銀河帝国継承戦争とは宇宙歴797年2月~799年4月にわたるゴールデンバウム朝銀河帝国の第三七代皇帝の地位をめぐる内戦である。作中ではこの内戦の呼称は記述されておらず、便宜上「銀河帝国継承戦争」とする。

1 戦いの背景

 宇宙歴795年11月頃、ゴールデンバウム朝銀河帝国皇帝フリードリヒ四世及びルートヴィヒ皇太子はクロプシュトック侯爵により暗殺された。同年12月11日、国務尚書リヒテンラーデ侯爵は策謀により次代の皇帝の後見人としての帝国の実権を狙うブラウンシュヴァイク公爵及びリッテンハイム侯爵に先んじて、皇太子の遺児を第三七代皇帝エルウィン=ヨーゼフ二世として擁立した。当然ながら、この行為は両者の怒りを買うことになる。

 宇宙歴796年10月下旬、、財務宰相と称された副宰相カストロプ公爵が「事故死」。同年12月、リヒテンラーデ公爵はリッテンハイム侯爵の娘サビーネ侯女とエルウィン=ヨーゼフ帝の婚約、リッテンハイム侯爵の公爵へ陞爵等の譲歩により公爵の懐柔に成功する。ここにエルウィン=ヨーゼフ帝に忠誠を誓うリヒテンラーデ=リッテンハイム連合が成立し、銀河帝国三七代皇帝の地位は確立したかに見えた。

 しかし、宇宙歴797年2月、ブラウンシュヴァイク派はブラウンシュヴァイク公爵領の首府レーンドルフにおいて、公爵の娘であり先帝の孫であるエリザベート公女を皇帝に擁立。ブランシュヴァイク公爵が帝国摂政となり、各尚書と帝国軍三長官以下の文武百官を任命し、味方になった軍人を全員一階級昇進させるなど、政府の体裁を整えた。さらに「エルウィン・ヨーゼフこそが偽帝である」と宣言し、公爵自身が偽帝討伐軍の総司令官に就任、エリザベート帝の即位を認めないリヒテンラーデ=リッテンハイム連合の偽帝討伐軍を迎え撃つ体制を取った。ここに銀河帝国継承戦争の火蓋は切って落とされた。

2 両軍の指導者・指揮官



前半
帝国リヒテンラーデ=リッテンハイム連合 中立派諸将 帝国ブラウンシュヴァイク派
エルウィン=ヨーゼフ帝
サビーネ公女
クラウス・フォン・リヒテンラーデ公爵
ウィルヘイム・フォン・リッテンハイム公爵

ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥
レオンハルト・フォン・リンダーホーフ元帥
エーレンベルク元帥
ユリウス・フォン・クラーゼン上級大将
クローナハ上級大将
エッデルラーク上級大将






ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将
リンドラー上級大将
ヴァイルハイム大将
エルディング大将
エルツバッハ大将
フォーゲル大将
ラーゲンブルク大将
エリザベート帝
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵



グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥
ベネディクト・フォン・オフレッサー元帥
シュタインホフ元帥
グライフス元帥
シュターデン上級大将
グライスヴァルト元帥
ノルトルップ上級大将
キッシング上級大将
ヒルデスハイム大将

後半
帝国リヒテンラーデ派 帝国リッテンハイム派 帝国ブラウンシュヴァイク派
エルウィン=ヨーゼフ帝
クラウス・フォン・リヒテンラーデ公爵

ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥
レオンハルト・フォン・リンダーホーフ元帥
エーレンベルク元帥
ラムスドルフ元帥
サビーネ公女
ウィルヘイム・フォン・リッテンハイム公爵

ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将
エッデルラーク上級大将
ユリウス・フォン・クラーゼン上級大将
クローナハ上級大将
エリザベート帝
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵

グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥
ベネディクト・フォン・オフレッサー元帥
シュタインホフ元帥
グライフス元帥
シュターデン上級大将
グライスヴァルト元帥
ノルトルップ上級大将
キッシング上級大将
ヒルデスハイム大将


3 戦いの経過

3-1 開戦

 宇宙歴797年2月、銀河帝国はエルウィン=ヨーゼフ帝エリザベート帝に分裂したが、エルウィン=ヨーゼフ帝に忠誠を誓った者がすべてリヒテンラーデ=リッテンハイム連合に味方したわけでななかった。イゼルローン方面辺境に駐留するメルカッツ上級大将、リンドラー上級大将、ヴァイルハイム大将、エルディング大将ら中立派諸将は内戦には参加せず同盟軍の侵攻に備えることとなった。、リヒテンラーデ=リッテンハイム連合、ブラウンシュヴァイク派、中立派の比率は、四〇:三〇:三〇であった。リヒテンラーデ=リッテンハイム連合が優勢だが、中立派の動向次第ではブラウンシュヴァイク派の逆転もありえた。

 同年3月、ヤン・ウェンリー少将によりイゼルローン要塞が攻略された。(第七次イゼルローン攻防戦(第三次イゼルローン奇襲計画))ヴァイルハイム大将らイゼルローン要塞を守る中立派諸将は相互に疑心暗鬼に陥り、無血で要塞を同盟軍に明け渡した。開戦から3ヵ月がたった5月になっても、両陣営の艦隊戦は起きなかった。この内戦は宮廷政治の延長でしかなく、艦隊戦ではなく調略戦が盛んに行われた。要塞陥落という危機的状況にも関わらず内戦を続ける帝国を見かねて、数名のフェザーン人企業家が和平の仲介を申し出た。だが、両陣営とも要塞陥落の責任を押し付け合い、不調に終わった。

 同年9月、フェザーン自治領主アドリアン・ルビンスキーが自ら調停に乗り出したが両陣営とも和解を拒んだ。和解を主張したローエングラム元帥は防衛戦の指揮を名目に対同盟前線のニヴルヘイム総管区に左遷された。

 同年12月、自由惑星同盟は帝国領侵攻作戦「神々の黄昏(ラグナロック)」作戦を同盟議会で可決した。ニヴルヘイム総軍司令官ローエングラム元帥は作戦方針を巡ってメルカッツ上級大将ら中立派諸将と対立したことから帝都へ召喚された。後任には文官のワイツ男爵が就任した。リヒテンラーデ=リッテンハイム連合は、ブラウンシュヴァイク派に和解を申し入れた。だが、エルウィン=ヨーゼフ帝とエリザベート帝のどちらが退位するか、官職をどのように配分するかで折り合いがつかず、物別れに終わった。

3-2 同盟軍大攻勢後

 宇宙歴798年1月27日、自由惑星同盟軍は「神々の黄昏(ラグナロック)」作戦を発動。中立派諸将の守備するニヴルヘイム総管区は失陥した。
 同年2月、フェザーンのオーディン駐在弁務官ヘルツォークは、「エルウィン=ヨーゼフ帝とエリザベート帝を同格の共同皇帝とする」「官庁を分割して幹部職を倍増させることで、両陣営の高官が失職しないようにする」との妥協案を提示したが、両陣営とも折り合うことができなかった。リヒテンラーデ=リッテンハイム連合も連戦連敗を続け、開戦からわずか2ヵ月で帝都オーディンに至る領域が同盟軍に占領された。ブラウンシュヴァイク派は「帝都を救援する」と称し、ミュッケンベルガー元帥率いる八万隻を帝都に向けて派兵した。ブラウンシュヴァイク派はリヒテンラーデ=リッテンハイム連合の拠点を制圧しながら、帝都を目指した。

 同年3月25日、第一次ヴァルハラ会戦においてリヒテンラーデ=リッテンハイム連合は帝都オーディンを放棄して撤退し、逃げ遅れたものはブラウンシュヴァイク派に投降した。帝都に到達したブラウンシュヴァイク派の艦隊も同盟軍に一蹴され撤退した。こうして、帝都オーディンは同盟軍と革命戦士を称する暴徒の手に落ちた。また、帝国各地で反体制派が一斉に放棄し、両陣営は反体制派との戦いで手一杯となった。
 同年7月、旧カストロプ派への恩赦の是非をめぐって、リヒテンラーデ派とリッテンハイム派が分裂した。保守的なリッテンハイム派が離脱し、開明的なブラッケ派や旧皇太子派が加入したため、リヒテンラーデ派は急速に左傾化した。

 宇宙歴799年1月、ルビンスキー自治領主の呼びかけに応じて、同盟、ブラウンシュヴァイク派、リッテンハイム派、リヒテンラーデ派の代表がフェザーンに集まり、交渉を実施。このころ、帝国内の反体制派はほぼ鎮圧された。

 宇宙歴799年4月、帝国三派がローエングラム元帥を連合軍総司令官に指名した。また、エルウィン=ヨーゼフ帝とエリザベート帝の双方が、ラインハルトに「帝国大元帥」の位を与えた。内戦は事実上終結した。

4 結果及びその影響

 ほぼ二年間にわたる戦いの結果、正帝エルウィン=ヨーゼフ二世、副帝エリザベートの共同統治体制の確立という結果に終わった。ちょうど、第七次イゼルローン要塞攻防戦及び「神々の黄昏(ラグナロック)」作戦とかさなったため、銀河帝国は同盟軍の侵攻に対して十分な防衛措置をとることができず、凄まじい被害を被った。

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最終更新:2020年06月15日 23:20