第40回

注:画像はイメージです。

すすすすみません、なんと下書きのまま公開しておらず、一年越しになってしまいましたが、今更ながらに、総勢7名の参加者の推し本を紹介してまいりますー。

第40回BtoZ読書会は「ジャンル不問2019年に読んだベスト推し本大会」です。 「2019年に発行された本」である必要はありません。今年読んだ本の中で一番推せる、推したい本を紹介してください!(*これを入れるとみんなの推し本がかぶってしまいそうなので、十二国記は除外にしました)

  • 課題本:なし
  • 開催日: 2019年12月22日(日)17:00-20:00くらい
  • 会場:都内のクルド料理店

1. レイチェル・ギーザ「Boys 男の子はなぜ「男らしく育つのか」」

管理人ののじの推し本。 自身も男の子を育てる悩める母である著者が、広範なデータと専門家へのインタビューを通して「男らしさ」「男の子らしさ」の定義と近代におけるその概念の成り立ちを深堀り。 実は「女らしさ」「女の子らしさ」と同じくらい、「男らしさ」「男の子らしさ」も近代に作られた後天的・社会的な「枠(本書ではマンボックスという専門用語を用いて解説)」なのでは?というのが著者の仮説。 つまり男の子たちはこの枠に阻害されて、本来だったら持ちえた情感の豊かさ、細やかさを成長過程で伸ばしきれていないだけ。男の子たちも社会と慣習の被害者でありながら、ようやく向上した女の子・女性の教育レベルの陰で、あまり目を向けられていないのでは?というフェミニズムへの反省にまでたどり着いている真摯な内容。

2. ‪小川一水「疾走!千マイル急行」‬

aoさんの推し本。 2006年に朝日ソノラマから発行された小説の移植版。 スノーピアサーを思わせる、ファンタジースリラー。名門学校の子女を載せた豪華列車が出発直後、彼らの母国は他国に侵略されてしまう。一夜にして帰る場所も(おそらく両親・家族も)すべて失ってしまった子供たちの冒険活劇。ワクワクドキドキのストーリーテリングの妙はもちろんのこと、aoさんいわく旅が進むにつれて自慢だった祖国が実は張子の虎にすぎないことが暴露される現実の無慈悲さ、クーデターにより身分の逆転が起きた際に主人公の男の子が垣間見せる人間としての醜さをあえて書いてしまうところが一水さんらしくて推せるそうです。

3. 高畑勲展図録、高畑勲「十二世紀のアニメーション」‬

緒方さんの推し本。 「十二世紀のアニメーション」

「信貴山縁起絵巻」「鳥獣人物戯画」などの絵巻物を、高畑勲が映画のカメラワークで解説しまくる驚異の本。横長の判型でカラー写真も見やすく、つい買いたくなってしまいました。絵巻物は遠い昔の墨絵ではなく、躍動感あふれる動きの宝庫であることが分かる。かぐや姫の物語につながる一冊。

実は高畑勲は絵が描けない。他のアニメーターに言葉で詳細な指示を与え、ダメ出しを続けて、誰もが知る赤毛のアンや火垂るの墓のキャラクターが作られてきた。自分で書かないからこそ、無茶な要求をなげかけ、「かぐや姫の物語」のような誰もなしえなかった作品を作ってきたことが分かる。

アニメの背景の描き方について、高畑は自分で描かないせいか、作品ごとにどんどん背景の密度が細かくなっていき、ついにある作品で臨界点に達すると、段々薄くなっていく。薄くなった極地がかぐや姫。逆に、密度が濃くなりすぎて臨界点も超えてしまっているのが新海誠なのでは?という、漫画家の緒方さんならではの考察が興味深かったです。

4. 阿部和重 「オーガ(ニ)ズム」‬

詠村さんの推し本。 三部作ながら、一作ごとにスタイルを変えている。共通するのは、あらすじを聞いただけでは全く見当のつかないクレージーな世界観。

一作目シンセミア 山形県 神町トリロジーの第一作。神町は作者の出身地。ここには「世界を仕切るパン屋」が存在する?権謀術数暴力まみれの闘争の物語。

二作目ピストルズ 人を意のままに操る薬を巡る話。三姉妹の末娘が拷問のようなサバイバルゲームに放り込まれて生き延びる。前作とは雰囲気が異なり、どちらかというと幻想小説。

三作目 オーガ(ニ)ズム 冒頭から首都が山形に移転。主人公は阿部和重で、彼の元に重症を負ったCIAが転がり込んでくる。オバマにプレゼントしたゴルフクラブでアメリカも支配しようとしている?

かように、あらすじは荒唐無稽だが、ありうるように思え、ちゃんと文学になっているのがすごいところ。同じ著者のニッポニアニッポン インディヴィジュアルプロジェクション IP/NNも世界がつながっているそうです。

5. 星野博美「コンニャク屋漂流記」‬

せんださんの推し本。

せんださん曰く、この著者は地に足のついたルポライター。調べてると全部分かったような気になりがちだが、現地の人に話をよく聞き、無知の知を自覚すれば落ち込む。だからこそ信頼できる。和歌山から千葉に渡った漁師なのに屋号がコンニャク屋?そこから始まる自分のルーツ探し。えらそうなルポルタージュにいらっときたらおすすめだそうです。

6. 「遠き神々の炎」‬

マサトクさんの推し本。

ヒューゴー賞受賞のスパオペ。設定もストーリーテリングも面白い。知的生物を破壊しにくる呪いが発生。銀河系の中心に行くほど情報伝達が遅く、AIも動かなかくなる。伝達の早くなる銀河の外には神の域に達した人たちがいる、という独特な世界観。 主人公たちが辺境惑星で出会う「犬型群生生命体」の5匹集まると賢くなるという設定が絶妙。

7. 曽田正人「Change‬」

悠々さんの推し本。

お嬢様がラップバトルに飛び込む意外性。

テクニックで勝つこともあるし、エモーショナルで観客の気持ちを掴んで勝つことも。先攻か後攻かでも勝率が変わる。

大人しいお嬢様がだんだん言い返せるようになっていく展開が爽快。勝負には才能だけでなく、前準備も必要なので、王道のスポーツまんが的な面白さ。ただ、連載タイミングが早すぎたのか、まだヒップホップが浸透していなかったようで、漫画として人気があったのに6巻で打ち切りに・・・。


どの本も抜群に面白そう!だったのですが、お話を聞きながら取ったメモを元にした箇条書でなかなか伝わらないかも・・・すみません!十二世紀のアニメーションはかなりの大型本ですが、気になりすぎて管理人も購入してしまいました。

推し本紹介後はボドゲ「みんなで本をもちよって」で、本を使った大喜利をしました。予想外のフレーズが多い古典が強かった印象。なかでも短時間で強力なフレーズを次々と見つけが緒方さんが優勝でした!

最終更新:2020年12月27日 01:12
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