シガーレビュー(レビュアー:S)

Romeo Y Julieta Wide Churchills
ロメオジュリエッタ ワイドチャーチル
1本2700円。130㎜。喫煙時間60分。

  • トップ~トップ・ボトム
瑞々しい爽やかなナッティ&ローストだが、明らかに1stドローの時点でショートチャーチルよりも「すっきり淡く軽い」トップであることがすぐに分かる。
これは恐らく口径(葉巻の太さ)がワイドの方が程よく太く調えられているからで、その分「マイルドで穏やかな」喫味になっている。
トップで感じ取られるニュアンス群は順列に、

①瑞々しい天然気質のナッティの甘み
②ナッツをローストした香ばしさとアロマ
③ややウッディネスに感じ取られる渋やかさ
④ドライメロンのようなしっとり響く甘さ
⑤若干喫味を締める樹木土のわずかな酸味
⑥もう一度、ナッティなロースト感
⑦ややシダーウッド&フローラル
⑧華やかに余韻を残す瓜科系統の淡い甘味
⑨鮮やかな色の花の蘭籠のperfume

…トップは総合して、ロメオのチャーチルのトップを彷彿とさせながらも、「ショートチャーチルより馥郁で豊満なニュアンス群を孕み、チャーチルのトップよりも(個人的には)奥ゆかしさと鮮やかさを見る」喫味である。
驚くべきは、「チャーチルのトップを超える」ようなニュアンス群の多層さ、また喫味的な甘やかさ。
よく味わい、口腔で煙を転がせば分かるが、チャーチルよりも(そして勿論ショートチャーチルよりも)ニュアンスのステータスは「甘味」と「フルーティ」に寄っている。
かつ、喫味自体はバランス良くmildで、トップの時点では「チャーチルを超える一本」であるように思う。

よく、「チャーチルにはメロンのような甘さを感じる」と形容されることが多いが、これは確かにチャーチルのニュアンスの1つ(瑞々しく甘やかな穀物的エキス)ではあるものの、このワイドチャーチルのトップで特に濃厚にハッキリとそれは感じ取られるだろう。
大変甘く透き通った、実にメロンのような甘やかさがここにはある。

  • プレ・ミドル~ミドル
味わいは、シルキーかつスムースに各ステータスを増して、ショートチャーチルのトップ、或いはチャーチルのミドル辺りの喫味にphaseする。
喫味の内に感じる「さっぱりとした穀物の甘味」「淡やかで鮮烈なフローラル」「roastyなナッツ類」がしっかりと強まる。

  • ミドル~ミドル・ボトム
ここまで吸い進めて思うに、ショートチャーチルとワイドチャーチルは同じ「チャーチル系」の名を冠していても、それぞれに明確なプロフィールの違いが存在することが分かる。


【ショートチャーチル】…これは、チャーチルのエッセンスを大いに継承し、ニュアンス群的にもチャーチルに寄せてある。
比較的しっかり細やかに、そして短い時間でチャーチルを愉しむことができる点で、「簡易版チャーチル」である。


【ワイドチャーチル】…これは、チャーチルのトップ〜ミドルにかける繊細な甘やかさ「のみを取り出して」1つのブランドプロフィールとしてビトラ化したものだ。
従って、チャーチルよりも優れたトップを見事に顕現させる上に、ニュアンス群は多層である。


なので、ショートチャーチルがチャーチルの時間軸的簡易版、ワイドチャーチルがチャーチルのニュアンス群的昇華版。
ショートチャーチルを吸ったからワイドも吸おうという安易な発想からこの一本を手にしたものの、おそらくショートとワイドの間には一個の壁がある。
それは「喫味的ニュアンスの優秀さ」における壁である。

僕個人の感慨において、その一点で比較をするならば【ショート<<<ワイド≒チャーチル】である。
この口径を持って、ワイドには「チャーチルの花」が完全に咲いている。


  • ミドル・ボトム~プレ・ラスト
味わいは次第にステータスを強め、樹木の旨味もしっかりと感じられるようになる。
ニュアンス群はチャーチルのラストにほぼ近い。

①しっとり響く穀物の甘やかさ
②舌にどしんと載る樹木の豊満な旨味
③roastyなナッツの広がりある香ばしさ
④涼やかなドライフルーツの花
⑤喫味を締める艶やかな原色の花のアロマ
⑥淡いシダーとほの渋いbitter-chocolate
⑦濃厚に口腔に響き渡るウッディネス
⑧爛々と焚かれる森林の馥郁なフローラル
⑨余韻に清々しい楼澪なウッドフロー
…ラストに近づくとやはりチャーチルのそれに近いニュアンス群でありながら、もう少し多層さを増して鮮やかな光景を見せる。

暁に金色に染まる麦畑の豊穣の報せ、しずやかに戴冠を待つ煌めく王冠、足許から爛れてゆく焚炎のなかの桜の木、雲海の上から絹漉しに感じられる日輪の炎天、白い孔雀の托卵、源記憶を呼び起こされる大乱の花畑、神殿を後景にして日に爛々とする果樹の花園…それらの光景は、ショートチャーチルの比ではない。


  • ラスト~ラスト・ボトム
恐れながら評するが、近々に味わったトリニダッドのようにこれを鑑みれば、【ワイドチャーチルで物語は完結している】と言って良い。
すなわち、ショートチャーチルは「ワイドチャーチルの簡易版」である。
そしてチャーチルは、ワイドチャーチルを時間軸的に引き伸ばしてより美しさの衣を纏わせたものである。

あくまで個人的な感想なのでご容赦願いたいが、ロメオの「チャーチル」は、このワイドチャーチルで完成している。
確かにチャーチルは歴史も深く、味わいの変遷は見事なスムースさ、ニュアンス群の豊富さを誇っているが、「ニュアンス」で言えばこのワイドチャーチルを超えて来ない。
それ程、このワイドチャーチルはニュアンス的に優れている。

と、いうことで、少なくとも僕の中では、チャーチルに時間を割けない方は是非このワイドチャーチルを吸うべきだ。
その簡易版が、ショートチャーチルになる。
チャーチルは、ワイドチャーチルを余暇的に優雅に引き伸ばしたものと考えれば宜しい。

トリニダッドで言えば、これはコロニアレスに該当する。
これで「チャーチルの花」は完成されているからだ。

素晴らしいニュアンス的多層性、凝縮された花の塊玉である。
お見事。

残り2.5㎝で終える。