寧斗君!」  寧斗が考えに耽っていると、いつの間にか翼が寧斗を読んでいた。  寧斗は慌てて返事をする。 「え、えっと……。何、お兄ちゃん?」 「いや、ベイカーさんが白い紙を欲しがっていてね。ちょっと探してきてほしかったんだ。  ひょっとして寝ていたかな? まあ今は深夜だから眠くてもしょうがないとは思うけど」  この状況で寝れるとかどんだけ肝太いんだよ、と寧斗は思わず内心でツッコミを入れる。  すろと、洗面台のほうから音がする。鏑木シリカが帰ってきたのだ。 「……着替えてきました」 「ふむ、見違えるようだね」  トーマスは着替えをしたシリカを褒める。  だが寧斗としてはあまり見たくないので立ち上がり 「じゃあ、僕は紙を探してくるね!」  と言ってシリカに背を向ける。  そして探し始めたのだが、幸か不幸か紙はあっさり見つかった。  どうもこの家の住人は、プリンターで印刷する用の紙を一纏めにするタイプらしい。  その紙を恨めし気に見つめながらも、これ渡したらさっさと出て行ってくれるかもしれない。  そう思った寧斗はさっさと紙束を持って翼たちの元へ帰る。  そして紙束をトーマスに渡した。 「1枚で良かったのだが……」 「そうなの?」 「いや、これは私の落ち度だな」  そうだよ、そう言う事は先に言えよ。と寧斗は腹の底で思う。  だがトーマスにそんな思いは理解できるはずも無く、筆記用具を取り出し何かを書き始めた。  その間はなぜか喋りにくいのか誰も喋らなかったのだが、やがてシリカがある話題を切り出した。 「あの、島原さんちょっといいですか?」 「何?」 「……島原さんって、アニメとか漫画とかって詳しいですか」 「……まあ、それなりには」 「良かった。ちょっと見てほしいものがあるんです。  多分私の異能に関するものだと思うんですけど、何なのかよく分からなくて」  そう言いながらシリカはデイバッグからあるものを取り出す。  それは本だ。分厚いハードカバーの本、表紙には苦しんでいるであろう人の顔が浮かんでいる。  寧斗は気味の悪い本だなとしか思わないが、翼はそれを知っているのか驚愕を顕わにしていた。 「これって……、螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)!?」 「……何ですかそれ?」 「ジル・ド・レェの宝具……、ルルイエ異本の劣化コピー……!」  シリカの疑問の声に答えながら、翼は螺湮城教本を見つめる。  やがて翼は大きく息を吸い、吐く。  それで落ち着いたのか翼は説明を始めた。 「えっとこれは魔道書でね、これを使えば魔術が使えるようになる」 「魔術ですか……」 「ああ、確か海魔を召喚できるはずだ」 「……じゃあ、後でやってみようかな」  魔術が使えると聞いて好奇心を浮かべた表情をするシリカ。  しかし翼はシリカを慌てて止める。 「いや、これ元はクトゥルフ神話の魔道書だから、多分読んだら正気度が削られる。最悪発狂だ」 「発狂ですか……」  発狂と聞いて使いたい気持ちがいっきに薄れるシリカ。  それでもいざという時には使えるかもと考え、シリカは本を手に持っておく。 「言ったはいいけど発狂とかするのかなぁ?  してもおかしくないとは思うけど、本編で読んでたの旦那だけだもんなぁ。  常時SAN値0みたいなメンツだったから分からねえよ畜生」  などとぼやきながら頭を抱える翼を寧斗とシリカは見ないことにした。  そうこうしていると、トーマスが書き終えたのか紙と筆記用具をしまい顔を上げた。 「これで私たちの用は済んだ。  そこで礼と言ってはなんだが、これを受け取って欲しい」  そう言ってトーマスはデイバッグから銃を取り出した。  短銃身の六連発リボルバー、銃の名手でもないと使いにくそうだなと寧斗は思う。  一方、翼は銃を見て顔を顰める。 「あの、すいませんけど俺の異能の都合上銃よりも剣の方がありがたいんですけど」 「そうか、ではミスタ丹美に渡そう」 「いや子供に銃を渡さないで下さいよ」 「ふむ、ではこの銃は私が持とう」  トーマスはそう告げると懐に銃をしまう。  そしてシリカに呼びかける。 「ミス鏑木、私は剣を持っていないのだが君は持っているかね?」 「……持っていますよ」  シリカはトーマスに返答すると、デイバッグから剣を取り出す。  それは刀だった。剣の素人である寧斗にも分かるほどの業物の刀だった。 「説明書によれば和道一文字っていう刀らしいです」 「確か、ワンピースのゾロが使ってた奴だっけ……。  ありがとう、良いもの貰ったよ」  翼は感謝をシリカに向けてするも、シリカは照れているのか顔をそむける。  その様子を見ていたトーマスは立ち上がり一言。 「では我々はこれで失礼させてもらおう」  やれやれやっと出ていくのか、と思う寧斗。  それとは対照的に翼は慌て気味にトーマスを引き留める。 「ちょっと待って下さい! 一緒に行動しないんですか!?」 「……その気持ちは尊いと思うが、君と我々では必ず破綻する」  翼の引き留めを無下に切り捨てるトーマス。  しかし翼はそんなことで納得しない。 「破綻ってどういうことですか!?」 「私達と君ではいずれ仲たがいするということだ。  ……例えば、君がもし殺し合いに乗った参加者と遭遇した時どうする?」 「説得しますよ」  トーマスの問いに翼は即答した。  その答えにトーマスは感心したような口ぶりを見せる。 「素晴らしい回答だ。  だが私達はそうではない、私達は殺す。  相手がどんな理由であっても、殺し合いに乗るのであれば殺す」 「そんな……」 「それほどの正義感と優しさを持つとは、今時珍しい若者だな君は。  願わくば、君に幸運があることを祈る」  そう言ってトーマスは家のドアを開け出ていく。  それにシリカも追従しようとするが、翼は必死に引き留めた。 「鏑木、お前はそれでいいのか!?  人を殺すなんて、そんなこと……!!」 「ごめんなさい、私はベイカーさんについて行くって決めましたから」  翼の言葉を拒絶するシリカ。  だがシリカは優しく微笑んでこう続けた。 「……でもあなたみたいな人がいてよかったと思います。  私貴方みたいに優しい人、人生で初めて出会いましたから」  それだけ言って、シリカも出て行った。  翼は二人の言葉がショックで、その場に膝を突いて落ち込む。 「そんな……」  一方、それを黙ってみていた寧斗は思った。  ――これ、俺が慰めなきゃいけないのか? 【一日目・2時00分/E-4・井戸の家】 【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】 [状態]:疲労(小)、落胆 [装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース [思考・行動] 基本方針:殺し合いの否定 1:ここで一夜を過ごす 2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい 3:寧斗は何がなんでも守る 4:ベイカーさんも、鏑木も、なんで…… [備考] ※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。 ※首輪は能力による構造解析は不可能です ※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。  また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました 【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】 [状態]:健康 [装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発 [道具]:基本支給品一式、アイスピック [思考・行動] 基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ 1:翼くんを慰めなきゃならないのか…… 2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する 3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる 4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない 5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する 6:いなくなって精々するぜ、あの2人は [備考] ※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。 ※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。 ※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能) ※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました ◆  井戸の家を出てすぐ、トーマスとシリカの2人は歩いていた。 「良かったんですか、出て行って?」 「構わんよ、彼は私の食人を絶対肯定しないだろうからな」  人喰いを肯定する人はどう考えても殺し合いに乗りそう、シリカはそうツッコミを入れたかった。 「それに、あのミスタ丹美は思ったより曲者かもしれないからね」 「曲者、ですか?」  言葉の意味が分からずシリカはオウム返しに問うてしまう。 「ああ、恐らくだが彼は異能で姿を変えた成人男性だ」 「……どうして、そう思うんですか?」  シリカには分からない。  シリカには、彼はただの子供にしか見えなかった。 「まず第一に、彼は冷静過ぎた。  血まみれの少女がいきなり出てきたら、もっと慌てふためいてもいいだろう?」 「それは、そうですね……」 「第二に、彼はこちらを追い出そうとしていた。  紙を探すのを引き受けたり、引き留めようとしたミスタ島原を静観したりとね」 「成程……」  言われたことにとりあえず納得の意を示すシリカ。  しかし疑問は残る。 「じゃあ、何で島原さんに言わなかったんですか? 何か忠告くらい……」 「証拠が何一つないからさ。  その状況で何を言っても彼は聞きはしないだろうし、下手をすれば彼が殺されかねない」  その言葉に理解はできるものの、納得のできないシリカ。 「君の気持ちは分かる。だが私にも君にもやりたいことがあるのだから、あまりそればかりに目を向けるな」 「はい……」  こうして2人は進んでいく。  殺し合いの打破を、そして人生初の食人を目指して。 「島原さん……」  少女の心にしこりを残して。 【一日目・2時00分/E-4・井戸の家付近】 【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】 [状態]:健康 [装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し) [思考・行動] 基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する 1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す 2:ミスタ丹美は怪しい 3:今時珍しい若者だな、ミスタ島原は [備考] ※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。 ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました ※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました ※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします 【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】 [状態]:健康 [装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/ [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書 [思考・行動] 基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい 1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。 2:あんまり使いたくないな、私の異能…… 3:島原さんは今までの人生で一番いい人かもしれないから、死んでほしくない [備考] ※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました ※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします ※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました ※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします 【支給品紹介】 【セイバーのスーツ@Fate/Zero】 霊体化出来ないセイバーの為にアイリスフィールが選んだ服。 黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイというダークスーツ。 【グイード・ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険】 第五部、黄金の風に登場した銃。 ミスタが愛用している銃で、短銃身の六連発リボルバー。 【和道一文字@ワンピース】 ゾロが最初期から所持している刀。 元々はゾロの幼馴染くいなが所持していた物。 買おうとするなら1000万ベリーは下らない名刀である。 |[[女三人寄れば姦しい]]|時系列順|| |[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|投下順|| |[[セイギトアクイ]]|島原翼|| |[[セイギトアクイ]]|丹美寧斗|| |[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|トーマス・ベイカー|| |[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|鏑木シリカ||
 G-2の山の中腹部、午前1時を少し過ぎたころ、トーマス・ベイカーと鏑木シリカは地図を見ていた。  シリカの着替えを探す為に、そしてトーマスとシリカの間で交わされた約束を書いた誓約書を作る為に必要なものがありそうな場所を探していた。。  とりあえず一番近い家に行こうということになり、E-4の井戸のある家を目指すことになる。  片やボロボロのパーカー、もう片方は高級そうなスーツ。  そんな山歩きには到底向いていないであろう格好のせいか、山を下りるのに少々手こずる2人。  やがて山を下り、平地に出ても目的地までの間に目印があるわけでもないから方位磁石や地図を見ながら四苦八苦。  こうして、直線距離ならそうたいした距離でもないE-4まで、結構な時間を掛けながら歩いた。  そして到着し、トーマスは家のドアノブに手を掛ける。  ノブを回して開けようとするも、ドアはガチャガチャというだけで開く気配を見せない。 「おかしい、開かないぞ」  ドアに対して悪戦苦闘するトーマス。  それを見ていたシリカはあることに気付く。 「あの、ベイカーさん……」 「何かねミス鏑木」 「……日本の家のドアは外開きです」  シリカの言葉にトーマスは思わず手を叩いていた。 「ああ、そういえばそうだったな。ここ数年日本に来る事が無かったから忘れていたよ」 「そう言えばベイカーさんはどこに住んでるんですか?」 「私はイギリス人だ」 「へぇ……」  などと雑談しながらトーマスは再びノブを回し、ドアを引く。  そしてドアが開き、シリカが目撃したのは2人の男だった。  1人は自分より年上、高校生くらいの男。  もう1人は小学生くらいの男の子だった。  その高校生は剣を持ち、小学生をかばいながら2人を睨む。  睨まれる原因は間違いなくシリカが着ている血まみれの服。だが今のシリカにはどうすることも出来ない。  すがる様な思いでトーマスを見るシリカ。  一方、見られたトーマスは睨まれていることなど気にも留めないような態度でこう言い放つ。 「言いたいことは分かっている。だがその前に自己紹介の一つでもしようじゃないか」 「「え?」」  トーマスの発言に驚き、台詞がハモってしまうシリカと高校生。  それを気にせずトーマスは自己紹介を始めた。 「私はトーマス・ベイカー、資産家だ。  そしてこちらは鏑木シリカ、私の同行者だ。  私も彼女も殺し合いには乗っていない」 「……どうも」  突然の展開について行けないながらも何とか挨拶はするシリカ。  一方、対峙している高校生は完全に呆気に取られている。 「どうした? こちらは自己紹介したのだから君達も自己紹介すべきではないのかね?」 「あ、はい。  俺は島原翼です。こっちは丹美寧斗」 「ふむ、よろしく頼む」  そう言ってトーマスは家に上がりこんだ。  靴のままで。 「えぇ……」  シリカは日本の家は靴を脱ぐんですよ、と言うべきかと思ったが我慢した。  なぜなら、何かあったときに靴のままの方が逃げやすいと考えたからだ。  だからシリカもトーマスに追従し、靴のままで家に上がった。 ◆  あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!  俺は血まみれの女の子相手に警戒していたら自己紹介されて、いつの間に上がりこまれていた。  何を言ってるのか分からないと思うが、俺も分からなかった……。 「なんでさ」  あまりの現状に思わずジョジョ風のモノローグをした挙句、衛宮士郎の口癖が飛び出してしまう翼。  その動揺など目に入らないとばかりにトーマスは話し始めた。 「正直信じてもらえるとは思っていないが、我々は殺し合いに乗っていない」  トーマスの言葉を黙って聞く翼。  翼はこの言葉をどう受け取るか考える。  疑うのが妥当だろう。しかし目の前の二人は武器も持たずこっちと話している。  自分は剣を持っているにも関わらずだ。  なら少なくともこの場で襲い掛かる気は無い、ということだろうか? 「なら、その子の服が血まみれなのはどういうことですか?」  とはいえこれだけは聞いておかなければならない。  乗っていないというなら服が血まみれな理由は聞かなければならない。  しかし、トーマスはその問いを当然のように予測していたのか、素早く回答を返してきた。 「ああこれかね?  これはこの殺し合いが始まる前に怪我をした犬と猫を抱えていたために付いた血だよ」 「犬と、猫? 人間の血じゃないのか…?」 「はい。これは怪我をしていた犬と猫を動物病院に連れて行こうとして抱きかかえていたときについた血です」  あらかじめ言っておくことを決めていたかのようなシリカの言葉を翼は黙って聞く。  そして翼はそれを受け入れる。 「分かりました、とりあえずあなた達を信じます」 「感謝する。後ろの少年、ミスタ丹美もそれでいいかね?」  トーマスは翼だけじゃなく寧斗にも確認を取る。  その言葉の後に翼が寧斗の方を見ると、寧斗は翼に抱き着きながら首を縦に振っていた。  翼は寧斗の反応を見て、これは怖いけど俺を信頼してくれてるんだな、と解釈した。 「ミスタ丹美にも礼を言おう」  そしてトーマスは寧斗に頭を下げた。  その行いに翼は軽く驚く。まさかこんな小さい子にまで礼儀を尽くすとは、と。  少なくともこのこの人は悪い人じゃないな。  子供をないがしろにしない人間に、悪い人はいないと思うし。  と翼は感心していた。 「それでは、悪いのだがいくつか頼みがある」 「頼み、ですか?」 「そうだ。まず一つはミス鏑木が着替えられそうな服を持っていないだろうか。  私が用意すべきだと思うのだが、ナオ=ヒューマはレディの服装には無頓着な男の様でね」 「殺し合いを暇つぶしで起こすような奴に、そんな甲斐性がある方が驚きですが……」 「それは言えているな」  軽口を叩きながら翼は考える。  寧斗君の支給品がアイスピックしかなかった以上、着替えは俺の支給品から出すことになる。  ――そういえば。 「えっと、こっちか?」  翼はデイバッグをガサゴソと探す。  そしてしばらくすると。 「あった、これだ」  そう言って翼はデイバッグから服を出す。  それは、黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイと言った黒一色の男性ものの服装だった。 「黒一色だな。喪服か何かかね?」 「違います」  実はこの服は、Fate/Zeroでセイバーが普段着としていた服装である。  Fate好きである翼は当然知っているのだが、その事をわざわざ説明すると長くなりそうなので説明しなかった。 「デザインの是非はともかくとして、なかなかいい生地を使っているなこの服は」 「……そうなんですか?」 「うむ、そうだ」  シリカの疑問の言葉に強く言い切ったトーマス。  その言葉を聞いてシリカはスーツをじっと見るものの、やはり分からないのか首をひねる。 「では着替えてくると良い。  ミスタ島原、彼女にどこか着替えが出来そうな場所を教えてやってくれ」 「それならあっちに洗面台があります」  そう言って翼は指を指す。  その方向を見てシリカは服を持ち歩いていくが、その途中小声で呟く。 「似合うかな、こんな服」 「君なら似合うさ」  小声での呟きに律儀に反応され、シリカは恥ずかしかったのか顔を赤らめながら洗面台へ駆け込む。  それを見ていた翼は思わずこう言った。 「喪服とか言ってませんでした?」 「彼女が着れば何でも似合うさ」  翼は何も言えなかった。 ◆  ――早く出てってくんねえかな、あいつら。  それが丹美寧斗のトーマス・ベイカーと鏑木シリカへの偽りなき思いだった。  そもそも殺し合いに乗っているいないはともかく、こっちを攻撃する意図が無いのは分かっていた。  シリカが血まみれなのには少々驚いたが、あいつが人を殺した直後の人間かどうかくらい見れば分かる。  素振りとして怯えている様子を見せていたが、あんなものはほとんどポーズだ。  だからこそ、少なくともこの2人に対し警戒する気は寧斗には無かった。  だからといって気を休められるかと言われれば、そんなことは無い。  寧斗にとってはトーマスもシリカも厄介な存在だ。  この場で殺したいとは言えないが、さっさと死んでほしいと思っている。  なぜなら、寧斗から見て2人は余りにも異様なのだ。  殺人鬼なのに異様に見えるのか、殺人鬼だから異様に見えるのか分からないが、とにかく寧斗には異様に見える。  まずは目の前に居るトーマス・ベイカー。  寧斗にはこの男が自分と近い、あるいはそれ以上の欲求を持っているように見える。  殺し合いに乗っていないというからには無闇矢鱈に殺さないとしても、殺し合いに乗った参加者は躊躇なく殺す、そんな目をしている。  否、『殺す』だけで済むのだろうか。何か自分でもしない『それ以上』を望んでいるような――  そんな気がする。  次にこの場にはいない鏑木シリカ。  こっちはトーマス・ベイカーほど警戒する相手じゃない。  犬猫を殺すのが趣味の様だが、人の代わりに殺しているわけじゃなさそうだ。  それに、あいつみたいな雰囲気の人間は何度か見たことがある。  かつて入院していた精神病院でも、シリカみたいにどこに向かえばいいのか分からない人間はいた。  トーマスみたいに強い意志を持った人間を、道しるべにしなければ歩くこともままならない人間は。 (だからこそ、あいつの方がやばいかもしれない)  裏を返せば、道しるべがなくなると何処に向かうか分からなくなるということだから。  何をするか分からない奴ほど危険な奴はいない。 (それに、あの目……)  寧斗は一瞬だけシリカの目を見た。  その目を見たとき、寧斗は得体のしれない恐怖を覚えた。  自分よりも年下の、自分では何も決められなさそうな子供の目を見ただけで。 (異能か?)  そうでもなければありえない、と寧斗は思う。  だが同時にこうも考える。  ただ恐怖を与えるだけが、あいつの異能なのか。  これは自分の異能がT-1000、翼の異能が衛宮士郎の能力だったからこそ起きた考えだ。  寧斗は無意識に、参加者に授与された異能は相手にダメージを与えるものだと考えていた。 「寧斗君、寧斗君!」  寧斗が考えに耽っていると、いつの間にか翼が寧斗を読んでいた。  寧斗は慌てて返事をする。 「え、えっと……。何、お兄ちゃん?」 「いや、ベイカーさんが白い紙を欲しがっていてね。ちょっと探してきてほしかったんだ。  ひょっとして寝ていたかな? まあ今は深夜だから眠くてもしょうがないとは思うけど」  この状況で寝れるとかどんだけ肝太いんだよ、と寧斗は思わず内心でツッコミを入れる。  すろと、洗面台のほうから音がする。鏑木シリカが帰ってきたのだ。 「……着替えてきました」 「ふむ、見違えるようだね」  トーマスは着替えをしたシリカを褒める。  だが寧斗としてはあまり見たくないので立ち上がり 「じゃあ、僕は紙を探してくるね!」  と言ってシリカに背を向ける。  そして探し始めたのだが、幸か不幸か紙はあっさり見つかった。  どうもこの家の住人は、プリンターで印刷する用の紙を一纏めにするタイプらしい。  その紙を恨めし気に見つめながらも、これ渡したらさっさと出て行ってくれるかもしれない。  そう思った寧斗はさっさと紙束を持って翼たちの元へ帰る。  そして紙束をトーマスに渡した。 「1枚で良かったのだが……」 「そうなの?」 「いや、これは私の落ち度だな」  そうだよ、そう言う事は先に言えよ。と寧斗は腹の底で思う。  だがトーマスにそんな思いは理解できるはずも無く、筆記用具を取り出し何かを書き始めた。  その間はなぜか喋りにくいのか誰も喋らなかったのだが、やがてシリカがある話題を切り出した。 「あの、島原さんちょっといいですか?」 「何?」 「……島原さんって、アニメとか漫画とかって詳しいですか」 「……まあ、それなりには」 「良かった。ちょっと見てほしいものがあるんです。  多分私の異能に関するものだと思うんですけど、何なのかよく分からなくて」  そう言いながらシリカはデイバッグからあるものを取り出す。  それは本だ。分厚いハードカバーの本、表紙には苦しんでいるであろう人の顔が浮かんでいる。  寧斗は気味の悪い本だなとしか思わないが、翼はそれを知っているのか驚愕を顕わにしていた。 「これって……、螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)!?」 「……何ですかそれ?」 「ジル・ド・レェの宝具……、ルルイエ異本の劣化コピー……!」  シリカの疑問の声に答えながら、翼は螺湮城教本を見つめる。  やがて翼は大きく息を吸い、吐く。  それで落ち着いたのか翼は説明を始めた。 「えっとこれは魔道書でね、これを使えば魔術が使えるようになる」 「魔術ですか……」 「ああ、確か海魔を召喚できるはずだ」 「……じゃあ、後でやってみようかな」  魔術が使えると聞いて好奇心を浮かべた表情をするシリカ。  しかし翼はシリカを慌てて止める。 「いや、これ元はクトゥルフ神話の魔道書だから、多分読んだら正気度が削られる。最悪発狂だ」 「発狂ですか……」  発狂と聞いて使いたい気持ちがいっきに薄れるシリカ。  それでもいざという時には使えるかもと考え、シリカは本を手に持っておく。 「言ったはいいけど発狂とかするのかなぁ?  してもおかしくないとは思うけど、本編で読んでたの旦那だけだもんなぁ。  常時SAN値0みたいなメンツだったから分からねえよ畜生」  などとぼやきながら頭を抱える翼を寧斗とシリカは見ないことにした。  そうこうしていると、トーマスが書き終えたのか紙と筆記用具をしまい顔を上げた。 「これで私たちの用は済んだ。  そこで礼と言ってはなんだが、これを受け取って欲しい」  そう言ってトーマスはデイバッグから銃を取り出した。  短銃身の六連発リボルバー、銃の名手でもないと使いにくそうだなと寧斗は思う。  一方、翼は銃を見て顔を顰める。 「あの、すいませんけど俺の異能の都合上銃よりも剣の方がありがたいんですけど」 「そうか、ではミスタ丹美に渡そう」 「いや子供に銃を渡さないで下さいよ」 「ふむ、ではこの銃は私が持とう」  トーマスはそう告げると懐に銃をしまう。  そしてシリカに呼びかける。 「ミス鏑木、私は剣を持っていないのだが君は持っているかね?」 「……持っていますよ」  シリカはトーマスに返答すると、デイバッグから剣を取り出す。  それは刀だった。剣の素人である寧斗にも分かるほどの業物の刀だった。 「説明書によれば和道一文字っていう刀らしいです」 「確か、ワンピースのゾロが使ってた奴だっけ……。  ありがとう、良いもの貰ったよ」  翼は感謝をシリカに向けてするも、シリカは照れているのか顔をそむける。  その様子を見ていたトーマスは立ち上がり一言。 「では我々はこれで失礼させてもらおう」  やれやれやっと出ていくのか、と思う寧斗。  それとは対照的に翼は慌て気味にトーマスを引き留める。 「ちょっと待って下さい! 一緒に行動しないんですか!?」 「……その気持ちは尊いと思うが、君と我々では必ず破綻する」  翼の引き留めを無下に切り捨てるトーマス。  しかし翼はそんなことで納得しない。 「破綻ってどういうことですか!?」 「私達と君ではいずれ仲たがいするということだ。  ……例えば、君がもし殺し合いに乗った参加者と遭遇した時どうする?」 「説得しますよ」  トーマスの問いに翼は即答した。  その答えにトーマスは感心したような口ぶりを見せる。 「素晴らしい回答だ。  だが私達はそうではない、私達は殺す。  相手がどんな理由であっても、殺し合いに乗るのであれば殺す」 「そんな……」 「それほどの正義感と優しさを持つとは、今時珍しい若者だな君は。  願わくば、君に幸運があることを祈る」  そう言ってトーマスは家のドアを開け出ていく。  それにシリカも追従しようとするが、翼は必死に引き留めた。 「鏑木、お前はそれでいいのか!?  人を殺すなんて、そんなこと……!!」 「ごめんなさい、私はベイカーさんについて行くって決めましたから」  翼の言葉を拒絶するシリカ。  だがシリカは優しく微笑んでこう続けた。 「……でもあなたみたいな人がいてよかったと思います。  私貴方みたいに優しい人、人生で初めて出会いましたから」  それだけ言って、シリカも出て行った。  翼は二人の言葉がショックで、その場に膝を突いて落ち込む。 「そんな……」  一方、それを黙ってみていた寧斗は思った。  ――これ、俺が慰めなきゃいけないのか? 【一日目・2時00分/E-4・井戸の家】 【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】 [状態]:疲労(小)、落胆 [装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース [思考・行動] 基本方針:殺し合いの否定 1:ここで一夜を過ごす 2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい 3:寧斗は何がなんでも守る 4:ベイカーさんも、鏑木も、なんで…… [備考] ※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。 ※首輪は能力による構造解析は不可能です ※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。  また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました 【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】 [状態]:健康 [装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発 [道具]:基本支給品一式、アイスピック [思考・行動] 基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ 1:翼くんを慰めなきゃならないのか…… 2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する 3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる 4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない 5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する 6:いなくなって精々するぜ、あの2人は [備考] ※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。 ※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。 ※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能) ※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました ◆  井戸の家を出てすぐ、トーマスとシリカの2人は歩いていた。 「良かったんですか、出て行って?」 「構わんよ、彼は私の食人を絶対肯定しないだろうからな」  人喰いを肯定する人はどう考えても殺し合いに乗りそう、シリカはそうツッコミを入れたかった。 「それに、あのミスタ丹美は思ったより曲者かもしれないからね」 「曲者、ですか?」  言葉の意味が分からずシリカはオウム返しに問うてしまう。 「ああ、恐らくだが彼は異能で姿を変えた成人男性だ」 「……どうして、そう思うんですか?」  シリカには分からない。  シリカには、彼はただの子供にしか見えなかった。 「まず第一に、彼は冷静過ぎた。  血まみれの少女がいきなり出てきたら、もっと慌てふためいてもいいだろう?」 「それは、そうですね……」 「第二に、彼はこちらを追い出そうとしていた。  紙を探すのを引き受けたり、引き留めようとしたミスタ島原を静観したりとね」 「成程……」  言われたことにとりあえず納得の意を示すシリカ。  しかし疑問は残る。 「じゃあ、何で島原さんに言わなかったんですか? 何か忠告くらい……」 「証拠が何一つないからさ。  その状況で何を言っても彼は聞きはしないだろうし、下手をすれば彼が殺されかねない」  その言葉に理解はできるものの、納得のできないシリカ。 「君の気持ちは分かる。だが私にも君にもやりたいことがあるのだから、あまりそればかりに目を向けるな」 「はい……」  こうして2人は進んでいく。  殺し合いの打破を、そして人生初の食人を目指して。 「島原さん……」  少女の心にしこりを残して。 【一日目・2時00分/E-4・井戸の家付近】 【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】 [状態]:健康 [装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し) [思考・行動] 基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する 1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す 2:ミスタ丹美は怪しい 3:今時珍しい若者だな、ミスタ島原は [備考] ※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。 ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。 ※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました ※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました ※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします 【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】 [状態]:健康 [装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/ [道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書 [思考・行動] 基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい 1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。 2:あんまり使いたくないな、私の異能…… 3:島原さんは今までの人生で一番いい人かもしれないから、死んでほしくない [備考] ※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました ※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします ※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました ※これからどの方向に向かうのかは、次の書き手にお任せします 【支給品紹介】 【セイバーのスーツ@Fate/Zero】 霊体化出来ないセイバーの為にアイリスフィールが選んだ服。 黒のワイシャツに黒のジャケット。更には黒のズボンに黒の手袋、黒のネクタイというダークスーツ。 【グイード・ミスタの銃@ジョジョの奇妙な冒険】 第五部、黄金の風に登場した銃。 ミスタが愛用している銃で、短銃身の六連発リボルバー。 【和道一文字@ワンピース】 ゾロが最初期から所持している刀。 元々はゾロの幼馴染くいなが所持していた物。 買おうとするなら1000万ベリーは下らない名刀である。 |[[女三人寄れば姦しい]]|時系列順|[[秩序・狂と混沌たち]]| |[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|投下順|[[秩序・狂と混沌たち]]| |[[セイギトアクイ]]|島原翼|| |[[セイギトアクイ]]|丹美寧斗|| |[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|トーマス・ベイカー|| |[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|鏑木シリカ||

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