シガーレビュー(レビュアー:S)


ラモン・アロネス ヒガンテス
1本2800円。194㎜。喫煙時間100分。

  • トップ
極めて香ばしいナッツ、黒糖のようなほのかで深い甘さ、珈琲の一口目に感じるような鮮やかなほろ苦さ、沃土のふくよかな湿気のアロマ。
奇跡的に美味しい。香りには花のフレッシュな酸味が含まれており、鼻孔を心地良くくすぐる。
熟成を経た沃葉を煮出して風味を醸し出しているように思えるほど、ゆっくり、静かに口腔を撫でる味わい。

  • トップ・ボトム
唾液の出るような豊かなナッティーさ、これで1つの食べ物、飲み物のような感覚を受ける。
穀物とフルーツのジュースを濃縮したような風合いが味わいに溶けている。
煙の量も大人しく、もわん、というより、ふわり。
静謐に響く丁合の取れた酸味といい、甘さを孕んだ「ほろ」苦さといい、そして何より、味に断層があるような深みがこの葉巻の序盤にはある、と感じる。

  • プレ・ミドル
酸味がやや広くなる。ほのかな栗皮の渋さが控えめに現れてくる。
湯葉のような淑やかなクリーミーさと、花のアロマが味わいの奥にやって来る。
口で揉むと、甘酸っぱい柑橘様の風味が広がり、時折、木々の若い香りを感じ取る。

  • ミドル
深煎り珈琲の渋さを含んだほろ苦さと、すっきりとした後味の美しい酸味。
煙量豊かに育つ。小ぶりな花むらが風に大きく揺れる風景が浮かぶような、繊細で透きとおった花のアロマ。
残り香に若干のアーシーさ。つい大事に吸いたいと思わせる喫味で、浮遊感をさえ覚える。

  • ミドル・ボトム
頬の内側にやさしく貼られるナッツ・ローストのほろ苦さ。
苦さの薄い膜を一枚剥がすと、そこには穀物様の甘さ、あのウイスキーに感じられるような甘みが顕現する。
紫煙をゆるやかに吐き出す口腔に、一切イヤなものが残らない。
ただ喫味の残滓となるのは、程よい甘酸っぱさ。なんと小気味良いことか。
旨い珈琲と熟れた果物を口一杯に頬張って、熟成を経たウイスキーを一滴口許に触れさせたような、そんな素敵な味わいがある。

  • プレ・ラスト~ラスト
この葉巻のビトラでは、やっぱり味わいと旨味の訪れ方が(僕自身は)気になるところ。
なお、香りは花の花びらと精油を蒸留圧縮したような、すなわち香水のように高い香りが続いている。
喫味には、吸い始めに現れたような純黒糖の甘みが濃くなって再来する。
煙はいたくシルキー、眺めているだけで大変美しい仕上がり。
歯を包み込む残り香の渋みも、「ここまできてやっと来るのか」と思う。
普通の葉巻ならミドル手前からやって来るものもあるのに。
さらに、舌先に白胡椒のほのかなスパイス、アーシーよりはウッディな濃い味わい、味の断層の上部は少しずつ姿を消しつつあり下部のみがじんわりと姿を現し始める。
やや、舌の腹に渋味というか滋味を感じるようになる。ただそれを消すほどの「甘苦さ」がある。
土の味わいでここまでの甘みを心地良く感じるのは初めて。

  • ラスト・ボトム
突如、深い旨味がやって来る。
熟れた土を掘り起こして顔をずんと突っ込んだような、ややアルコール的な風味を伴う強かなボディある旨味。
酩酊を誘う静かながら実に強い旨味で、こちらが葉巻の方へ引きずり込まれる印象。
おそらくはこの旨味こそが、この葉巻の真髄であると思う。
びっくりするほど、ここからは旨味だけの応酬で、味わいの全てを強く深い熟成されたような旨味が波状的にやって来る。
舌全体を揮発性の高い(それこそアルコールのような)喫味が包み込んで離さない
。初めの印象と打って変わって厳かな味わい、ただ僕が苦手なほどのボディ。こりゃ、凄いな。
度数40%以上の酒が舌を通った後に感じる、あの爽やかながらも強い刺激が舌に残る。
これは堪らん、僕は少し長めに残してしまうことにする。
きっと、パワフルな旨味を乗り越えられる方のみが、この葉巻の真髄をじかに受け止めることができるんだと感じた。
素晴らしいの一言。僕には持て余すほどの、威力と高貴さを湛えた一本だった。

残り4㎝で終える。