C-7、北の山山頂に二人の男が居る。
 一人は白衣に眼鏡をかけた長身痩躯な男。
 もう一人は着崩したスーツを着て指輪などの装飾品を身に付け、細身で爬虫類顔の男だ。

 その二人の内爬虫類顔の男が白衣の男に話しかける。

「いやぁ、何か大変なことに巻き込まれちゃいましたね」
「そのようだな」
「そんな警戒しないで下さいよ。あ、俺芹大輔って言います」

 爬虫類顔の男、芹大輔が自己紹介をする。
 次は白衣の男の番となるが、その返答は大輔にとって予想外のものだった。

「悪いが本名はとうに捨てた。呼び名が必要なら科学教師とでも呼んでくれ」
「……え?」

 名前を名乗らないという暴挙に茫然とする大輔。
 その状況を見かねてか、科学教師は言葉をつづけた。

「6時間後に浮き出る名簿に私の本名があったならば、その時は名乗ろう。それまではこれで通させてくれ」
「……はぁ、分かりました」

 大輔はその言葉を素直に受け入れる事にした。
 その気になれば名前を聞き出すくらいは出来るだろうが、そんな事をしても大した意味はない。
 この男が本名を名乗ろうが名乗るまいが、信用できるかどうかは別の問題なのだから。
 そんな考えを読んでいるのかいないのかは分からないが、科学教師は大輔に問いかける。

「それで芹。君はこの殺し合いをどう考える?」
「どうって言われましても……。非人道的だとか、こんなこと許せない、とか言えばいいんですか」
「そんな非生産的な事を聞きたい訳では無い」

 大輔のどこかいい加減な態度に少々苛立つ科学教師。
 その様子を見て、大輔は少し態度を改めた。

「まあ、真面目に考えるなら乗らないのが得策でしょうね」
「その心は?」
「ナオ・ヒューマは信用できない。この一点です」

 大輔から見てナオ・ヒューマを信用する理由はこれっぽっちもない。
 確かに力はあるのだろう。
 自分たちを何の前触れもなく呼び出して、知覚できない間に首輪を付けたり異能を持った体に改造できるのだから。
 だからと言って、優勝してもあいつが言った通り願いを叶えてくれたり、家に帰してくれるかどうかは別の問題だ。
 何故なら、その二つはあいつの口約束に過ぎない。
 ナオ・ヒューマがこの約束を守る保障など何処にもない。
 あるいは、あいつがゲームマスターとして誠実なら信用してもいいかもしれない。
 だがあいつはこのゲームを開いた理由を暇つぶしだと言った。
 信用できるわけがない。

「私も同じ考えだ」

 大輔が自らの考えを科学教師に伝えると、科学教師もこれに賛同する。
 そして科学教師は自らの考えを話し始めた。

「信用できない以上やるべきはナオ・ヒューマの打倒だが、それに辿り着くためにはいくつかの壁がある。まずは――」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 科学教師の話が本題に入ろうとした所で、大輔は思わず敬語も忘れて止めてしまった。
 大輔からすれば聞き捨てならない事があったからだ。
 それは

「打倒ってどういう事だ!? そりゃ首輪を付けたまま脱出は無理だろうけど、それさえ外せば船か何かで島の外に出る位……」
「出て何処へ行くつもりだ?」
「何処ってそりゃ、自分の帰るべき家だ!」
「スタート地点も分からないのにゴールに辿り着ける訳がない」

 大輔は一瞬何を言われたのかが分からなかった。
 だが科学教師の言葉は続く。

「忘れたのか? 私たちは瞬間移動で転送されてこの沖木島に来たのだぞ。
 そして私は、いくら名前が日本名だからと言って、この島が日本領海にあるとは全く考えていない。
 少なくとも北極星は見えたから北半球の何処かだとは思うが」
「……まじかよ」
「これは飽くまで可能性。しかしこんな状況だ、多少悲観的に考えておくことも必要だろう」
「そうです……よね……」
「さて、それを踏まえた上で私の考えを話したいのだが、構わないか?」
「あ、はい。俺正直集団作った方がいいくらいしか考えてませんでしたし」

 すっかり科学教師に圧倒された大輔は、科学教師の考えを聞く体勢に入る。
 それを見た科学教師は話を改めて始める。

「この殺し合いから脱出する為にナオ・ヒューマの打倒する事を目標とする。
 それに当たって最初に突破すべき壁はこの首輪だ」
「まあ、それは誰でも思いつきますよね」
「これに関してはサンプルがいくつかあれば何とかなるだろう。
 私は多少の科学知識がある。機械工学は専門ではないが、やるしかあるまい」

 科学教師の言葉は自信無さげであったものの、大輔からすれば十分に頼もしかった。

「次に考えるべきはナオ・ヒューマの元へどうやって辿り着くかだ」
「居所、分かりませんからね……」
「まあこれは深く考えなくてもいいだろう。この場で殺し合いに乗らないものだけを残して、首輪を外せば奴も出てこざるを得まい」
「成程。殺し合いに対して否を唱えないようにする為の抑止力がこの首輪。それを無効化されると直接手を下すしかなくなる。そういう事ですね」
「そういう事だ。だが奴がこの場にこない可能性もある」
「ありますかね、そんな可能性?」

 科学教師の言葉に思わず疑問を呈す大輔。
 彼は、科学教師の言う可能性が何か分からなかった。

「ナオ・ヒューマがこの場を放棄する可能性だ」
「放棄?」
「ああ、殺し合いが失敗に終わって、始末が面倒になり放置する可能性だ」
「そんな可能性は考慮したくない……」

 悲観的にも限度ってものがあるだろう、そう思いながら大輔は科学教師を睨む。
 一方、睨まれている当人はそんな視線を無視していた。

「まあこれ以上話し合っていてもしょうがない。出発しようと言いたいがその前に」
「何ですか?」
「これを見てほしい」

 そう言って科学教師は左腕を大輔にの方に伸ばす。
 そこにはさっきまで無かったはずの紫色の茨があった。

「これは、ひょっとして異能って奴ですか?」
「おそらくな。だが私はこれが何なのかさっぱり分からない。君は分かるか?」
「すいません、俺にもさっぱりです」
「そうか。ところで君の異能は何だ?」
「あ、俺はこれです」

 そう言って大輔はバリアを出す。
 それを見て科学教師は感心した様な声を出す。

「中々便利そうだな」
「まあそうですね。固さが分からないので何とも言えませんが」
「とりあえずお互いの異能を見せ合った所で出発しようか。
 目的地はそうだな、私は自分の異能を知りたいから図書館にしたいのだが構わないか?」
「そりゃ構いませんが、図書館で調べられますかね?」
「ナオ・ヒューマが我らに与えた異能はおそらく漫画などに登場するものだ。ならば一番資料が集まってそうな場所に行くのが妥当だろう。
 そうでなくても他の参加者がいるのなら聞けば分かるかもしれん」
「成程納得しました」
「では行こうか」

 そう言って科学教師はデイバッグを持ち歩きだし、大輔も後を追った。

「そういえば支給品は確認したか? 私はもう済ませたが」
「それ位は流石に済ませてますよ」


(思い通り!)

 大輔は表情にこそ出さないものの、どこかの新世界の神のような事を考えていた。

(あの科学の先生は俺の異能がバリアしかないと完全に思っている!
 おまけに多少胡散臭く思われているが俺を切り捨てるつもりは今の所0! 有難い話だぜ!!)

 何故大輔が科学教師の考えを理解しているか、それは大輔の異能に理由がある。
 大輔の異能はバリアだけでなくもう一つあったのだ。
 それは読心、シンプルに心を読む能力だ。
 これにより、大輔は心を読み科学教師の言葉に嘘がないか確かめていたのだ。

(そして今のところ嘘は無し。まあこれは単に嘘をつく理由がないだけだろうけどな)

 そもそも大輔は別にナオ・ヒューマをどうこうする気は無かった。
 あんな強大な力を持った相手に勝てるとは欠片も考えてなかったからだ。

(とはいえあいつの言う通りなんだよな。ナオ・ヒューマに媚び売っても帰れる保証はどこにもないって)

 ならしばらくは一緒に行動を共にして、そのまま帰れそうならナオ・ヒューマの打倒に協力しよう。
 だがもし無理だと判断すれば

(その時は悪いが裏切らせてもらうぜ、科学の先生)

 彼は歩く、正義も怒りも感じずに。ただ己の生存を目指して。


【一日目・1時00分/C-7 北の山山頂】

【科学教師@隠者の紫/ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:ナオ・ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:自らの異能を調べる為に図書館に向かう
2:芹大輔は若干胡散臭い
[備考]。
※芹大輔の異能をバリアだけだと思っています

【芹 大輔@『バリア+読心』/TIGER&BUNNY】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず自分が死なないように動く
1:科学教師と行動を共にし協力するつもりだが、ナオ・ヒューマの打倒が無理だと思ったら裏切る
[備考]
※バリアを攻撃に仕えるとは思っていません

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