第19村

【第19TRPG村】勇者伝説のイドラ
↑村が建ちました! パスは「pig」です。

村のテーマは「キャラ設定もらってからシナリオ作る」。世界観は、汎用的な西洋ファンタジーです。
全員冒険者で、一緒にパーティを組んで旅をしています。
お好きなキャラを持ち寄っていただき、それに沿ってGMがシナリオを組む村です。
キャラ設定はDMなどでまずGMへ送ってください。どこまで設定を出すか打ち合わせしたいです。

村建て:2018年2月27日 更新:22時

この村の参加者は予め決定されています


PL:はやつじさん、しゅーさん、Neonさん、kikiさん、Funiさん
GM:きりん
見物:青磁さん、レクサさん、Valkyrieさん、reinさん、gozaさん、たるとさん、すばる(zero221b)さん


イントロダクション


ディザルア歴299年。
この世界は、絶大な魔力を持つ魔王により、支配されようとしていた。
しかし、勇者「ルル」が仲間と共に魔王を倒し、世界に平和をもたらした!

――それから時を経て、現在ディザルア歴366年。

この世界は再度、魔王名乗る存在「カタストロフ」により侵略されようとしていた。
彼女の操る魔物は各地で暴れ、平和は失われた。
このままでは世界が彼女の手に堕ちてしまう!

世界一の大国ディザルア王は勇者を募り、魔王カタストロフを打倒した者に莫大な富と権力を約束すると告知した。
これにより、世界中の冒険者たちが奮起し、魔王討伐に向かったのだった!

あなたたちは、その冒険者たちのパーティのうちのひとつ。
勇者志望の少女「ルル」を中心とした、仲間たちである。

誰もが「自分は勇者の生まれ変わりだ」「後継者だ」などとやかましく騒ぎ立てる時世である。
この少女ルルが本物の勇者であると信じる者はいなかった。

しかし、彼女の手には、かつての勇者ルルが握ったとされる「勇者の剣」があった。

ワールドガイド

■冒険者の酒場(塵と黄金亭)

  • 1階が酒場、2階が宿屋になっています。
  • 酒場は冒険者たちの食事処兼、パーティメンバーを探す出会いの場です。
  • 壁には冒険者への依頼張り紙が掲示してあります。
  • いつも多種族で賑わっていますが、血の気の多い冒険者たちが集まりますので時には喧嘩に発展……しますが、やりすぎると腕っぷしの強いマスターにより放り出されます。
  • 名物料理はドワーフのマスターがドヤ顔で振舞う、お手製のクリームシチューとミートパイ、ガトーショコラです。

■王都オラン

  • 周囲を高い石砦で囲まれた城塞都市です。
  • 王城を中心に、貴族街、職人街、商人行きかう市場、各職種のギルド、そして危険な貧民街と闇市。まさに「何でも揃う」街です。
  • 多数の街道が集い、ほとんどの神の神殿とその教義が認められ、異人種差別もほとんどない、懐の深い王国です。

■各職業ギルド

  • 各職業の者が集まり、情報交換をしたり、お互いの力を高めるための知識交換を行ったりする会員制の場所、それが「ギルド」です。
  • ギルド常駐員は、ギルドメンバーに仕事を斡旋したり、その職業向けの器具や消費アイテムを割引価格で売ったりしています。
  • 大小様々なギルドがあり、ギルド内の掟もそれぞれ違います。
  • 代表的なものは、傭兵ギルド、盗賊ギルド、魔術師ギルド、錬金術師ギルド、商人ギルドなどです。

■冒険フィールド

  • オラン周辺の草原。豊かな川や森にも恵まれた肥沃な大地です。今は迂闊に歩き回ると妖魔に遭遇する危険があります。
  • 街道やオランの商人受け入れ態勢のために、周辺に多くの村があります。しかし、現在その幾つかは妖魔により滅ぼされてしまっています。
  • 周囲には数多くの遺跡もあります。これもまた、オランに冒険者を集める一因です。

■静謐の森

  • オランから徒歩1週間ほどの距離にある大森林です。
  • 果実や薬草、森の動物など、狩人や錬金術師には絶好の狩場ですが、あまり深入りすると精霊やモンスターに惑わされることがあります。
  • この中にはエルフの里がありますが、結界に囲まれていて、普通の人間では立ち入ることができません。

■魔王の迷宮

  • オランからほど近い場所にぽっかり口をあけた地下迷宮です。
  • 近年までその入り口は魔法で隠されていましたが、王宮魔術師や占い師などの尽力で場所が特定され、今では誰でも侵入可能な状態です。
  • 迷宮の各所で危険な罠やモンスターが待ち受けている上に、最深部では女帝カタストロフが鎮座しています。

■神

  • 多神教の世界です。国教としてひとつの神への信仰を推奨している国もあれば、オランのように宗派に寛容な国もあります。
  • 一番大きな勢力は「生の神」と「死の神」です。前者は光の神、後者は闇の神と呼ばれています。魔王カタストロフが死の神を支持したことから、死の神は邪神扱いされ、今では信者はほとんどいません。
  • 生の神は、聖、光、生命への肯定や隣人愛を説きます。
  • 死の神は、静、闇、死後の世界についてや欲望の肯定を説きます。
  • その他にも、戦神や美の神、知恵の神など、神は多岐にわたりますが、いずれも「生の神」「死の神」の子孫とされ、どちらかの陣営に属しています。

■種族

  • 人間、エルフ、ドワーフ、ホビットの他に、獣人や竜人など様々な亜人種が確認されています。

  • エルフ
閉鎖的で排他的な森の一族です。いかなる神も信仰しません。
高身長で華奢な体躯をしており、色素が薄く、寿命は長く、男でも髭がはえません。
魔力が高く、俊敏である一方、傷に弱く、人間より少量の出血で死に至ります。
森の木の命を自分たちの命と同格だと考えており、無作為に木を傷つけられると驚くほど激しい怒りを見せます。
エルフ語は母音や子音が極端に多いだけでなく、文法は例外や特殊なルールで使われるものだらけです。
また、「木」を形容する言葉だけで1000種類以上ある一方で感情を表す言葉が極端に少ないなど、人間や他の亜人種が習得することは困難です。しかし発音は美しく、喋っているだけで歌っているようだと言われています。
人間と交配は可能ですが、禁忌とされており、人間とエルフの合いの子「ハーフエルフ」は激しい迫害の対象となります。

  • ドワーフ
背が低く筋肉質で、手先が器用な種族です。火(鍛冶)の神など、人間にとってはマイナーな神を信仰しています。
俊敏さや魔力には恵まれない一方で、非常に頑健で、高い筋力を誇っています。
寡黙で真面目な性格の者が多いですが、大酒飲みで、アルコールが入ると豪快で社交的な一面を見せます。
鉱石加工を得意とし、高品質な武器や道具はもちろん繊細なアクセサリー等も作り、「ドワーフ製」の品はそれだけで高く売買されます。ドワーフの集落のほとんどは鉱山の近くです。
寿命は人間の2~3倍程。人間との交配はできません。また、水に浮くことができません。
足を見せることを極端に嫌い、常に靴を脱ぎません。特に誰かに足の裏を魅せることは屈辱だと考えられているようです。
ひげは美しさの象徴であり、女性でもひげが生えます。
ドワーフ語は画一的で語彙も少なく、比較的覚えやすい言葉です。発音は濁音が多用されます。

  • ホビット
人間の子供のような容姿をしている小柄な種族です。非常に自由で刹那的・楽観的な性格で、何にもこだわりはなく、神を信仰していることは非常に稀です。
驚くほど俊敏で、手先が器用で、五感が鋭く目ざとい一方、筋力は低いため大きな武器を扱うことはできません。生まれながらのスカウトと言えるでしょう。
ひょうきんで感情豊かな表現者であり、歌や芸が達者な一方で口がまわり計算高い為、旅芸人や商人をしているホビットも多いようです。
寿命は人間の2倍程。人間との交配はできません。
その風来坊的な性格から、「ホビットの集落」というものはあまりありません。皆、世界をさまよって生活しています。同じ理由で、ホビット語というものもありません。かつてはあったようですが、今は忘れ去られ、それを知る者はごく少数しかいません。


キャラクターセレクト

PC① ルル・クライン(kikiさん)

キャラチップ:ジランドール:キトリ
  • 17歳女性、勇者志望
  • もともと、とある村の林檎売りだったが、あるきっかけがあり「勇者志望」に転身。
  • 好きなものは村のみんなと林檎。苦手なものは暗いところと蛇。

能力【一蓮托生(フィフティ・フィフティ)】

  • 本人の負ったダメージを周囲に分散させる。
  • 対象は同種族であるとは限らず、また分け与える際に本人の意志は反映されない。
  • 感情が昂ることで発動。制御はできない。

PC② ヒース(はやつじさん)

キャラチップ:closure:匡
  • 39歳男性、盗賊
  • ヒースは通称。本名は誰も知らない。
  • 冒険者歴はそこそこ長く顔も広い。
  • 普段は豪放磊落なおっさん。仕事(冒険)に関してはシビアでドライだが、パーティの安全を守る立場故でもある。
  • 趣味は賭博と酒。暇さえあれば賭博場に通っている。
  • 武器はボウガン。
  • 迷宮に挑むに際し、シーフを探していたルルに酒場で声をかけたのが縁でパーティに入った(加入してどのくらいか、等詳細はお任せします)

能力【いかさまの鏡(ギャンブラーズ・シャイナー)】

  • 少し先の未来を映像として一瞬だけ「盗み見る」。
  • 自分の意志で発動可能だが、精神消耗が激しいらしく、多用はされない。

PC③ フローリアン・ヴィッセンシュタイン(Neonさん)

  • 錬金術師、男性。
  • 代々石細工師を生業としている。そこそこ裕福。
  • 王都オランの貴族街寄りの職人街あたりに店がある。
  • 冒険に出ていない時は、装飾品やアクセサリー、アーティファクトを作ったり売ったりしている。
  • 鉱山、森、海etc、錬金術に使う材料集めに色々なところに出向くアウトドア系インドア職。
  • 殆どの物が錬金術の材料に成り得ると考えているため、無駄が嫌い。勿体無い精神の塊。
  • キアルスとは森で出会ってから友達。エルフ語を習得している。

能力【知識の結晶 -デミ・サージュ- 】

フローリアンの錬成物の最高傑作。
魔術の詠唱と共に砕けば低級魔術でさえ一気に上級レベルの効力になる。
要は「今のはメラゾーマではない。メラだ」ができるアイテム。
※辞書としても扱える。が、とても扱いにくい。
※実はわざわざ砕かなくとも多少は魔力増強装置として使えなくもない。これを宛てにするくらいなら安い石砕いた方がマシなレベルだが。

PC④ ニカ(しゅーさん)

  • 気のいい愉快な兄ちゃん。見た目の年齢は20代前半くらい。
  • お調子者で、女の子が大好き。でもモテたためしはない。
  • 酒は好きだがすぐに酔っぱらうくらいには弱い。どこでも寝れる。
  • 武器は軽量な片手剣を二本。両手利きのため、それぞれ使うことができる(軽戦士型)

能力【777(トリプルセブン)】

  • ランダム形式に魔力を剣に帯びさせる。
  • 帯びる魔力は、火、水、風、土の四大魔素。
  • 発動はできるが帯びる魔力が自分で制御できないためあまり使いたがらない。たまーに全種類でるよ。たまに

PC⑤ ベラ(Funiさん)

  • 女性、28歳、神官
  • 性格:姐さん肌。自信家。ガラが悪い。酒飲み。
  • 口癖は「ね?あたしは役に立つでしょう?」
  • 特に人懐っこい訳でもないが、大人しいわけでもない。喋りたい時に喋り、眠くなったら寝る。過去は喋りたがらない。
  • 能力は聖属性魔法8、回復魔法2ぐらい
  • パーティ加入のきっかけは、たまたま声を掛けられたのでも、酒場とかでのマッチングでも何でも。別にどこのパーティーでも良かった。

能力【絶対的懺悔】

  • 相手の心の中の小さな罪を増大させて罪の意識で戦闘不能にする。


NPC

NPC① カタストロフ

キャラチップ:Mad Party ジュディス
「おーっほっほっほっほ! よろしくて? この世のすべてはわたくしのものよ! さあ行きなさい、下僕ども!」
  • 女性。倒すべき悪の魔王。
  • 高飛車、傲慢、セクシー。絶大なる魔力を誇り魔物の女王として君臨している。

能力【カタストロフィ-悲劇的結末-】

  • 圧倒的な魔力で天変地異を引き起こし、自らに刃向かう者に悲劇を与える。
  • 純粋な攻撃力に加え、ステータス異常も引き起こす。

NPC② キアルス

キャラチップ:closure 雪麗
「エルフにとって、木の枝を折る行為は、君たち人間が友人の腕を折る行為に等しい。生きる為ならば許容するけどね」
  • パーティメンバーの1人。エルフの精霊使い男。外見年齢は20代中盤。
  • 森の中にある閉鎖的な村で育ったが、好奇心から冒険者になった変わり者エルフ。
  • 森に採取に来ていたフローリアンとたまたま知り合い、採取を手伝う代わりに外の世界の話をしてもらい、人間や冒険に興味を持つ。
  • 冒険者になることを決め、冒険者の宿でルルに出会い、「勇者ってどういうこと?」と大変面白がってパーティメンバーを志望した。
  • 魔王討伐の動機は「森を守る」ため。魔王のせいで神聖な森が妖魔の温床になっていることが許せない。

能力【スピリットロード】

  • 精霊王を召喚し、願いを申し入れる。
  • 四大精霊王や光と闇の精霊などアクセスは可能だが、精霊は気まぐれであるためその願いを叶えるかどうかはわからない。


■前日譚① ルルとキアルス


「我こそは勇者ルルの末裔!」
「我こそは勇者ルルの後継者!」
「我こそは勇者ルルの生まれ変わり!」

そう街中でうそぶく人間たちにいちいち驚いていたら、フロウに呆れられたことがある。
あんなものはインチキだ、と。

私は、覚えたての人間語……交易共通語で言った。
「しかし、彼は持っています勇者ルルの剣、それは確かに希少な品です。しかるのち……」
フロウは、彼らが自慢げに振りかざした剣をちらりと見るだけで、「チタン合金でできたなまくら」と評し、魔力のかけらもない安い模造品だとため息をついた。
流石、錬金術師だよ。

どうやら、先代魔王を倒した勇者ルルは、人間たちの希望と強さの「象徴」……いや、概念ですらあり、彼? 彼女? ……の名を無茶にでも騙って、その栄光のおこぼれにあずかろうという者が多いらしい。
君が異界の文化に詳しければ、そう、「私は聖キリストの生まれ変わり」と言っているようなものだね。

あまりに愚かで雑なふるまいだ。
エルフの森では、神聖な物語は崇拝され、それを少しでも揶揄しようとすれば、冷笑以上の厳しい人格的評価が下される。
しかし、人間たちは、次々に現れる「勇者ルルの〇〇」を笑顔と冗談で歓迎し、中には信じて弟子入りしてしまう者すらいる。
本当に、人間というのは愚かで雑で……面白い!

そんな中見つけた、ひとりの「勇者ルルの後継者」。常に肌身離さず携帯している剣は、ルルの聖剣だと言う。
彼女は今、冒険者の酒場……「塵と黄金」亭の片隅のテーブルで、ぐったりした様子だ。
ひとりレモネードをもくもくと口に流しこんでいた。

変だね?
「勇者ルルの〇〇」を名乗る者は声高に何かを主張し、仲間を格安で雇おうとしたり、新弟子から入会金を取ったり、興行のおひねりを求めるものだけれども。
彼女にはそんなそぶりはない。しゅんと主張をやめて、途方にくれているらしい。
そもそも、彼女は詐欺で儲けようとするような人間には見えないけれども……良く言えば純粋で素朴、悪く言えばそんな度胸がある風でもない、ってところだ。

……むずり。

あ、これ。
いつも私を動かす「アレ」が騒いだ。そう、好奇心だよ。
私はまっすぐに彼女のテーブルに歩いて行き、彼女の目の前の椅子を引いて腰かけた。
私の気配に気づいた「勇者ルルの後継者」は、長い睫毛でふちどられた大きな瞳をぱちぱち瞬いて私を見つめる。
さあ、彼女は次に何て言う? 弟子入りの入会金のこと? おひねりをねだる口上? それとも、後継者なんてウソでした、とか?

目が合うまで視線を彷徨わせて、それから改めて彼女を見つめると、彼女の口から予想外の言葉が飛び出した。

「あの、私、勇者志望のルルと言います。もし良かったら、私とパーティ組んでくれませんか?」

……Excellent!
素晴らしい!
こんな窮地に立たされてまで、弱々しくも主張を曲げないその姿は、逆に強く強く自分を勇者だと信じていることをうかがわせた。
もう真偽なんて私にはどうでも良くなっていた。こんな冒険者の酒場の片隅でおどおどしている娘さんが本当に勇者の後継者だったら最高に興味深い!
私の頭にはそれしかなかったから、頷いた私に彼女がこんなに驚くなんて思っていなかった。

「私は嬉しいです、何故ならあなたと知り合う、私は。偶然です! それを素晴らしい出会いと、後の人は考えるでしょう、確信しています。楽しい、未来!」

こう話しかけると彼女は笑顔をすっと引っ込めて、「何ですかその喋り方」と言った。
ううん、そんなに変かな? 単語はたくさん覚えたはずなんだけど。

■後日談 キアルス→ルル


――猛々しい咆哮が、草原の上に轟く。

ぶくぶく太った人間の胴体のような腕。泥や獣の毛を巻き込んだ汚れた爪。
ルルを狙って、全力で振り下ろされる。

ルルを心配して叫ぶようなことは、もうない。
ルルは、本当に強くなった。
ほら、しなやかな脚でステップを踏んで攻撃をいなし、相手の腕力を利用して剣を振るい、傷を入れる。

「キアルス!」

ルルから、「今だ」という合図を受けて、雷の精霊に命令を出した。黄金色の光がオーガを包む。
この魔法は、威力は弱いが、対象の動きを麻痺させ、大幅に鈍らせる。
ばちばちと弾ける電流に、オーガは苛立って叫んだ。

必死に体勢を立て直そうともがくオーガの胸を、ルルの剣が貫く。
それで、おしまいだった。


私たちは、商人のキャラバンの護衛についていた。
護衛というか、有事があれば戦うから、安い報酬の代わりに目的地まで乗せていってくれってやつだ。
街道上で護衛を募集する商人のキャラバンを乗り継いで、私たちは「太陽の村」を目指していた。

ルルと私の組み合わせ……魔王を倒した勇者と精霊使いは有名になりすぎていて、ある意味敬遠されていたけど、私たちは普通の報酬と普通の待遇を望んだ。
最初は緊張していた商人たちも、数日たてば気楽に接してくれるようになる。

ニカが魔王になったとはいえ、人を襲う魔物は消えたわけではない。
人肉を好むオーガの襲撃は典型的な有事だ。
戦闘を終えて武器の血を拭い、また少し移動して、野営の見張りについた。

『目的地までもう少しだね、ルル』
「そうですね」

彼女のエルフ語のヒアリングは、もう問題ない。私とルルは、交易共通語とエルフ語を交えて喋る。

『楽しみだな! ルルの言っていたパパや、お姉さんや、可愛い林檎の木にも会いたい。わくわくするよ』
『それはいいんですけど、キアルス』

ルルは、私の顔面を手で押し戻した。

「……?」
「くっつきすぎです」
「え、くっつきすぎとかあるんだ」
「恥ずかしいです」
「そうなんだ!?」

ルルの頬に唇を寄せていた体勢を、さっと引っ込めた。
密着させていた身体。慌てて、手のひらひとつぶんほどの距離をとる。
ルルの横顔は焚火の炎に照らされていて、顔色をうかがい知ることはできない。

「太陽の村でも、こうしていたほうがって……」
「やめてください、キアルスさん」
「他人行儀!!」

私は拳を握りしめた。

もう、本当に面倒くさい!
樹木相手ならずっと抱きしめていられるのに。本当に、女の子ってやつは……。
それでも、この大切な女の子の機嫌を損ねたくないんだよ。それが最高に面倒くさくて、何故か幸せだ。

ぎゅっとつぶった目をあけて、自分の拳を見ていたら、横からくすくすとさえずりが聞こえてきた。

ツインテールを揺らして笑う、ルル。

なんで余裕ですか……チャームをかけてやろうか。
息を吐いて、「教えてくださいよ。あなたの父の前でどう振舞えばいいか」と、進言した。

[〆]


■後日談 カティ→ヒース


王都オランの闇の象徴、ダウンタウンの空は狭い。
視界を囲うぼろぼろの石造りの建物には、腐臭と排泄物の臭気がこびりついている。

しかし、日に1回、その狭い空を月が横切る。
丁度、その時間帯。下衆な輩が人身売買の取引を行っている現場に、彼女は舞い降りた。

男から男の手に渡ろうとしていたのは、猿轡をかまされ、後ろ手を縛られ、諦めきった表情の数人の子供たち。
子供たちの行く末は、性処理道具か、悪趣味で無意味な拷問室か。
それは盗賊ギルドの管轄外の、違法である上に下衆を極めた仕事だった。

「そこまでよ!」

凛と通る少女の声に、男たちが振り返る。
顔を仮面で隠し、両手剣を握った、燃えるような赤髪の少女が立っていた。
少女は有無を言わさず取引をしていた盗賊たちに走り寄り、肉薄し、まずは大きく一閃。

その威嚇攻撃の後に、丁寧に的確に、斬り伏せていく。
彼女の動きに合わせて、物陰から、ボウガンの矢が飛んできた。
殺すための剣筋ではない。ただし、彼女の敵を容赦なく無力化していった。

――今日もダウンタウンに現れて、人知れず正義を行使し去って行く。
――解決・レッドテイル! 赤い髪の女戦士! 
――弱きを助け、悪を挫く!

「おねーちゃん、ありがとう!」
「レッドテイルは本当にいたんだ!」

戦闘の後、猿轡から解放された子供たちは次々にこう言った。
レッド・テイルは、何も言わず去っていく……。


「何が、解決・レッドテイルよ!!」

塵と黄金亭のカウンターで、カティは、だぁんと木のジョッキを机に打ち付けた。
隣に座るのは、盗賊の男。笑いをかみ殺して肩を震わせている。

「わたくしは、ただ……盗賊ギルドから……仕事を……」
「目立つからなあ、その赤髪は」
「あなたはずるくってよ! 自分だけ物陰に隠れて!」
「わざとじゃねえよ。そうした方が効率がいいだろ、俺の戦い方として」
「わたくしばっかり前に出て!」
「いやお前さんは大剣使いなんだからそうするしかないんだろ」

伝説の勇者、残酷な魔王を経て、今度はダークヒーロー。
カティは、頭を抱えた。

「どこまでイジられ役なの、わたくしの人生……」
「自覚はあったんだな」
「最近自覚したのよ、あなたのおかげさまでね!?」

横で小さく笑い続けている男を小突くと、「戦士の突っ込みは本気で痛いからやめろ」と返ってくる。
無視して、次の杯を注文した。

恥ずかしくてもなんでも、続けない選択肢はない。
勇者凱旋に沸く王都の裏側で消えていく事件を丁寧につぶして回る。
今はそれが、カティの生きがいだった。

[〆]


■後日談 マラク→ヤシチ中心に見学席

ラパンエピ>>@30へのお返事

[あまたの冒険者と、そしてそれに紛れ人ならざりし者もが集う不思議な酒場。
それが、『塵と黄金亭』である。

今日も今日とてとある地獄の住人が、
お髭の店主相手に愚痴ならぬ悩み相談に訪れていた]

 まぁ、ハナから。
 住む世界が違うのは判っちゃいる……

[もとより、解決するなどとは思っていない。
だが他に話せる相手がいなかったのだ。

ついこの間、酒に酔った勢いで小さなうさぎに零してしまったのだが──
その時は、彼に随分と心配をかけてしまった。

なにか慰められる方法は無いかと、
見上げた彼のつぶらな瞳は今でも印象に残っている]

 好い加減、諦める頃合いではあるんだが、
 どうにも踏ん切りがつかなくてね。

 ……マスター、酒のお代わりとつまみを。
 昼飯にもなるような野菜炒めが良い。

[昼間からこうして酒場で管を巻けるのも
悪魔の特権ではあるのだが……
そろそろ小腹も空いてきた。

 けれども]

 ……え?
 丁度材料がない?

  まいったね、こりゃ。

[やれやれと苦笑いをしたその時、
風変わりな薫りが鼻腔をくすぐった。

見れば、>>@25アリスに追いかけられた白うさぎならぬ
魔法使い見習いに掻っ攫われた白うさぎが一匹。

その手には、白い花と瑞々しい緑の合わさった花束が握られていた。
どうやら匂いの元は、彼の持つそのブーケらしい。

 >>@34そうして何事かと呆気にとられているうちに、
段々と事情がわかってきた]

 プレゼント……?
 いや、こりゃありがとう。

[まさか先日の酔っぱらいの嘆きを覚えていて
プレゼントを持って来てくれたのだろうか。

戸惑いながらも手を伸ばせば、
折り悪くお腹が『ぐぅ』と鳴って。

 思わず、手を止める。

どうにも気不味い自分と、>>@35しょんぼりしたラパンと。
微妙な空気で見つめ合う二人だったが、
そこにマスターが最高の提案をしてくれた。

程なくして運ばれてきたのは、
熱々のベーコンの入ったハナニラの炒めもの。
隣のラパンは生のままのハナニラをしょりしょりと。

二人並んで食べながら、
カウンターに揺れる白い花を見詰めていた。
それはぴくぴく動く、彼の白い耳にも似ていて。

どうやらハナニラと一緒に、
勇気というプレゼントをも彼からもらってしまったらしい]

ヤシチエピ>>@36へのお返事
[それからしばらくして、我の姿は地獄にあった。

友人でもある船頭のヤシチへと、好きな相手がいる事、
プレゼントに花を贈って想いを告げたい事を伝える。
どれもこれも、ラパンのお陰で思い切れた事ばかりだ]

 小さなうさぎさんに花をもらってね。
 自分でも嬉しかったから、
 彼女にも花を贈りたいんだ。

[なので悪魔らしくないと笑われるのは覚悟の上で、
近くの森にでも降ろしてもらおうと思っていたのだが──

友人思いのヤシチは、
『誰も知らないような花がいい』という我のわがままに
とことん迄付き合ってくれたのだった。

地獄どころか現世まで。
あらゆる所にイッテQな旅の果て。

我らは地獄の奥底で、
それこそ誰も知らない七色の花を発見した。

地獄の植物図鑑の何処にも載っていない
その花の輝く光は、まるであの人のはにかんだ笑顔のようで。

やはり、不釣り合いなのではないかと今更になって尻込みする。

けれども、そんならしくない弱音を、
ヤシチは受け止め後押ししてくれた。

本当に、自分は恵まれている。

それとももしかしたらこれが、
あの勇者と魔王様のもたらした新しい世界秩序の
小さな恩恵のひとつなのかも知れない。

そんな事を思いつつ、我は花束を抱え歩き出した。

ヤシチの言葉と、ラパンの気持ちに後押しされながら。

その後、地獄の植物図鑑に『ヤシチ』という虹色の花が追加された。
花言葉は『君と共に』。

そしてもう一つ変わった事と言えば、
風変わりな組み合わせの二人連れが
塵と黄金亭に度々訪れる様になった事だろうか]

 マスター、いつもの。
 ハナニラのベーコン炒めをもらえるかな?

[エスコートをするそのお相手はもちろん──**]

■後日談 フローリアン


盗賊と双剣使いはパーティから抜け、勇者と精霊使いは東の村へ、僧侶は神殿の復興に忙しいと風の噂で聞いた。
つまりこのあたりで以前とあまり変わらず暮らしているのは、錬金術師こと僕だけということになる。

「魔王討伐のお話を聞かせてください」
「錬金術師ギルドの幹部、いやギルド長になってください」
「あなたはハーフエルフの誇りです」
「弟子にしてください」

酒場などの少し人が多く集まる場所に出ると、いやそうでなくても外に出るだけ、下手すれば店に押しかけてまで、そういった言葉を浴びせられる。
嬉しいし、ありがたいことではあるのだが……。鬱陶しい。

しかたがなく、聞かれたことにはほとんど正直に答える。魔王の死後について聞かれた時には、適切に処理をした、とだけ。
最近噂の解決・レッドテイルとか、時々酒場のカウンターにいる気がする男女二人組のこととか、きっと僕には無関係の話さ。

久しぶりに、ギルド集会に出席し、小型魔石のレシピを渡した。渡さなければ渡さないで文句が出るのだろうし、渡して困るものでもない。
ギルドの偉い人にならないか、という話は断った。興味無し面倒くさいし自分の時間の方が大事。でも仕事は以前よりも多く回してもらえるようにした。

ハーフエルフの迫害は、まだ完全になくなったわけではない。むしろより一層迫害行為が加速した過激派もいるらしい。何度かそういった思想の者達が来た。大概はあまり戦わずに逃げてる。
さすがにエルフが集団で来た時には死ぬかと思った。傷もいくらか増えた。でも生きてるから問題はない。

面倒くさいし、店は一人でどうにかなるし、教えるほどの物はない。なにより今はまだハーフエルフの弟子や従業員というだけで攻撃される可能性が考えられる。僕にはそんな理不尽から誰かを守れるほどの力はない。
だから弟子や従業員の話等も断っている。


僕が望んだ"ただ普通に、常日頃から何かに怯えることのない、平穏な生活"が実現するには、まだもう少し時間が必要らしい。
それでも、少しずつではあるけれど、僕の願いが叶いつつある。……ような気がするんだ。**


■後日談 フローリアン→兄さん

エピ>>85へ

兄さんと久しぶりの買い物。
いつもお喋りな兄さんだったが、今日は一段とよく喋る。

『なあ、人間の言葉が上手くなっていたことに驚いた?』
『それよりルルのエルフ語の上達に驚いた』
『私が大笑いしたのに驚いた?』
『確かに驚いたけど、それまでも笑顔は多いなって思っていた』
『何か驚いた?』
『……まあ、全体的に』

しばらく話していると、兄さんは急に静かになった。
もしかして、僕が今面倒くさいって思ってるの、顔とか態度とかに出てた?
…うん。面倒くさいよ。

僕の左手を掴む兄さんの右手。
チラリと兄さんを見ると目が合う。
互いにふっと笑い、また前を見て歩く。

ごくごく当たり前に兄さんが隣にいる。
僕にはそれだけで充分。他にはなんにもいらない。

『きみと兄弟で良かった』

兄さんの一言に、

『僕もだよ』

と短く返す。

思えば僕は兄さんにべったりだった。
片時も離れないというわけでは無い。お互いに他に知り合いがいないわけでもない。
しかし僕は兄さんにしか心を開いていなかった。他の誰も信用することはできなかった。
側に居続けてくれる兄さんに甘えっぱなし。
でも兄さんは愛を知った。僕に注いでくれるものと似てるけど、確かに違う愛を。
いつまでもこのままではいけない、とは思っていたし、いい機会だ。僕もいい加減に兄離れしないとね。
なんてぼんやり考えていたのに、兄さんは

『なあ、おねだりをしてくれないかな。ちょっと、私は兄として不甲斐なさ過ぎじゃないか?』

なんて言うんだ。
まったく…。これじゃあ、いつまでたっても変われないじゃないか。

『兄さんはそのままでいいんだよ。
…でも、そうだなぁ…、塵と黄金亭のガトーショコラ、でどう?』

しばらく食べてなかったからね。
って、今は弟らしく兄さんに甘えるんだ。

エルフの郷とか父のこととか、そんな面倒なこともあるけど、それはまた今度でいいよね?**


テラークラウン:撫月 偲


■TCコメント

あ……ボクによる、2回目の撮影に、なります……。
まだまだ新参者ですが……よろしくお願い致しますっ!

今回のシナリオでは、 PCたちの能力は、テラークラウンによって与えられたものではありません 。
冒険者としての、皆さまのスキルです……。

そ、それでも記録させてくださいねぇ……。
え? 嫌? あっ……す、すみません、拒否権とかないんで……!


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最終更新:2018年03月19日 02:52