久々津 取次


【 キャラクター名 】:久々津 取次(くぐつ とりつぐ)
【 性別 】:男


特殊能力 『おねがいっ☆亡霊さん(ポゼッション)』

左手から取次だけが触れることのできる射程距離10mぐらいのホーミング亡霊さん弾を放つ。生物に当てても特に何も起こらないが、非生物に当てるとその物体をポルターガイストエンジン、環境に優しくハイパワーなエクトプラズマ霊力使用の亡霊さん&取次が触れる事で書き換え可能な命令文を忠実に実行する亡霊さん知能、「Ghost Intelligence」(以下GIと表記)を搭載させた「憑依状態」にする魔人能力である。
この魔人能力には以下の限定条件が存在する。

1、亡霊さんを放てる数は現在4つ。亡霊さんを全弾放った場合、標的に命中しなかったり憑依状態にならなかった亡霊さんが帰還するか、憑依状態を解除された亡霊さんが帰還して再装填されるまで取次は亡霊さんを撃てなくなる。

2、亡霊さんの憑依状態を解除するには憑依状態の物体を破壊orお祓いをして実行中の命令を破棄させる必要がある。

3、亡霊さんに出来る命令文の語数は「合計」12個までである。(語数の判定は文字数を問わず、助詞を挟んだ文体を1語数として扱うものとする)亡霊さんが取り憑いた物体が破壊orお祓いされて命令を強制破棄される、または命令文を変更して語数が減った場合、その分の語数が回復する。
なお、うっかり合計語数オーバーした命令文を出した場合、憑依状態のGI命令文からオーバーした分の単語がランダムに抜け落ちる。
(具体例:ドアに対し、誰かが近づいたら閉じろ!と命じて憑依状態にした場合、「誰かが/近づいたら/閉じろ!」となるので語数を3つ消費する。)

4、取次は憑依状態を解除する魔人能力を持たない。何らかの要因で限定条件2を完遂できず憑依状態解除が不可能となった場合、憑依状態の亡霊さんは最後に命令されたルーチンを半永久的に実行し続ける。残弾数、消費したGI命令語数も同様に回復しない。


キャラクター設定

操使寺(そうじじ)出身。希望崎学園から徒歩3分の「墜手荘(ついてそう)」に下宿している1年生。「青く透き通った人型の布」としか言いようがない姿をした「亡霊さん」が、取次の左腕を中心に常時ふわふわしている。

久々津家が代々住職を務める操使寺の一人息子だったが、中学生時代に魔人能力が覚醒。魔人受け入れ可能な最寄りの高校が希望崎学園しかなかったので実家を離れて夢の一人暮らしを実現した。
魔人になっても自分を愛してくれた家族は大好きである。けれどほぼ二心同体の亡霊さんはもっと大好きである。ただ、取次は、人前で魔人能力を使用する際にはよく考えるよう心がけている。魔人能力に覚醒した際の衝動的な能力使用によって、死者こそ出なかったものの取り返しがつかない結果を招いたからだ。
大会参加の動機はグランプリの座という名声を生かして、魔人能力治療が可能な魔人の捜索に必要なコネクション構築。
「みんな知ってのとおり、俺の亡霊さんは最強なんだ。しかし、たとえ最弱のお化けだったとしても俺は亡霊さんが大好きなのさ」
消耗した亡霊さんを治療する代償がどんなものであっても、彼は亡霊さんを元気(?)な姿に戻す努力を惜しまないだろう。
魔人能力の制約上、取次は久々津家から毎週仕送りされるお祓い用のお札を常に持ち歩いている。

プロローグ

かち。かち。
壁時計の針音が無人の廊下に響く。
こつ。こつ。
その音に合わせるかの如く、左手にあるプリントを読みながら一人の少年が廊下を歩いていく。

ここはいろいろな意味で恐るべき魔人たちが蠢く希望崎学園……ではなく、そこから徒歩三分ほど離れた距離。希望崎学園から裏鬼門の方角に位置している下宿、「墜手荘(ついてそう)」である。少年「久々津取次」は、自室へ向かいながらホームルームで配られた『めいおうせいまつりのおしらせ!』という題の手書きプリントに書かれた猿でもわかるやさしいお祭り内容を読み返していた。
かち。かち。
こつ。こつ。
「なあ、亡霊さん」
かち。かち。
こつ。こつん。
「後でちょっとお願いしたい事があるんだけど、都合はいいかい?」
かち。かち。
「……」
かち。かち。
ぺらり。
立ち止まった久々津は持ったプリントのタイトルを読みなおす。
『め おつせ =つりのおしらせ!
      いいよ      』
「ありがとう」
かち。かち。
ぺらぺら。
プリントは勝手にひらひらした。付け加えておくと現在廊下は無風である。
「まずは部屋に戻ろうか」
プリントを無造作に裂いて鞄にしまい、久々津は廊下を歩きだす。
かち。かち。
こつ。こっ。
かち。かちっ。
こっ。っ。
ぼーん。ぼーん。
無人に戻った廊下には、壁時計が6時を告げる音が響くばかりであった。

久々津の自室、47号室にて、彼は晩御飯のメロンパンと白紙のノートを机の上に出し、シャープペンの芯を左手でつまむ。
「これから/する話の/返事を/書いて」
そう呟いた久々津の左手から青く透き通った何かが蠢き、シャー芯にまとわりついていく。
久々津の魔人能力「おねがいっ☆亡霊さん」である。亡霊さんはテレパシー通信士、ラップ信号技能資格は未取得のため、こういったポルターガイスト現象を応用した筆談を好むのだ。持ちづらいシャー芯に憑依させているのは、いちいち憑依状態解除のために鉛筆を破壊して補充するお金がもったいないからである。
彼がつまんだシャー芯をノートの上で放すと、シャー芯は白紙のページに直立していた。次の瞬間、シャー芯はひとりでに架線の間を踊り薄めの文字を描く。
『で、さっき言ってたお願いってなに?』
「自分で命令しといて何だが相変わらず怖い絵ヅラだなこれ」
『ひどい!別に無視しちゃってもいいんだからね』
「ごめんごめん、俺が悪かったよ」
『もう』
久々津は軽口をたたきながらメロンパンの封を開ける。
「話ってのはさっき取り憑かせたプリントに載ってた文化祭についてなんだ。うちのクラスも明日からなんか出し物を考えるとか言ってただろ?」
『ええ、私も聞いてたわ。五里先生の話の途中で門気くんが爆睡してジャングルームに連行されてたけど』
「そうそう、俺も気をつけないとな……いや、ちょっと話がずれた。他にも先生が話してた一大イベント、あるだろ?」
『もしかして:冥王星祭人気者コンテスト』
「そう!実は俺もそのコンテストに参加しようと思ってさ。目指すは当然グランプリ!」
『内弁慶で唯一の趣味が一人交換日記のぼっちが何思いあがってるの?』
「ひっどいこと言うな!ゲームも趣味の一つだぞ」
『んふふ、さっきのお返し』
「ちぇーっ」
憮然とした様子でメロンパンをかじるが、彼はこの奇妙な筆談を心から楽しんでいた。
「で、参加しようと思ったはいいんだけど、絶対他にも亡霊さんの次くらいのべっぴんさんや亡霊さんほどではないが凄い魔人能力持ちの先輩とか出てくるだろ?」
『別嬪って古臭い言い方ね』
「意味は合ってるし別にいいだろ。で、そういう人たちが絶対凄い魔人能力とかを駆使してかっこいいアピールとかしてくると思うんだよ」
『三億円賭けてもいいわ』
「同感。だから、このコンテストに最強の亡霊さんの力を借りたいって訳さ」
『もちろん構わないわ』
「ありがと亡霊さん」
『でも、わざわざ聞く必要もないでしょうに。私はあなたの魔人能力。何度も書いたけど、私はあなたがやりたい事なら何でも力を貸すのよ?』
それを読む久々津の目は揺らがない。亡霊さんが何度も書いてきた様に、何度も言ってきた事だからだ。
「確かに、それは魔人能力から生まれた亡霊さんの在り方なんだろう。だからこれも俺がやりたいことなんだよ。亡霊さんは俺の頼みや命令をいつも聞いてくれるけど、嫌だと思ったことは俺も無理にやらせたくない。こういう信頼関係の構築も最強の座を獲るためには必要でしょ?」
『相変わらず変わり者ね』
「そりゃあ魔人のはしくれだもの、普通の人と比べりゃ感性はズレてるだろうさ」
『まぁそういうことにしておくわ。話はこれで終わり?』
「あ、もう一個だけ。メロンパン食い終わったらこの前やってた2P協力面の続き手伝ってよ」
『また?この前も熱中しすぎで派手に寝坊して五里先生のバナナカードハットトリック決めてたじゃない。確か二枚でジャングルーム行きでしょ?』
「た、対策を考えてきたから今度こそ大丈夫だよ!バナナカードも何とか植林活動で返却したし!まあ聞いてよ、今回はコントローラーお祓いして寝る前に目覚まし時計にも憑依させてだな…」
かくして夜は更けていく。
翌朝久々津は今学期4枚目のバナナカードを贈呈された上、帰宅後に大家の娑婆屠(さばと)さんから目覚ましベルの共振現象でめちゃくちゃになった自室の掃除と割れた窓ガラスの弁償を言い渡されるのだが、その話はまた別の機会に。
最終更新:2017年01月08日 13:47