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シガーレビュー(レビュアー:S)

HOYO DE MONTERREY EPICURE ESPECIAL
ホヨー・デ・モントレイ エピキュア・エスペシャル。
1本3040円。141㎜。喫煙時間85分。

  • トップ
ホヨーらしいややねっとりとしたナッティ&ローストの浅く軽い甘やかさが口内に充満する。
この一本は、ドローも極良好で紫煙が満々と昇る。
トップのニュアンスを感じ取られる順に並べると、

①スムージーミルクを口腔に招くような、ねっとりとしたナッティの甘さと香ばしさ
②ミルキーで分厚くやわらかなウッディネス
③やや湿度を保ったシダーウッド
④水気に太らされたシナモン・グラス
⑤ウッディネスを感じる低い若草の酸味
⑥平穏的なナッティの淡いコク
⑦ここで鮮やかに、ぱっと花を展覧させるフローラル&スムーム
⑧余韻にナッティ由来の若干のオイリーさと、暖かな渋やかさ

…トップの印象としては、EP2にかなり近似しているがまだあれよりもマイルド&シルキーが優っている。
だからこそ、今後の化け方としては、エピ1のような濃厚さをミドル以降に予見させる(期待させてくれる良い)トップである。
驚くほどに柔らかく優しい点ではとんでもなく(僕の喫味的に)優秀とは言え、やや全体的なニュアンスのステータスが低い。
つまり味わいが弱い。

  • トップ・ボトム
ウッディ&ナッティの渋味とほんの少しのペッパー感があり、花の酸味も高く鳴る。
舌の上に残る余韻には、roasty なコクと心地よいほろ苦さがしっかりと感じられるようになる。
やっぱり、トップの軽快さ(軽薄さ)は見掛け倒しらしく、かなり期待できる今後を予見する。

  • プレ・ミドル
灰を置いて、味わいを強く確かめる。
不毛な山肌に孤高屹立した白木をイメージさせるような、Sadnessで虚ろな遠いウッディネスの渋味と酸味が口腔内膜に沁み入る。
ホヨーの優雅でミルクのような甘やかさは、(僕の印象としてだが)少し星霜を経てRealisticallyになったような感覚を受ける。
ホヨーのEP2が女性の輝ける若々しい季節を表していると仮定すれば、エスペシャルは彼女が人生で経験を重ねながら得た厳しくも満ち足りた壮年の時機を体現しているかのようである。
実に「味わいの深い」ホヨーといった喫感を覚える。

  • ミドル~ミドル・ボトム
ウッディネスな渋味が喫味の芯になってくる。
それらを囲む多様なニュアンス群。
順列的に、

①まずは、若木を焚くような草原的酸味
②(特に強い)大樹のウッディネスで広く低い渋やかさ
③それをややマイルドに抑えるナッティの甘さ
④同時にやってくる、乳性気質のmoistureなナッツの酸味
⑤再度、成熟した枝を四方へ伸ばした、悠々な大樹を彷彿させる広大なウッディネス
⑥渋さを残しながら透明でクセのない苦味をもたらす焚炎の焦げ
⑦絹漉しにうな垂れる木と乳のアロマ
⑧余韻にしっかりと舌を刺激するウッド&レザー

…トップで感じた軽薄な印象も、柔和な印象も薄れて、EPNo.1に喫味的な点では似通ってくる。
ミドル時点での喫味の「大人らしさ(Masculinity)」で言えば、EP2<EP1<エスペシャルである。
おそらくこの時点でこの喫味であれば、後半グッとEP1のラストを抜いてくる可能性は高い。

渋やかながら、実に女性的なこの喫味のニュアンス群が彷彿させる印象・光景は、必ずしも輝かしいだけのものではない。
…晩夏に砂浜へと打ち寄せるさざ波のその悲しい音、小鳥のさえずりを聴きながら森を去る際の名残惜しさ、もう2度と出逢うことのない人との最後の言葉、最愛の人と過ごしたあと、窓辺を昇ってくる暁光にまた逢えなくなる日々を見てしまうような、そんなもの悲しく切ない感慨を孕んだ女性的な喫味に感じられる。
(これらは勝手な妄想だけれど、あくまでこの葉巻が僕に抱かせるimageだ)

  • プレ・ラスト~ラスト・ボトム
この辺りで総合すれば、エスペシャルはエピキュア系の中でも異様な位置にあると思う。
ニュアンス群を追うことはさほど難しいことではなく、多層は多層なんだけれども、そんなことよりこの葉巻が、吸う者に魅せる光景がなんとも美しい。


エピキュアNo.2では、優雅で流麗な冬の雪床(ゆきどこ)、女性の実に美しい輝けるエンパイアドレス、朝陽を浴びる森林浴…
エピキュアNo.1では、(EP2より主なステータスが強い分)欄干から臨む夕陽に燃える海、庭園を飾ってゆく香りの高い美しい南国の花々たち、爛々と燃える山肌、屋敷に点在する金色の古い光を放つ調度品の数々…
そして、EP・エスペシャルが魅せる光景は、流麗ながらどこか頽廃的で、Declining(衰退的)な面持ちを湛えている。
後悔の映る女性のその潤んだ瞳、もう出逢えないことを悟りながら別れる2人の手のひら、夜の海、静謐に包まれた独りっきりの豪奢な部屋、想わないようにと無理に微笑んだ時の寂しげな彼女のその悲愴な唇。


と、いう抽象的で叙情的な感覚はさておいて、謂わば、EP・エスペシャルはあくまでエピキュア系の上位互換ではなく、ただでさえ優しく円やかな喫味を、さらに昇華させて、柔らかながらも渋味・酸味・旨味をもっともっと繊細に多層的に施された一本である。
したがって、喫味的にどうこう比較するよりは、EP・エスペシャルは、ホヨーの味わいを(僕がこれまでに味わったどんな葉巻よりも)「繊細にしたためてある」葉巻だと言って良いと思う。


ラストに至って、旨味だってもちろん濃くある。
だが、その奥にずっと旨味よりも深い静かで深いニュアンス群が幾重にも折り重なって、「そうかぁ」と思わせるような大人らしさ、世界観を表現して来る。


ちなみに、エピキュア系であればEP2でおよそ完成している。
そのステータスを要所強めたものがEP1である。

EP・エスペシャルはこれらと同列に非ず、「ホヨーの繊細さ」を詰め込んだ、喫味的にはEP2よりはEP1に近いものになっているので、注意されたい。

「美味い」で片付けるには余りに勿体無い。
この一本は「心で嗜む」葉巻だと、そう思った。


残り、2.5㎝で終了する。