- 01 恐レラレタモノ
太平洋戦争中。アメリカ軍の戦艦が、レーダーで徐々に接近する4、5機のゼロ戦を感知する。上官に報告するものの、レーダーに映ったり消えたりと不可思議な挙動を繰り返すゼロ戦に疑問を抱く観測員。
すると突如、味方の航空機であるP-51ムスタングが機銃掃射を受け撃墜。その後次々とゼロ戦が飛来し、船は混乱に陥る。
レーダーでの捕捉を指示する艦長。しかし、ゼロ戦は現れては消えを繰り返し、レーダーで捕捉できるような状況ではなかった。
艦長は闇雲に撃てと命令したものの、観測員は機影を見て突如狼狽。絶望も露に「白い...ゼロです...」と呟く。
攻撃を仕掛けてきたゼロ戦は、今まで見たこともない白い日の丸の機体だった。応戦虚しく、船は機銃掃射によって破壊される。
- 02 ハジマリ
1941年12月8日。陸海軍大本営は、真珠湾攻撃により米英との戦闘状態に入ったことを発表。1945年まで続いた、のちに太平洋戦争と呼ばれる戦争である。
時は遡り、日米関係の悪化が明白になりつつあった1941年の四月半ば。零戦に乗って祖国のために戦うことに憧れた紺野誠二は家族の反対を押し切り、志願してパイロットとなる。
その後。難関だったものの、同期かつライバルでもある坂本弌郎と共に第一試験を合格した紺野。いよいよ実機を用いた訓練となり、意気揚々と教官の待つ乗機へと向かうが、彼を待っていたのは戦闘機ではなく小柄で若い謎の人物だった。
困惑する紺野に対し、その少年は冷淡に「遅い」と言い放つ。しどろもどろになりながらも疑問を口にすると、教官を名乗る少年は突如どこからか飛んできた桜吹雪に包まれる。紺野が次に目を開けたとき、そこには彼が憧れていた白い零式戦闘機が鎮座していた。
- 03 レイ
食堂。「人間が機械になる」という事実を呑み込めずに雑談を交わす紺野と坂本を、やってきた紺野の教官が咎める。
訓練後、教官との対話を試みる紺野。名前を訊いたものの「零式艦上戦闘機」という答えしか返って来ず、自由に呼べと言われた紺野は咄嗟に「レイ」という愛称を提案する。二人は改めて挨拶を交わし、握手を交わす。
- 04 アメ公
真珠湾攻撃を間近に控えた1941年11月、無事に操縦練習生の過程を終えた紺野と坂本。試験にも合格し、海軍航空隊最難関である戦闘機パイロットへの昇進を果たす。三等航空兵曹となった二人は、ついに実戦部隊への配属が決まる。
二人の最初の実戦の舞台は真珠湾。作戦は成功に終わったが、宣戦布告の文書到着が遅れたことで真珠湾攻撃は実質的に騙し討ちの形となってしまう。
真珠湾の功績が評価された二人は出世を繰り返し、少尉に昇進。出撃と訓練を繰り返す忙しい日々を送っていた。
模擬訓練を前に整備を急ぐ紺野。上官である大尉の叱責する声を聞きとがめた彼は、「アメ公」と罵られ暴行される青年を目にする。その青年は藤堂功、日本とアメリカのハーフでありながら帝国海軍に志願したものの、その出自故に偏見の目で見られ続ける新米パイロットだった。
坂本の静止も聞かず紺野は駆けつけ大尉をなだめようと試みるが、逆に上官を激怒させてしまう。連帯責任で危うく殴られかかった紺野を、レイが間に入って助ける。
助け起こそうとする紺野を藤堂は拒否し走り去る。その態度に紺野は困惑するが、レイは「礼を言わせて来い」と紺野の背中を押す。
二人きりになり、レイの無礼を詫びる紺野。互いに自己紹介し、藤堂の生い立ちを訊いた紺野は彼の境遇に同情し、励ましの文句をかける。紺野の人柄を知った藤堂は感謝と謝罪を述べ、二人は仲直りする。
しばらくの後、紺野は4人小隊の隊長に任命される。その中に、最初の出会いの後も彼がかばい続けた藤堂の姿があった。
- 05 悲シキ玉砕
三ヵ月後、仲良く談笑する紺野、坂本、藤堂、レイの四人。突如スピーカーが鳴り響き、アナウンスが敵機の襲来を告げる。
藤堂たち部下に指示を出し、小隊長として指揮を取る紺野とレイ。激しいドッグファイトが繰り広げられる中、レイは単独行動を採る米軍の空母を発見する。
戦力差を考慮し、戦闘機撃墜後の撤退を提案するレイ。紺野は同意したものの、直後に藤堂の機体が被弾。燃料漏れを起こし、空母への帰還が不可能となってしまう。
紺野の静止も虚しく、藤堂は紺野への感謝と共に「日本人らしく死にたい」と告げ、空母に特攻を試みる。
藤堂の操る零式は空母から50m付近まで辿りついたものの、対空砲の直撃を受け撃墜、特攻を成し遂げることなく戦死を遂げる。
- 06 欠落シタ感情
1944年、徐々に劣勢へと傾いていた日本軍は、神風特別攻撃隊を結成する。それによって、戦闘機パイロットである紺野たちも敗戦を意識し始めるようになる。
艦上の紺野の許に、部下により坂本の訃報が届く。坂本は空母へ接近したところを砲撃され、撃墜されたのだった。事実を受け入れられずにいる紺野は、戦いそのものに疑問を抱き始める。
飛行中、戦後の兵器の処遇に関して話す紺野とレイ。失った戦友の数に耐え切れず、紺野はレイだけは失いたくないという本心を打ち明ける。
グラマン戦闘機を発見し、戦闘に入る紺野。激戦中に被弾し胸に負傷、さらに零戦では攻撃の当てられない背後に付かれてしまう。死を覚悟した紺野だったが、敵航空機は突如爆発を遂げる。
現れた二機の白い零戦に驚く紺野は、坂本と藤堂の姿を幻視する。その海域は、「米軍機を撃墜する、『英霊』の乗る謎の白い零戦の出没地帯」と噂される場所だった。
間一髪撃墜は逃れたものの、主翼が損傷し空母への帰還が不可能と判断したレイは不時着を提案。しかし、レイを失いたくない紺野はそれを拒否する。
レイと自分の負傷から死を悟った紺野は敵空母への特攻を決意、レイもそれを受け入れる。紺野はレイに感謝を述べ、レイも「感情を教えてくれた」と紺野に感謝を伝える。
『英霊』二機の援護を得て、紺野は特攻に成功する。
- 07 ホワイト・ゼロ
終戦間際。零戦三機を探知した米軍機は、6機がかりで攻撃を開始するも全弾回避される。不規則に動き、操縦士は笑みを浮かべ、日の丸さえも白に染まった奇妙な零戦を、米兵は恐怖も露に「ホワイト・ゼロ」と呼んだ。
紺野、坂本、藤堂の三人の『英霊』は、生前と代わらぬチームワークで尚も空を飛び続けていた。
- 08 白キ風ト悲哀ノ零
レイの声優である 神上真理によるエンディングテーマ。
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