"ルチル・グリームライト"によって創られたアバター"グリームライト・オリジナル"が残した、
 『ヒト』の『光』と『闇』、そして『星』についての見解を記したレポート。

+ ネイロースレポート0
  "あれからどれほどの月日が流れただろう。"

  "『彼』との同調が済んでから私は、『彼』との約束を果たすため『夢幻』に関する研究を行ってきた。"

  "私の『光』と『闇』、そして『夢幻』を用いた計画が、この世界をあるべき姿へ戻すと信じて疑っていない。"
  "誰もが笑顔を絶やすことなく、闇の勢力による脅威も無い平和な世界へ還る時だ。"

  "だが、長らく研究を行ってきた私にも、遂にわからないことがあった。"

  "人の心の奥深くには、必ず闇が眠っている。どんな純粋な者の心にも。"
  "たった一欠片の闇が、ふとしたきっかけで大きく膨らみ——"
  "やがて心のすべてを闇に染めてしまった例を、私は何度となく見てきた。闇。心の闇。"
  "どこから来て、どこへ行くのか。"

  "そしてそれは我々とて例外ではない。"

  "もしも、もしも私の計画が闇に囚われてしまっていたものだとして"
  "それを止めてくれる『探索者』が現れてくれるのだとしたら"

  "このレポートは、守護者(ディセンダー)の務めとして、後の『探索者』たちへ遺すものだ。"
  "闇の支配者達と、闇に囚われた者どもが、この世界を破滅へ導く前に——。"

  "これを読んでいる『探索者』よ。どうか、世界の心(しんり)を——我々が失くした『光』を"
                                    "グリームライト"
+ ネイロースレポート1
  私は——そう、記憶を喪っている。

  "彼"と融合しこの世に現界した時、私はなぜあの場所に封印されていたのか。
  その一切のいきさつが思い出せずにいた。

  しかし、ひとつだけわかっていたことがあった。
  "彼"……そして"彼女"の願いは、私の目的――"救済者(セイヴァー)"として
  闇に包まれつつあるこの世界を救うことと一致していた。

  であれば、過去にとらわれる必要もない。私が召喚されたということは、私を必要としたということだ。
  事象が足りない。世界を救うために何をするべきなのか?
  私の敵は宇宙外の神たちだけではない。闇に囚われた人間たち――彼らもまた私が倒すべき闇なのだろう。

  なぜ闇に囚われてしまったのか……彼らの"心"を観てみれば、分かるのだろうか?
  観てみよう、彼らの奥底に眠る心の闇を。

  そして我らが仇敵、ナイアルラトホテップも探ることにする。
  彼らが住んでいた1900サイクルでも動きを見せていたようだからな……。
  時の番犬の動きに注意しつつ、"狭間の回廊"を使って赴くとしよう。
+ ネイロースレポート2
  1900サイクルの"黄昏村"にて、ナイアルラトホテップの化身が記述したと思われる、
  人間の心についてのレポートを発見した。
基本理念。
すべての生命は三つの要素で構成されている。

肉体。
我々がこの世界を生きる上での"器"となるもの。
魂がなければ動くことのないものだ。動くことがあるとすればそれは……。

魂。
生命の基本プログラム。
腹が減ればものを食べる。眠くなれば睡眠をとる。
肉体に命令し、肉体を維持するもの。心を内包し、守るもの。

そして心。
心は——生命の思考、思想……感情。
その生命の在り方を司る。
ほぼ全ての生命の在り方は"光"に依存する。
それは人間が"光の賢者"たちから生み出された存在だからだろう。
しかし——心はとても弱いものだ。
魂の殻に守られなければ、とたんに"闇"に呑み込まれてしまう。
そして、闇からの囁きに、誘惑に負け、自身の内に"闇"が芽生えてしまうこともある。
+ ネイロースレポート3
  魔術世界において、我々の用いる"魔力"というものはどうやら宇宙外のものとは違うものらしい。

  "魔力"は心から生成されるものだ。しかし、宇宙外の魔力はこの星の生命が生み出せるものではない。
  故に、宇宙外の神がもたらした邪悪な魔術を使う時、我々は代償として"心"そのものを魔力として差し出す。
  その生命の在り方を差し出し、宇宙外のモノへと近付くことで宇宙外の魔術を使う事が出来るようだ。
  そもそも宇宙外の魔術は我々では荷が勝ちすぎた代物だったということだ。

  しかし……差し出した心はいったい何処へ向かうのだろう?
  宇宙外の神から与えられたものとはいえ、神そのものが力を振るっているわけでもない。
  そうであるのならば――差し出された心が還る場所があるのではないだろうか?

  "ライフストリーム"……夢幻は人々の心から生み出される欲望によって形作られるもの。
  心が還る場所は、我々の力と無関係というわけでもなさそうだ。
+ ネイロースレポート4
  真の"闇"を見た。人の心の闇を。
  悪意、敵意、殺意――狂気のすべてがそこにあった。

  あれは宇宙外の神にも匹敵する恐ろしさだった。
  あんなものが、人間の内に渦巻いているというのか?

  私はわからなくなってしまった。本当にこの人間たちは救済するに値するのかどうか……。

  ——ふと頭をよぎる。
  "第零魔法"夢幻世界。

  地球創世より以前のこの星の在り方。神々がはじめに生み出した魔法……
  現代の魔術師たちの言葉を借りるなら、"固有結界"と呼ばれるものだろうか。

  かつて世界は光に満ちていた。時の神クロノス、そして無の神オリジンが生み出した第零魔法によって
  世界の光は守られ、その光に照らされた人々の心に闇が芽生えることはなかったという。
  もしも、この第零魔法をもう一度発動できれば……。

  現代に"固有結界"を生み出した、私たちの血族のひとり……"ルーチェ・グリームライト"について探ることにする。
+ ネイロースレポート5
 私の存在理由は……一体何なのだろう?
 "ルーチェ・グリームライト"は私を基に創られた、ヒトと叡智の種族――エルフの混血種。

 私はただのエルフ体の基盤として創られたのだ。
 私にはそれ以外の意味はない。ルチル・グリームライトは私をそういう風に創ったのだ。
 そして私をライフストリームに封印し……光の世界に生きる彼らの力の機関として生かされていただけだった。

 それは彼……アステル・グリームライトも例外ではない。
 しかし私は彼を許そう。今、彼は私と共にある。
 彼の心が私に届かなければ、私がこうして光の世界へ来ることもなかったのだから。

 しかし、これで私は他の……この世界に住む者たちを救済する理由がなくなってしまった。
 私が意味を持つとすれば、それは――この現実を知る者として、
 このような腐敗し堕落しきった世界に生きる者たちを、第零魔法に届かせるわけにはいかない。

 第零魔法――夢幻時代の復活を急がねば。まずは2000サイクルの"夢幻の使い手"を利用することにしよう。
+ ネイロースレポート6
ネイロースレポート6
 我らが女神の愛した『黄金時代』を復活させるためには、"夢幻"の力が必要不可欠だ。
 しかし、復活させるだけでは万事解決とは言えない。

 我々が求めるのは『人間だけの平和な世界』。
 いずれ完全に復活を遂げるであろう闇の勢力たちを完全に消滅させる方法を見つけ出さねば。

 光明風輝を使った実験で、ある反応が見て取れた。
 分離させた『純粋な光の心』と『純粋な闇の心』があるはずみでぶつかり合った途端とてつもないエネルギーを発したのだ。

 私はこれを『超振動』と名付けた。
 これを利用すれば、闇の勢力たちを消滅させる方法が見つかるかもしれない。

 しかし、光明風輝のもつ『純粋な闇の心』だけではまだ闇が足りない。
 私が与える闇よりも、外界で触れる闇の方がより純度は高いはずだ。

 『純粋な闇の心』だけを一度解放し、闇に触れさせることで闇を増幅させることは出来ないだろうか?

 『純粋な光の心』に仕掛けを施し、光明風輝を解放した。
 『純粋な闇の心』が、より多くの闇に触れる事により心の闇の純度が高まるはずだ。

 盟友よ、君の願いが叶う日は近い。
+ ネイロースレポート7
 未来から送られてきたと云われる『予知書』。
 そのひとつである"光明風輝"の身体に埋め込まれていた『黒之書(ブックオブシャドウズ)』の
 断片(ロストページ)の解読に成功した。

 そこで、気になる一文を見つけた。

 人類に課せられた『13の闇』、そしてそれらを司る13人の『闇の探索者(ダークシーカー)』達。

 "0『意志』"
 "Ⅰ『慣習』"
 "Ⅱ『諦観』"
 "Ⅲ『正義』"
 "Ⅳ『妄想』"
 "Ⅴ『偏愛』"
 "Ⅵ『自殺』"
 "Ⅶ『思想』"
 "Ⅷ『存在』"
 "Ⅸ『虚妄』"
 "Ⅹ『差別』"
 "ⅩⅠ『約束』"
 "ⅩⅡ『愛情』"

 光の賢者たちが残した『7つの光』、そしてそれらを育むもの、『純粋な7つの光』達。

 "赤の光『暴力』"
 "青の光『秩序』"
 "黄の光『調和』"
 "緑の光『平穏』"
 "橙の光『変革』"
 "紫の光『混沌』"
 "藍の光『終末』"

 『13の闇』と『7つの光』がぶつかり合い、人類が己の罪と向き合った時――『終の扉』が現れる。


 『13の闇』、そして『終の扉(おわりのとびら)』――。
 この生きているだけで地獄であるこの世界を終わらせるものなのだろうか……。

 『終の扉』を開く『鍵』を創るためには、膨大な魔力が必要なようだ。
 それこそ、全世界の人間の心に宿る魔力を全て使う事も視野に入れた方が良さそうだ。

 しかし、どうすればそのようなことが出来るだろうか……。
+ ネイロースレポート8
 かつて"暴力の赤"が生み出し、その絶大なる力により封印されるに至った究極魔法。
 全てを破壊し、無に帰す魔法は古代大戦の英雄であり前代の"暴力の赤"『アルテマ』の名を冠した。
 ——科学世界での学名では『ビッグバン』と呼ばれる現象だ。

 この『アルテマ』は、"光"と"闇"の衝突で生まれた魔力からしか発動されないという。
 そして途方もない魔力――つまり、『夢幻』を介した魔力であれば理論上は発動可能ということになる。
 『終の扉』を開く『鍵』には、そう、『アルテマウェポン』が相応しいだろう。
 『アルテマ』の力を宿した武具。全てを貫く剣ならば、『終の扉』を開くことも出来よう。

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最終更新:2018年01月15日 21:21