版権異能授与バトルロワイアル@ ウィキ
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2019-03-25T10:29:23+09:00
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OP~第49話まで
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**OP~第49話まで
|投下no.|タイトル|書き手|登場キャラ|時刻|現在位置|
|000|[[オープニング]]|[[◆N.AC9rXJ/I]]|???|???|???|
|001|[[日常のオワリ 物語のハジマリ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|ナオ=ヒューマ、郷音ツボミ、五十嵐椿、東ジョー|開始前|???|
|002|[[GOD&DEVIL]]|~|八神そう、後藤万緒|1時00分|J-2 浜辺|
|003|[[ナイーブレターズ]]|[[◆TeAoSh7Hf6]]|千原 亜希、田所 恋矢|1時00分|C-4 神社|
|004|[[命短し、走れよ乙女よ。]]|[[◆j0K3675zFI]]|善養寺 十次、井上 快夢|1時00分|A-7 海辺の草原|
|005|[[その始まりは喜劇]]|[[◆LJGPFoTaW6]]|島津 蒼太、阿良 愛|1時00分|I-4|
|006|[[愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|月宮埜々香、笹原卓|1時00分|F-5|
|007|[[「幸福な」少女とウソつきの話]]|[[◆XksB4AwhxU]]|側後健彦、伊丹沢妙|1時00分|I-8・集落|
|008|[[風吹けば]]|[[◆YlfcDuGY1]]|フレイス|1時00分|H-4 南の山斜面|
|009|[[相性-たった二人の生存協定-]]|[[◆IPU8SGkvmQ]]|早川千夏、石黒千晶|0時45分|G-7・分校周辺|
|010|[[LOVE DELUXE]]|[[◆j0K3675zFI]]|郷音 ツボミ、河野 英雄|1時00分|E-9 観光協会|
|011|[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|トーマス・ベイカー、鏑木シリカ|1時00分|G-2|
|012|[[セイギトアクイ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|島原翼、丹美寧斗|1時00分|E-2 草原|
|013|[[ケロイド]]|~|分目青司、鈴宮ミカ|1時00分|E-8 ミカン畑|
|014|[[超人誕生 光と影]]|[[◆BNxC/Vtkps]]|天草友秋、天草あかね|1時10分|I-6 丘|
|015|[[都市伝説B/絶対自分至上主義]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ブッチャーマン、KENGO|1時00分|C-10 灯台内部|
|016|[[しんえん!]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|道端ロクサーヌ、君島蛍|1時00分|G-4 林|
|017|[[諦めは心の養生なのか]]|[[◆7PJBZrstcc]]|蘭堂虎竜太、沢田総一郎|1時00分|G-9 診療所|
|018|[[夜、二人、山頂にて]]|~|科学教師、芹大輔|1時00分|C-7 北の山山頂|
|019|[[Eye Of The Tiger]]|[[◆j0K3675zFI]]|阿良愛、島津蒼太、フレイス、成沢弥生、藤崎直哉|2時00分|H-5 草原&br()H-4 草原|
|020|[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|天草ゆたか、大木潮、ブッチャーマン|2時00分|D-10|
|021|[[知人への一歩]]|[[◆T9FS3jjYPM ]]|天草士郎、江本咲穂|2時00分|D-3 丘|
|022|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|[[◆7PJBZrstcc]]|君島蛍、道端ロクサーヌ、笹原卓、増田ユーリ|2時00分|G-5|
|023|[[恋は渾沌の隷也]]|~|岩井政隆、四角渡、月宮埜々香|2時00分|F-6 ブロック塀の家の中|
|024|[[女三人寄れば姦しい]]|~|八神そう、後藤万緒、萩原舞|2時00分|J-3 砂浜の岩|
|025|[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|[[◆QBK2jED/WU]]|レオパルド・ガーネット、井上 快夢、天草 時春|2時30分|D-8の何処かの繁み&br()A-7 海辺の草原|
|026|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|[[◆7PJBZrstcc]]|島原翼、丹美寧斗、トーマス・ベイカー、鏑木シリカ|2時00分|E-4 井戸の家|
|027|[[秩序・狂と混沌たち]]|~|早川千夏、石黒千晶、分目青司、蘭堂虎竜太、沢田総一郎|2時00分|G-9 診療所|
|028|[[ブラックアイドル地獄変]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|ブッチャーマン、郷音ツボミ、河野英雄|2時30分|E-9 観光協会|
|029|[[あの素晴らしい愛をもう一度]]|[[◆7PJBZrstcc]]|鈴宮ミカ|2時00分|G-8 交番|
|030|[[ギャルと見るはじめての異能]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|千原亜希、田所恋矢|2時00分|D-4 森林|
|031|[[セトの花嫁]]|~|島津蒼太、成沢弥生、藤崎直哉、八神そう、後藤万緒、萩原舞|3時00分|I-3・I-4 草原|
|032|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|[[◆7PJBZrstcc]]|側後健彦、天草友秋、伊丹沢妙|2時00分|I-8 集落|
|033|[[ヒーローの資格]]|[[◆EPyDv9DKJs]]|天草ゆたか、レオパルド・ガーネット|3時00分|D-8|
|034|[[図書館についたぞ]]|[[◆7PJBZrstcc]]|科学教師、芹大輔|2時30分|I-7 図書館|
|035|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|~|トーマス・ベイカー、鏑木シリカ、千原亜希、田所恋矢|3時00分|C-4 神社|
|036|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|~|フレイス、道端ロクサーヌ、阿良愛、笹原卓|3時00分|H-6 農協&br()H-5 草原|
|037|[[1/6の生きている参加者]]|~|側後健彦、天草友秋、伊丹沢妙、増田ユーリ、早川千夏、石黒千晶、分目青司|3時00分|I-8 集落&br()H-9 港|
|038|[[殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す]]|~|島原翼、丹美寧斗、江本咲穂、天草士郎|3時00分|E-4 井戸の家|
2019-03-25T10:29:23+09:00
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第一回放送までの本編SS
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/100.html
|投下no.|タイトル|書き手|登場キャラ|時刻|現在位置|
|000|[[オープニング]]|[[◆N.AC9rXJ/I]]|???|???|???|
|001|[[日常のオワリ 物語のハジマリ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|ナオ=ヒューマ、郷音ツボミ、五十嵐椿、東ジョー|開始前|???|
|投下no.|タイトル|書き手|登場キャラ|時刻|現在位置|
|009|[[相性-たった二人の生存協定-]]|[[◆IPU8SGkvmQ]]|早川千夏、石黒千晶|0時45分|G-7・分校周辺|
|002|[[GOD&DEVIL]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|八神そう、後藤万緒|1時00分|J-2 浜辺|
|003|[[ナイーブレターズ]]|[[◆TeAoSh7Hf6]]|千原 亜希、田所 恋矢|1時00分|C-4 神社|
|004|[[命短し、走れよ乙女よ。]]|[[◆j0K3675zFI]]|善養寺 十次、井上 快夢|1時00分|A-7 海辺の草原|
|005|[[その始まりは喜劇]]|[[◆LJGPFoTaW6]]|島津 蒼太、阿良 愛|1時00分|I-4|
|006|[[愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|月宮埜々香、笹原卓|1時00分|F-5|
|007|[[「幸福な」少女とウソつきの話]]|[[◆XksB4AwhxU]]|側後健彦、伊丹沢妙|1時00分|I-8 集落|
|008|[[風吹けば]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|フレイス|1時00分|H-4 南の山斜面|
|010|[[LOVE DELUXE]]|[[◆j0K3675zFI]]|郷音 ツボミ、河野 英雄|1時00分|E-9 観光協会|
|011|[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|トーマス・ベイカー、鏑木シリカ|1時00分|G-2|
|012|[[セイギトアクイ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|島原翼、丹美寧斗|1時00分|E-2 草原|
|013|[[ケロイド]]|~|分目青司、鈴宮ミカ|1時00分|E-8 ミカン畑|
|015|[[都市伝説B/絶対自分至上主義]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ブッチャーマン、KENGO|1時00分|C-10 灯台内部|
|016|[[しんえん!]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|道端ロクサーヌ、君島蛍|1時00分|G-4 林|
|017|[[諦めは心の養生なのか]]|[[◆7PJBZrstcc]]|蘭堂虎竜太、沢田総一郎|1時00分|G-9 診療所|
|018|[[夜、二人、山頂にて]]|~|科学教師、芹大輔|1時00分|C-7 北の山山頂|
|014|[[超人誕生 光と影]]|[[◆BNxC/Vtkps]]|天草友秋、天草あかね|1時10分|I-6 丘|
|019|[[Eye Of The Tiger]]|[[◆j0K3675zFI]]|阿良愛、島津蒼太、フレイス、成沢弥生、藤崎直哉|2時00分|H-5 草原&br()H-4 草原|
|020|[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|天草ゆたか、大木潮、ブッチャーマン|2時00分|D-10|
|021|[[知人への一歩]]|[[◆T9FS3jjYPM ]]|天草士郎、江本咲穂|2時00分|D-3 丘|
|022|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|[[◆7PJBZrstcc]]|君島蛍、道端ロクサーヌ、笹原卓、増田ユーリ|2時00分|G-5|
|023|[[恋は渾沌の隷也]]|~|岩井政隆、四角渡、月宮埜々香|2時00分|F-6 ブロック塀の家の中|
|024|[[女三人寄れば姦しい]]|~|八神そう、後藤万緒、萩原舞|2時00分|J-3 砂浜の岩|
|026|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|~|島原翼、丹美寧斗、トーマス・ベイカー、鏑木シリカ|2時00分|E-4 井戸の家|
|027|[[秩序・狂と混沌たち]]|~|早川千夏、石黒千晶、分目青司、蘭堂虎竜太、沢田総一郎|2時00分|G-9 診療所|
|029|[[あの素晴らしい愛をもう一度]]|~|鈴宮ミカ|2時00分|G-8 交番|
|030|[[ギャルと見るはじめての異能]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|千原亜希、田所恋矢|2時00分|D-4 森林|
|032|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|[[◆7PJBZrstcc]]|側後健彦、天草友秋、伊丹沢妙|2時00分|I-8 集落|
|025|[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|[[◆QBK2jED/WU]]|レオパルド・ガーネット、井上 快夢、天草 時春|2時30分|D-8の何処かの繁み&br()A-7 海辺の草原|
|028|[[ブラックアイドル地獄変]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|ブッチャーマン、郷音ツボミ、河野英雄|2時30分|E-9 観光協会|
|034|[[図書館についたぞ]]|[[◆7PJBZrstcc]]|科学教師、芹大輔|2時30分|I-7 図書館|
|031|[[セトの花嫁]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|島津蒼太、成沢弥生、藤崎直哉、八神そう、後藤万緒、萩原舞|3時00分|I-3・I-4 草原|
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|036|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|~|フレイス、道端ロクサーヌ、阿良愛、笹原卓|3時00分|H-6 農協&br()H-5 草原|
|037|[[1/6の生きている参加者]]|~|側後健彦、天草友秋、伊丹沢妙、増田ユーリ、早川千夏、石黒千晶、分目青司|3時00分|I-8 集落&br()H-9 港|
|038|[[殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す]]|~|島原翼、丹美寧斗、江本咲穂、天草士郎|3時00分|E-4 井戸の家|
2019-03-25T10:28:03+09:00
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現在位置
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現在位置
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2019-03-16T12:37:53+09:00
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殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/153.html
「お互いのことって、今更私達が何を知る必要があるんですか?」
長い時間に反比例する士郎と咲穂2人の薄い人間関係。
士郎はそれを冷静受け止め、今からでも遅くないと関係を深めようとしたのだが咲穂の冷徹な一言によって切り捨てられてしまった。
確かに咲穂の言い分は正しい。
今この時にも、殺し合いに参加している妹の天草ゆたかがどんな目にあっているか分からない。
だから、今更何を言うんだという咲穂の言動は実の所もっともだ。
だが、本来間違いようないほど違うゆたかと咲穂を間違えるほど動揺している自分。
そして、プロフィール以外ほとんど知らない長い付き合いの知人。
士郎はこの不安が募る組み合わせを少しでも何とかしたかった。
士郎としては、ゆたかに死んでほしくないのは勿論だ。
だが誰であろうとこの死んでほしいとは思わないし、誰かを殺す事も選びたくない。
その思いは強固だが、目の前にいる知人の江本咲穂は心を同じにしてくれているのだろうか。
人殺しを進んで行うとは流石に考えないが、ゆたかの為に1人位手に掛けるのではないか。
士郎の心の中には過剰ともいえる疑心と、殺し合いへの焦りと家族への心配がある。
それらが彼の心を不安定にさせているのだ。
だからこそ彼は自身を安定させる意味と、疑心を取り除きたい意味で咲穂と向き合いたかったのだが。
「そもそもすでに情報交換ならしたじゃないですか」
結果はこの通り。
士郎には向き合う気があるけど、咲穂にその気は無い。
彼女はゆたかの事しか考えていない。
士郎と向き合おうなど、欠片も思っていない。
「殺し合いが始まって2時間過ぎ。
その間私達が出会うまで、私とオニイサマの見てきた情報は共有したじゃないですか」
そもそも彼らは出会うまでの間、お互い異能も支給品もロクに調べずゆたかを探して動き回っていた。
しかしまるで見つからず、しばらく経ってから2人は合流した。
そしてお互い得た情報を交換し、共に行動するという経緯を経ている。
士郎はそれじゃ足りないと思うが、咲穂としてはそれで十分だった。
「ほら、早く行きましょうオニイサマ! ゆたかちゃんが待っています!!」
急かしてくる咲穂。
ゆたかが心配なのは士郎も同じなので、彼女の言い分を強く否定し辛い。
し辛いが、それでも一度きちんと向き合おうとはっきり言うべきか。
あるいは、ここでは一旦妥協して折れ曲がるか。
「……そうだね。行こうか、江本さん」
士郎が選んだのは妥協だった。
ここで己の意思を先行させ強要すれば、仲たがいになる事は確実。
日常であるなら反省し、時間をおけば解決できるかもしれないが殺し合いの最中でそんな余裕はあり得ないと考えるべきだろう。
だから士郎は今はゆたかを優先した。
きちんと向き合うのは、ゆたかと合流してからでも遅くは無いよね?
その考えは悪い物ではないだろう。
たが彼らは知らない。ゆたかの精神が見知らぬ男の身体に宿っている事を。
◆
E-4、井戸の家。
トーマス・ベイカーと鏑木シリカ、2人が出て行った後、島原翼は落胆していた。
自分と一緒にいてくれないから、ではない。
他者が殺人を受け入れている、その事実が翼には受け止めきれなかったからだ。
生きたいから殺す、それは間違っているはずなのに、止める事が出来なかったのが悔しいのだ。
悔しくて悲しくて、翼はその場にへたり込みたくなる。
だが翼は無様を晒さない。晒せない。
なぜならば、後ろには自分よりも小さな丹美寧斗という子供が居るのだから。
翼が後ろを見ると、寧斗は不安気な顔で翼を見つめていた。
「心配かけたかな? でももう大丈夫」
心配を掛けまいと翼は笑い、頭を撫でる。
くしゃくしゃと撫でられた寧斗は、ただされるがままになっているが不安気な表情は消えた。
「そうだ。俺には守るべきものがあるんだ」
だから折れるわけにはいかない。まだ何もしていないのに、逃げる様な真似は出来ない。
そんな事じゃ、憧れの衛宮士郎みたいな正義の味方になれない。
例え士郎ほどの覚悟が無くても、俺は戦うんだ。
怖いし、死にたくないし、怯えているけど、それでも。
決意を新たにした翼は両手で自分の顔を叩き、気合を入れる。
その音で若干ビックリした寧斗に恨むような視線を向けられ、謝りながらこれからの事を考える。
――時計を見る限り放送まで3時間以上あるし、寧斗君を一回寝かせようかな。
まだ小さい子だし、こんな時間まで起きていたら流石に疲れるだろうし。
と翼が考えた所で。
ゴンゴンゴンゴン
とノックの音が響いた。
「お、お兄ちゃん……」
ノックの音に怯えるそぶりを見せる寧斗。
「大丈夫」
そんな寧斗を軽く宥めながら、翼は幸運と勇気の剣を構え扉を開ける。
そこには首から十字架を掛けた赤髪の美少年と、ツインテールの少女が居た。
翼の目を引いたのは少女の方だ。
翼は女性のファッションに詳しい訳では無い。がそんな彼でも思う事がある。
なんというか、ツインテールが似合っていないのだ。
うまく言えないが、何かが噛みあわない。
例えるなら、別人の為のファッションをそのまま適用しているような不自然さだ。
それだけならファッションに興味の無い子、で済むだろう。
しかし違う。彼女はどこか誇らし気で上機嫌なのだ。
以上の事から翼が導き出した結論はこう。
――ファッションセンス、あんまり無い子なんだな……。
そんなことを考え、思わず気が抜けそうになりながらそれでも剣を構えている翼に少年が話しかけてくる。
「大丈夫です、僕達は殺し合いに乗っていません」
と両手を上げながら言う少年を、翼は戦意が無いと思い信用する。
「俺達も殺し合いには乗ってない」
「そうか、それは良かった。
僕は天草士郎、こっちは江本咲穂。それで一つ質問だけど、君は――」
「あ、あの!」
簡単な自己紹介の後、何かを言いかけた士郎を遮って咲穂が勢い込んで尋ねてきた。
「ゆたかちゃんを知りませんか!?」
◆
――何で入れちゃうかな、本当。
勢い込んで尋ねる咲穂を翼は宥め、とりあえず家の中に招き入れる。
その事に関して寧斗は不満だった。
そりゃ殺気が無い事くらいは分かるけど、内心を隠しているとか、突如心変わりするとか考えないのかな。
お前俺を守る気あんの?
と内心で愚痴をこぼしながら咲穂と翼の会話を聞く。
要約するまでも無いが、どうやら咲穂は友人を探しているようだ。
「それで、ゆたかちゃんはどこに?」
「いや、そんな名前の子には会ってないけど……」
「じゃあいいです」
翼がゆたかを知らないと言った途端に、咲穂は立ち上がりこの場を去ろうとする。
それを見て慌てて翼は慌てて引き留めた。
「ちょっと待って! 決断が速すぎるよ!!」
「ゆたかちゃんが居ないならここに用はありません」
「いやそうかもしれないけど、それならそれで特徴とか……」
「そうですね」
翼の問いに咲穂は間髪入れずに答える。
「身長は小学生位で髪の色は栗色。そして服装や髪形は私を見てください、全て同じなので」
「「え?」」
「同じなので」
翼と寧斗は咲穂の返答に唖然とした。特に寧斗は思わず今まで被っていた仮面すら脱ぎ捨てた。
理由としては彼女の発言内容もさることながら、それ以上に彼女の態度が気にかかる。
堂々としているのだ。まるで自分はゆたかと同じ格好をするのが必然だと言わんばかりの態度なのだ。
「じょ、女子には流行ってるの、その髪型?」
服装は明らかにどこかの学校の制服なので、髪型についておずおずと寧斗が咲穂に問う。殺し合いに怯える小学生という皮すら捨てて。
一方、彼女は質問に対しまたも即答だった。
「いえ、特に。流行とかではなく、私が個人的にゆたかちゃんと同じ髪型にしていますので」
「そ、そっか……」
咲穂の返答に合いの手を入れたのは寧斗ではなく翼。
そしてこの返答を聞いた寧斗と翼は、この殺し合い開始以来初めて同じ事を思った。
――江本咲穂、こいつヤバくない?
さっき会ったトーマス・ベイカーは殺しすら躊躇する気の無い男だった。
それはそれで危ないが、この状況ならその選択は間違っていない。
寧斗は若干危険視しているが、それはあくまで自分の行動を阻害されるかもしれないというリスクマネジメントの一環でしかない。
だが江本咲穂はそうじゃない。
彼女は殺し合いとは一切関係なくずれている。
でなければ、いくら友人とはいえ似合いもしない髪型に自ら誇りを持つだろうか。
そうでなくても、なんでもかんでも真似てくる友人をゆたかの方がウザがったりしないだろうか。止めたりしないのか。
寧斗の心は疑問で山積みだった。
「では、私はこれで。行きましょうかオニイサマ」
そう言って咲穂は立ち上がり、今度こそこの家を去ろうとする。
が
「いや待って欲しい江本さん」
それを天草士郎が阻む。
彼の言葉に咲穂は不満気に彼を見る。
「なんですかオニイサマ」
「江本さんはここで待機して欲しいんだ」
士郎の言葉に咲穂の視線は殺気すら帯び始める。
彼は一瞬慄くが、それでも言葉を続けた。
「いや、ゆたかのスタート地点がどこか分からない以上2手に別れたかったんだ。
でも僕はともかく、君の異能は戦いに向いてなかったから言い出せなくてね。でも……」
そこで士郎は言葉を止め、翼と寧斗を一瞥した。
その視線の意図に気付いた寧斗は内心で叫ぶ。
――俺らに押し付ける気かよ、こいつ!?
「島原君なら、守ってくれるだろう?」
「え、いや……。僕はいいけど、寧斗君が嫌がるかも……」
いきなり話を振られ、しどろもどろになりながら返答する翼。
その答えは明らかに先延ばしだ。しかし、彼にはなんかヤバそう、という直感でしかない評価を信じて少女を追い出すような真似はできなかった。
自分で守れ、と士郎に向けて言うのは出来るだろう。が、士郎たちはゆたか捜索を優先としている。
優先する物の為に2手に分かれるのは、選択肢としては妥当である。
結果、翼は寧斗に決断を押し付けた。
「ぼ、僕はいいよ……」
そして寧斗も、殺し合いに乗っておらず、会話から察するに異能が戦闘に向きそうな士郎の不興を買いたくなかった。
であるならば返答は1つ、肯定しかない。
「2人ともありがとう。じゃあ江本さんは」
「分かりましたオニイサマ。吉報をお待ちしています」
その会話を最後に、天草士郎は玄関の扉を開けて家を出て行く。
そして咲穂は翼と寧斗の2人を見て、話しかけた。
「ではお二人とも。情報交換を兼ねて、ゆたかちゃんの話をしましょう」
その言葉と共に、2人の目は一歩死に近づいた。
【一日目・3時00分/E-4・井戸の家】
【島原翼@衛宮士郎の能力/Fate/stay night】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)
[装備]:幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1(本人確認済)、和道一文字@ワンピース
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの否定
1:ここで一夜を過ごす
2:戦いはなるべく避け、殺し合いに乗った者もなんとか説得したい
3:寧斗は何がなんでも守る
4:江本さん、やばいかも?
[備考]
※与えられた異能が衛宮士郎のものであると気づきました。
※首輪は能力による構造解析は不可能です
※丹美寧斗の正体が殺人鬼・網空仙一だと気づいていません。
また寧斗の能力を体色が変化するものだと思い込んでいます。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
【丹美寧斗@T-1000/ターミネーター2】
[状態]:精神疲労(小)
[装備]:レミントン・デリンジャー(2/2)、デリンジャーの弾丸×12発
[道具]:基本支給品一式、アイスピック
[思考・行動]
基本方針:優勝し、能力を持ち帰って殺人を楽しむ
1:なんかヤバいのが残った……
2:素性と本心を隠しつつ、島原や他の対主催参加者を利用する
3:対主催集団に紛れ込み、利用してライバルを減らしつつ、最終的には疲弊したところを全滅させる
4:他の参加者には自分が子供であると思わせ、能力も体色が変化するだけのものと思わせて本性と能力を悟らせない
5:仮に自分の正体や能力がバレた時は、対象者を暗殺する
6:天草士郎の方がこっち居ろよ
[備考]
※肉体がT-1000と同じものになっていると気づきました。
※腹部にデリンジャーと弾丸を隠しています。
※液体化しても首輪は外れません。(上から液体金属で防御したり隠したりすることは可能)
※参加者に授与された異能は全て相手にダメージを与えるものだと考えています。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
【江本咲穂@マネマネの実/ワンピース】
[状態]:健康、上機嫌
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3)
[思考・行動]
基本方針:ゆたかちゃんを最優先
1:今はこの場にとどまる。
2:ゆたかちゃんの話をしましょう。星の内海。物見の台。楽園の端からあなたに聞かせましょう。あなたたちの物語は祝福に満ちていると。
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※天草士郎の異能を把握しています。
【一日目・3時00分/E-4】
【天草士郎@仮面ライダーキバへの変身/仮面ライダーキバ】
[状態]:精神疲労(小)、罪悪感(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~3)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:家族を優先的に探す
2:咲穂と向き合うのはゆたかを見つけてからにしよう……
[備考]
※自身の異能を把握しています。
※江本咲穂の異能を把握しています。
|[[1/6の生きている参加者]]|時系列順||
|[[1/6の生きている参加者]]|投下順||
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|島原翼||
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|丹美寧斗||
|[[知人への一歩]]|江本咲穂||
|[[知人への一歩]]|天草士郎||
2019-03-16T12:35:30+09:00
1552707330
-
SSタイトル元ネタ
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/17.html
|投下no.|タイトル|書き手|元ネタ|
|000|[[オープニング]]|[[◆N.AC9rXJ/I]]||
|001|[[日常のオワリ 物語のハジマリ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|軍人,政治家でありながら作家の『ウィンストン・チャーチル』による言葉&br()『今は終わりではない。これは終わりの始まりですらない。しかしあるいは、始まりの終わりかもしれない。』|
|002|[[GOD&DEVIL]]|~|神・ソーとなった八神そうと悪魔・人修羅になった後藤万緒のこと。&br()ちなみに真・女神転生シリーズでは「人修羅とトール(ソーの元ネタ)」「ロウ勢力のトールマンとカオス勢力のゴトウ」などの因縁がある。|
|003|[[ナイーブレターズ]]|[[◆TeAoSh7Hf6]]|バンド『kamomekamome』の楽曲名『[[ナイーブレターズ>https://www.youtube.com/watch?v=F0cTof67kok]]]』|
|004|[[命短し、走れよ乙女よ。]]|[[◆j0K3675zFI]]|音楽ユニット『GLIM SPANKY』の楽曲『[[リアル鬼ごっこ>https://www.youtube.com/watch?v=5FAmGJYCaCI]]』の歌詞の一節|
|005|[[その始まりは喜劇]]|[[◆LJGPFoTaW6]]|アニメ『selector infected WIXOSS』サブタイトル風&br()喜劇とは、観客を笑わせながら、人生の真実面を表す劇の事|
|006|[[愛のままにわがままにこの二人は自分の都合しか考えない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|バンド『B'z』の楽曲『[[愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない>https://www.youtube.com/watch?v=FwP0I7-jEw0]]』|
|007|[[「幸福な」少女とウソつきの話]]|[[◆XksB4AwhxU]]||
|008|[[風吹けば]]|[[◆YlfcDuGY1]]|2ch掲示板 なんでも実況版Jデフォルト名無し『風吹けば名無し』|
|009|[[相性-たった二人の生存協定-]]|[[◆IPU8SGkvmQ]]|テレビドラマ『相棒』の漫画化作品『相棒-たった二人の特命係-』|
|010|[[LOVE DELUXE]]|[[◆j0K3675zFI]]|バンド『Sade』のアルバム名『Love Deluxe』|
|011|[[危険な資産家! 鏑木シリカは眠れない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|アニメ『ドラゴンボールZ』の劇場版作品『危険なふたり!超戦士はねむれない』|
|012|[[セイギトアクイ]]|[[◆YlfcDuGY1.]]||
|013|[[ケロイド]]|~|ケロイドとはヤケド・潰瘍(かいよう)等が直ったあとに出来る、紅色の板状・結節状の隆起。|
|014|[[超人誕生 光と影]]|[[◆BNxC/Vtkps]]|特撮映画「ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影」|
|015|[[都市伝説B/絶対自分至上主義]]|[[◆7PJBZrstcc]]|特撮『仮面ライダーW』サブタイトル風&br()都市伝説とは口承される噂話のうち、現代発祥のもので根拠が曖昧・不明であるもの&br()|
|016|[[しんえん!]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|漫画『けいおん!』|
|017|[[諦めは心の養生なのか]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ことわざ『諦めは心の養生』|
|018|[[夜、二人、山頂にて]]|~|テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』の登場人物長門有希キャラクターソング『雪、無音、窓辺にて。』|
|019|[[Eye Of The Tiger]]|[[◆j0K3675zFI]]|アメリカのロックバンド『Survivor』の楽曲『Eye Of The Tiger』|
|020|[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|[[◆7PJBZrstcc]]|特撮『仮面ライダーW』サブタイトル風&br()歌手『相川七瀬』の楽曲『夢見る少女じゃいられない』|
|021|[[知人への一歩]]|[[◆T9FS3jjYPM ]]||
|022|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|[[◆7PJBZrstcc]]|『ターニャ・デグレチャフ(CV:悠木碧) 』の楽曲『Los!Los!Los!』の歌詞の一節|
|023|[[恋は渾沌の隷也]]|~|『後ろから這いより隊G』の楽曲『恋は渾沌の隷也』|
|024|[[女三人寄れば姦しい]]|~|ことわざ『女三人寄れば姦しい』|
|025|[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|[[◆QBK2jED/WU]]|ラッパー『神門』の楽曲『夢をあきらめて現実を生きます』|
|026|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|[[◆7PJBZrstcc]]|作曲家『下村陽子』の楽曲『対ちょっぴり強いモンスター戦』|
|027|[[秩序・狂と混沌たち]]|~||
|028|[[ブラックアイドル地獄変]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|漫画『はぐれアイドル地獄変』|
|029|[[あの素晴らしい愛をもう一度]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ユニット『加藤和彦と北山修』の楽曲『あの素晴らしい愛をもう一度』|
|030|[[ギャルと見るはじめての異能]]|[[◆YlfcDuGY1.]]|動画サイト『ニコニコ動画』に投下されている動画シリーズ『ホモと見るシリーズ』|
|031|[[セトの花嫁]]|~|漫画『瀬戸の花嫁』|
|032|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ライトノベル『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』|
|033|[[ヒーローの資格]]|[[◆EPyDv9DKJs]]|漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第69話サブタイトル『ヒーローの資格の巻』|
|034|[[図書館についたぞ]]|[[◆7PJBZrstcc]]|ゲーム『スーパーロボット大戦K』の主人公『ミスト・レックス』のセリフ『教会についたぞ』|
|035|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|~|特撮『仮面ライダーW』サブタイトル風|
|036|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|~|漫画『私がモテてどうすんだ』|
|037|[[1/6の生きている参加者]]|~|バンド『SIAM SHADE』の楽曲『1/3の純情な感情』|
|038|[[殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す]]|~|アニメ『バッカーノ!』第2話『老婦人の不安をよそに大陸横断鉄道は出発する』|
2019-03-16T12:34:03+09:00
1552707243
-
1/6の生きている参加者
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/152.html
少女が目を覚まし、体を起こす。
その目にはどこか希望の様な物が見えたが、周りを軽く見てあっさり掻き消えた。
この殺し合いを悪い夢とでも思っていたのか、それとも私がいなくなるとでも考えていたのか。
どちらにしても呑気な話だ、と健彦は思う。
自分は何もしないのに周りは変わって欲しい、などと都合のいい望みを臆面もなく持つのだから。
まあ、大の大人が本気で思うなら苛立ちの1つでも覚えるかもしれないが、目の前の相手は年端もいかない少女だ。別に気にはならない。
それよりもこっちだ、と健彦は隣に居る友秋を見る。
天草友秋はこの少女にどう接するのか、そして少女は友秋を見て何を思うのか。
健彦には想像もできない。
「大丈夫かいお嬢ちゃん」
先に話しかけたのは友秋だ。いかにも友好的だというような笑顔を見せ、少女を安心させようとしている。
そして友秋は手を差し出し、少女はおずおずとその手を取った。
どうやら私の心配は懸念だったらしい。
私と目を合わせようとはしないが、これなら大丈夫そうだ。
あの少女には少し悪い気がしなくもないが、私の命の為にしばらくは一緒にいさせてもらおう。
と思ったら少女がいきなり立ち上がり、どこかへ向かって歩く。
「どこに行くんだい?」
「……おトイレ」
友秋が聞くと少女はあっさり答えた。まあ殺し合いが始まってからそういう事は1回もしてないから無理もない。
というか私も1回もしていなかった、少女のトイレが終わったら私も行っておこう。
そう思って健彦は待っていた。
しかし10分ほど待っていても少女が出てこない。
試しにノックをしてみても反応が無い。
「天草さん」
「何だ?」
「あの子供がトイレから10分以上出てきません。それだけじゃなくノックをしても反応がありません」
「何かあった、か?」
「分かりません。なので天草さんに確かめてほしいのですが」
「ああ、分かった」
友秋は健彦の頼みに応じて、トイレを開ける。
一応、入るよと宣言したうえで。
しかし、少女どころか誰1人としてトイレの中に姿は無かった。
トイレにある窓を見ると、開いていてその幅は子供なら十分に出られるくらいだった。
「に、逃げたのか……」
少女が逃げるというのは健彦にとって思考の埒外だった。
あの現実の重さに耐えられなさそうな少女が、自らの意思で動くとは想定外である。
だが悔やんでいてもしょうがない、健彦に与えられた選択肢は2つ。
1つ、このまま見過ごす。
あの少女は私を怖がったのだからそれに配慮して会わないようにする、という選択肢だ。
だがこの場合、あの少女が他の殺し合いに乗らない参加者と出会った場合私の悪評が流されるかもしれない。
2つ、追いかける。
いくら自分を恐れて逃げた相手とはいえ、少女をこの状況で放りだすなどあってはならない、と考えて追いかける選択肢。
だが問題は、仮に外に出て追いかけたとしても追いつけるかが分からない。
それだけでなく、その光景を何も知らない人間が見た場合、大の大人2人が少女を真夜中に血眼になって探すと言う危ない絵面が誕生するということだ。
正直私なら弁護したくない。
しかし友秋は、一瞬だけ躊躇ったものの扉に手を掛けた。
「天草さん、何を!?」
「馬鹿野郎、真偽がどうあれこの状況で悪評ばらまかれちゃまずいのが分からないのか!?
それに、今の時間で他の参加者と接触する可能性なんてかなり低いだろ! 十分連れ戻せるはずだ!」
それだけ言って友秋は走っていく。
「クソッ!」
ここで自分だけ留まってしまえば、己の風評が悪くなるどころの騒ぎじゃない。
この殺し合いをどう動くにしても他者と関わるのは必須なのだから、最初の段階でつまづくのはまずい。
これが2人ならまだどうにかなったかもしれないが、1人に全部おっ被せられるのは最悪だ。
だから探すしかない。
「……殺すか?」
少女の殺害も選択肢に入れた上で。
◆
少女、伊丹沢妙は逃げる。
弁護士の側後健彦は妙を現実の重さに耐えられない少女と推察していたが、それは間違いではない。
彼女は実の父親にどれだけ勝手な理由で殴られ、蹴られようともいずれ無くなると信じて耐える以外の選択肢を持たない少女だ。
それは間違いではない。
だが彼女は苦痛から逃げ、恐怖から逃避する少女であっても、それは耐えるか意識を手放す以外の選択肢を持たないわけではない。
むしろ自ら遠ざかろうとするのは妥当な選択肢だろう。
血の繋がった実の父親ではなく、ただの他人相手から、それも恐ろしい存在から逃げるのは不自然ではない。
だから走る。己がどこに向かっているのかすら分からないまま。
殺人鬼、笹原卓から逃げる為増田ユーリは走る。
実際は1ミリも追うそぶりを見せていなかったのだが、ユーリにそんな事を知るすべはない。
ともかく走った。普段なら絶対に走りきれないような距離すら走り切った。
これがうわさに聞く火事場の馬鹿力なの、なんて考えながら走った。
「ハァ……、ハァ……」
だが限界は訪れる。今まで走り続けていたユーリは疲労で足を止め、その場に座り込み息を切らす。
場所はH-8、集落の外側にある道のど真ん中である。
「ヤバい、こんな道の真ん中はヤバい……」
ユーリとしてはそんな目立つ真似をしたくない、のでなるべく素早く移動。
1軒の家の壁を背にし、ユーリは息を整える。
そして落ち着いてきた所で、そういえば支給品を調べていなかった事に気付く。
最初は隠れていれば大丈夫だろうと考えて、目立っても困るからあえて調べなかったがこの状況じゃそうはいかない。
だからデイバックを開けようとした所で
少女がこっちに向かって走ってきた。
明らかにユーリより年下、下手すれば一桁の年齢かもしれない少女。
妙にフラフラとした走りで真っ直ぐ進めておらず、近くまで来た時にユーリは少女の体が痣だらけなのを見た。
「え?」
思わず驚きが口から零れる。
それが聞こえたのか少女がユーリの元へフラフラと、まるで誘蛾灯に吸い寄せられる虫の様に向かっていく。
ユーリは考える。
え、これは何? この子は他の参加者に襲われて、命からがら逃げてきたとか、そう言う感じなの?
じゃあここ全然安全じゃないじゃん! 何でユーリ逃げてばっかりなの!?
疲れ切った体に鞭を打ち、ユーリは逃げる事を選ぶ。
だがここで選ばなければならないことがある。
それは、ユーリに近づく少女だ。
連れて行くのか、放っておくのか。
心情的には連れて行きたい。自分はそこまで善良じゃないと思っているユーリでも、流石にこんな子供を見捨てたいとは思わない。
だが異能がはびこるこの状況で、見た目や年齢は人を判断する材料になるのか。
ひょっとしてだまし討ちする為にあんな姿を見せているのかもしれない。
それどころかひょっとしたらあの少女自体が幻覚かもしれない。
苦悩しながらユーリは少女をもう1度見る。
そしてユーリは思った。
――あの目は、ユーリと同じだ。
あの怯えた目は、殺されそうになった一時的な恐怖じゃない。
もっと常日頃から、何かに苛まれている目だ。ユーリと同じく。
なら助ける? 自分にそんな力があるかすら分からないのに。
だけど、でも……。
「こっち来て!」
「……?」
ユーリは少女の手を取った。
少女は意味が分からないような顔をしているが、ユーリはそんな事知らないとばかりに走り、家と家の間に隠れる。
すると少ししてから、2人の男がやって来た。
「見つけましたか!?」
「いや、駄目だ! どこにいる!?」
声を荒げながら何かを探す2人。ユーリには今一緒にいる少女を探している物だと判断した。
こんな小さな子に痣が出来るほど殴る相手からは逃げるに限る。
「大丈夫だから、ユーリと一緒に逃げよう」
「……おかあ、さん?」
「ユーリ17だから、お姉ちゃんとかの方が嬉しいかな……」
少女の言葉にちょっと凹みつつ、ユーリは見つからないように気を遣いながら逃げる。
なぜ増田ユーリは少女と共に逃げる事を選んだのか。
大木潮以外の他人を信じられないと思っていたユーリは、なぜロクに話してもない相手と共に逃げたのか。
それはユーリが少女の中に過去、そして今の自分を見たからだ。
ユーリは自分の居場所を作れない人間だ。
嘘ばかり話すという完全な自業自得であるものの、彼女は学校も職場も失っている。
そのせいで両親すら彼女を見放しかけている。はっきり言って家族仲は悪い。
唯一やさしくしてくれるのが大木潮。彼の為のコスプレだけがユーリの心の支えだ。
この子もひょっとしたら似た者同士かもしれない。
この子も居場所を持たないのかもしれない。
いわば同情である。
実際はユーリと少女の境遇はかなり違うのだが、それをユーリが知る術は今は無い。
とはいえその同情は悪い物ではない。
ユーリからは見えないが、少女の表情は間違いなく安らいでいるのだから。
◆
石黒千晶、早川千夏、分目青司の3人は特に障害も無く港に到着した。
時間にして10分未満、300mも歩いていないのだから当たり前と言えば当たり前だが。
「それじゃ早速」
そう言って千夏は異能で船を出す。
それは本当に小舟と言うしかない物で、後ろにエンジンを積んだだけの簡素な物だった。
「ありがとうございます、それでは早速出発しましょう」
「はい」
千晶が出発しようとし、千夏は素直に頷いて舟に乗る。千晶もそれに続くがなぜか青司は乗る素振りを見せない。
「青司さん、どうかしたんですか?」
「ん、ああ。いやこの辺りに他の参加者がいるんじゃないかって思って見回していたんだ。
もうあの資源プラントに行った参加者から何か聞けるかもしれないし、殺し合いに乗っている参加者に海に出た後に狙撃でもされたら大変だからね」
「な、成程……」
青司の言葉に感心する千夏。それを黙って見ている千晶。
青司はある程度周辺を探りに船から離れる。その後ろを千晶はついて行く。
「え、千晶さんも行くんですか?」
「1人よりも2人でしょう」
そんな事も分からないのか、と千晶は言外に千夏に示す。
この時の千晶は少し苛立っていた。分目青司という存在に。
消防士らしく実戦経験豊富で理にかなった考え方をする彼が、なぜか千晶は気に入らなかった。
私の蘭堂虎竜太への説教を意味がないと一蹴されたからか、それとも他の何かかは自分でも分からない。
だがそんな個人的な感情論で数というアドバンテージを逃がすわけにはいかない。
なのでここは素直に青司に追随しよう。
「では」
「あ、ウチも行きます!」
千夏も千晶を追いかけて歩く。
そして少し探索しているとあっさりと他の参加者は見つかった。
1人は水色のワンピースを来た10歳位の少女、もう1人は舞台の上に立てそうなほど派手な服装をした千晶と同じくらいの少女だ。
少女は女の子に抱き着いたまま顔を埋め、もう1人は千晶たちを警戒している。
「初めまして、私は石黒千晶と申します」
「は、早川千夏です」
なので警戒を解いてもらおうと自己紹介を始める。
その後に持っていた銃を地面に置き、少女2人に向かって蹴り飛ばす。
それを見て話しに応じる気になったのか、1人が名乗った。
「増田ユーリ」
ユーリは自己紹介を返す。
だがもう1人の少女はそのまま動かない。
「大丈夫だから、多分大丈夫だから。ね?
ユーリに自分の名前を言ってみて」
何とか自己紹介させようとするユーリ。
だがその言葉はたどたどしく、とても子供の相手に慣れているようには見えない。
「……伊丹沢、妙」
それでも何とか自己紹介をする妙。
これで千晶は2人に心を許してもらえたと考え、さっき蹴り飛ばした銃を回収する為近づこうとする。
「近寄らないで!」
しかしユーリに拒絶された。
何のつもりだ、と千晶が思うより先にユーリが告げる。
「ごめん、今ちょっと初対面の人間が信用できないから……。
銃は返さないわけにはいかないけど、こっちに来ないで。というか銃持ってる限りこっち向かないで」
そう言って千晶が蹴り飛ばした銃を拾い上げる。
それを聞いた千晶は、あまりにも身勝手な言い分だと怒りそうになるが
「うん分かった。じゃあウチらが先に進むから」
千夏が千晶の手を引いて、先に歩き出した。
その直後千晶の銃は帰ってきたが、千晶は不満だ。
何があったにせよ、一方的に要求を突き付けられていい気がする人間はいない。
とはいえそうしてしまうほどの事があった、と考えれば向けるべき感情は怒りじゃない事くらいは分かる。
だから千晶は堪え、黙って歩く。
千晶は後ろを見てないが、千夏の様子を見る限りついてきているのは確かなようだ。
◆
友秋にとって、この状況は最悪に近かった。
逃げ出した少女を探す2人。子供だからそんなに遠くにはいってないだろう、という考えだったがそれは当たっていた。
事実、集落のそばにある港に少女は居たのだから。
別の高校生くらいの女の参加者に抱き着いた状態で。
しかも他の参加者3人と一緒に。
女子高生2人に、大人の男が1人が何を聞いたのかこっちを睨んでいる。
軍服を着た高校生くらいの女と、消防士の服を着た男と、制服をピッチリ着た女子高生に睨まれるのはある種滑稽だった。
まるでコスプレパーティーだ、こっちがスーツなのがちょっと申し訳ない。
「どうにも誤解があるようですね」
友秋が脳内でジョークを飛ばしているとも知らず、健彦は誤解を解こうと話し出す。
弁護士を名乗っていたが、そのお手前をみせてもらおうか。どっちみち俺じゃ無理だろうし。
「まずは自己紹介から。
私の名前は側後康彦、弁護士です。こちらは天草友秋さんです。
それで、まあ……。貴方方はその少女を我々がいたぶったとでも思っているのでしょうが――」
「違うとでもいうのですか?」
健彦の言葉に制服の少女が噛みつく。
だがその程度は予測済みだ。
「ええ、違います。
痣を見れば見てもらえば分かるでしょうが、彼女は日常的に暴行を受けています。
それこそ、殺し合いが始まる遥か前から」
「……分目さん、確かめられますか?」
「分かった、やってみよう」
分目と呼ばれた消防士の男が、少女の元へ行き痣を確かめようとする。
消防士に分かるのか疑問だったが、怪我を確かめる事もあるかもしれない。
「側後さんの言う通りではある。日常的に暴力を受けていたのは間違いない。
だがここ数時間の間に暴力を受けた跡もある、あなた達を信用することは出来ない」
「……そうですか」
あてが外れた、と言わんばかりの顔を見せる健彦。
「ではこれでどうでしょう」
そう言うと健彦はデイバッグを5人の方へ投げ飛ばし、頭の上に後ろ手を組む。
「天草さんも」
「あ、ああ……」
それに続いて友秋も持っていた刀をデイパックにしまい、同じように投げて後ろ手を組む。
「これで少なくとも我々に攻撃の意思がないと理解して頂けるでしょうか」
「まだだ、まだあなた達は異能を見せていない」
健彦の言葉に分目が応じる。成程、この殺し合いならではの不穏分子か、と友秋は納得する。
「俺の異能はさっきまで持っていた妖刀だ」
友秋は言う。友秋にとっては真実なので、嘘をついている澱みのような物は一切見えない。
「私の異能は、これなのですが……」
健彦はそう言うと、音楽プレイヤーを出現させる。
友秋は異能とはこんな物理法則を無視したものもあるのか、と驚く。
「これ、どう使えばいいのでしょうか? 誰か知りませんか?」
どこか切実な健彦の言葉に、誰も何も言えない。
この場にいる全員が、健彦の出したそれがただの音楽プレイヤーにしか見えないのだ。
「まあ、こういう具合でして……。信頼も信用も必要ありませんが、とりあえずあなた達を害する意思はありません」
「……分かりました」
不承不承とばかりに分目が頷く。
他に言い様は無いだろうな、と友秋は思った。
情報が何一つ出そろっていない段階で、これを精査する手段は何一つない。
そんな段階ではうかつな真似は出来ないだろう、と友秋は納得する。
しかし次の瞬間、友秋にとって予想だにしない事が起こる。
「ならばこうさせてもらいます」
分目がそう言った瞬間、姿が人間から一瞬にして怪獣としか言えない姿に変身した。
余りの事に思わず放心しかかる友秋。
「詳しくは言いませんが、この状態なら銃に撃たれてもあまりダメージは受けません。
うかつな事をすれば、どうなるか分かっていますね」
その脅しに何も言わない健彦と友秋。そんな事をするつもりはないが、相手が警戒するのも必然だからだ。
「……分かっています。その上で1つ、情報交換をしませんか。
信頼できる人を紹介しろなどとは言いません、ですが危険人物の情報位ならよろしいのでは?」
「それ位なら構いませんが、情報はそちらからお願いしますよ」
「ーーすみませんが、私達は」
「郷音ツボミだ」
情報交換を申し込みながら言いよどむ健彦を遮り、友秋は強い口調で言い切った。
俺が郷音ツボミを恨んでいる事に気付いていたのか、と思わなくもないがとりあえず友秋は話す。
「郷音ツボミはこの状況なら間違いなく殺し合いに乗る。
あいつは己をトップアイドルという立場に置くためなら人を死に追いやり、平然と股を開く女だからな」
友秋の言葉に怪訝な顔を見せる分目達3人。
健彦ですら若干胡散臭そうな目で友秋を見る。
だが意外なところから助け舟が出てきた。
「あ、天草さんも郷音ツボミに酷い目に遭わされたの!?
ユーリは増田ユーリって言うんだけど、ユーリも酷い目に遭わされたの!
一時期郷音ツボミと同じグループに居たんだけど、ユーリのアイドルとしての才能に嫉妬して結託してユーリをイジメで追い出したの!
それにライバルを自殺に追い込んだなんて話、しょっちゅう聞いたしアイツなら人殺しなんて平気だよ間違いなく!!」
ユーリの堰を切ってあふれ出た言葉に少し圧倒される友秋。
だが守っている相手からの言葉は、分目達を少しだけ友秋の言葉を信じる方に傾いたようだ。
「……分かりました、警戒はしましょう。ですが実際に殺しの場面を目撃するまでこちらからはどうこうしませんので」
「郷音ちゃんが、ねえ……」
軍服の少女が信じられない、とばかりに呟く。
確かに姿だけを見れば、美しく整っている。
しかし、一皮むけば、その中はさながらヘドロの如き汚泥だ。
その中身が世間に溢れれば、魔女狩りの如くバッシングという炎に焼かれるのだろうか。
友秋にとってはどうでもいい。あいつはこの殺し合いで誰にも看取られる事なく死ぬんだ、俺の手で。
「それで、そちらから危険人物の情報はありませんか?」
「ええと――」
健彦の最速に分目が柔らかくする異能の少女について話す。
友秋も話を聞き、警戒心を高めた。
「あ、ユーリも」
続いてユーリも殺人鬼、笹原卓の情報を開示する。
突然すぎる凶行を見せる卓の振る舞いを聞いて、多少後ろ暗い付き合いのあった友秋すら動揺が隠せない。
「では、情報交換はこれで終わりという事で構わないですね」
「はい、構いません」
分目の言葉に健彦は同意する。
友秋たちが投げたデイパックを返してもらい、友秋達は港から去り元居た家まで戻る。
「これからどうする?」
友秋は思わず健彦に尋ねてしまった
本質的に別の道を歩む人間に問いかけるほど、友秋は焦っていた。
郷音ツボミと天草時春の情報を集める筈が、郷音ツボミの悪評を振りまくだけで終わってしまった。
殺すな、とも言えず引き下がってしまった。
あの場にいた人間の反応から、どうやら会ってはいないらしい。驚きは無いから最初の場で見ていたようではるが。
天草時春に関しては何も出来なかった。
殺し合いにはまず乗らないだろうし、悪評をばら撒いても信用されるかが郷音ツボミ以上に怪しい。
「どうもこうもありません。とりあえず現状維持以外ないでしょう。
向こうは恐らく我々を信用できないが殺し合いには乗っていない参加者、くらいに認識しているはずです。
ならもしその情報を聞いている参加者が来たら、信用させるのは我々の技量の問題になる。
増田ユーリの反応から、あなたは多少好意的に扱われるかもしれませんがね」
「……そうだな」
「とにかく今は情報を集めつつ危険人物を警戒するくらいしか出来る事がありません。
あなたがどうしたいかにもよりますが、今はここを離れない方が得策かと」
「だろうな」
友秋にだってそれ位は分かっている。
郷音ツボミと天草時春は恐らくこの辺りにはいない。
さっきまで話していた奴らがどの方角から来たのか分からないが、少なくともこの集落の周辺にはいないと考えていい。
となるとあいつらは人の集まる方に向かうはずだ。
殺し合い乗るのなら、殺す為に参加者が集まる方へ。
殺し合いに抗うのなら、仲間を集うために参加者が集まる方へ。
分かっている、分かっているんだ。
「クソッ!」
分かっていても、何も出来ない己が友秋は歯がゆかった。
◆
健彦と友秋を見送った青司は、姿を元に戻して皆の方へ向き直る。
大半が驚きとともに青司を見るが、異能だという事が分かっているからか特に騒ぎ立てる事は無い。
否、伊丹沢妙は多少恐怖の目で青司を見ている。
「もう少し色々聞き出したかったのですが」
「いや、あれくらいでいいはずだ。あまり情報を開示したくない」
千晶の言葉を切り捨てる青司。
弁護士を名乗るだけあって、あの警戒状態からあっさり簡単な情報交換にまで場を持って行った。
自分の異能を見せてしまったのはいいが、それ以上は札を見せたくなかった。
「それで、増田ユーリだったかな。
君に聞きたいんだけど、僕らと一緒に来る気はあるかな?」
「え?」
青司の問いにユーリは呆けた表情を見せる。
だがこれは正義の消防士としての必然だ。殺し合いに乗っていない、殺人鬼から逃げるしかできない少女を保護するのは青司にとっての当然。
しかしユーリは首を横に振った。
「ごめんなさい。今ちょっと知っている人しか信じたくないんで……」
「そうか、じゃあ仕方ないね」
ユーリの拒絶を青司はあっさり受け入れる。
保護しようとしたけど当人が拒絶した、となればそれは青司の責任ではない。故に死のうと生きようと知ったことではない。
だがもう1つやる事はある。
「それじゃ、伊丹沢妙ちゃんはどうする?」
「……ユーリお姉ちゃんと一緒にいる」
同じように妙に質問し、同じように拒絶された。
ならもう用は無いとばかりに青司は歩き始め、千晶と千夏もそれに続く。
とはいえこれだけだと外聞が悪いかもしれない、と思った青司は1つ付け加えた。
「診療所に殺し合いに乗っていない参加者が居るから、もし会うのなら会いに行くと良いよ」
それだけ言って青司は歩く。
目指すのは資源開拓プラント、そこに何があるかは誰も知らない。
【一日目・3時00分/I-8・集落】
【側後健彦@謝債発行機/HUNTERxHUNTER】
[状態]:精神疲労(小)、焦り
[装備]:謝債発行機@HUNTERxHUNTER
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)、『オマケ』のイヤホン
[思考・行動]
基本方針: 生き残る。一先ず自身の能力の”本質”が分かるまでは様子見。
1:しばらく集落に留まる
2:天草友秋をうまく利用する。
3:郷音ツボミなど危険人物を警戒
4:悪評はばらまかれない、と思うが……
5:この音楽プレイヤー(謝債発行機)については一旦保留。
[備考]
※伊丹沢妙の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※分目青司の能力を見ました(能力レンタルの第一条件を達成)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【天草友秋@ドラゴンオルフェノク/仮面ライダー555】
[状態]:狂乱(自覚なし)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:参加者をうまく利用して勝ち残る、そのためには何が犠牲になろうと構わない
1:郷音ツボミと天草時春の情報が集まるまで、集落に滞在する
2:娘を死に追いやった郷音ツボミは俺が必ずこの手で殺す。他のアイドル共も参加していれば殺す
3:天草時春には俺と同じ屈辱を味わって貰う、他の天草一族も参加していれば同様
4:笹原卓には少し引いている
[備考]
※自身のオルフェノク化には気づいてません
※支給品の刀を妖刀と信じています
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【一日目・3時00分/H-9・港】
【伊丹沢妙@略奪/Charlotte】
[状態]:体中に殴られた傷と痣、精神疲労(大、少しずつ落ち着いている)
[装備]:なし
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考・行動]
基本方針:ユーリお姉ちゃんと一緒にいたい
1:ユーリお姉ちゃんについて行く.
2:お母、さん……
3:側後への恐怖
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※自身の能力を、まだ使いこなせていません
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【増田ユーリ@鏡の妖精トポ/魔法のスターマジカルエミ】
[状態]:恐怖、疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・行動]
基本方針:潮さんを探す
1:今は、潮さんと妙ちゃん以外の人と一緒に居たくない
2:診療所に行くか行かないか――
2:天草さんはそんなに悪い人じゃない、のかな?
3:笹原卓はやばい
[備考]
※どの方向に向かうは後の書き手にお任せします
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
【早川千夏@工兵/放課後アサルト×ガールズ】
[状態]:健康、工兵変身状態、
[装備]:工兵服(シールドフル状態)
[道具]:{支給品一式×2(-懐中電灯)、M67手榴弾×15、『戦場での立ち回り本セット(本4冊)』、不明支給品1(確認済み)、デイパック×1、机と椅子×30}分のリソース
[思考・行動]
基本方針:千晶と行動し、生き残る。
1:千晶さんに付いていけばなんとかなる、よね……?
2:分目さんはまともそう
3:舞に合ったら一発シメてやる。
4:郷音ちゃんがねえ……
[備考]
※石黒千晶と情報交換しました。
※自分の能力と石黒千晶の(大まかな)能力を把握しました。
※萩原舞が参加していることは薄々予想しています。
※机と椅子は木と鉄パイプで出来た普遍的なものです。原作バトルロワイヤルの生徒数分の用意がありました。
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【石黒千晶@『直観』/HEROS】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:グロック18自動拳銃(フルオートモード)、懐中電灯
[道具]:本一冊(『歴史から学ぶ戦争学~この先生きのこるには~』)
[思考・行動]
基本方針:生き残る。
1:資源開拓プラントへ向かう。
2:協力者を増やす。
3:郷音ツボミを警戒……?
[備考]
※早川千夏と情報交換しました。
※自分の(大まかな)能力と早川千夏の能力を把握しました。
※蘭堂虎竜太の異能を目撃しました
※鈴宮ミカの外見と能力を知りました(名前と指紋の結界は知りません)
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※分目青司の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
【分目青司@キリエル人の力@ウルトラマンティガ】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3、包帯、薬
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを「俺が」打破して名声を得る、もしくは願いを叶える力を奪う
1:一先ず、石黒と早川に同行する
2:他の参加者を保護する
3:殺し合いに乗っている者は可能なら殺す
4:特に火傷の女(鈴宮ミカ)は特に注意する
5:石黒はいつでも始末するつもりでいる
6:郷音ツボミを一応警戒
[備考]
※自分の異能がキリエル人の力であると知りました
ウルトラマンティガ放送時の記憶が曖昧なので今のところ使うことができると思っている能力はキリエロイドへの変身と獄炎弾のみです
※鈴宮ミカの能力を生物を柔らかくする能力だと知りました(指紋による結界はまだ見ていません)
※早川千夏の異能を把握しました
※診療所で手に入れた包帯、薬の量や種類は次の書き手氏にお任せします
※天草友秋の異能を妖刀だと誤認しました
※側後健彦の異能を目撃しました
※笹原卓の名前と外見を知りました(異能は知りません)
|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|時系列順|[[殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す]]|
|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|投下順|[[殺人鬼達の不満をよそに少年少女は決断を下す]]|
|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|側後健彦||
|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|天草友秋||
|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|伊丹沢妙||
|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|増田ユーリ||
|[[秩序・狂と混沌たち]]|早川千夏||
|[[秩序・狂と混沌たち]]|石黒千晶||
|[[秩序・狂と混沌たち]]|分目青司||
2019-03-16T12:27:11+09:00
1552706831
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殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/151.html
怪物(ひと)、道端ロクサーヌと人間(おに)、笹原卓の戦いは一進一退だった。
と言っても2人の実力が伯仲していた訳では無い。
怪物と化したロクサーヌの身体能力は、人間である卓より高くなっている。
だから真っ向勝負ならロクサーヌの勝ちは明白だ。
にも関わらず互角なのには理由がある。
1つはロクサーヌが自らの異能に慣れていないからだ。
異能、名状しがたい力は彼女に人間を超えた力を与えた。
だが彼女は殺人はおろか喧嘩すら縁遠い生活を送るモデルである。
そんな彼女にとって与えられた力を操るのは難しく、振り回されるのが精々である。
異能には魔法と空手のスキルを扱うことができる効果もあるが、彼女はそれを把握していない。
もしも把握していれば戦いを有利に出来たかもしれないが、現状彼女に出来るのは身体能力を生かした直接攻撃のみだ。
ならば対峙している殺人鬼、笹原卓が有利なのかと言われるとそんな事はない。
まず単純に、肉体スペックが上がっているロクサーヌとは対照的に卓の身体能力は一般的な男子高校生の平均だ。
そして異能は幻想殺し、右手で触れた異能を打ち消すという強力な物だがリーチが短いという欠点がある。
更に言うと、ロクサーヌの名状しがたい力の様に肉体を変化させる異能に対してどう作用するかも分からない。
触れただけで人間に戻るのか、触れられている間、その場所だけ人間になるのかが卓には想像出来ない。
にも関わらず武器は現状片手剣のみ、なので彼は慎重な戦いを強いられている。
だからこその互角、お互いに決め手に欠けるのが現状だ。
しかしその現状も、まるで薄氷のようにいつ壊れてもおかしくないものだ。
「ハァ……ハァ……」
交戦の中、卓は息を切らす。それでも隙を見せないように心掛けているが、疲労は明白だ。
対するロクサーヌは息を切らすことなく卓を睨んでいる。
単純な身体能力の差が、持久戦という状況で露呈している。
この現状を正しく認識している卓は、思わず頭を抱えたくなりながらも考える。
――現状やっべーぞこれ!?
このままじゃ間違いなく俺は負ける。死にはしないが生きてればいいって問題じゃない。
勝つ手段? ねえよんなもん。単純に力で負けてんだから。
よし逃げるか。いやどうやって?
待て、まだ俺にはこれがある。
そう考えて卓は自分が持つデイパックを見る。
そこにはまだ自分が調べていない支給品がある。
そしてそれを取り出す方法は、既に思いついている。
「外せば負けの一発勝負か……、こういうのも悪くねえな」
この卓の呟きが聞こえたのか、ロクサーヌは構えて警戒する。
最も、その構えも警戒も卓から見れば殺せるレベルに隙のあるものだったが。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
そして卓は前触れもなく叫び、全力を込めて
「いっけええええええええええええええ!!!」
持っていた剣を投げ飛ばした。
「エ?」
ロクサーヌが驚きの声を上げ、注意を剣に向けた瞬間に卓はデイパックに手を入れ、最初に触れた物を引き出す。
何が出るのか分からない、だが卓は己の運を信じる。
――俺の運を舐めるな!
俺は艦○れで島風を建造出来たし、ア○レンならネ○テューヌコラボ全キャラ手に入れた。
いやこれ運の証明にならねえな!
でも殺し合いに乗る率100%の俺をナオ・ヒューマは多分優遇するだろ、主催者的に考えて!
だからいける、大丈夫だ!
半分以上自己暗示だが、とにかく卓は自分を奮起させながら引き出した。
引き出したもの、それは。
「バイク来たあああああああああああああああああああああああああ!!!」
バイクだった。
正式名称はマシンウィンガー、仮面ライダーウィザードの主人公操真晴人が乗るライダーマシンである。
最高速時速260キロと、ライダーマシンとしては低いがバイクとして見るなら十二分に速い。
最も、卓はそれに気付いておらずただのバイクとしか見ていない。
だがそれで今の卓には十分。
バイクを見た卓は迷いも無く飛び乗り、エンジン全開にして逃げ出した。
一方、卓をまんまと逃がしたロクサーヌ。
まさか剣を投げるとは思わなかった、今まで接近戦で戦っていたから。
まさか逃げるとは思わなかった、完全に殺す気で来ていると思っていたから。
いくつも理由が思い浮かぶが、ロクサーヌはそれらを振り払い次にやるべきことを決める。
「追いかけなくてハ!」
正直バイクに速度で追いつける気はしないが、それでもロクサーヌは卓を追いかける為走り出した。
まさかあんな隠し玉があったとハ、と驚きながら。
実際は隠し玉でも何でもなく、卓が半分くらいやけっぱちで賭けてたまたま勝っただけなのだが、ロクサーヌにそれを知るすべはない。
「でも、何デ……」
何で笹原さんは逃げるという選択肢を取れるのか、がロクサーヌには分からなかった。
笹原さんからすればこの場でロクサーヌを殺さなければ、自分が殺し合いに乗っていることが私を通じて広まりかねない筈なのに。
だからこそ絶対に私を殺すまで戦うと思っていた。
なのに現実は恐ろしい程迷いの無い逃走だ。
まるで殺し合いで優勝する為に人を殺すのではなく、人を殺す為に殺しているようだ。
そこまで考えて思い浮かぶのは、卓が少し前にしていたこの発言だ。
『笹原卓は殺人鬼である。だから殺したい、だから殺す』
これを私は本気だと捉えなかった、だがもし本気だと言うのなら――
「彼ハ、私ガ考えていたより遥かニ危険ナ存在カモしれませんネ」
だとすれば急がなければ、とロクサーヌは気持ちが逸る。
それでも卓には追いつけはしないだろう、向こうが止まらない限りは。
◆
虎、フレイスと人間、阿良愛の戦いはフレイスが圧倒的に優勢だった。
なぜかと言うのなら、やはり異能の差が大きい。
愛に与えられた異能、スパルタクスの宝具とスキルは彼女に強力な肉体を与えた。
ダメージを受けると身体に魔力が蓄積され、そのダメージも一定時間で自動回復するのだから肉弾戦ならまず負けることは無いだろう。
だが相手が悪い。
相手はライオンであるフレイス。いくらナイフ1本と格闘術で熊と渡り合える彼女でも、肉体面で言うなら間違いなくフレイスは人間である愛よりも上だ。
更にフレイスの異能はピカピカの実。
光となって光速移動や、レーザーの発射に攻撃を受け流すことが出来る強力な異能だ。
フレイスは未だ完全に使いこなせている訳では無いが、戦いの情勢が変わる訳では無い。
攻撃方法は物理しかない愛とは洒落にならない位相性が悪かった。
更に言うなら、愛が苦境に追い込まれている理由はもう1つある。
それは愛の異能、スパルタクスのスキルの1つ狂化にある。
この狂化の効果は、『常に最も困難な選択をする』と『圧制者を許さない』という風に思考するようになるものだ。
今の所このスキルの効果は微弱だが、それでも働いている。
だからこそ彼女は攻撃が効かない相手に、島津蒼太を逃がすという当初の目的を果たしてなお自分は逃げずに戦っているのだ。
『こんなん楽勝やんwww。
ワイの勝ちは決まりや。終わったらさっき逃げたチビ殺したろか、と思ったけどどこ行ったか分からんな。
まあええわ、どうせ皆殺しやし生きとったら殺したるわ』
そして全てを理解してはいないが、自分が有利だという事は理解しているフレイスは余裕の態度だった。
フレイスからすれば、自分の攻撃は届くのに相手の攻撃は避けられるワンサイドゲームにもほどがある状況だ。
それを理解していなかった時には攻撃を受けたりもしたが、裏を返せば理解すれば攻撃を受けることも無くなる。
懸念を上げるなら、愛が持つ回復能力位だ。しかしそれもフレイスからすれば多少鬱陶しい位しか思っていない。
つまる所、フレイスは調子に乗っていた。
流石にナオ=ヒューマ相手には簡単に勝てない、と思いつつもそれ以外は楽勝だと高を括っていた。
これはただのハンティングだと、そう思っていた。
『ん、なんや?』
さてどうやってこの人間を殺してやろうか、と考えていた所でフレイスは後ろから何らかの音が響いてくることに気付く。
それは故郷の島で幾度も聞いた音、故郷を蹂躙しようとした人間たちが出す無粋な音。
エンジン音だ。
フレイスは後ろを向き、何か、フレイスには分からないがバイクに乗った人間が自分に向かって一直線に走って来ているのを見た。
ここでフレイスは考える。
はっきり言って回避するのは造作もない、だがこの島で得た能力の練習になるのではないかと。
自分はまだこの力を完全に使いこなしているとは言えない。それでもナオ=ヒューマ以外は楽勝だろうが、ヒューマと戦う事も考えておきたかった。
だからこそフレイスは練習の為に、バイクが自分に当たる直前に透明化しバイクを回避することを選んだ。
それがミスとも知らずに。
「どけよおおおおおおおおおおお!」
人間が何か叫んでいるがうでもいい。
フレイスが透明化しバイクがフレイスをすり抜けて進んでいく。
しかし、人間の右手がフレイスに掛かった瞬間
『ぐわあああああああああああああああああ!!!』
「うわあああああああああああああああああ!!!」
透明化が解除され、バイクが体にめり込み、吹き飛ばされた。
それと同時に乗っていた人間も投げ出され、さっきまで戦っていた人間が受けとめたのだがフレイスはそれを感知しない。
そんな事より自分が今受けている激痛の方が問題だ。
バイクはもう1回透明化する事で体から取り除いたが今度は血が止まらない。
『死ぬんか!? ワイは死ぬんか!?
嫌や、死にたない!
死ぬわけにはいかへん!
ワイは人間共を殺さなあかん!
何か手は無いんか!?』
さっきまでの優勢が嘘のように掻き消えるフレイス。
必死になって足で傷口を抑えたり、無駄だと思いつつ周りを見て何か無いか探すフレイス。
すると、さっきまで何もなかったはずの場所に見たことの無いものが落ちていた。
まるで黒い石の様な、不思議な物体。
さらにその横には、なぜか虎にも読める文字で書かれた黒い石の説明書きがあった。
『魔石。使用すればHPを最大値の25%回復するアイテム』
それを見てフレイスは迷うことなく食べた。
どう使えばいいのか分からないが、とりあえず回復という事は体にいい筈。そんな考えで食べた。
それが功を奏したのか、フレイスの体の傷は塞がり血は止まる。
だが内部にダメージは残ったままだ。
『許さんであの人間……!
ワイが絶対にぶち殺したるからな……!!』
バイクに乗っていた人間に殺意を向けるフレイス。
治ったとはいえあそこまでの傷をつけた相手を許す選択肢は、フレイスには無い。
だが彼はもう少し考えるべきだった。
なぜ自分の前にさっきまで無かった石が落ちていたのかを、そうすれば気付けたかもしれない。
自分のデイパックから支給品が零れ落ちたことに。
自分の支給品が、いつの間にか1つ無くなっていることに。
◆
阿良愛は訳が分からなかった。
さっきまで虎と戦っていたと思ったら、いきなりバイクがやってきて虎にぶつかり運転手の少年がこっちに飛んできたので受け止めた。
1行で説明できるが、状況がジェットコースターだ。
「えっと……。あなた、名前は?」
とりあえず受け止めた少年を地面に降ろしながら尋ねる。
少年は、さっき身近にあった危険を感じていないかのように澱みなく答えた。
「笹原卓、ごく普通に高校生やってます」
「私は阿良愛、警察官です!」
「おお、それは有難いですね。
じゃあ早速なんですけど虎をなんとかしてくれませんか? さっきから殺気向けられまくってるんですよ。
いや洒落じゃなく」
「余裕ありますね笹原くん」
「まあ殺意向けられるのはこの殺し合いが初めてじゃないんで。野生動物に襲われるのは初めてですけどね」
どこでそんな経験をしたのか、と愛は聞きたくなったがその前に虎が2人の目の前に立ちはだかった。
虎の目は卓を睨んでおり、彼が言った殺気の下りは嘘でないと明確に示される。
「笹原くんは下がってください、ここが私が戦います」
「下がってたいのはやまやまですけどね……。
でも阿良さんはあの透明化に対する異能を持ってるんですか?」
「私の異能はおそらくですが回復能力なので透明化に対しては力になれません。
ですがこれでも熊殺しと言われたことがあります!」
「虎殺しになってくれませんか。愚地独歩になって頂けませんか!?」
「でも正直物理的な面ならともかく、あの透明化をされると私には成す術はありません。
ですが時間稼ぎ位なら……」
「いや、それなら俺も戦いましょう。
物理面はともかく、異能相手なら俺の立つ瀬もあります。
というか戦闘面で初めて俺異能使うわ、最初が自分の支給品の効果無効ってどういうことだよ」
卓の言葉にどういうつもりなのか、と愛は思う。
警察官である以上一般人を守るのは当たり前だ。
いくらこの殺し合いが異常事態だからと言って一般人を矢面に立たせるつもりは愛には無かった。
「一般人のあなたに矢面に立たせるわけにはいきません」
「んな事言ってる場合じゃないでしょうに……。
てかもう向かってきてんだよ!!」
卓の言葉通りに虎はこっちに向かってきていた。
それもただ走って来るだけじゃない、愛が卓が来る前に見た高速移動だ。
「気を付けてください!」
「分かってますって!」
卓に注意をしながら、前後左右を見張る愛。
自身の動体視力では追い切れない以上、出来るのは向かってきたときに迎撃する事のみ。
虎の足音が前後左右で響く。さっきと同じように凄まじいスピードで。
その音が幾分か続いた所で、紛れるかのように小さな音がした。
その音を愛は知っている。
それは石を飛ばした音だ。
そして狙いは
「笹原くん危ない!」
卓だった。
彼に向かって飛んできた石を愛は咄嗟に受け止めた。そしてその石を見て愛は驚愕する。
それ自体は普通の石だった。だが大きさが違う。
愛に飛んできたのは小石だった、恐らく石をぶつけても大した効果は無いと分かっていたから隙を作る為のものだろう。
だが卓に飛んできたのは大き目の石だ。頭にぶつければ大怪我は間違いのないような大きさの石だった。
これを見て分かる事は、この虎は頭が良いという事だ。
相手をよく見て、それに合わせて効果的な攻撃をする。
野生動物が持つ悪辣さでは無い気がするが、気にしている暇は無い。
「阿良さん後ろ!」
なぜなら虎が石が飛んできた方向とは反対から、愛目がけて飛びかかってきたのだから。
そして押し倒し、動けないようにし愛の頭を噛みちぎろうとする。
「私……!?」
笹原くんじゃないの!? という驚きが愛を支配する。
私を仕留める為に笹原くん狙いに見せたハッタリなのか、それとも邪魔になる私を先に倒したいだけなのか。
それを知るすべは愛には無い。
だがこれだけは分かる。
これはもう虎じゃない。
虎の形をして、野生の力を持っていてもこの周到さは野生動物のそれじゃない。
人間だ。知恵のある人間と同じだ。
性質が悪すぎる。
「畜生が!」
それを見て叫びながら右拳を構え、虎に向かって行く。
愛もまた拳を構え、虎に抵抗しようとする。
だが押さえつけられ上手く動くことが出来ない上に、透明化で無効にされるかもしれないという懸念もあったがそれでも目一杯殴り掛かる。
当然フレイスは透明化で対処しようとする。
「甘いんだよ!」
しかし卓が右拳で虎を殴った瞬間、透明化が解除され虎は殴り飛ばされる。
勿論人間が虎を殴った所で大したダメージを与えられるわけがない。
だが隙は生まれる。
その生まれた隙に、愛もまた殴り飛ばす。
卓と違い十分なダメージを与えて。
「よし!」
大きくのけぞった虎から這い出た愛は、卓を連れて距離を取る。
そしてある程度の距離を取った所で、お互い動くことなく睨みあっていた。
理由は簡単だ。
愛と卓は虎のスピードについて行けず、受け身にならざるを得ない為うかつに動けないから。
そして虎は卓が自分の異能をどうやってか無効にしていると理解し、うかつに近づけなかった。
膠着状態になる2人と1匹、ともすれば永遠すらありえそうなこの現状。
だがその状態は長くは続かなかった。
「見つけましたヨ、笹原サン!」
唐突に女性の声が聞こえた。
声がした方を愛が見ると、そこに居たのは異形だった。
人型ではあるものの、それは人の形をしているだけだ。
警察官として活動し、人の死体すら見たことのある愛でも見覚えの無い怪物。
そんな物が現れ、卓の名前を呼んでいる。
その事実に愛は思わず思考が止まった。
だが卓は思考の止まった愛から、持っているサバイバルナイフをひったくると、なんと虎へ向かって行った。
危ない、と愛は言おうとしたが虎もまた現れた異形に目を奪われていた。
というより、恐怖して動けなかったというのが正しいのだろうか。
野生では絶対に見る事の無い存在に、理解を越えた存在に虎は恐怖したのだ。
その隙を卓は容赦なく突く。
卓はナイフを振るい、虎を斬りつけようとする。
それに気付いた虎は咄嗟に後ろに退く。そのお蔭でナイフの直撃は避けた。
だが虎の片目を傷つけるには十分だった。
片目に傷を負い、咆哮する虎。
卓はすぐにナイフを構えながら、愛の元まで下がる。
しかし虎は愛達に向かってくる事無く、異形を一瞥して逃げ出した。
「助かった……」
「訳じゃありませんよ」
安心する卓と対照的に、未だ臨戦態勢を解かない愛。
それを見た卓は一言。
「ああ、大丈夫ですよ阿良さん。
見た目は怖いかもしれませんけどあの人殺し合いには乗ってませんから」
「本当ですか?」
「本当です」
その言葉を聞いて愛も戦闘態勢を解く。
短時間だが卓は信頼出来る人物だ、と愛は思っていた。
自身を狙う虎相手に、勇気を持って立ち向かえる人。
愛は卓をそんな風に思っていた。
だからこそ、卓がそう言うならあの異形も殺し合いに乗っていないと信じたのだ。
――なら何で一緒に居ないのか?
愛は一瞬そう思ったが、これまでの戦いで疲弊していたのか卓に寄りかかるように気を失った。
◆
完敗だった。
ぐうの音も出ない程の完敗だった。
『油断してもうた……。
これがヒューマのいうイノーって奴かと思って、調子乗ってもうた……』
透明化に高速移動、この2つがあれば楽勝だと高を括ったせいで負けた。
言い訳しようと思えばできるが、仮にも野生で生きてきたフレイス。それが意味の無いことくらいは分かる。
『何やあの人間のイノー、ワイが躱そうと思ってもいきなりそれをでけへんようにするやなんて。
もしかしてあの人間はイノーを使えへんようにするイノーを持っとるんか』
それでもただの肉弾戦なら負ける道理は無かった。
でも負けた、それはなぜか。
『ワイが弱いからや。
人間なんざ余裕やと思ってたワイが弱いからや』
人間は弱い。
銃や罠が無ければ人間なんて余裕で食べられるだけの存在になる。
だが人間は強い。
仲間を集めて道具を持って戦い、あの自然を破壊し恐ろしい勢いで自分の領土にしていった。
そして沢山の仲間を殺してきた。
『やったるわ。今までの傲慢はポイーでいくで。
そしてあのイノーを無効化するイノーを持った人間をぶち殺したるで。
でも疲れたンゴ、その前に少し休まなアカンわこれ』
そう思ったフレイスの前に現れたのは、H-6にある農協の建物。
勿論フレイスに人間の文字は読めないが、とにかく建物であることくらいは分かる。
『雨風しのぐには丁度ええな……。
人の気配もせえへんし、ここで一休みや』
そしてフレイスは農協に入り、体を寝かせて一休みする。
勿論寝る訳では無い、体を休めていても警戒はする。
『待っとれよ、人間共!
ワイは必ず、お前らに勝つで!!』
そして宣戦布告。虎の言葉が人間に分かる訳は無いが、それでも宣言する。
これは狩りでは無いと。
これは殺し合いだと。
この瞬間、フレイスは真にゲームに乗ったのだ。
『にしても最後に見た奴、あれ人間なんか……?』
一抹の疑問を残して。
◆
道端ロクサーヌが見た物、それは虎と戦う殺人鬼。そして殺人鬼と一緒に居た少女。
少女は気を失い、殺人鬼に寄りかかっていた。
それを見たロクサーヌはすぐに殺人鬼、笹原卓の元へ向かう。
「その人ヲ放しナさい!」
「お断りします」
そう言って卓は少女の首に持っていたナイフを向ける。
「いささか月並みですが、動くとこの人の首をナイフで掻き切りますよ」
「あなたハ……! こんな事ヲして恥ずカシくないノですか!?」
「流石に罪悪感は感じてますけど……」
ロクサーヌの問いに答えながら、卓は少女を引きずりつつある場所へ向かう。
「でも捕まりたくないんでしょうがないですよね」
そう言って卓は少女を放す。
それを見たロクサーヌは少女の元へ向かおうとするが
「一歩でも動いてみろ、首は切れなくても頭にナイフを刺すくらいは楽勝だぞ」
卓の言葉で足を止める。
その光景を見ながら卓は目指していた場所に辿り着く。
それはバイク、が倒れている場所だった。
卓はナイフを持ちながらバイクを起こし、そして乗る。
乗ったと同時にナイフを投げ捨て、エンジンを掛けて走り出した。
「もう動いていいですよロクサーヌさん。
あとその人の介抱よろしくお願いしますね」
「待ちナサ……っ」
そう言って卓はロクサーヌが呼び止める間もなく去っていた。
ロクサーヌは少女の元へ行き、状態を確認する。
幸いなことに傷一つ付いていないようだ。
虎と戦い、更に殺人鬼の人質にされたにもかかわらず。
「良かっタデす……」
少女の状態に安心したロクサーヌは、卓が捨てたサバイバルナイフを拾いながらこう思う。
分からない、笹原サンの考えていることが何一つ分からない。
何で阿良さんは殺さなかったのだろうか。
虎と戦っていたから、それどころではなかったのか。
それとも、何か別の理由が……。
ロクサーヌには、殺人鬼の気持ちは分からない。
だがそれでいい、狂人の気持ちなど理解しない方が常人の為なのだから。
◆
殺人鬼はバイクに乗りながら呟く。
「疲れた……、まじダルい……」
だがあの状況で休むわけにはいかず、しょうがないから愛を人質にして逃げ出した。
阿良さんには悪いことをした、と思いつつも卓は次の事を考える。
「虎どうしよっかなー、もう虎優勝エンドでいいんじゃねえの?」
面倒くささの余り自身の生存すら投げ捨てた言動をする卓。
だがすぐに思い直す。
「いや駄目だ、虎に襲われて死ぬなんてただの獣害だ。
どうせ死ぬなら俺は殺人鬼らしく死にたい。高笑いしながら死にたい」
常人には理解不能の願望を掲げながら、卓は走る。
「でも今は休みたい」
常人みたいな願望を口にもしつつ。
【一日目・3時00分/H-6 農協】
【フレイス@ピカピカの実/ワンピース】
[状態]:頭部にダメージ(中)、肉体にダメージ(中)、疲労(小)、片目に傷、腹に傷跡
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(自力での確認不可)
[思考・行動]
基本方針:人間達を皆殺しにし、ナオ=ヒューマも殺して島に帰るンゴ
1:今は休むンゴ
2:あのイノーを無効化するイノーを持った人間(笹原卓)は絶対にぶち殺したる
3:人の巣(集落)、どないしよ?
4:優勝後にヒューマを殺すために、何か対策も考えとく
5:これがワイのイノーか……
6:あれ(道端ロクサーヌ)人間なんか……?
[備考]
※南の山山頂から見たことで会場の地形や建物の位置を大雑把に把握しました。
※自身の能力(イノー)についてはまだ完全に把握できていません。
またピカピカの実による攻撃透過などの詳しい能力制限に関しては後の書き手にお任せします。
※支給品の入っているディパックを自分で確認することができません。
食料のみ開始地点に配置されていました。
支給食料(新鮮な雉の死骸)×3はH-3のどこかに埋めてあります。
※強い衝撃を受けると、支給品がデイパックから零れ落ちる事があります。
フレイスはこの事に気付いていません。
※自身の支給品が1つ減ったことに気付いていません。
※人間(笹原卓)の異能を『イノーを無効化するイノー』だと思っています
【一日目・3時00分/H-5 草原】
【道端ロクサーヌ@名状しがたい力(ウズラ)/SAVE】
[状態]:怒り、困惑
[装備]:サバイバルナイフ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3、君島蛍の持ち物(基本支給品一式、不明支給品×0~2、指パッチンのやり方を書いた紙)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマの打破、もしくは殺し合いからの脱出
1:この少女(阿良愛)を介抱する
2:笹原卓を止める、殺しはしない
3:殺し合いに乗っていない人々と合流
4:殺し合いに乗った人も可能であれば説得
5:すぐにでも元の姿には戻りたいが、そのために他人を犠牲にしない
6:何か顔を覆えるものが欲しい
[備考]
※自分の姿が異形のものになっていると確認しました。使える技そのものは把握しきっていません。
※君島蛍の能力が指パッチンで物を切断するものだと知りました
【阿良 愛@スパルタクスの宝具とスキル/Fate】
[状態]:魔力蓄積(小)、体力消耗(中)、疲労(大) 、気絶
[装備]: 防弾防刃ベスト
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:圧制者を潰す。
1:気絶中
2:虎を倒す。最悪、島津蒼太が逃げきるまで時間を稼ぐ。
3:一般人を保護する。
4:圧制を許さない
※『今の所』狂化スキルの効果は微弱です。しかし圧制者が目の前に現れればその限りではありません。
※宝具によって驚異的な再生能力を得ていますが、『頭部および心臓の大規模な破壊』『首輪爆破』には再生が働かず死亡します。
※ダメージと共に魔力が少しずつ蓄積していきます。最大値まで蓄積されると魔力の制御が出来なくなり、暴走状態に陥ります。
【笹原卓@幻想殺し/とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(中)
[装備]:マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード(運転中)
[道具]:基本支給品、不明支給品(0~1)
[思考・行動]
基本方針:楽しく気ままに人殺し
1:とりあえず今は逃げる
2:阿良さんには悪いことしたとは思うけど、休みたい
3:虎(フレイス)対策を考える
4:ロクサーヌさんも増田も後でいい
5:月宮のダーリンっぽい奴(赤毛のイケメン)はなるだけ殺さない
6:郷音ツボミに会ったら増田ユーリのことを聞いてみる
[備考]
※自身の異能について把握しました
※どこに向かうかは次の書き手氏にお任せします
【マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード】
操真晴人が乗るライダーマシン。
内部には多彩な魔法石が組み込まれているが燃料はガソリン。
最高時速は260km。
【魔石@真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE】
使用すればHPを最大値の25%回復するアイテム。
本ロワでは悪魔に限らず参加者なら誰にでも使える。
※G-5のどこかに片手剣が放置されています。
|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|時系列順|[[1/6の生きている参加者]]|
|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|投下順|[[1/6の生きている参加者]]|
|[[Eye Of The Tiger]]|フレイス||
|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|道端ロクサーヌ||
|[[Eye Of The Tiger]]|阿良 愛||
|[[さあここに築いて見せろ 天に届く死体(ヒト)の山を]]|笹原卓||
2018-07-18T11:06:54+09:00
1531879614
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Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/150.html
トーマス・ベイカーと鏑木シリカの2人はE-4,井戸の家から出発しようとしていた。
「さて、次の目的地だが……」
「南東の集落じゃないんですか?」
トーマスの言葉に疑問を呈すシリカ。
彼女はトーマスの目的である人喰いをする為に、参加者が集まりやすそうな集落を目指すと思っていた。
「いや、私はここを目指そうと思っている」
そう言ってトーマスは持っている地図を広げ、目的地を指差す。
そこはシリカが考えていた場所とは真逆だった。
「座礁船、ですか……」
「ああ、私はそこを目指す」
A-1にある座礁船、それがトーマスの目的地だった。
それを意外だとシリカが思っていると、トーマスはそれを見破ったのかなぜそこを目指す理由を説明し始めた。
「私がここを目指そうと思った理由は簡単だ。ここには何かある、そう考えたからだ」
「……簡単すぎます」
一言で説明され、思わずツッコミを入れるシリカ。
勿論トーマスもこれで説明を終わらせる気はなく、詳しい説明を始めた。
「そもそも私は最初から疑問だった。
資源開拓プラントはまだしも、座礁した船を地図に乗せていることが。
それも島から数百メートルは離れた位置にある船をだ。
殺し合いなら島の中だけで完結させても問題ないだろう、あのナオ=ヒューマが参加者を海に出す意味も無い」
「そうですね……」
トーマスの言葉に同意するシリカ。
それを背に受けながら説明は続く。
「ミス鏑木、私にはこの座礁船と資源開拓プラントは、殺し合いに乗る者の為にある訳では無い様に見えるのだよ」
「え?」
殺し合いに乗る者の為ではない、ならば誰の為に船やプラントはあるのか。
そのシリカの疑問にトーマスは答える。
「考えられる可能性は3つ。
まず1つ目はナオ=ヒューマの為にある」
「はぁ……」
「船やプラントがこの会場に置いてあるのはナオ=ヒューマにとって置かなければならない事情がある、という考え方だ。勿論理由は分からないがな」
「勿論、なんですか……」
「勿論だ、我等には情報が無さすぎる」
「なら、2つ目は何ですか」
勿論を付ける意味はあるのか、そう思いながらシリカは1つ目の可能性には納得できた。
だからこそ次に聞く事になる、2つ目が理解できなかった。
「2つ目は殺し合いに抗う我らの様な者の為だ」
「は?」
トーマスが何を言っているのか、シリカには理解できなかった。
なぜナオ=ヒューマが反抗する相手の為に物を置くのかがシリカの頭では思いつかないからだ。
「何で、ナオ=ヒューマがそんな事……」
「いや、ナオ=ヒューマでは無いかもしれんぞ」
「……どういう事ですか?」
「簡単だ。
ナオ=ヒューマには仲間なり部下なりがいて、その中に反逆者が混じっていると考えれば納得出来るだろう」
「な、成程……」
獅子身中の虫、という奴だろうか。
まあ確かに、ナオ=ヒューマは他人に好かれ無さそうだな。とシリカは思う。
トーマスのいう反逆者がこっそり私達の様な参加者に力を貸すのなら、殺し合いに乗る者の為にある訳では無いというにも納得はいく。
もしそうなら、そこから殺し合いを脱出する手がかりがあるのでは、とシリカは考えた。
「もっとも、現状では3つ目のナオ=ヒューマの気まぐれという可能性が一番高いがな」
「そうですか……」
しかしトーマスは容赦なくシリカの希望を打ち砕く。
そして
「まあこれで理解できただろう、私が座礁船を目指す訳が」
「分かりました。じゃあどちらにしろ集落に行って港から出発ですか」
「それは確かめてからだな」
「……何をです?」
トーマスの言葉の意味を問うシリカ。そして答えはすぐに帰ってくる。
「もしナオ=ヒューマが座礁船に行かせたくないなら、諦めて集落を目指しそこから出発することになる。
だがナオ=ヒューマにとって行くことが問題ないのであれば、おそらくC-3辺りに座礁船に行く方法があるはずだ」
「船や橋、とかですか?」
「いや、船ならともかく橋なら地図に書くはずだ。私は地下通路だと思っている」
「地下通路ですか……」
確かに地下通路なら地上の地図に掛かれていないのはおかしくない、のかな。
そう思いながらシリカは聞く。
「じゃあ直接C-3に?」
「いや、その前に神社に行っておこうと思う。
そこに通路があるかもしれんし、無いとしても人がいるなら情報交換もできる。
それに直接行くより道筋が分かりやすいだろうからな」
「分かりました」
こうして2人は神社をめざし歩き出した。
◆
「ぬわあああああん疲れたもおおおおおん」
亜希を背負いD-4から歩いてC-4の神社まで歩いてきた恋矢は、亜希を床に降ろしながらぼやく。
無理もない。距離こそ決して長くは無いが、歩きにくい森の中でなおかつ気絶した人間を運んできたのだから。不満の一つも言いたくなるだろう。
とはいえこのまま亜希を床の上で寝かせるのはいかがなものか、と恋矢は思った。
何か掛ける物をと思うが、自分の服はTシャツと短パンでこいつの服は現状ピッチリと着こんでいるし脱がすわけにもいかない。
仕方ないので亜希のデイバッグを枕代わりに頭の下に敷いた。
「これで少しはマシだろ」
多分、と後ろにつけて恋矢は亜希を寝かせる。
この時点で亜希を見捨てても良かったが、今更別れるのも嫌だった恋矢は亜希の横に座る。
そうして座りながら亜希が起きるのを待っていたが、しばらくして恋矢は心から思った。
「暇だ」
暇だった、凄く暇だった。
普段なら空き時間が出来たなら、スマホで音楽を聴くなりゲームするなり暇つぶしの手段がある。
が、現状スマホは取られている上に殺し合いという異常な環境だ。
この状況で暇つぶししている場合ではない、とは思う。
思うのだが、殺し合いが始まってから2時間以上経ち、C-4とD-4の間をウロウロしているだけとはいえ未だ亜希以外の参加者と会っていない事を考えると、この辺りは人がいなくて安全なのではと考えてしまう。
だから油断が生まれ、暇だなと思うのだった。
しかし恋矢の心を油断が支配しようとするまさにその時。
ギィ
神社の入口の床が軋む音がした。
「ファッ!?」
恋矢が驚きの声を上げながら入口の方を見る。
だが入口は閉めていて、暗闇の中では何も見えず、やむを得ず入口の方へ向かおうとする。
「すまない、誰かいないか」
すると神社の扉の向こうから男の声がする。
恋矢はそれに返答せず、音をたてないようにしながら―最初の時点で驚きの声を上げた時点で遅い気もするが―扉の前に立つ。
「誰も居ないんじゃないですか?」
更に扉の向こう少女の声が聞こえてきた。
恋矢はそれを聞いてやりすごせる、と安心した。
「いや、中に誰かいるのは確実だ。
小さいが男の声が聞こえたし、僅かだが足音もした」
「はぁ……?」
しかしその希望は一瞬で崩れ去る。
男は恋矢が出した足音や声を聞いていたのだ。
「という事だ、聞こえているのだろう。
我らが信用できないというのならそれもいい、だが情報交換位はしてくれないだろうか」
恋矢は考える、この申し出を受けるか否か。
受けないデメリットは少ない、無言を貫くなら何も言わず彼らは去るだろう。
受けるメリットは多い、こっちはほぼ情報が無い。何せ自分たちはC-4とD-4をうろうろしてただけでロクに他の参加者と会っていないのだから。
恋矢は考えた結果
「しょうがねぇなぁ(悟空)、じゃけん情報交換しましょうね~。
とはいっても俺、大した情報持ってないけどいいすか?」
「それは構わんよ。
だが情報交換の前に自己紹介でもしようか、私はトーマス・ベイカーだ」
「私は鏑木シリカです」
「田所恋矢、学生です」
情報交換を受け入れた。
恋矢が渡した情報は少ない、精々この辺りには蜂が居るから気を付けろ位だ。
異能や気絶している亜希の事は言わなかった。気絶している人間を抱えている事を言いたくは無かったし、異能に関しては向こうも言うとは思っていないからだ。
一方、恋矢が受け取った情報も決して多くは無い。だが有益だった。
「E-4の井戸の家に殺し合いに乗っていない参加者、すか……」
「うむ、君は乗っていないのなら会いに行くといい。彼、ミスタ島原なら君を拒絶したりはしないだろう」
「そ、そうすか……。でもいいんすか?」
「何がだね?」
恋矢の疑問の声に、何を言っているのか分からないとトーマスは返す。
「いや、俺大したことない情報しか渡せてないのに他の参加者の情報貰っちゃって……」
「大したことないだと? いやいやとんでもない、我等にとってはとても有益だ」
「「え?」」
トーマスの発言に恋矢とシリカの声がダブる。
「ミス鏑木は思い出してほしい。我らが出会ったのはG-2、山の中腹だ。だがそこに虫はいたかね?」
「……いませんでした」
「やべぇよやべぇよ……」
2人の会話に思わず口を出す恋矢。
森の中に虫がいるのだから山の中にも普通は虫位いるだろう。
たまたま見なかっただけならともかく、もし1匹もいないとしたら……。
「他の場所も回らないと何も言えないが、もし虫がいるのがこの辺りだけならば……」
「ここには何かあるという事ですか?」
「そうだ。そして一番怪しいのはやはり――」
「座礁船……」
「うむ、おそらくな」
そこでトーマスはシリカとの会話を打ち切って、恋矢に話しかける。
「と、いう訳だ。これより我らはA-1の座礁船を目指す、手伝ってくれるのなら後からでもいいから来てくれ」
「……申し訳ないが同行はNGさせて下さい」
「……まあ仕方あるまい」
そう言うと2人分の足音が遠ざかっていくのが恋矢には聞こえた。
それを聞いて恋矢はこれからどうするか考えようとするが
「何するにしても、まずは千原が目覚めるのを待つべきだよなぁ……」
その前に、同行者の回復を待つことにした。
◆
田所恋矢との情報交換は、トーマス達にある種の指針こそ得たものの大したことはお互い言っていない。
それは同行者の存在や異能、そしてもう1つ
「良かったんですか、怪しいと思っている丹美君のことは言わなくて」
「下手に何か言うとミスタ丹美に気付かれるかもしれないからね。何も言わない方が良いだろう。
嘘や確証の無い情報をまき散らすようなメディアリテラシーの無い真似はしたくないのでね」
「……そう言う問題ですか?」
怪しさを覚えている参加者、丹美寧斗について。
彼らは寧斗について何も言わなかった。容姿どころか存在すらも。
こうすれば実際に会った時寧斗と出会う事で何らかの違和感を覚えてくれるのではないか、とトーマスは考えたのだ。
「でも下手すれば田所さんがこっちに疑いの目を向けますよね?」
「それならそれで仕方のないことさ」
このトーマスの行動が誰にとっての吉で、誰にとっての凶になるか。
それは誰にも分からない。
【一日目・3時00分/C-4・神社】
【トーマス・ベイカー@バクバクの実/ワンピース】
[状態]:健康
[装備]:グイード・ミスタの銃(6/6)@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み、着替えになりそうなもの、剣無し)
[思考・行動]
基本方針:ナオ=ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
0:A-1の座礁船を目指す、その為にC-3へ行く
1:殺し合いに乗った人間は殺し、食す
2:この辺りには何かある、かもしれない
3:ミスタ田所は割と妥当な考え方をするね
[備考]
※自身の異能を『何でも食べる事が出来る能力』と認識していますが、それだけではないと考えています。
ただし、確信はしておらず食べる以外の能力は分かっていません。
※鏑木シリカの異能の一部(螺湮城教本)について知りました
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【鏑木シリカ@キャスター(ジル・ド・レェ)の宝具・スキル/Fate/】
[状態]:健康
[装備]:セイバーのスーツ@Fate/Zero、螺湮城教本@Fate/
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~1(確認済み、着替えになりそうなものは無し)、トーマス・ベイカーの誓約書
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。生きて幸せになりたい
1:この人(トーマス・ベイカー)に付いていく。
2:この辺りにはなにかある……?
[備考]
※自身の異能の一部(螺湮城教本)について把握しました
※螺湮城教本を読んで正気度が喪失するかは次の書き手にお任せします
※丹美寧斗は異能で子供に成りすましている成人男性だと推測しました
※田所恋矢と情報交換をしましたが、一緒に居た千原亜希の事や異能の事は知りません。
【千原 亜希@スパイダーマン/スパイダーマン(サムライミ版)】
[状態]:失神、スカート膝下、襟までボタンを閉めたマジメスタイル、殺し合いへの恐怖
[装備]:七味唐辛子、ミケル、ミケルの入ってる虫カゴ
[道具]:支給品一式
[思考・行動]
基本方針:不明(ドッキリではないのはわかった)
0:失神中
1:虫怖い虫怖い虫怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い蜘蛛怖い
2:恋矢と一緒に行動
3:殺し合いや異能への恐怖感
※異能がスパイダーマンであることを理解しました
※漫画、特撮に対しての知識は「ワンピース」と保育園の時に見ていた「魔法戦隊マジレンジャー」
「仮面ライダー響鬼」「ふたりはプリキュア」のみ
【田所 恋矢@仮面ライダービースト/仮面ライダーウィザード】
[状態]:精神疲労(小)、混乱気味、空腹度5%
[装備]:仮面ライダービーストの装備一式
(ビーストドライバー、ファルコリング・カメレオリング・ドルフィリング・バッファリング、
ハイパーリング、ダイスサーベル、ミラージュマグナム、グリーングリフォン@仮面ライダーウィザード
[道具]:支給品一式、サバイバルナイフ、日本刀、プラモンスター
[思考・行動]
基本方針:すいません許してください、何でもしますから……
0:亜希が目覚めるのを待つ
1:本気で早く家に帰りたい
2:亜希が目覚めたらE-4の井戸の家にに行くかA-1の座礁船に行くか決める
※異能が仮面ライダービーストであることを知りましたが、知識が無いので具体的に何ができるのかわかっていません。
※仮面ライダービーストの装備一式は制限により田所恋矢にしか触る事ができません。
また、何かしらの能力で触れたとしても、使用できるのは田所 恋矢のみです。
この制限は田所 恋矢が死亡しても解除されません。
※長時間魔力を得なかったり、ビーストの能力を使うたびに副作用として空腹感が高まっていき、100%になると死亡します。
食事で空腹感を抑え、他の参加者を殺害して魔力を吸収するなどで空腹を満たすことができます。
※トーマス・ベイカーと情報交換をしましたが、丹美寧斗の事や異能の事は知りません。
島原翼については男子高校生である事は聞いています。
|[[ヒーローの資格]]|時系列順|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|
|[[図書館についたぞ]]|投下順|[[殺人鬼が虎と戦ってどうすんだ]]|
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|トーマス・ベイカー||
|[[対ちょっぴり怖い資産家]]|鏑木シリカ||
|[[ギャルと見るはじめての異能]]|千原 亜希||
|[[ギャルと見るはじめての異能]]|田所 恋矢||
2018-05-12T07:53:49+09:00
1526079229
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ヒーローの資格
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/148.html
鬱蒼とした茂みを走り続ける、一人の走る男の姿がある。
走る男は、お世辞にも恵まれた体格とは言いがたい。
運動をしてないと想像するに難くない、だらしない体格。
センスもあまり感じられない、どこにでもあるファッション。
人によっては、嫌悪や侮蔑の対象の代表格たる姿をした男だ。
しかし、誰が思うだろうか。この身体を動かしているのは、
元々少女だった存在、しかも学園一の美女とまで評された存在など。
この身体の持ち主である大木潮の異能、ボディーチェンジによって身体を入れ替わった少女、
天草ゆたかはブッチャーマンとの戦いに敗れ、今もなお敗走の道をたどっていた。
ゆたかが逃げるまで潮が必死に時間稼ぎをしたお陰で、彼女は無事に逃亡に成功している。
「あ―――」
がむしゃらに走り続け、ゆたかは足を滑らせて派手に転ぶ。
運動不足の身体でがむしゃらに走り続ければ、体力の限界は転ぶに決まっている。
運動嫌いにより、典型的な肥満体となった潮の体躯は、元が小柄な彼女では不慣れなものだ。
元となるギニューも、孫悟空を乗っ取った時に戦闘力が本来のより、かなり低かったのと同じである。
「イタタ・・・・・・」
転びはしたものの、肥満体のお陰でいくらか衝撃は和らげた。
同時に、本来なら当たらないであろう部分までダメージがあるのだが。
顎をさすりながらゆたかは(肥満体においての)すばやい動きで身を起こし、背後を見やる。
こんな派手に転べば敵にとってはチャンスでしかなく、恐怖に染まった顔ですぐに見るが、背後は誰もいない。
ブッチャーマンの姿はないが・・・・・・同時に、自分の―――潮の姿もなかった。
あるはずがなくとも、まだ現実を受け入れられてないのだ。
自分の身体・・・・・・も確かにあるにはあるが、殆ど二の次である。
身体よりも、潮を見捨てて逃げ出したことが一番の後悔だ。
潮は最善だからした行為であり、レイジングハートもそう促した。
わかっている。だからこそ、こうやって逃げていたのだから。
だからと言って彼女は人の死を簡単に受け入れられる存在ではない。
魔法少女に憧れて、しかもあの高町なのはの魔法を得た言うのに、
一人の命を救うことも出来ず死なせてしまい、逆に助けられて。
彼女にとっての憧れた魔法少女とはまったく異なる、陰鬱で悲惨な結果。
「アアッ・・・・・・アアアアアッ!!
涙を流さずにいられるはずがない。可憐な少女の泣き声なんてものはなく、
事情を知らぬ者が見れば、いい年した大人の男が泣きじゃくる、見るに耐えない光景だ。
殺し合いの場であるこの状況では周囲の警戒も怠り、自分の居場所を教えるカモでしかない。
「ウッ・・・・・・」
泣き叫んでいると、聞こえてくるうめき声。
いや、本当は先ほどから呻いてはいたのだが、
ゆたかの声にかき消されて聞こえなかっただけだ。
声のした茂みを掻き分けると、そこに倒れているのは一人の老人。
アイドルの狂気を前にし、右目から光を失った男、レオパルド・ガーネットだ。
『ゆたか、どうしますか?』
汗ばんだ手の中にいるレイジングハートから、問いかけられる。
倒れる老人が、殺し合いに乗った側かどうかの判断は出来ない。
殺し合いに反対していた者達へと襲撃し、逆に致命傷を負わされて、
撤退して今に至っているのかもしれない以上、怪我は判断の基準にならず。
老人を前にゆたかは―――
(助け、ないと。)
困ってる人は放っておけない。
優しい彼女には、選ぶことなど最初からなかった。
相手が乗っている可能性が完全に否定できないとしても。
潮を見捨てたように、一つでも後悔したくないから。
慣れない身体で大の大人を担ぐのに時間はかかるが、
なんとか担いで、とりあえず状態が見えにくい茂みから脱出。
傷の箇所は把握して背中の傷を見るべく、うつぶせに寝かせて傷を診る。
傷は決して深いものではなく、今すぐ命に関わる問題ではない。
とはいえ、見るからに痛々しい傷で、見てるだけで胸が痛く感じていた。
「レイジングハート、フィジカルヒールって・・・・・・」
ミッドチルダ式の魔法の一つにはフィジカルヒールと言う、
肉体的な負傷の治癒と言うシンプルな回復魔法が存在する。
レイジングハートに頼もうかと思ったものの、
「できないよね。なのはは一度もつかってないし。」
途中でゆたかも無理だと悟り、声が縮みながら項垂れる。
A’S以前でもクロノが使用しているが、作中でなのはが使用してる描写はない。
(ついでに言うと、フィジカルヒールの名前が判明したのはA’SのDVDの特典でもある)
ないものを異能として支給することはないだろうし、何より肉体の傷を治す魔法だ。
明らかに殺し合いを否定する者には有利であり、なおかつ殺し合いが進まなくなる。
異能を与えるに当たってこちらの性分も理解しているであろう主催者が、
都合よく使用したことがない異能、それも回復魔法をくれるはずがない。
もっともヒューマは一つだけ、参加者に支給した異能の能力を理解してないし、
制限や使い捨てはあれども、回復出来る異能やアイテムに関しても、支給してくれている。
無論、こんなことを考える時点で彼女の支給品でどうにかできるものもなく。
正確にはあったと言うべきか。彼女がこうして動けたのは、潮が仙豆を食べたお陰だ。
あんなものが二つも三つもあったら、所持者が圧倒的有利なので仕方ないが、あれは一つしか支給されてなかった。
「と、なると―――すみません。」
残る可能性は一つ、倒れている老人の支給品だ。
瀕死の人間のデイバッグを漁るなど、端から見れば危険人物そのものだが、
かといってこの傷を放っておくのは、彼女としては出来ない行為でもある。
人気もないので誤解もないと思い、聞こえてはいないだろうが謝罪してから、デイバッグを漁る。
(あった!)
望んでいた物―――避難の際に用いる医療キットを発見し、
中に入っている包帯テープを手に、今度は老人の上着を脱がす。
老人とは言うが、アクションシーンをやるにあたって身体は資本だ。
若者に劣らぬぐらいの、健康的かつ引き締まった体つきをしている。
暗がりもあってか、誰だかわかってないゆたかは驚かされながら、包帯テープを巻く。
多少焦って無駄に使ったものの、さらしのように巻き終え、
右目も同じ要領に巻いて今度は仰向けに、老人のデイバッグを枕代わりにして寝かせる。
出来ることなら集落など民家のある場所で目指したかったが、現在地はD-8。
民家がある場所は周辺の地図には表記されてなく、先ほどでさえ運ぶのに苦労している。
万が一殺し合いに乗った参加者に出会ってしまえば、逃げることは困難を極めるだろう。
怪我人を背負って逃げれるほど恵まれた体躯でもない以上、動かないほうが得策だ。
―――ああ、いい天気だ。
朝日に照らされながら、レオパルド・ガーネットは目を覚ます。
背伸びをしながらベッドから出て、目覚ましにコーヒーをすすり、朝食を摂る。
快晴の空の下、優雅に過ごせる朝食の時間。平和―――この言葉以外考えられない空間だ。
豪邸の一言に尽きる、一人ではもてあましそうな家で朝食を摂った後、
彼はすばやく身支度を整えて撮影現場へと向かう。
「ハロー! おまたせ~!」
「お、主役がきてくれましたよ!」
「これが終われば打ち上げしましょうか!」
「お、いいねぇ。でも君達、浮かれすぎて手を抜いちゃだめだよ?」
「浮かれてるように見えるのに、一番真摯なレオパルドさんに言われちゃ敵わないなぁ。」
スタッフと談笑して、緊張をほぐす。
本人は本当にただの雑談のつもりではあるのだが、
結果的にそうなって、よりいい物に仕上がる。
大スターでありながら、ユーモアで身近な存在。
それがレオパルド・ガーネットと言う男だ。
撮影はクライマックスの場面の撮影に入っていた。
アメリカンコミックのヒーローのように軽快な動きで進み、
この物語のレオパルドが勤める主人公と、因縁の相手が相対する場面だ。
「残るは、お前さん一人だ。一応聞くが、降参するつもりはないか?」
無駄に開けた、ビルの一室で窓際を眺めていた相手へと言葉を紡ぐ。
広々とした一室は彼のダンディな声がよく響き、残響が消えると相手が振り返る。
縦に赤と白に別れた仮面を被り、真っ黒なローブに身を包む相手は肯定も否定もない沈黙。
静寂は、ほんの数秒の出来事であるにも関わらず、緊張感を走らせるには十分な時間だ。
沈黙を貫きながら、相手は返答のつもりのように、その仮面をはずす。
仮面を外れる音が周囲に響き、それを放り投げ、素顔を白日の下へとさらした。
「お、お前は・・・・・・!?」
絶句。迫真の演技ともいえるレオパルドの表情。
見てはならないものを見たような恐怖に染まった色、例えるなら、青。
だが、これは演技ではない。本当の意味で彼は今の光景に絶句している。
相手の姿が、彼にとって忘れたくても忘れられない相手だからだ。
薄い紅色の長髪、右目に咲いている花。狂気にそまった表情で見る彼女の姿。
唐突に、レオパルドの右目から何かが零れる。何かを感じ、軽く触れてみる。
右目から零れていたのは、二人の髪の色のような、赤い液体―――血だ。
血を認識すると、突然右目の視界が不自然になる。右目の視界が半分ほどずれている。
彼女を捉えているが、彼女の右半分が、空間が切れたかのようにずれていた。
目の錯覚と思い、役を演じるのも忘れて右目をこすってもう一度見る。
再び目を開けば、彼女はいつの間にか距離を詰めており、手に握った剣で―――
「ウワアアアアアアアアアッ!?」
「ハァ、ハァ・・・・・・!!」
絶叫を森に響かせながら、レオパルドは目を覚ました。
気分は最悪だ。あんな夢を見て楽しいと言えるものは極少数だろう。
汗は噴き出し、青ざめた表情は風邪を引いたようにも見えてくる。
息を荒げながら辺りを見渡して、彼女の姿を探してしまう。
夜風にあたり、次第に落ち着きを取り戻し、状況を思い出した。
忘れてはいない。なぜ此処にいるのか、自分は何をしたのか、
そして―――狂気に染まったアイドルの姿を。
「夢、ではないんだな。」
右目に触れながら、レオパルドはつぶやく。
誰が手当てしたのかテープが巻かれ、一応止血は出来ている。
けれど、意識を失う寸前に理解している。もう右目は使い物にならない。
なにも映すことはない。あるとすれば、彼が望まぬ道、優勝による願望を成就させる力だけだろう。
右目一つのために人を殺すなど、今気力があったとしてもしようなどとは思わないが。
「あの、大丈夫ですか? 傷が痛かったりしますか?」
声が落ち着いたのを確認すると、ゆたかは茂みから姿を出して声をかける。
いきなりの絶叫に驚いて、彼女も近くの茂みへと逃げるように隠れていたのだ。
そのだらしない体躯と少々似合わない、非常に丁寧で綺麗な言葉遣い。
どこか違和感を感じるようなその姿をレオパルドが凝視していると、
「あ、殺し合いは乗ってません! といっても信用されるか怪しいですけど。」
ゆたかは凝視しているのを疑っているものだと思い、
両手を広げて敵意がないことを示しながら距離をとる。
「―――戦力的にも足手まといと判断できる傷を負ったこの老いぼれを、
わざわざ気遣っているんだ。君が乗った人とはおもわんさ。まずは、ありがとう。」
テレビのコメントや快夢との邂逅した時のような、
飄々とした態度は取らず、友人と話すようなどこか堅苦しく礼を言う。
取らないと言うよりは、『取れなかった』と言うべきだろうか。
怪人なんて目でもない恐怖を植えつけられたと言ってもいい彼に、
彼女を想起させるトリガーとなる行動を、無意識に避けていたからだ。
「よかった・・・・・・ところで、どこかで会いませんでしたか?」
会話は出来るようなので、ゆたかはホッと胸をなでおろす。
そして声と顔をあわせ、どこかで見覚えがあるような顔だと今になって気づく。
「恐らくテレビの画面越しだろうね。
こんな状態だが、ハリウッドでは何度も主演に出ていたんだよ。
レオパルド・ガーネットという名前ぐらいは知ってるんじゃあないかい?」
「あ、確かに言われてみれば・・・・・・すみません、気づかなくて。」
ゆたかはオタクだが、どちらかと言えば魔法少女のアニメが中心だ。
ハリウッドといえばハリーポッターと言ったものなら身近にはあったりはするが、
暗がりで顔の判断が完璧につかず、その↑包帯で右半分の顔は隠れている状態。
この状態で、彼がレオパルドとすぐ気づけるのは簡単なものではないだろう。
天草家と言う環境から、魔法少女以外も色々知ってはいるものの、
ハリウッドとなると知識は今の時間帯のように、余り明るくはなかった。
「暗い以上しかたないことだ。それで、君の名前を聞かせてくれないか?」
「そういえば名乗ってませんでしたね、私―――」
名乗ろうとした瞬間、言葉が詰まるゆたか。
詰まる理由はただ一つ。この状況、どう説明するべきかを。
身体は大木潮のものだが、意識は天草ゆたかであるこの状況。
一定時間に来る放送でどちらの名前が挙がるのかすら分からない中、
どちらで名乗るべきか。下手を打てば乗ってない人からでも疑われてしまう。
「・・・・・・どうしたんだね?」
名乗ろうとしてまだ名乗らないのでは、
レオパルドが訝るのも至極当然のこと。
時間は残されていない。ゆたかが選んだ選択肢は―――
「えーっと・・・・・・まず、説明しないといけないことがあります。」
正直に、真実を話すこと。
嘘を隠すのは下手ではないが、決して得意といえるわけでもない。、
異能がこの殺し合いにある現状、信じてもらえる可能性が高い事に賭ける。
と言うより、嘘を突き通し続ける自信がないだけなのだが。
自分と潮の邂逅の経緯、ブッチャーマンの邂逅、そして敗走を話す。
「と、言うわけなんですが、信じていただけますか?」
異能の存在で荒唐無稽な話にはなってはないが、
同時に、異能と言う言葉で惑わしにきていると思う可能性も否定は出来ない。
異能だから、と口々にしてしまえばどれが真実か分からなくなってしまう。
真偽の確認が困難なものを利用して、疑心暗鬼を狙う者もいるはずだ。
内心不安でしかないゆたかに対し、レオパルドの返答は―――
「あれか、日本で流行ってる映画。
君の、なんだったか、あれと似た状態だね。」
手をポンと叩くと、驚くほどに、すんなりと受け入れてくれた。
とは言うも、彼とて最初は多少ながらも疑っている部分はあった。
初対面の人間を、この状況下で簡単に信じきれるものは少ない。
特に最初にであったのがアレであれば、仕方のないことだ。
彼女(彼?)の言葉を信用したのは、俳優としての観察眼が理由にある。
ゆたかと騙る潮か、潮を騙るゆたかか、どちらでもない誰かか。
いずれにせよ、信じさせるにはそれ相応の演技力が当然必須だ。
知人に疑われては、どれだけ騙ったところで崩れてしまう策。
あらゆる役になりきった彼からすれば『相手は役になりきれてない』。
だが、その拙さは逆に騙そうとする人と思えず、信用を勝ち取ることになった。
「え、ええ、まあそういうことです。」
先ほどの潮との会話でもそんな話をしたのを思い出し、
苦笑気味にゆたかは言葉を返す。
「元女性となると、不便ではないのかい?」
「住めば都なんでしょうか。特には・・・・・・」
一先ず信用はされた。
こう言うと乗っているようには聞こえるが、
彼女の状況はこの殺し合いの参加者でもトップクラスに異質。
説明して理解される、と言うのは中々難しい。
「それで、レオパルドさんは誰か会えましたか?」
ブッチャーマンのような存在が他にいては危険だ。
情報とは、あるとないとではかなりの優劣が決まる。
特に、殺し合いに乗ってない人の区別が出来るのは大きい。
無論、撹乱する輩もいるかもしれないので厄介ではあるが。
「わた、し、は―――」
情報の共有と言う目的があったが、彼女はやらかしてしまった。
いや、こんなものを想定しろと言うほうが、無理な話ではある。
落ち着いた後は意思疎通が出来るぐらいに、落ち着いていたのだから。
だが、今の彼に過去を振り返らせればどうなるか、予想出来る筈がない。
「―――ウワアアアアアアアアッ!!」
答えようとしたレオパルドの突然の絶叫。
耳をつんざくような悲鳴に、ゆたかも耳を塞がざるを得ない。
右目を押さえ、叫ぶように茂みへと逃げ込む。
吐き気もこみ上げてたが、先ほども吐いたゆえに出すものなどなかった。
トラウマを持つ人はゆたかの周りでも存在はするが、
これほどのレベルの人は、一般的にまず目にすることはない。
突然の行動にゆたかは困惑して唖然としてしまうが、
この光景、と言うよりこういう症状の人に、多少覚えがあった。
兄が見ていた仮面ライダーの一つに、こんな状態の主人公がいた記憶がある。
敵に恐怖し、絶叫を上げた主人公を。
「え、えっと、大丈夫でしょうか・・・・・・」
彼女は学生で、医者を目指してるわけでもない。
こういう時にかけれる言葉なんてものは分からず、
ただ蹲るレオパルドを、心配そうに見て声をかけるだけだ。
聞こえているのか聞こえてないのか、言葉を返さず息を荒げるだけ。
先ほどの叫びは結構響いた。殺し合いに乗った参加者が来る可能性もある。
けれど、彼女は見捨てることはなく、彼が落ち着くのを近くで見守っていた。
「快、夢。」
あれから数分。
未だ息を荒げているが、言葉と受け取れるようなものが聞こえた。
「井上、快夢・・・・・・この名前を、知ってるかい?」
何とか顔を上げて、レオパルドが振り返りゆたかへと問いかける。
震えは止まっておらず、声も今の彼の状態と同じく、寒空の下にいるかのような震え声だ。
顔も青ざめていて、今にも死にそうに見えて、ゆたかも流石に少し引いていた。
「アイドルの井上快夢さん、ですか?」
言葉は理解できた。後はそれに関する言葉を返すだけ。
「―――彼女は、彼女は・・・・・・乗っている、人間だ。」
震えながら紡がれた言葉に、ゆたかの顔に驚嘆の表情が浮かぶ。
日本で有名なアイドルなので、レオパルドよりは身近な存在だ。
サブカルチャーのオタクである彼女でも名前は十分に知っており、
画面越しの存在ではあるのだが、それでも知った人物が乗っているのは、
余り喜ばしいことではない。
「何故乗ってるのか私には理解できなかった。
彼女のいう言葉の意味が、私には理解できない。
理解できたのは、今の彼女は狂っている―――恐ろしいッ・・・・・・!!」
思い出すだけでも傷口が開きそうな感覚に襲われ、
右目に手を当てて、うめき声と共に再びうずくまる。
「もしかして、その傷も・・・・・・」
「・・・・・・憧れた仮面ライダーに、なれたと言うのに、この結果さ。
ヒーローとは、こんなにも難しいことだと、私は思わなかった。」
何度も俳優としてヒーローを演じ続けた。
誰よりもヒーローというものを理解している、
とまではいかないかもしれないが、相応の理解はもっていた。
それでも、彼は憧れた存在になることはできない。
どれだけ演じようと、どれだけ賞を貰おうとも、
彼が受けた殺意と言うものは、究極のところ『演技』でしかない。
本当の殺意を目の当たりにし、彼はヒーローに憧れた夢から覚めた。
今の彼はヒーローに、仮面ライダーに変身することはできない。
故障とか破損ではない。単純に彼が変身を恐れると言う、精神的な問題だ。
変身しようとすれば彼女を思い出す。脚力を活かそうとすれば彼女から逃げたことを思い出す。
仮面ライダーとしての行動、一挙手一投足全てに彼女を想起させるトリガーとなってしまった。
今の彼には変身する行動すら、そのトラウマを想起させるトリガーになっている。
恐怖に屈したヒーローは変身すら出来ない。平成だが、彼の好きな仮面ライダーの一つにもあったことだ。
「・・・・・・私も、同じです。」
夢から覚めた老人に、ゆたかが言葉を返す。
「同じ?」
「私の異能、高町なのはって言う、あるアニメの魔法少女の力だったんです。
レオパルドさん同じで、憧れてた存在だったんですけど、さっき話した通り.....」
彼女も、また同じだ。
殺し合いに乗った狂人との戦いに挑むも、
憧れた魔法少女とは程遠い現実を突きつけられて。
「怖くて、怖くて仕方がないんです。また誰も助けられないかもしれなくて。」
潮のことを思い出し、ゆたかは涙を流す。
自分のせいで死なせてしまったのを、心優しい彼女は傷つかないはずがない。
ほんの数時間、世代も離れていたが、同じ魔法少女を好む同志。
こんな殺し合いで死なせていいような、悪い人間ではない。
「けど―――同時に、もう後悔したくないんです。
潮さんのように、また誰かを見捨てたくありません。」
だからこそ彼女は彼の死から、現実から目を背けない。
恐怖は未だ拭えない。今でさえブッチャーマンや快夢といった存在を前に、
自分は同じ過ちを繰り返してしまうのではないかと身体に震えが走る。
だが、それ以上に、これ以上犠牲者を増やしたくない。
ダークヒーローのような手を汚す覚悟はなくとも、
彼らのような存在を止めなければならない。
「私はこれから、仲間を探そうと思います。
ブッチャーマンを相手に、私だけじゃ太刀打ちできません。
レオパルドさん。一緒に戦ってください、とは言いません。
ただ、同じ考えの人を、立ち向かう人を探してもらえませんか?」
殺し合いを止める為の仲間は必要だ。
今やブッチャーマンの存在は、彼女にとって恐怖の象徴。
鍛えられた警察官でも修羅場を潜った軍人でもない、青春を送る女子高生なのだから当然だ。
加えて、未だ潮の身体に慣れない以上、あの時の練習通りに動けるか怪しくもある。
また、ブッチャーマンの異能は自分の制限もあいまって、上空への対処の手段も持つ。
全体的に彼女が有利になれない状況が多く、一人で勝つことはとても出来ない。
仲間を募ってブッチャーマンのような存在を止める。そのためには仲間がいる。
人を集めることなら傷があっても大丈夫なはずだと思い、彼の返答を待つ。
「・・・・・・人探し、か。
それぐらいなら、引き受けよう。」
あんなことがなければ躊躇うことなく、ともに戦う一歩を踏み出せただろう。
『OK! 君と共に戦おうではないか!』と、普段のノリならそれぐらい言えるはずなのに。
狂気に当てられた彼は、一歩を踏み出すことすら出来ない恐怖を、彼女によって植え付けられた。
変身なんてとても出来たものではない。いても異能すら使えない、ただの負傷者の人間だ。
一人で戦わんとする、彼女の足を引っ張るだけの同行者にはなりたくない。
それは彼の気遣いと同時に、また彼女に会いたくないと言う恐怖からきていた。
彼女と同行すれば、快夢にまた出会ってしまう可能性が、彼を震え上がらせる。
「私は、西へ向かうつもりだが、君は北と南どっちだね?」
西へ向かうとは落ち着いた口調で言うが、
どちらかといえば西へ『逃げたい』が本音だ。
東から逃げた彼に、彼女がいる方角へ行きたいなどとは思わない。
「南へ向かおうと思います。人が多いと思いますから。」
ブッチャーマンがもし動くのならば、きっと集落に向かってると推測できる。
ただの一度しか自分の存在を公に出すことはなかった、その用意周到さ。
間違いなく人並み以上の知性はある。となれば、人が集まる場所を狙うは当然。
先に到着して人を避難させれば、仲間を増やしつつブッチャーマンから助けられる。
「いいよね、レイジングハート。」
『先手を打つ、確かに大事ですね。北も余り人が行くとはいいがたいですし。』
北は人が落ち合うについては不向きか、人が向かいそうな場所が少ない。
ミカン畑や農家が密集してる以上、食料目当てに向かう人は多いはずだ。
「わかった、私は西へ、ミスゆたかは南へ。
落ち合う場所は・・・・・・F-5が、いいだろうね。」
「何もない場所、ですね。」
地図を見ると、F-5は地図上の表記はほぼない。
辛うじて、E-2から続く舗装された道が僅かにエリアの隅にある程度だ。
集合場所ならば、やはり目立つ場所、二人の移動ルートから纏めると、
井戸の家があるE-4辺りの方が適しているとも思えたが、二人の考えは違う。
ゆたかが南下する理由はブッチャーマンが向かう可能性が高く、先回りしたいから。
誰かが来るということは、殺し合いに乗った参加者も多く近づく可能性が高い。
故に集まるなら、何もない場所の方が合流しやすいというのが二人の考えだ。
しかもF-5は舗装された道があるといっても、僅かにあるだけで獣道に近い。
わざわざ舗装された道を歩かない参加者は限られ、先に到着していれば地の利もある。
無論、この場所に誰も来ないとは言い切れないが、来る確率は低いほうだ。
一応ではあるが北西に井戸の家を目印にはなるのも、一つの利点ではある。
「後は時間ですね。第一回放送辺りに落ち合いますか?」
「そうだね、もしも禁止エリアに指定された場合に備えて、
G-4はその際のも集合場所ということにしておこう。
放送から一時間待っても集合しなかったら、待たずに行動、でいいかね?」
「はい、分かりました。」
若干レオパルドに任せきりではあったものの、
行動方針や、いざと言う時の対処も纏まった。
頼れる人がいないかと思われた状況の打開の一歩に、
ゆたかの顔はほころぶ。
「色々ありがとうございます。」
行動方針が決まり、別れる寸前。
ゆたかは頭を深々と下げ、礼を言う。
「気にしないでくれ。もう私には、
これしか出来ないのだから・・・・・・ではミスゆたか、また会おう。」
「はい、また会いましょう。」
レオパルドは西へ、ゆたかは南へとその足を進め、歩き出す。
まだ始まったばかりで終わらない、このバトルロワイアルの打破のため。
レオパルドとゆたか、ヒーローと魔法少女と言う変身系の代表の異能を手にした二人。
どちらもその存在に憧れて、そして夢とはかけ離れた現実を前にして、共に敗北した者達。
創作物、テレビ、演技と言う多数の壁を越えた現実の存在は、年も趣味も関係なく二人を絶望に落とした。
ゆたかは立ち直ったかに見えるが・・・・・・実際の所、レオパルドとそんなに状況は変わってはいない。
ブッチャーマンよりも先に集落へ向かうという名目は確かにあるが、言い換えればブッチャーマンに会いたくないのだ。
人数が足りないとか、レオパルドとの約束の優先とか合理的な問題ではない、彼女の精神的な問題である。
PTSDには至らないが、彼女がブッチャーマンと再び邂逅したそのとき、彼女は平静を保っていられるのか。
一方で、レオパルドはヒーローとして完全に折れたわけでもなかった。
確かに本来のノリに戻れず、変身すら間々ならない、完全に精神をへし折られた男だ。
だが、戦うことを諦めない限り、その者はヒーローの資格は失いはしない。
とある漫画では主人公とは、ヒーローの資格とはそう表現されていた。
彼はどんな形であろうとも、殺し合いを始めたヒューマに対抗しようと殺し合いを否定した。
戦わずして仲間を探すのは逃げだと思いつつも、彼もまたヒーローの資格を失ってはいないのだ。
敗北を知った、傷だらけのヒーローと魔法少女。
親以上に離れた年代二人の正義の味方は、その恐怖を克服できるか。
彼らの歩みだした道でそれが出来るかは、まだわからない。
【1日目 三時以降 D-8】
【天草ゆたか@ミッドチルダ式の魔法/魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:ブッチャーマンに対する恐怖、後悔、魔力消費(中)、大木潮の肉体
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(確認済み、傷を治せる道具ではない)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを打破する
1:大木さんの分も、戦わないと
2:でも、ブッチャマンは・・・・・・
3:ブッチャーマンよりも先に集落へ向かい、参加者を探したい
4:第一回放送を目安に南下。E-5かG-4でレオパルドさんと合流
[備考]
※自分の異能を把握しました
※レイジングハートの参戦時期は無印終了後、A‘s開始前です
その為カートリッジシステムは搭載されていません
※制限により5メートル以上の高さは飛べません
(制限だとは何となく把握してるかもしれません)
※ブッチャーマンの異能を鱗赫の赫子だけだと思っています
※レオパルドほどではなくとも、ブッチャーマンを前に落ち着いていられるかは怪しいです
※南へ進みます。徒歩か、飛んでいくか、低空していくかは後続の書き手にお任せします
※まだ潮の肉体になれていません
【レオパルド・ガーネット@仮面ライダーV3への変身/仮面ライダーSPIRITS】
[状態]気絶、右目失明(応急処置済み)、背中から出血(応急処置済み)、疲労(大) 変身解除中 PTSD
[装備]変身ベルト
[道具]基本支給品、不明支給品(0~1)、医療キット(包帯テープ五割減)
[思考・行動]
基本方針:快夢は怖いが、できるだけのことはしたい
1:快夢が怖い
2:変身は・・・・・・できない
3:西へ向かい、参加者を探す
4:第一回放送を目安に、E-5かG-4でミスゆたかと合流
※医療キットの具体的な中身については、後続の書き手にお任せします
※西へ向かいますが、北西かそのまま西は後続の方にお任せします
※故障ではなく、精神的な問題で変身することが出来ません
具体的に言えば、仮面ライダーWのテラー・ドーパントを前にした翔太郎です
支給品説明
医療キット@現実
避難時などに用いる、比較的コンパクトなタイプの医療キット
医療目当てなので武器として頼れるものは余りないが、
包帯テープを拘束の変わりに用いたり、なんだかんだで応用可能
肝心の医療としては、避難時の応急処置が主で、此方も心もとない
ゆたかが慣れなかったがため、包帯テープは必要以上に消費している
何が入ってるかは後続の方にお任せします
|[[セトの花嫁]]|時系列順|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|
|[[ロクでなし成人男性達と壊れた少女]]|投下順|[[図書館についたぞ]]|
|[[絶望のU/夢見る少女じゃいられない]]|天草ゆたか||
|[[「夢をあきらめて現実を生きます」]]|レオパルド・ガーネット||
2018-04-24T09:35:51+09:00
1524530151
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図書館についたぞ
https://w.atwiki.jp/abilityrowale/pages/149.html
C-7の山の頂上、科学教師と大輔は図書館に向かうつもりだ。
しかしその前に、せっかく高所に居るのだから少し偵察していこうと科学教師は提案した。
そして科学教師は山頂の展望台にある望遠鏡を使い、辺りを見渡している。
「どうですか、何か見えますか先生?」
「南東で火事が起きているのが見える。場所はそうだな、地図でいうならE-8のミカン畑辺りか」
「火事、ですか……」
科学教師の言葉にオウム返しな返答をする大輔。
だが、特に気にすることも無く科学教師は言葉を続ける。
「火事に関しては誰かが火を放った以上の事は知ることは出来ない。
異能で攻撃した結果燃えたのか、ガソリンでも撒いて火のついたライターを投げ込んだのか分からんからな」
それだけ言って科学教師は望遠鏡から離れる。
そこで大輔に向かって一言。
「さあ出発だ。他に情報を集めようにもこの位置と今の時間では何も見えんからな、動かなければ」
「分かりましたよ」
科学教師の言葉に大輔は従い、2人は山を下りるのだった。
◆
そして2人は特に何の障害にぶつかることも無いまま図書館の目の前に到着した。
「いささか拍子抜けだな。正直一戦位は覚悟していたのだが」
「いやぁ、危険が無いに越したことはありませんよ」
「後でツケが回ってこなければいいが……」
そう言いながら科学教師は図書館の扉に手を掛ける。
この時、先に来ている他の参加者が罠を仕掛けている可能性も考えて、慎重になることも忘れない。
だがその心配は杞憂となり、2人は少しホッとした面持ちで図書館に入るのだった。
「さて、早速自分の異能を調べると行きたいところだが……」
「だが、何です?」
そこで科学教師は眼を鋭くし、大輔に真剣な口調で問いかける。
「どうやって調べればいい?」
「どうやってと言われましても……」
大輔は科学教師の言葉に困惑しながら、辺りを見渡す。
すると図書館の入口から少し離れたところにあるものを見つけた。
「あ、あそこにパソコンがあります! あれ使えばいいんじゃないですか?
でかい本屋とかなら検索機器みたいなのがあるし、そんな感じで」
「そんなものがあるのか。
あいにく私はホームレスでな、そんな場所に行く機会が無い」
「ホームレス!?」
科学教師がさらっと語る情報に驚く大輔。
それを無視して科学教師はパソコンの前に座り、画面を見る。
画面には『異能 検索』と書かれその下には入力欄が置かれているだけとシンプルだった。
「今画面に出ているのが検索画面だな。一応下のタスクバーを見てみるか」
「何でパソコン使い慣れてるんですかホームレスが」
「使う機会があっただけだ」
大輔の疑問を流しつつ科学教師がタスクバーを見ると、そこには3つのアイコンがある。
1つ目は今使っている検索システム。
2つ目を開くと、出てきたのはこの図書館の案内板。
そして3つ目は――
「何だこれは? save?」
そこにあったのは科学教師からはよく分からないものだった。
実際は参加者の1人、道端ロクサーヌに授与された異能『名伏しがたい力』の出展作品というだけなのだが、フリーゲームの存在すら知らない科学教師は深読みしてしまった。
「まあいい、今は自分の異能についてだ」
そして科学教師は疑問を一旦置いておき、異能を調べることにした。
「何と打ち込めばいいんだ。……茨、腕。でいいか」
「そのまんまですね」
他に打ち込めそうなキーワードが思いつかず、見たままを打ち込む科学教師。
それでも検索は上手くいったのか、検索結果が画面に表示される。
――『漫画 ジョジョの奇妙な冒険』と。
余りにも簡素な検索結果に科学教師は思わずこう呟く。
「なんだ、これは?」
「作品名、ですかね?」
「なるほど、細かいことは漫画を読んで確かめろという事か」
大輔の出した答えに納得した科学教師は、パソコンで案内板を出し漫画が置いてある場所を把握。
そのまま1人、ジョジョの奇妙な冒険を探して歩き出した。
そしてジョジョの奇妙な冒険はあっさり見つかった。
しかし問題があった。
「随分な量だな……」
それは本の量だった。本自体は図書館らしく棚に入っているのだが、その量が多いのだ。
漫画、ジョジョの奇妙な冒険は1987年から現在まで連載が続く長期作品である。
その為、単行本は100巻を越えているのだ。
それを見て、科学教師が思わず随分な量だと思うのも無理はないだろう。
「ここで読むか? いやしかし……」
科学教師は呟きながら後ろを見る。
目線の先にはまた別の棚がある。
「後ろから棚が倒れてきたら、押しつぶされかねんな。
仕方ない、あるか知らないが台車でも取って来るか」
そう言って歩こうとする科学教師。
しかし、何気なくジョジョが入っている方では無く、反対側の棚を見るとそこにはDVDが入っていることに気付く。
「ほう、本以外もあるのか」
それが気になり試しに1つ取り出しタイトルを見てみる科学教師。
そこには『仮面ライダー555』とあった。
「仮面ライダー……、5,5,5? 何と読むんだこれは?」
知識が無ければ読むことは出来ないであろうタイトルに困惑する科学教師。
しかし次の瞬間ある考えに辿り着く。
「仮面ライダーか。ひょっとしてナオ・ヒューマが与えた異能には、仮面ライダーへの変身も含まれるのか?」
ふと思いついた可能性。
しかしそれは科学教師にある懸念を抱くことになる。
「あ、ここにいたんですか」
そのタイミングで大輔が声をかけてきた。
手にはBru-rayのBOXを持っている。
「何だそれは?」
「いや、俺も先生と同じように自分の異能を調べようと思って検索したんですよ」
「その結果がそれか」
「ええ、30分アニメが全25話。中々長丁場になりそうです」
「そうか。こっちは単行本100巻以上の漫画だ。間違いなく長丁場になるぞ」
「うわあ……」
「まあそれは仕方ない。
それより芹。私は先ほどある懸念を抱いた」
「懸念?」
「ああ、これを見てくれ」
そう言って科学教師が大輔に見せたのは、さっき手に取った仮面ライダー555のDVDだ。
「仮面ライダー、ですか? これに懸念が?」
「ああ、それは変身している相手は顔が見えないという事だ」
科学教師の言葉に思わず何言ってんだこいつ、と言いたそうな大輔。
しかしそれを無視し、科学教師は話を進める。
「いや、見れば分かりますがそれが何か?」
「分からないか。
……そうだな。例えば芹、顔を見られたくないから覆面を付けたまま殺し合いの会場に居る参加者をどう思う?」
「怪しすぎますね」
「だが仮面ライダーのような変身ヒーロー、もしくはライダーが敵対している怪人ならどうだ」
「最初に改造人間が見せしめで殺されている以上、異能だなと納得できますね。常に変身してても警戒心の表れなら拒絶するほどでは……、ってまさか!?」
そこまで言って大輔は気づいた顔をする。
そうそれは――
「顔を隠し行動することが、不自然じゃなくなる……?」
「更に言うなら、名簿に名前が載っていない今なら偽名も名乗り放題のおまけつきだ」
科学教師は自分の言葉に、やれやれだと付け加える。
一方大輔は、これは恐ろしい事態だ、と思った。
――今までの考えが意味することは、単に変身する参加者が信用できないだけではない。
例えば、仮面ライダーに変身して参加者を襲う奴がいたとする。
周りは当然仮面ライダーを警戒するが、変身者の姿は見えない。
これにより、変身者がライダーを警戒している相手に近づくことはそうたいした難易度ではなくなってしまう。
顔が見えない以上、誰が相手でも多少の警戒はしても確定しない状況では、排除には踏み切れないのが普通の人間だ。
確信も無く人を殺すのなら、それは最早殺し合いに乗っている。
疑わしきは罰せよという言葉もあるが、悪手になる可能性は高いだろう。
「参ったな、これでは仲間を探す際にいちいち異能の提示を求めねばならなくなる。
そして見せろという以上我等も見せねばならんだろう。
私が自分の異能を把握していないことを晒すのは好ましくないのだが……」
大輔の内心を知らない科学教師の言葉に、彼は心から同意する。
それも科学教師が考えている以上に。
――自己紹介の度に異能のお披露目だと? ああそうだよ冗談じゃねえよ! 一歩間違えたら大参事だよ!!
大輔は科学教師に自身の異能の一部、読心を言っていない。
これがアニメや漫画、もしくは特撮に登場するものである以上、知っている人間がいる可能性は十分ある。
もし自身の異能が科学教師にばれたら、表だった破綻が無い現状なら大きな問題にならないだろう。
知らなかったでごり押すだけだからだ。
科学教師が自分の異能を把握していない以上、大輔が知らなかった、気付かなかったといえば強くはいえないだろう。
疑われる可能性はあるが、そこは知らぬふりを通すしかない。
しかしそれを人に言いふらすとなると話は変わる。
一方的に心を読んでくる相手と、誰が喜んで手を組みたがるというのか。
何もやましいことが無くても嫌がるのが普通の反応だろう。
「とりあえず異能が分からない相手はどんな姿をしていようと注意を払え。分かりやすく力を振るう奴よりもだ」
「この状況で力押しを選択する奴は、早死する以外有り得ないと思いますが……」
「分からんぞ。ごり押しは極まると意外と厄介だからな」
「経験、あるんですか?」
「さてな」
科学教師が大輔の疑問を軽く流し、そのまま逆に質問をする。
「ところで芹、唐突だが台車の様な物を見なかったか?
私は自分の異能を把握しなければならないが、100冊以上ある本をこんな本棚の間で読みたくは無いんだ」
「あー、そういやテレビの近くに有った様な……」
「どこだ」
「あ、こっちです」
そう言って大輔は科学教師を案内する。
そして案内した先には、50インチ位のテレビがあり、その傍にはPS2とPS3、更には何らかの再生機器まであった。
肝心の台車はテレビの裏に数台置いてある。
「それじゃ、俺は早速これを……。
と言いたいですがその前に1ついいですか、先生?」
「何だ」
「このプレイヤーなんですけど、何ですかねこれ? DVDでもBru-rayでもなさそうですし」
大輔の言葉の後、プレイヤーを一瞥する科学教師。
そして問いの答えを出す。
「これはレーザーディスクプレーヤーだな」
「……何ですかそれ?」
「知らないか。まあ簡単に言うなら、最終的にビデオテープに普及率が負けたレーザーディスクの再生機器だ」
「……知らねえ」
「そうか」
それだけ言って科学教師は台車を押してこの場を離れる。
そして大輔もレーザーディスクプレーヤーの事は忘れて、自らの異能が出てくる作品を見始めた
【一日目・2時30分/I-7 図書館】
【科学教師@隠者の紫/ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:ナオ・ヒューマを倒し殺し合いから脱出する
1:自分の異能を調べる。
2:芹大輔は若干胡散臭い
3:save、助ける? 疑問だが今は後回し
4:変身する異能の持ち主には警戒
[備考]。
※芹大輔の異能をバリアだけだと思っています
※E-8の火事を目撃しました
【芹 大輔@『バリア+読心』/TIGER&BUNNY】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:とりあえず自分が死なないように動く
1:自分の異能が出てくる作品を見る
2:科学教師と行動を共にし協力するつもりだが、ナオ・ヒューマの打倒が無理だと思ったら裏切る
3:変身する異能の持ち主には警戒
[備考]
※バリアを攻撃に使えるとは思っていません
※E-8の火事を目撃しました
※図書館について
図書館には参加者に授与された異能の作品の原作が全て置いてあります。(例:ジョジョなら漫画全巻、仮面ライダー555ならDVD全巻)
再生機器が必要なDVDなどの為、テレビはありますが、PS2かPS3をプレイヤーとして使ってもらいます。代用が利かないレーザーディスクのみ再生機器があります。
ただし、置いてあるのは原作のみです。メディアリミックスやスピンオフ作品は置いてありません。
(例:ジョジョなら原作漫画のみ。アニメ版のDVDやゲームソフト、The Bookなど小説は置いていません。
ただしFate/Zeroなどスピンオフ作品の異能が授与されている場合は置いてあります)
また特例として、原作が18禁のFate/Stay nightは参加者の大半が未成年の為、PS2版のFate/stay night [Realta Nua]が置いてあります。
|[[ブラックアイドル地獄変]]|時系列順|[[セトの花嫁]]|
|[[ヒーローの資格]]|投下順|[[Bが知らせるもの/この夜に夢を見る暇は無い]]|
|[[夜、二人、山頂にて]]|科学教師||
|[[夜、二人、山頂にて]]|芹大輔||
2018-04-24T09:33:19+09:00
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