「自由の夜明け」とは791年10月
ラウロ・オッタヴィアーニ国防委員長らの作戦実施の発表から始まり791年11月~792年3月にわたる占領地奪回を目的とした反攻作戦をさす。主戦場が
ドラゴニア航路と
パランティア航路であったことから自由惑星同盟では
「ドラゴニア=パランティア戦役」と呼ばれる。
1 戦いの背景
宇宙歴780年代銀河帝国軍はイゼルローン回廊方面の辺境地帯に大規模な駐屯基地を持たない自由惑星同盟の弱点を突き、同盟軍正規艦隊が惑星ハイネセンに帰還した隙に
イゼルローン要塞から小規模艦隊による侵攻を繰り返すことで同盟領を侵食していった。この典型例が
エル・ファシルの奇跡の舞台となった宇宙歴788年8月の惑星
エル・ファシル陥落である。宇宙歴791年7月には
エルゴン星系外周部の防衛基地群が突破され、9月末には惑星
シャンプール周辺宙域に帝国軍の哨戒部隊が出現するまでに至った。この状況を打開するため、反攻作戦の実施が決定された。
2 両軍の指導者・指揮官
3 戦いの経過
遠征軍総司令官に任命された宇宙艦隊司令長官
シモン・アンブリス大将は総司令部を第七方面軍司令部のある惑星
シャンプールに置き、宇宙艦隊総参謀長
レナート・ヴァシリーシン中将が総参謀長、中央兵站総軍司令官
シンクレア・セレブレッゼ中将が後方支援を統括する布陣を敷いた。惑星シャンプールから帝国軍の侵攻の拠点イゼルローンに通じる航路は二つあり、
ドラゴニア航路をと
パランティア航路である。その上で指揮下の実戦部隊をドラゴニア航路を担当するドラゴニア方面軍とパランティア航路を担当するエル・ファシル方面軍に二分した。
ドラゴニア方面軍には宇宙艦隊副司令長官兼第二艦隊司令官
シドニー・シトレ大将が方面軍司令官及び宇宙部隊司令官、第三地上軍司令官
レミジオ・ジョルダーノ中将が方面軍副司令官及び地上部隊司令官、第二艦隊参謀長
ネイサン・クブルスリー宇宙軍少将が方面軍参謀長にそれぞれ任命され、三個艦隊と二個地上軍が配属された。
エル・ファシル方面軍には宇宙艦隊副司令長官兼第三艦隊司令官
ラザール・ロボス大将が方面軍司令官及び宇宙部隊司令官、第四地上軍司令官
ケネス・ペイン中将が方面軍副司令官及び地上部隊司令官、第三艦隊参謀長
イアン・ホーウッド少将が方面軍参謀長にそれぞれ任命され、三個艦隊と二個地上軍が配属された。
これに対し、銀河帝国側は占領地を管轄する
辺境鎮撫軍司令官
ユリウス・フォン・クラーゼン上級大将が迎撃の任務にあたった。辺境鎮撫軍首脳部は副司令官
バウエルバッハ大将、参謀長
マイスナー中将らで構成されていた。
クラーゼン上級大将も指揮下の戦力を二分し、ドラゴニア航路方面は副司令官
バウエルバッハ大将に委ね、自らはパランティア航路方面の防衛を担当した。いずれの方面の帝国軍もイゼルローン要塞から遠方での決戦を避け、占領地の六割を戦わずに遠征軍に明け渡した。そして、宇宙歴791年11月20日に遠征軍がシャンプールを出発して一週間ほどが経ち、戦闘が始まった。
3-1 ドラゴニア方面軍(ドラゴニア航路方面)
当初、同盟側では交易路としての重要性が高いドラゴニア航路方面に帝国辺境鎮撫軍の主力が配置されているものと考えていた。(11話)したがって、本来はドラゴニア方面軍が帝国軍主力と対戦することを想定していたものと考えられる。
宇宙歴791年11月28日、
ウランフ少将の第八艦隊B分艦隊が、
オグニツァ星域において帝国軍の分艦隊との遭遇戦で勝利した。これ以降、同盟軍の小戦闘での勝利が続く。
同年11月30日、
アレクサンドル・ビュコック少将率いる第七艦隊D分艦隊が、
ドゥルベ星域で帝国軍の分艦隊を撃破した。
エリヤ・フィリップス義勇軍大佐の恩師
イレーシュ・マーリア少佐が駆逐艦艦長として敵駆逐艦一隻を単独撃沈した。
同年12月6日、帝国軍主力はパランティア航路方面にあることが判明。国防委員会情報部の事前調査が正しければ相対するドラゴニア航路方面を守る
バウエルバッハ大将はシトレ大将率いるドラゴニア方面軍の半分程度の戦力も持っていないことになる。
同月、第二次ドラゴニア星域会戦でシトレ大将は直率する第二艦隊、第八艦隊、第一〇艦隊とともに
バウエルバッハ大将率いる帝国軍二個艦隊を敗走させた。
同月末までにドラゴニア航路方面の帝国軍をことごとく駆逐することに成功。
3-2 エル・ファシル方面軍(パランティア航路方面)
当初、帝国軍主力はドラゴニア方面にあると考えていた同盟軍としてはパランティア航路方面を担当するエル・ファシル方面軍は政治宣伝的な役割を果たすことが期待されていたものと考えられる。パランディア方面軍ではなく、エル・ファシル方面軍を名乗ったのも
ヤン・ウェンリー少佐らの民間人の脱出で有名になった惑星エル・ファシルにあやかってのことであろう。
宇宙歴791年11月29日、
ジャミール・アル=サレム少将の第一二艦隊A分艦隊が惑星
カラビュクを攻撃し、守備司令官
エルディンク准将と装甲擲弾兵六万人を降伏させた。これ以降、同盟軍の小戦闘での勝利が続く。
同年12月6日、
エル・ファシル星系に四万隻近い宇宙艦艇と七〇万人以上の地上戦闘要員が集結していたことが判明。国防委員会情報部の事前の調査結果「帝国辺境鎮撫軍の戦力は宇宙艦艇が五万隻、地上戦闘要員が三〇〇万人ほど」が正しければ、
クラーゼン上級大将は戦力の大半をここに集結させたことになる。
同月8日、
エル・ファシル星域会戦でロボス大将は直率の第三艦隊、
ヴィテルマンス中将率いる第一二艦隊、
ソン中将率いる第五艦隊とともに、数に勝るクラーゼン上級大将の
辺境鎮撫軍主力に大勝した。
4 結果及びその影響
作戦は成功し、自由惑星同盟は帝国軍による全占領地を回復した。遠征軍総司令官の
アンブリス大将は、元帥に昇進すると同時に引退した。同盟市民は帝国軍に多大な損害を与えた
ロボス大将の方を評価したが、同盟軍首脳は味方の損害を抑え、短期間で任務を完了させた
シトレ大将の方を高く評価した。その結果、アンブリス元帥の後任の宇宙艦隊司令長官に就任したのはシトレ大将となり、ロボス大将は現職にとどまった。
一方、銀河帝国では敗戦責任を負う
クラーゼン上級大将、
バウエルバッハ大将、
マイスナー中将ら
辺境鎮撫軍首脳部は厳罰に処された。これに対して奮闘した
カイザーリング中将は英雄に仕立て上げられた。またこの頃、改革派の
ルートヴィヒ皇太子が「国防体制を立て直す」と称して銀河帝国宰相に就任した。
最終更新:2020年06月15日 23:22