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「……う~~~ん……さっきのって何だったんだろう……」  南ことりは首を傾げて、考えていた。  思考内容は、先程見たものについて。  目を覚ませば真っ暗な部屋にいて、ホラーな仮装をしたおじいちゃんが現れて、気味の悪い男の人が爆笑して、  また気付けばこんな所で座っている。 「夢、なのかなあ? うーーん、じゃあ今もまだ夢の中ってことかな?」  右に左に首を回す。  そこは何とも見覚えのある空間だった。  音ノ木坂学院・アイドル研究部の部室。  まさにそこだ。 「穂乃果ちゃ~~~ん、海未ちゃ~~~ん……」  見覚えのある空間とはいえ、今は夜でしかも無人。  気味の悪い夢の最中であるため、怖さは倍増である。  親友達の名を暗闇に投げるも反応はない。  可愛らしい双眸に見る見るうちに涙が溜まっていく。 「穂乃果ちゅあ~~~~ん……海未ちゅあ~~~~~~ん……」  激情に親友を呼ぶ声も大きくなる。  でも、彼女たちにその声が届く事もなく。  やっぱり静寂だけが、彼女を包んでいた。 「うぅぅ……何なの、これ~~……」  遂には思わず泣き出してしまう。  恐怖が、混乱が、彼女を苛む。  ポロポロと零れる涙を止めてくれる者はいない。  手をぎゅっと握りしめ、俯き、泣きはらす。  無人のアイドル研究部が涙で溢れていく。  そんな、時だった。  アイドル研究部の扉が、かたん、と音が鳴らしたのは。 「ぴぃっ!?」  物音にことりは身体を固くする。  視線の先では扉が徐々に開こうとしていた。  ゆっくりと、ゆっくりと。  ことりには、その一瞬がまるで永遠のように感じるほどに。  だが、それでも着実に扉は動いていき、そして遂に―――完全に開いた。 「あ、あ……」  そこに、いた。  黒色のスーツに全身を包んだ男が。  表情無くした顔に、冷徹な瞳を備えて。  男が立っていた。 「っ、きゃああああああああ~~~~~~~~~~~~!!!」  南ことりの甲高い絶叫が、学園を震わせた。 ◇ 「うう~……も~、本当にびっくりしたんですからねえ~……」  そして、それから十数分後。  南ことりは頬を膨らませて歩いていた。 「悪かったよ、コトリ」  隣には男性が一人。  数分前にことりがいたアイドル研究部に入室してきた男だ。  男は困ったような笑みでことりの囀りを聞いていた。 「僕も警戒していてね。状況が状況だけに、さ」 「うう~……!」 「すまなかったよ。レディがいると分かっていたら、しっかりノックをしたんだが」  男はことりに対して危害を加えることはなかった。  むしろ絶叫し泣き喚く彼女に慌てふためいていたくらいだ。  それからたっぷり何分も掛けてようやくことりは落ち着きを取り戻し、やっと意思疎通するに至った訳だ。  男はスティーブン・A・スターフェイズと名乗った。  スティーブンは物腰柔らかな男性で、とても優しげな雰囲気を持っていた。   「さて、どうしようか。コトリ」  ことりの前を一歩前を歩きながら、スティーブンは問うた。  この不可思議な事態の中、どう行動していくのか。  ことりの意志を確かめる。 「……私は」  スティーブンと出会い、ことりは知らされた。  支給されたデイバックの存在。デイバックの中にあるiPhon●。iPhon●の中にある『参加者名簿』。  名簿には彼女も知る名前がいくつもあった。  日本では知らぬ者のいないトップアイドル達の名前。  同姓同名なのか、冗談なのか、歴史上の偉人の名前。  世界をまたにかける大怪盗の名前。  そして……幼馴染の親友たちの名前……。 「穂乃果ちゃんと海未ちゃんに会いたい……こんな事でもう会えなくなるなんていやだよぉ……」  一度は引いた筈の涙が、また込み上がる。 「心配する事はない。必ず会わせてあげるさ」  滲む視界の中で、スティーブンが力強く頷くのが分かった。  ポンと、頭に手を乗せてくれて、その手はとても温かく感じた。 「でも、スティーブンさんの知り合いは……」 「大丈夫さ。奴等はそう簡単には死にはしないよ。……まぁ、一人危うい奴もいるが、仮にもヘルサレズムロッドの住人だ。大丈夫だろう」 「スティーブンさん……ありがとうございます」 「なに、子どもは大人を頼るものさ」  優しく微笑むスティーブンはどこまでも優しく、頼もしく見えた。 (かっこいいなあ、スティーブンさん……)  だからこそ、彼女は忘れていた。 (でも、最初に部室に入って来た時……スティーブンさん、すごい冷たい目をしてたよね……)  彼に対して抱いた最初の感情が、恐怖だったという事を。 (……こんな状況だもん、仕方ないよね……)  扉を開いて現れたスティーブンの、冷たい、氷のような瞳を。  忘れて、縋る。  まるで親鳥を追う小鳥のように、南ことりは彼に縋って、付いていく。

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