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 G-4の林、そこに1人の少女が居た。
 怯えた目をした元アイドルの少女、増田ユーリは目だけでなく心も怯えていた。
 何にか、と問われればこの殺し合いという状況に、という答えが返ってくるだろう。

「うぅ……。ナオ・ヒューマだか何だか知らないけどユーリが何でこんな目に……」

 そして口から飛び出すのは泣き言。
 まあ、前触れもなく殺し合いに巻き込まれた人間の反応としては普通の部類に入るだろう。
 そんなユーリは殺し合いが始まって数十分、何をするでもなく座り込んでいた。
 これは、殺し合いという現実を直視したくないユーリなりの現実逃避である。
 それと同時に、今自分が居る場所が林であることから目立たなければ他の参加者に出会わずにやり過ごせるのではという打算もある。
 多分に希望的観測は含まれているが。
 そうして今まで過ごしていたのだが

「えっ、何!?」

 いきなり大きな音が響き、ユーリはそれに驚く。
 その音は何が大きなものが倒れるような音だった。
 この状況で倒れそうな大きいものといえば――

「木?」

 すると今この林には木を倒せるような力を持った参加者がいるということになる。
 その事実に気付いたユーリはデイバッグを持ってなるだけ早く、しかし慎重に逃げようとする。
 そして少し動いた所で

「ふにゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 声からして少女らしい、そんな可愛らしい悲鳴が響いた。
 その後にはまた何か大きなものが地面に倒れる音。
 ユーリはその悲鳴と音を聞いて、慎重さを捨てさっさと逃げようとする。
 すると

「うわああああああああん!」

 悲鳴を上げながら走る外見は小学生くらいの女の子が、ユーリの方へ向かって走ってきたのだ。
 その少女はユーリの存在に気が付くと足を止め話しかけてきた。

「ねえ、そこの女の子!」

 いやどう見てもユーリの方が年上じゃん、という言葉を飲み込みユーリは返事をする。
 すると女の子は話し始めた。

「今こっちにお化けが向かって来てるの! だから一緒に逃げよう!」
「……お化けってさ、ひょっとしてあれ?」

 少女の言葉を聞いてユーリは指を差す。
 その先には、怪物の持つ牙や爪の他、眼球や心臓、果ては虫羽や毒腺さえも埋め込まれた悍ましい外見の人型の怪物が走ってくるた。
 怪物を見た少女は無言で首を振る。
 それを見たユーリは考える。

 あんな外見の化物なら、木を薙ぎ倒す位簡単なのかも。
 それによく見たらこの子凄い怯えてるし、きっとあの怪物に酷いことされたんだ。
 ということは

「ユーリ達早く逃げなきゃ!」
「うん!」

 こうしてユーリと少女は逃げる為に走り出した。
 1人は単純な恐怖から。
 1人は多大な誤解から。

 しかし、その事実を指摘できる人間は今この場に居ない。




「うーん、どうするか……」

 一方ここはF-5。
 そこで一人の殺人鬼少年、笹原卓が悩んでいた。
 何に悩んでいるかというと、これからどうするかである。
 と言っても目的は決まっている、この殺し合いで楽しく気ままに人殺しをすることだ。
 だからこの場合のこれからどうするは目的ではなく

「どっちに行こうか」

 物理的な意味で行く先の問題だった。
 彼が行く先に悩んでいるのにはある理由がある。
 何故かというと、卓はさっきまで一緒に居た月宮埜々香と合流したくないからだ。
 あんな風に分かれておいて、1時間もしない間にまた会いましたなんて気まずい。
 そして卓は埜々香がどっちに向かったのかを知らなかった。

「こんなことなら見送っておけばよかった……」

 後悔を口にしながら、卓は埜々香がどっちに行ったかを考える。

 月宮はダーリンとかいう奴を探していた。
 ダーリンがどんな奴かよく分からないが、話を聞く限り殺し合いには乗ら無さそうだ。
 かと言って臆病風に吹かれるタイプでもない。
 となると人の集まりそうなところ、集落とかそっちの方に向かうだろう。
 じゃあ逆に、北や西の方に行けば問題ないんじゃないか?

「いや、でもなあ……」

 卓は自分の出した結論に不満だ。
 そもそも卓は殺し合いに乗っている。なおかつ理由は楽しく気ままに人を殺したいという己の享楽の為だ。
 そんな男が、いくら多少気まずいからといってわざわざ人のいなさそうな所に行くのは嫌だった。

「よし南に行こう」

 そして卓は南に行くと結論を出した。
 理由はこうだ。

 南には集落への一本道があるが、月宮が集落を目指すのなら、あいつは直線距離で一番短い南東で行く気がする。
 それにひょっとしたらすぐ東にある倉庫のある農家を気にするかもしれない。
 最悪同じ方向だとしても、あいつの外見は遠目で分かるだろうから見つけてから引き返せばいい。

「んじゃ出発するか。
 あ、でもその前に剣はしまっておこう。幻想殺し使いにくくなるし。
 ――あーるこうー、あーるこうー、わたっしはーげーんきー」

 そして卓は出発した。
 のんきに歌を歌いながら、しかも殺し合いという場には余りにも似つかわしくない朗らかな歌を。

 しかし、それにツッコミを入れられる人間は今この場に居ない。




 深夜の沖木島G-5、そこで2人の少女が走っている。
 1人は女子小学生位に見える高校生の少女、君島蛍。
 もう1人は元アイドルの無職の少女、増田ユーリ。
 2人は後ろから迫る怪物から逃げ続けていた。

 そうしていると、2人の前に1人の少年が現れる。
 その少年は特徴のない少年だった。
 髪も黒髪で目立つことも無く、容姿も特に不細工でもなければ整っているわけでもない。
 そんなごく普通の少年だった。
 蛍はその少年に呼びかける。

「えっと、そこの君!」
「いやどう見ても小学生の奴にそこの君呼ばわりされたくないんだけど」

 蛍の呼びかけに少年は冷たく返す。
 少年から見ればまあ妥当ともいえる対応かもしれないが、蛍は不満を覚える。
 一方、ユーリはそんな不満を知るすべもなく少年に便乗した。

「あ、ユーリも正直それ思った。それどころじゃ無かったからその時は流したけど」
「いや俺はお前にも言いたいこと出来たぞ。
 なんだよ一人称ユーリって。一人称が自分の名前で許されるのは小学生までだぞ」
「何で名前も知らない初対面の相手にそこまで言われなきゃいけない訳!?」

 少年の容赦ない言葉にキレるユーリ。
 そしてユーリの言葉に少年はこう返す。

「じゃあ今名乗るわ。
 俺は笹原卓、そっちは?」
「……ユーリは増田ユーリ」
「私は君島蛍
 ――それと一言言っておくけど、私は小学生じゃないから!」
「嘘でしょ?」
「マジかよ……」
「何でそんなに驚くの!」

 卓とユーリの反応が不満の蛍。
 それに対し2人は顔を見合わせる。

「いやだって、なぁ……」
「ねぇ……」
「私は高校生! お姉さんなの!!」
「いやお姉さんは自分ことをお姉さんと呼ばないだろ……」

 卓の呆れた様な態度にふくれっ面を見せる蛍。
 それを見た卓が「そういうところが子供っぽいぞ……」と小さくつぶやく。
 しかしユーリは、その流れを一旦断ち切る。

「ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!
 ……あのね、ユーリ達今追われてるの!!」
「追われてるって誰に? レイパーか何かか?」
「いや違うけど……」

 卓の妙に現実的な発想に思わず戸惑うユーリ。
 それを見た蛍は横から割り込んで説明する。

「違うよ! 私たちが今追われてるのはお化け!! 何だかすっごく怖いの!!!」
「全然分かんねえ……」
「ユーリが見たのは、木をなぎ倒せるほどの力を持って、この子を恐怖させるモンスターよ」
「洋画ホラーの怪物かよ。
 この殺し合いがデスゲームからサバイバルに変わってるじゃねえか」

 そんな会話をしていると、卓があることに気付き指を指す。
 そして卓は言う。

「つうか来てるぞ、そのお化け。あそこに」

 その言葉を聞いて蛍とユーリは、卓の指指した方を見る。
 するとそこには、さっきまで自分たちが逃げていたお化けの姿があった。

「ふにゃあああああああああああああああ!!」
「いやそんな叫ばなくてもいいんじゃね? 確かにちょっとは気味悪いかもしれないけど」

 お化けを見て叫ぶ蛍。
 それを見た卓は蛍を落ち着かせようとするが、蛍は涙目で首を横に振るだけだ。

「……ユーリ達どうしよう?」
「逃げよう! ランナウェイしよう!!」
「いやどうしようって言われても困るし、ランナウェイしようって言われても困るんだけど。
 まあ状況的に考えるなら、あいつは異能のせいであんな姿になった殺し合いの参加者だろ。話しかけてみるしかないな」
「無理だよ! 怖いもん!」
「ちょっと黙っててくれお姉ちゃん(小)」

 卓に黙るように言われてちょっと落ち込む卓。
 一方、ユーリは神妙な声でこう告げた。

「気を付けて。あのモンスターは木を切り倒して奇声を上げ、ユーリ達を恐怖の底に突き落とした悪魔なんだから」
「さっきと話変わってるじゃねえか! つーか話すの俺かよ!?」

 いつの間にかお化けと話す役が自分になってることに怒る卓。
 それを見たユーリは前かがみになり、上目づかいで卓を見てこう言った。

「お願い、もしやってくれたら後で好きな服着てあげるから。
 ユーリはこれでも元アイドルだからコスプレには慣れてるし。ちなみによく着るのはマジカルエミのコスプレだよ!」
「色々ツッコミ所はあるけど、あえて一つだけ聞かせてくれ。お前アイドルなの?」
「元、がつくけどアイドルだよっ」

 いきなり自分を元アイドルだと言ったユーリを怪訝な目で見る卓。
 その目に気づきユーリは必死に喋る。

「そんな目をされてもユーリが元アイドルなのは本当なの!」
「じゃあなんでアイドルやめたんだよ」
「同じグループだった郷音ツボミが、ユーリの魅力に恐れおののいてユーリをいじめて追い出したの!」
「……本当かよ」
「本当なの! 郷音ツボミがこの殺し合いに居るのは見てただろうし、会ったら聞いてみればいいよ!」
「そこまで言うなら信じるか……。そしてそろそろ現実見るか……」

 そう言って卓はお化けの方を見る。 
 そこには無言で佇んだままのお化けが居た。
 それを見ながら卓はデイバッグにさっき入れた剣を出す。
 そしてお化けの元へ向かいながら思わず一言。

「それ以前に何でアイツ棒立ち?」




 やっとまともに会話してくれそうな人が現れた、とお化けこと道端ロクサーヌは思った。
 最初に会った少女は私の外見を怖がり逃げ出してしまった。
 2人目の少女、ユーリはどう聞いたのか一緒に逃げてしまった。
 そして現れた3人目。
 剣を持ち、戦々恐々とした表情をしながらもこちらに歩いてくる少年。
 彼ならば話が出来るだろうか、ロクサーヌはそう思いながら佇む。
 そして彼が会話ができる程度の距離までたどり着いた時、彼は口を開きこう言った。

「マイネームイズ スグル・ササハラ」

 何故か英語で自己紹介された。

「アノ、日本語分かりマス」
「あ、そうですか……」

 ロクサーヌの言葉に恥ずかしそうな顔をする卓。
 しかしすぐにオホン、と咳払いをしながら表情を改めて一言。

「んじゃ改めて。俺は笹原卓、何処にでもいる普通の高校生です。
 あっちに居る小さいのは君島蛍、そうじゃないのは増田ユーリです」
「分かりマシタ。私ノ名前ハ道端ロクサーヌです」
「道端ロクサーヌ? あのモデルの?」
「ハイ」

 ロクサーヌの返事に卓は顔を喜ばせる。
 そして畳み掛けるように話す。

「いやー、妹がロクサーヌさんのファンなんですよ!
 サインとかもらえません!? あいつ喜ぶと思うんで!」
「アノ、それハ後で……」
「すいませんつい」

 そこで卓は表情を戻してロクサーヌに問いかける。

「ところでロクサーヌさんは殺し合いには乗っているんですか?」
「乗ってません、私は悪党ニ負けたくありませんから」
「そうですか、それはいいことですね」

 そこで卓は言い辛そうにしながらロクサーヌに尋ねる。

「……ところで木を切り倒したり奇声を上げたりについては?」
「何ですかその事実無根ナ言われようは!」

 突然言われたあまりにも事実とかけ離れた発言に怒るロクサーヌ。
 モデルという職業の都合上、あることないこと週刊誌やネットで言われたこともあるがこれはその比じゃない。
 その怒りが通じたのか卓は、申し訳なさそうな顔をしながらロクサーヌに一言。

「――ちょっとタイムで」
「……ハイ」

 それだけ言って卓は蛍とユーリの方へ走って行った。
 そして聞こえてくるのは卓の怒る声とそれに弁明する2人の声。

「どういうことだよ増田、木を切り倒してなければ奇声もあげてねえじゃんか」
「いや本当だって。木の倒れる音はユーリ聞いたもん」
「奇声は聞いてねえのかよ、嘘教えるな嘘を」
「いやだってモンスターだよ? 奇声位上げるでしょ?」
「お前の中のモンスターイメージどうなってんだ!? エイ○アンじゃねえんだよ!
 それ以前にイメージをさも事実みたいに言うな! ありのままの姿しめせよ!!」
「いやそれは……、ユーリがちょっと話を盛っただけで……」
「盛ったどころかゼロから構築されてんだけど!
 嫌だよ俺、道端ロクサーヌが木を切り倒してモンスターに成り果ててるなんて!!」
「えっ!? あのお化けモデルの道端ロクサーヌなの!?」
「そう言ってた。嘘言ってる感じは無かったな、お前と違って」
「いや奇声は嘘でいいけど木を倒したのは本当なの! ユーリその音聞いたし!!」
「嘘くせえなぁ」
「……ごめんなさい、この状況で言いにくいけど木を倒したの私なの」
「お前かよ君島!?」
「私の異能は指パッチンで真空波を起こす物なの。だからそれで木を……」
「十傑集かよ、ヒィッツカラルドとかちょっと羨ましいんだけど」
「いやヒィッツカラルドって誰……?」
「ユーリも知らない」
「ジャイアントロボ知らねえのか? って古い作品だしな。
 まあいいや、それより増田の言った情報は全部嘘だったんだけど」
「結果論じゃん!」
「半分は作為あっただろうが! とにかく俺ロクサーヌさんに謝って来るわ!」

 そこで卓はロクサーヌの元へ戻ってくる。
 そして発した言葉は謝罪だった。

「すいませんロクサーヌさん、どうも色々行き違ったみたいで」
「……そうですか。
 ともかく、私ノ疑いハ晴れたト見ていいですね?」
「そりゃ勿論」

 卓の太鼓判を押した言葉にホッと胸をなでおろすロクサーヌ。
 そしてロクサーヌは自分にとっての本題を切り出した。

「アノ……」
「何でしょう?」
「私ガあの子、君島さんヲ追いかけていたのニハ理由ガあります。
 これヲ見て下さい」

 そう言ってロクサーヌは手に持っていたデイパックを卓に付きだす。
 卓はそれに疑問を呈す。

「何ですかこれ?」
「これハ、君島さんガ落としたデイパックです。
 私ハこれヲ届けようト思って追いかけてきたのです」
「それはまたご苦労なことで……」
「あの……」
「はいはい、言いたいことは分かってますよ。
 おーい君島、ロクサーヌさんお前のデイパックわざわざ届けてくれたんだってよ!」

 卓の呼びかけに蛍は応じ、ロクサーヌの元へ向かって行く。
 ただしその顔は、少々怯えが見えている。
 それを見たロクサーヌは卓に聞く。

「笹原さん、私ノ顔ハそんなに怖いですか……?」
「まあ初見ならSAN値チェックは必要かもしれませんが、俺としては別にそんなに怖くないです」
「そうですか……」

 今一つ卓の言ってることがロクサーヌには分からなかったが、とにかくあんまり怖がっていないことは理解した。
 ということは君島さんが特別怖がりなのだろうか、とロクサーヌは思う。

「が、頑張らなきゃ……。だって私はお姉さんなんだから……」

 口の中で小さく呟きながら歩く蛍。
 それを見かねてか卓は蛍に声をかける。

「なあ、そんな気張らなくてもいいんじゃないか」
「だ、だって……」
「心配するなよ。だってお前――」

 そして次の瞬間に起きたことを、ロクサーヌは一瞬だけ認識できなかった。
 何故ならば安堵していたからだ。

 怖がりではあるものの、殺し合いに乗っていない君島蛍。
 変貌した自分の外見にも臆さず、気さくに話しかけてきた少年笹原卓。
 正直よく分からないが、とりあえず殺し合いには乗っていないという増田ユーリ。

 ロクサーヌは思っていた。
 殺し合いなんてもの、人はそんなものに乗ったりしないと。
 正直前途多難ではあるものの、きっとこんな風に仲間を増やしていずれはナオ・ヒューマを打倒できると。
 だから























「――もう死んでるしさ」

 笹原卓が持っていた剣で君島蛍の首を斬り落とすなんて、そんな現実受け入れられなかった。

【君島蛍@一指全断/素晴らしきヒィッツカラルド 死亡】
【残り42人】




 ――あぁ、やっと殺せた。
 それが、蛍を殺した卓の感想だった。
 そしてその後に湧き上がるのは、形容しがたい興奮だ。

 突き飛ばして殺したことはある。絞め殺したことはある。鈍器で殴り殺したこともある。
 でも剣で人を斬ったのは初めてだ。
 そしてそれは

「悪くないな」

 こんなのが味わえるから、古来より剣が武器の象徴となるのもよく分かる。
 そんな思いが口から溢れ、また表情を薄気味悪いものへ変える。
 しかしその興奮も

「いやああああああああああああああああああああああ!!」

 増田ユーリの悲鳴で一気に萎えてしまった。
 まあしょうがないか、と思いながら卓はユーリの方を向く。

「ご、ごめんね君島さん!」

 見られたユーリはそう言って、自分のデイパックを持って逃げ出した。
 それを達也は黙って見送る。

「逃げちゃったか、まあいいや。
 いやあんまりよくないけど、まあいいことにしよう。それより問題は――」

 こっちだよな。
 そう思いながら卓は再びロクサーヌの方を向く。

 ロクサーヌは怒っていた、誰がどう見ても怒っていた。
 その中でロクサーヌは絞り出すかのように問いかける。

「……なぜ、ですか?
 なぜ君島さんヲ、殺したノですか?」
「なぜって聞かれると困りますけど……。
 『笹原卓は殺人鬼である。だから殺したい、だから殺す』って所ですかね。
 あ、笹原卓は殺人鬼であるって略したらさささになるな。ゆゆゆみたいな感じで」

 一部どうでもいいことも言ってしまったが、卓はロクサーヌの問いに本心で答えた。
 しかしそんな答えでロクサーヌは納得しなかった。

「ふざけないで! 殺したいからなんてそんなものが理由に――」
「なりますよ、それが理由で人を殺すなんてよくあることじゃないですか」

 笹原卓は性善説が嫌いだ。
 ならならば自分は殺人衝動を生まれた時から持ち続けているのだから。
 もし人間の本性が善なら、悪意を持ち続けている自分は化物だというのか。
 ふざけるな、そんなはずはない。
 俺は人間だ、俺以外の殺人鬼だってみんな人間だ。
 人を信じるなとは言わない、なぜなら俺も信じている他人はいるから。
 でも人を無条件で信じろとは言わない、なぜなら俺が信じてはいけない人間だから。
 そんな思いを秘めつつも、卓の言葉は続く。

「古来より理由のない殺人をする殺人鬼なんていっぱいいたじゃないですか。
 ジャック・ザ・リッパーしかりジョン・ゲイシーしかり。
 あなたの母親の故郷フランスにだってド・ブランヴィリエ侯爵夫人がいるし、日本には都井睦雄だっている。
 そんな殺人鬼がたまたま俺で、そんな俺がたまたまここで人を殺しただけです」

 言いたいことを言いきると卓は満足気な表情でロクサーヌを見る。
 一方、見られたロクサーヌは決意を込めて卓を睨み、確かな意思を持って卓に告げる。

「笹原さん」
「なんですかロクサーヌさん」
「私ハ、万が一殺し合いニ乗った人ガいても説得するつもりでした。でも私ハあなたヲ説得しようト思いません」
「俺の場合説得以前の問題ですからね。快楽殺人鬼に説得もクソも無いでしょう」

 ロクサーヌの言葉に賛同する卓。
 その態度にロクサーヌは眉をひそめつつ言葉を続ける。

「私ハあなたヲ止めます。力づくデでも」
「それは……。息の根を止める、という意味で?」

 卓の言葉にロクサーヌは首を横に振り、力強く言い切った。

「私ハ人ヲ殺しません、たとえ相手ガ殺人者デモです!」
「俺やナオ・ヒューマみたいなのは殺した方が世の為だと思いますよ。
 殺してもバチなんて当たりませんって」

 そう言いながら二人は構える。
 笹原卓は殺す意思を篭めて。
 道端ロクサーヌは殺さない意思を篭めて。

 そうして二人の戦いは始まった。




 増田ユーリは走る。逃げる為に、生きる為に。

「冗談じゃないし。ユーリが何したって言うのさ……」

 泣き言を言いながらユーリは走る。
 走りながらこれからどうしよう、とにかく信頼できる人にこのことを早く伝えよう。
 そう考えたところでユーリは思わず足を止めてしまった。
 そして思わず考えが口から出る。

「信頼できる人って、誰……?」

 そう、誰を信じればいいのかユーリには分からない。
 参加者の名前が書いている紙は放送の後にならなければ機能しない。
 じゃあ最初のあの場所で信頼できる人の姿なんて――

「あ、潮さん!」

 ――居た。
 大木潮、ユーリの親戚でマジカルエミが好きなオタク。
 正直頼りがいがあるとは言いにくいけど、今のユーリはとにかく会いたかった。
 とにかく潮さんに会うことを目標にしよう。
 そして他の人に会っても、笹原卓がやばいってことだけ言ってあまり関わらないようにしよう。
 またあんな目にあうのはごめんだし。

「よし、出発」

 こうして増田ユーリは歩きはじめる。その先の希望を信じて。
 しかし彼女は知らない。
 彼女が会いたがっている大木潮は既に死亡していることを。
 そしてその体には全く別の人格が宿り今活動していることを。
 彼女はまだ知らない。


【一日目・2時00分/G-5】

【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0~2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
1:笹原卓を止める、殺しはしない
2:殺し合いに乗っていない人々と合流
3:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
4:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない
5:何か顔を覆えるものが欲しい
[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました

【笹原卓@幻想殺し/とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:片手剣
[道具]:基本支給品、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:楽しく気ままに人殺し
1:妹には悪いけどロクサーヌさんを殺す
2:増田はどうしよう、後でいいや
3:月宮のダーリンっぽい奴(赤毛のイケメン)はなるだけ殺さない
4:郷音ツボミに会ったら増田ユーリのことを聞いてみる
[備考]
※自身の異能について把握しました

【増田ユーリ@鏡の妖精トポ/魔法のスターマジカルエミ】
[状態]:恐怖、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・行動]
基本方針:潮さんを探す
1:今は、潮さん以外の人と一緒に居たくない
2:何なのあいつ(笹原卓)、ヤバイ……
[備考]
※どの方向に逃げたかは後の書き手にお任せします


知人への一歩 時系列順 恋は渾沌の隷也
知人への一歩 投下順 恋は渾沌の隷也

しんえん! 君島蛍 GAME OVER
しんえん! 道端ロクサーヌ
愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない 笹原卓
GAME START 増田ユーリ
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