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「むぉぉぉぉおおおお、何だあ、これは!! そして何だ、あの光は!!」

 天海春香と豊臣秀吉の二人は森林の中でその放送を見ていた。
 突然鳴り響いた●Phoneを見てみれば先ほどの老人が画面に映っていて、いきなりの放送が始まった。
 空から光が落ちるその光景。
 春香は眼を見開き驚愕に声を失っていた。
 秀吉などはまずは●Phoneに驚き、空からの光に驚きで、驚きすぎて心臓が足りないほどだ。



『決して逃げだそうとはしないことだ。生還したくば、殺し合うのだ。それが最も賢い選択だ』


 驚愕の内に放送は終わりを告げた。
 後に残されたのは愕然とする二人の人物のみ。


「あれ、絵が黒になったぞ!? 声も聞こえなくなった! 空からの光と言い、どうなってるのだ一体!?」
「え、ええとですね……」


 画面の暗くなった●Phoneを振り回す天下人に、さしもの春香も言葉に窮する。
 ドッキリにしては行き過ぎた演出にも思えるが……。

「あ、あれはですね……そうCGですよ、CG!」
「しーじーぃ??」

 ともかくとして、春香は己の考えを押し通すことにした。
 さっきの映像はCG。中々に信じられない光景であったが、現代のCG技術は優れている(筈だ)。
 ならばこその、映像。企画の危機感をあげる演出の一つなのだろう。

「そうですよ、あれは作り物の映像なんです! この状況を盛り上げようとしているんですよ!!」
「えーぞー……す、すごいのお、地方ではこのような文化が栄えているとは。時代は変わっていくものだ」


 関心するように頷く秀吉に対して、春香は一定の不安を感じずにはいられなかった。
 殺し合い。脱出を企てれば謎の光線が降ってくる会場。

(……ドッキリ、だよね……)

 ドッキリだとは思うが、もし違っていたら……。
 思わずそんな考えがよぎってしまう。

(ううん、ドッキリに決まってるよ! まず秀吉さんが生きてるなんて有り得ないし!)

 首を振りネガティブな考えを振り落とす。
 そう、遠い昔に死亡した豊臣秀吉が今この場に実在する事などないし、あんな光線を出すものを個人で動かすのだって有り得ない筈だ。
 アルター能力など不可思議な力もあるにはあるが、それだってあんな簡単に扱えるものではない筈だ。
 放送をしながら片手間で攻撃するなんて、とてもじゃないが不可能な筈だ。

(そう、今はお仕事中なんだから頑張らないと!!)

 自分を鼓舞して春香は前を向く。
 立ち止ってしまえば、俯いてしまえば、余計な心配が噴き出してしまう気がするから。
 天海春香は前だけを向き続ける。

「あ、そうだ。秀吉さんに●Phoneについて教えてあげますね!」
「あいふぉん……おお、この不思議な小箱のことか! ありがたい。助かるぞ、天海よ」

 気を紛らわすように話しながら、二人は住宅街を進んでいく。






「ふぅ、それにしても疲れましたね……」
「そうか。確かに夜通しの行軍は、女子にはちとキツイかもしれんのお」


 そして、更に少しばかりの時間が経過して。
 天海はわずかに汗ばんだ頬を手で仰いでいた。
 薄暗の中を歩き続けてきたのだ。少なからずの精神的負担も相まって、疲れがでてきた。
 隣の秀吉はというと涼しい顔をしている。
 春香もアイドルとして厳しいトレーニングを積んではいるが、流石に生の戦国武将には負けるのであろう。


「なら、ここらで一旦休憩とするか。あそこの空き家で休もう」
「すみません。ありがとうございます、秀吉さん」


 二人は住宅街の中にある一軒の民家へと近付いていく。
 門を潜ろうとしたところで、前を歩く秀吉が手をあげて春香を制止した。


「念のため、ちょいと中を見てくる。お主はそこに潜んでおれ」
「は、はい……」


 そういう秀吉の表情は、真剣なものであった。
 会話の中では底抜けに明るい印象であったために、そのギャップに春香は少し驚く。

(ちゃんとメリハリをつけて物まねしてる……すごい芸人さんだなあ)

 そして、芸人としての腕を評価するあたりピントはずれずれである。
 まぁ、今の春香からすれば仕方のない事なのか……。
 ともかく秀吉は日本刀を抜いて、家の中へ入っていった。
 数分ばかりの時間が過ぎる。
 秀吉は満面の笑みで戻ってきた。

「どうやら誰もいないようじゃ。それにしてもこの屋敷はすごいぞ! 見た事のない珍品もあればびいどろで出来た障子まであるのだ!
 さぞや、裕福なものが住まいとしていたのであろう。いやあ、良い見つけものをしたのう」

 うっきうきである。
 春香からすればごく一般の民家であるのだが、その笑顔を見ているとツッコむのも申し訳なくなってしまう。

「あはは……本当だ、すごいですねえ」
「だろう! よぅし、ここに本陣をしくぞ!」
「本陣って、二人しかいませんが……」
「…………ま、まぁ、ともかくじゃ! 兵はこれから見つけていけばよい!」

 リビングのソファへと腰を沈める二人。
 秀吉はというと初めて座るソファに感心しているが、そこは割愛。
 春香は目を瞑り、身体を休めることとした。

(皆、どうしてるかな……)

 双海亜美、双海真美、如月千早、プロデューサー。
 皆もこのドッキリの現場で頑張っているのだろうか。
 それとも名前だけの登場で、ドッキリに巻き込まれているのは自分だけなのか。

(ああ、本当は今日レッスンあったのになあ。お仕事だって……)

 今日の仕事はどうするのであろうか。
 それともプロデューサーすら仕掛け人で、嘘の予定を聞かされていたのだろうか。

(プロデューサーさんや小鳥さんが、そんな器用に嘘つけるとは思えないけどなあ)

 思い返しても、分からなかった。
 二人の様子におかしなところはなかった気がするが……。

(そういえば、穂乃果ちゃん達の名前もあったなあ。大丈夫かな?)

 次いで、思考は仲間以外へと向かった。
 高坂穂乃果、園田海未、南ことり。
 あのスクールアイドル『μ’s』のメンバー達だ。
 ロストグラウンドでのライブで、共にステージに立ったスクールアイドル達。
 かのラブライブで優勝を果たし、スクールアイドル全てを巻き込んだライブを秋葉原で行い、そしてドームでの解散を果たした彼女達。

(みんな、すごかったなあ)

 一番間近で見たからこそ分かる。
 部活動の延長線上だけではなかった。皆がファンのことを想い、全力で練習を積み、ライブに望んでいた。
 プロのアイドルにも劣らない何かが、今や全国で知らぬもののいない765プロすら感服させる何かが、そこにあった。
 確かにプロの視点から見れば、技術的に至らぬ点はあったのかもしれない。
 ステージ裏で初めて顔を合わせた時は緊張しっぱなしだったし、リハーサルですらガチガチに固まっていた。
 でも、ステージの上での彼女達はまるで違った。
 未熟な点……それすら感じさせぬ何かが―――自分達765プロにすら負けたくないと思わせる、何かが、あった。
 多分、それはアイドルにとって一番大事な物なのかもしれない。

(ふふ、また会えるかな)

 スクールアイドルとして、解散した彼女達。
 あの魅力的な彼女達と再会できるのなら、このドッキリもそう悪いものではないのかもしれない。

(そういえば、あの人たちも元気かな)

 ロストグラウンドでのライブで、思い出す。
 ライブ会場を警備していたというアルター部隊『HOLY』の隊長。
 そして、その手助けとして駆り出されていた橘グループからの派遣員。
 ライブが始まる前に挨拶をしてくれたが、まるで対照的な二人だった。
 『HOLY』の隊長さんは礼儀正しい優等生といった感じで、橘グループの人は不良っぽいちょっと怖そうな雰囲気だった。
 その時も頭を下げろだの、下げないだのと喧嘩を始めて、二人して連れの女の子に怒られていたのを覚えている。
 後からプロデューサーから聞いた話だと、やはりあの時一堂に集まったアイドル達を狙って犯行を計画していたアルター使いの人達がいたらしい。
 でも、その組織はたった二人の人物に崩壊させられたとの事だった。
 その二人と言うのがまさに挨拶をしにきていた二人で、スタッフにすら気づかれることなく犯人グループを捕まえてきたというのだから驚きである。

(何だか懐かしい)

 その時の事を思い出していると、何だか楽しくなってくる。
 大変だったけど、本当に楽しいステージであった。

「輝いた~、ステージに立ーてば~♪」

 気付けば歌を口ずさんでいた。
 あの時唄った歌を、左右に身体をふってリズムをとりながら、唄う。

「おお……」

 それは隣に座る秀吉の耳にも届く。
 彼の時代の歌というものとはまるで違うが、音楽は歴史の壁すらも易々と越える。
 笑顔で唄う春香の姿は、400年前の偉人からみても眩しいくらいに楽しげなものであった。
 春香の歌に聞き惚れながら、秀吉もまた笑顔を浮かべていた。
 瞳を閉じて、数百年後の音楽に身を委ねる。

「夢だけでは終わらせたくない~♪」


 そして、春香が唄い終える。
 静寂の中、パチパチと拍手が響き渡る。


「いいのう……聞いてるこっちが楽しくなってくるような唄じゃ」
「えへへ、そういってもらると嬉しいです!」
「ホント! マルコも凄く良かったと思うよ! ワクワクするね!」
「そんなぁ~、褒めたって何もでませんよぅ!」
「いやいや謙遜する事はないぞ。大阪城であれば、褒美の品を山ほど与えていたのだがのう」
「マルコはこれあげるね。100円、何でも思い通りできるほどの額よ。ほんのお礼の気持ちね」
「あはは、ありがとうございます! マルコさ……ん……?」
「おう、よかったのお、天海! そなたも銀貨などをもっているとは中……々……?」


 と、二人は気付く。
 歌に歓声をあげる秀吉と、それに照れくさくも応じる春香。
 そして、その二人の前に一人の男がいた事に。
 男は、まるで無邪気な笑顔を浮かべて春香の歌を聞いていた。
 背中に一人の男を背負って、それでも子供のような笑顔を浮かべている。



「お主、だれ……」
「マルコはマルコね、よろしく!」
「い、いつのまにここに……」
「歌が聞こえてきて、気付いたらここにいたよ。二人とも目を閉じてて、気付いてなかったね」
「あ、あはは……」「は、ははは……」



 片や歌を唄い、片や歌を聞いていて、目を閉じていたことは認めよう。
 だが、まるで気配も感じさせずにそこまで接近を許すとは、とても思えない。
 言ってしまえば、男がそれだけ気配を消す事に長けているということ。
 つまりは、



「く、曲者じゃ~~~~~~~~!!!」
「わ、わわわ!! ひ、秀吉さん、何とか、何とかしてください!!!」
「お、おれを前に押し出すなぁ!!」



 男がそれだけの力を有しているということ。
 春香と秀吉、二人の叫び声が民家の中で木霊し、対する青年は慌てふためく二人の様子を不思議そうに見つめていた。